白杖(はくじょう)を持っている人がいたら、「目の見えない人が歩いている」と思うかもしれません。ですが、白杖は全盲の人だけでなく、見えにくい人も持っている道具です。たとえば、視力は良くても視野が狭い障害の人がいます。この場合、足もとが見えにくい、横から人が急に出てくる、といったことから危険が生じるため白杖を持つことが勧められます。つまり、白杖は目が見えない・見えにくい人であれば誰もが使用できるのです。
白杖の選び方や基本的な使用ルールは歩行訓練士さんから指導されることが多く、きちんと歩き方を習得すれば安全にひとり歩きできるようになります。もちろん、白杖を持っているからといって、ひとりでどこへでも行けるわけではありません。知らない場所や道に迷ったときなど、助けを必要としている場合もあるかもしれません。もし白杖を持っている人を見かけ、時間に余裕があったら「何かお手伝いできることはありませんか?」と声をかけてください。「いまはひとりで大丈夫です」と言われたら、「お気をつけて」でいいのです。「道に迷っています。駅はどちらでしょうか」などと聞かれたら、その人が必要としているお手伝いをします。視覚障害者にとって親切なひとことは、次の外出の勇気へとつながっていきます。
白杖は字のとおり白い杖ですが、形状や長さのなどの違いで100種類以上あると言われています。一般的にひとりで出歩く人は直杖(まっすぐ長い杖)を持つことが多いです。必要なときだけ使用する、または予備として持ち歩く人用に折りたたみ式のものもあります。最近では、カラフルなグリップに換えたり、マスコットや鈴をつけたり、シールを貼って自分だけのデコ白杖にアレンジする人も増えました。これは、おしゃれとしてだけでなく、自分の白杖を見分ける工夫でもあります。
視覚障害者が横、または斜め前を歩く人の腕や肩を持って歩くのを見かけたことないでしょうか。これを「手引き」と呼びます。手引きする人は専門の資格を持ったガイドヘルパーだけではありません。地域のボランティアや家族、友人が行っている場合もあります。視覚障害者だからと言って必ず白杖を持って歩くわけではなく、ひとりひとり歩きやすい方法や道具が異なります。
たとえば、ひとり歩きに慣れている人は、手引きをされると歩くペースを崩し、逆に危険なことがあります。特に階段では、手すりや壁をつたう方が安全に歩ける人が多いです。手引きする人・される人で身長差がある場合、腕と肩、どちらが持ちやすいか最初に確認するとスムーズにいくと思います。それから、視覚障害者は急に手を引っぱられたり、背中を押されると恐怖を感じる人が多いです。
視覚障害者も全員が歩行訓練を受けているわけではありません。なかには手引きのされ方を知らない人もいます。安全な誘導には、まず声を交わすことが大切です。そうすることで、お互いに気づくことがあります。また、男性のガイドヘルパーが少ないため、女性ヘルパーが視覚障害者の男性をガイドするケースは少なくありません。その際、女性ヘルパーがトイレの中まで付き添うこともあります。洗面台や便器の位置を確認するだけなのでご理解ください。