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大学入試新共通テスト

2020年度から実施される大学入試新共通テストの目玉とされたのは「英語民間試験の活用」と「国語と数学への記述問題導入」でした。民間導入で格差が生じると前者の延期を発表した後、次いで「記述問題導入」への批判を取り上げた報道が広がり結局導入は延期されました。

新共通テストは現行センター試験の後継の共通テストとして計画されています。共通テストは1月に実施され、それを受けた受験生は自己採点の結果に基づいて2次試験を受ける大学を決定します。受験生は例年50万人を超えます。試験の実施から国公立の2次試験までは約1ヶ月あるが、各大学への出願期間は試験実施の約10日後からの10日間に設定されています。大学入試センターは、共通テストの成績を受験生の出願先の大学に直接送付します。当然、記述問題の成績も同様の扱いとなるので、記述問題の採点も2週間程度で完了する必要があります。

記述問題は、受験生の手書きの答案を人が肉眼で読み、採点基準に従って採点することになります。そこで、まず物理的に採点が可能なのかが問題となります。採点者は1万人とも2万人とも言われていますが、50万超の答案を短期間に正確に採点することは極めて困難です。正解例や採点基準は事前に策定されるが、必ず出題者の想定しない解答も現れます。その場合には、新たに正解例を追加したり、採点基準を調整したりする必要があり、その決定を全採点者に周知しなければいけません。また、その時点で既に採点を終えた答案の再点検も必要になります。そのような作業を50万超の答案と1万単位の採点者に対して行うことはほとんど不可能だということが延期の理由です。

そもそも、試験の内容を統一したのは、1979年共通一次テストが最初です。これは受験戦争と言われた当時の課題を解決しようとして始まった国公立大学の試験の一元化がはじまりです。この時は議論になったのは、同じ試験だけで足きりや合否を決めると大学の独自性がなくなるということでした。そこで1次試験はマークシートで共通、2次試験は夫々の大学で記述試験や面接を行って決定するというメリハリの効いた試験制度になっていたのです。そして、私学を取り込むことで一気に国家レベルの「支配力」を持つテストにする狙いで、1990年には私学も参加するセンター試験に変わりました。そして最近では、8割の私学が面接などはありますが、ほぼセンター試験の結果だけで合否が決まるようになってしまったのです。しかし、それではまずいだろうという事で、英語のリスニングが増え、さらには英会話もできた方がいい、記述試験もやったほうがいいと、かつては各大学の特色に応じてやればよかったものを、センター試験に取り込もうとして今回の混乱を引き起こしたわけです。言わば文科省の大学支配欲を動力とした共通試験の自己増殖作用が招いた結果とも言えるのです。文科省は各大学とテスト業界の要望を何でもかんでも取り入れて、大学と業界の支配と天下りの実現につなげようとしているとしか思えません。

ころころテストを変えて迷惑なのは受験生です。なんでも横に並べて揃えたらいいというものではありません。しかも、そのことが日本の教育の最も大きな課題だと言われているのにです。受験生に多様性と創造性を求めるなら、大学にまず多様性を求めるのが王道です。試験の細かなやり方まで国家が介入するべきではないのです。欧米のやり方が良いとは言いませんが、高校段階で学力テストを実施してそれを大学は参考にして必要なら他の選考試験も独自に行えばいいのだと思います。それから、発達障害の学生に対する試験の配慮事項はどう変わるのでしょうか変わらないのでしょうか。今回の試験内容の改定は読み書き障害の学生には不利な事ばかりなので、公平な試験のためにもっと検討されるべきです。