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1. 「ギフテッド」の子、進まぬ理解 高い知能

投稿日時: 2021/07/15 staff2

「ギフテッド」の子、進まぬ理解 高い知能/特定分野に優れた能力親も孤立、自ら「応援隊」設立

2021/7/14【毎日新聞】

生まれつき高い知能や、芸術など特定分野で優れた能力を持つ「ギフテッド」と呼ばれる子どもたちがいる。天才のイメージが持たれがちだが、学校や同世代の子どもたちとなじめず、孤立するケースも少なくないという。ギフテッドの子を育てているという親に、その苦労や思いを聞いた。

ギフテッドは、米国では認知が進んでおり、知的能力や特定の学問、リーダーシップ、芸術などのうち、一つ以上の分野でずば抜けた能力を見せるか、その力を潜在的に持つ人と定義されている。

兵庫県伊丹市の冨吉恵子さん(49)の長男(20)も、幼少期からギフテッドの特徴があった。小学校では授業を仕切ったり、教師も知らないことを発表したりした。漢字ドリルに四つ並んだ漢字を使って即興で物語を作ることもあり、創造力の高さをうかがわせた。

ところが、学校生活では摩擦を生む。権威で支配されることに反発したのだ。授業で計算問題を解く際、タイマーで時間を計る教師を「時間制限にどんな効果があるのか。計算が速くて何の意味があるのか」と問い詰め、明確な回答がないと「信念もなくやっているのか」と憤った。宿題をやらず、テストでは用紙に記された「解きなさい」の文言にも怒る。寄り道を禁じる下校のルールには「寄り道しないと人生の醍醐味(だいごみ)は生まれない」と反論し、「学校には余白がないから息が詰まる」と愚痴をこぼした。

冨吉さんが胸を痛めたのは、長男が幼い頃から「生涯の友達がほしい」と毎日のように訴えて泣いたことだ。小学校低学年の頃、同い年の子どもたちは遊びといえば鬼ごっこ。大人のようには会話を楽しめず、孤独に苦しんでいた。

長男を「ギフテッドかもしれない」と感じたのは小学4年の時。小児科医の勧めで知能検査を受けると、高い知能指数(IQ)が出た。長男には頭痛や湿疹の持病があったが、医師からは同級生と精神年齢が合わないストレスが原因だと指摘された。臨床心理士からは、周囲の精神年齢が近づく高校生になるまでは友達はできないと断言された。

医師には私立中学校への進学を助言されたものの、長男が「偏差値主義者のビジネスに乗りたくない」と葛藤するあまり体調を崩し、受験をやめた。進んだ公立中ではほとんど授業に出ず、小学3年から毎日続けていたニュース解説の手作りの壁新聞を張りにだけ行った。全日制高校への進学は諦める一方、中学卒業から半年で高卒認定試験に合格。通信制高校を転々とし、交友関係のストレスで難病を発症しつつも1年浪人して大学へ入り、映像学部で学んでいる。

発達障害と誤診
こうした苦労があった子育てだったが、支援はほとんどなかった。世界では専門の教育プログラムが導入されている国があるが、日本にはない。ギフテッドへの認知が進んでいない日本では、発達障害と誤診されることも少なくない。冨吉さんも精神科医やスクールカウンセラーに相談したが、「放っておいてもちゃんと育つ」としか言われなかった。

発達心理学が専門の角谷(すみや)詩織・上越教育大准教授によると、ギフテッドは言語や認知能力は発達しているが情緒的には標準あるいは遅れていることがある。角谷准教授は「自身の興味に強く動機づけられた行動を取る、必要性がないものには取り組まない、権威でコントロールされることに抵抗するといった行動などの背後にある深い洞察を周囲に理解されずに『わがままな子』とみなされたり、行動を周囲に理解されずに不登校になったりすることも多い」という。

手探りで長男を支えてきた冨吉さんは2017年、同じ経験や悩みを持つ親たちに呼び掛け、「ギフテッド応援隊」を設立。会員で集まって交流し、専門家を招いて講演会も開いてきた。21年4月には一般社団法人化し、会員は全国に約250人にまで増えている。

活動の一環で、電子書籍「ギフテッド育児奮闘記」を20年10月に出版した。幼児期から高い言語能力や音楽の才能を発揮した女児や、国内の小中学生が対象の算数オリンピックで小学3年の時にファイナリストになった男児ら会員の子ども8人が登場。その多くが学校になじめず、学ぶ環境を求めて親が奮闘する経緯を紹介した。出版を企画した会員でフリー編集者の万永安芸さん(44)は「一言では伝わりにくいギフテッドも、実例を並べることで見えてくるものがある」と狙いを語る。

冨吉さんは「ギフテッドの親は子どもと学校の間で対応に疲れ切っている」と明かす。秀でた面を説明すると自慢や過保護と思われてしまい、誰にも相談できずに孤独を感じる親は少なくないという。「ギフテッドの存在と特性を知り、特に教育関係者に理解ある対応をしてほしい」と願う。【稲田佳代】

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ギフテッドの正式な定義はなく、アメリカでは州によって様々な定義が用いられています。その中でも大半の州が下記のテキサス州の内容と同じような定義を用いています。
「ギフテッド・タレンテッドの生徒とは、同じ年齢・経験・環境を持つ子供と比較して、著しく高いレベルを達成する、あるいはその可能性をうかがわせる子供。知的能力、独創性や芸術の分野において高い実行能力を示す、並外れたリーダーシップ能力を持つ、あるいは特定の学術分野で秀でている。」

ギフテッドは発達障害とは違うという様に記事では読めますが、ギフテッドには「英才型」と「2E型」の2種類があります。英才型は全般的に高い知能を持つ人を指します。認知や記憶などの能力が高いため、学業成績はかなり優秀なことが多いです。社会性も高く周囲から見ても非常に優秀に見えるため、才能を伸ばすための機会が提供されやすいとも言えます。

2Eとは「twice-exceptional」のことで、「二重に例外」という意味です。ギフテッドと発達障害を併発している状態を指しており、ある分野では突出した才能を示しますが、苦手なことはとことん苦手な傾向にあります。「発達に凸凹がある」などと表現されたりもします。突出した能力が見られるものの、社会性が劣るなどマイナス面の印象が強くなりがちで、才能に気づかれることなく過ごしているケースが多いです。これは学校の先生や友だちが気づかないというだけでなく、両親や自分自身すら気づいていないケースも含みます。放デイで働く私たちがたまに出会う子どもは2E型です。

ギフテッドと発達障害は異なる概念ですが、いくつか共通する特徴が見られるため、ギフテッドなのにADHDやアスペルガー症候群と誤診されているケースが非常に多いです。「ギフテッドかつADHD」や「ギフテッドかつASD」、「ギフテッドかつLD」という存在(=2E)を正しく理解することが大切です。

ギフテッドと発達障害の共通点
・好きなこと・興味のあることへの集中力が非常に高い
・完璧主義で、細かいところまで気にして締切を守れないことがある
・論理的思考力が高く、考えが奥深い
記事の子どもはASDの特性があり、正論であっても嫌がられる言い方であることが分からないという、他者感情が読めない2Eタイプです。問題の本質は障害と言えば何か健常者より劣るような印象を持ちやすいことです。発達障害があっても誰も真似のできない発見や開発をする人はいます。類い稀な才能を開花できるかどうかはその人を取り巻く人的環境が大きいのです。大人が扱いにくい子どもだと言う理由で「障害」のレッテルだけ貼られて才能が葬られていくとすれば、それは人類の大きな損失だと思います。彼らを面白がって認めてくれる、カリスマティックアダルト(身近な憧れの大人)の存在が欠かせません。