学校健診 下着脱ぐ必要ある? ない?検査精度上げる目的も…思春期の子どもに気遣いを
2021/04/19 17:30南日本新聞
「娘が学校の健康診断で医者の手が胸に触れるのを嫌がっている」―。鹿児島市の中学3年生の娘を持つ母親(53)から南日本新聞社の「こちら373」に学校での健診に配慮を求める声が寄せられた。調べると、健診時の脱衣や体に触れる診察に関する具体的な取り決めはないことが分かった。検査の精度を上げるために下着を取るよう指示したり、小学校では上半身裸にしたりするケースもあるようだ。
母親によると、娘は昨年の健診で、医師からブラジャー下に聴診器を入れられた。聴診器が胸の下から上に肌を沿うように移動し、胸の先端に手のひらが当たるなど不快な思いをしたという。一昨年は看護師に体操服と下着をめくり上げられ、胸が見えた状態で医師の診察を受けた。
母親が学校に問い合わせたところ、「診察法は医師の方針に従っている」との回答だった。母親は「多感な思春期で心の傷になる恐れもある。胸に直接手を触れないなど配慮してほしい」と訴える。
県内のある高校は下着を外して診察を受ける形だったが、学校医が変わったのを機に今年から着用したまま受けられるようになった。以前、人権上の配慮から下着着用を打診したこともあったが断られたという。教頭は「学校は健診に来てもらっている立場。無理は言えない」と明かす。
一方で、ある学校関係者は「脱衣で診るのは虐待を早期発見する狙いもある。短時間で異常を見落とさないよう努める医師の思いも分かる」と話す。
学校健診は、学校保健安全法で小中高校などに毎年の実施が義務づけられている。日本学校保健会のマニュアルに沿って、身長・体重測定、視力・聴力検査などが行われ、学校医の診察では心音や呼吸音の異常、背骨のゆがみ、皮膚疾患の有無などを調べる。
県医師会理事で学校保健担当の立元千帆医師(46)=あおぞら小児科院長=は「診察法は医師によってさまざま。脱衣させる方が検査の精度は上がる」とした上で、「聴診器で心音などを診る際、ほとんどの場合、胸に手を触れずにできる。(冒頭の事例は)医師の配慮が足りなかったかもしれない」とみる。
小児科医で薩摩郡医師会病院の相良久治院長(69)も、「病院で受ける詳しい診察は裸が基本。だが健診で確認する心臓や肺の音の異常程度であれば、下着を着用したままでも可能」と話す。
文部科学省は3月、健診時の脱衣を伴う検査における留意点を全国の教育委員会に通知した。プライバシー意識が高まり、現場で対応に困ることがあるためという。留意点に、具体的な診察法の記述はないが、「発達段階を踏まえた配慮を行う」ことを求め、工夫例として「必要性や実施方法について丁寧に説明し理解を得る」ことを挙げている。
相良院長は「生徒や保護者の要望を学校が把握し、医師と共有するのが望ましい。その上でどのような配慮ができるのか検討すべきだろう」と話した。
-------------------------------
昨年の春頃からSNS上で批判されている学校検診の女子の下着の脱衣の話から、今は医師の診察法もいかがなものかと非難の的になっています。ただ、これは学校だけの話ではなく、診察全般にかかわる話にも思えます。望ましいのは同性医師の診察だろうと思いますが、女医の診療所そのものが少ない現状では地域の医師会では解決できそうにもありません。
そして、課題は障害者や老齢期の介護に及びます。診察も介護も身体のプライバシーにかかわることですが、障害者や老人の清潔や排泄介護も同じ問題を抱えています。本当は同性介護を望んでいるのですが、これまでの子どもたちや保護者がそうであったように、立場が弱いものは声があげにくいです。
AIを内蔵した介護ロボットの開発がこの問題の解決の一助となるのか、新たな課題を抱えることになるのか、プライバシー問題は主観に左右され環境や関係性にも影響されます。そして、主観もまたプライバシーに関わるので、深くて複雑な問題だと思います。