八百屋の店長は発達障害の看板娘
2021年04月22日(木曜日) 【サンテレビ】
発達障害で重度の知的障害のある西宮市の二十歳女性。家族の支えで八百屋の店長として奮闘する日々に密着。
西宮市に住む野草真菜さん。発達障害の1つ重度の知的障害があります。
「ようこそいらっしゃいました。いまから真菜ちゃんが玉ねぎを詰めます」
元看護師の母・美千代さんなどのサポートを受け八百屋の店長を1年半務めています。仕入れはこの春大学を卒業したお兄さんが担当。朝4時から市場や農家で仕入れます。この日はキャベツ1玉60円です。
気分が乗ってきた真菜さんがダンスを開始。明るさと笑顔が持ち味のハタチの看板娘です。
しかし…かんしゃく。
記者の美千代さんへの一言がきっかけで一転して感情が崩れてしまいました。小声で話しかけた一言を陰口と感じ、学生時代の苦しかった経験がフラッシュバック。笑顔の裏でつらい過去と戦ってます。
本当に爆発するんです。
「自分でもそうなったらアカンて分かっているんだけれど感情のコントロールができない」
母の美千代さんは真菜さんが3歳の頃、障害児の親のサークルを設立。
「この子を何とか普通にさせたい。あの頃は普通にさせたい。普通に学校に行かせたいという思いが集まってやった感じ」
進学は特別支援学校ではなく地域の小中学校の普通学級のみ。当時としては珍しく多くの苦労を経験しました。
「小学校1年生で不登校、中学1年生で不登校。それも乗り越えてきたが、安全安心という部分では足りなかった」
中学卒業後は専修学校に1人で電車通学できる程成長。しかし卒業後、作業所での就労はうまくいかず断念。途方に暮れる中、近所の八百屋のアドバイスでお店を始める事になりました。
真菜さんは西宮市内の複数の福祉施設で野菜の移動販売も行っています。
「おーきに」
常連さんがやって来ました。「新玉ねぎがおいしそうやなあ」
「どこにある?」「それはキャベツ」店長の電卓での計算が始まりました。
「計算しよ~まずピーマンは?」「ピーマン1万1000円になってる」
「うふふふ」「ゆっくりでいいよ」
「おつりは?」「30円です」「おーきに」
温かく見守る常連さんに思わず会話も弾みます
「いま私1人暮らし練習しています」
「練習してるの?すごい。頑張ってよ」
また母の美千代さんは2016年から障害児などの児童デイサービスを運営。
モットーは「みんな違ってみんないい」障害児の親の経験をいかした支援を行っています。
持ち前の行動力で道を拓いてきた親子。2人の夢は「お互いがそれぞれの人生を歩む。真菜は1人暮らしをして、完全自立は難しいので、支援を受けて自立する。真菜ちゃんらしく人生を謳歌して欲しい。私もこれから私の人生を謳歌したい」
地域で愛される「真菜ちゃんの八百屋さん」はきょうも自立に向け走り続けます。
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発達障害に「知的障害」は入るのかどうか聞かれることが良くあります。これは福祉の法体系が医学分類と違うことから生じる疑問です。福祉では「知的障害者福祉法」(1960年)が先に存在し、あとからASDやADHDや学習障害等も支援の対象にした「発達障害者支援法」(2005年)ができました。この時に、知的障害者も発達障害に含みこめばよかったのですが、すでにサービス体系が出来上がっている等様々な問題があり別々の法律となった事から、知的障害は発達障害に含まないと言う誤解が生じたのです。
医学的には、日本はWHOの国際疾病分類(ICD)を採用しています。新しいICD11では神経発達症群の中の最初に「知的発達症」が出てきます。そして「自閉スペクトラム症(ASD)」「発達性学習症(LD)」「注意欠如多動症(ADHD)」と続きます。(「障害」ではなく「症」と表現するのは固定的に捉えないという意味だそうです)また、実際には知的障害やASD、ADHDは併存する場合があります。知的障害とLDだけは併存しないですが、会話能力の低さから軽度知的障害と誤診される人がいます。
さて、就労場所を親子で作っていくことは大変なことです。母親の経営する放デイとの関係が見えなかったのですが、娘を商店事業主(店長)にして、敢えて児童の通所支援と成人の就労支援の併合事業所としない親子の思いがあるのだと感じます。障害者をバックヤードで働かせるのではなく、接客もやろうと言うのが最近の動向です。接客マニュアルをやたらに気する就労支援も見かけますが、番組のように知的障害者がありのままで接客する良さもあって、八百屋が地域の食卓を支え、地域が障害者の働く八百屋を支えるという関係性がいいなと思いました。