eスポーツで障害の固定観念を打ち破れ
【9月11日 AFP】
岩手県に住む畠山駿也(Shunya Hatakeyama)さん(28)は、対戦型格闘ゲーム「ストリートファイター(Street Fighter)」のプレーヤーだ。キャラクターを自在に操り、複雑なコマンドを打ち込み必殺技を繰り出す。彼のために設計された特別なコントローラーを駆使して。
体から筋肉が少しずつ奪われていく難病、筋ジストロフィーを患う畠山さんは、両手でコントローラーを握るかわりに顎でアナログスティックを動かす。eスポーツに身体的障害の有無は関係ないことを証明しているプレーヤーの一人だ。
全盲の北村直也(Naoya Kitamura)さん(28)は、音を頼りに格闘ゲーム「鉄拳7(Tekken 7)」の闘いに挑んでいる。活況なeスポーツ界で才能を発揮することが、障害者に対する社会の偏見をなくす一助になればと願う。
北村さんはAFPの取材中に「鉄拳7」のキャラクター、ラッキー・クロエ(Lucky Chloe)の目まぐるしい攻撃を実演して見せた。「どういう技が飛んできたかすべて音で聞いて判断して動いています」
世界中で人気を博すeスポーツ界は年間10億ドル(約1420億円)を超える収益を生み出している。五輪競技の正式種目になる可能性があるとの見方も出ている。
障害のあるプレーヤーが活躍する場を増やそうと、加藤大貴(Daiki Kato)さん(41)は2016年、eスポーツを通じた障害者支援事業を行う「ePara(イーパラ)」を設立した。
同社は畠山さんや北村さんらプレーヤーを雇用し、ウェブサイト運営やゲームイベントの企画といった業務を任せる一方、ゲームのためのトレーニング時間を設けている。
畠山さんは「ストリートファイターV」で、誰もがエントリー可能なオープン形式の大会に参加することが多い。格闘ゲームの魅力は「ハンディキャップやいろいろなハードルを越えて、いろんな相手と対戦できる」ことだと言う。
大会に出る時に「障害があるかどうか」は関係がないと畠山さんは話す。「自分のプレーで人を感動させられるようにできればいい」
■特別仕様のコントローラー
進行性筋ジストロフィー患者の畠山さんは、6歳のころから車いすで生活している。
格闘ゲームはずっと好きだったが年を追うごとに筋力が低下し、ついにはコントローラーを握れなくなってしまった。
打ちのめされた畠山さんは、一度は格闘ゲームを諦めた。6年がたった頃、顎で操作できる特別仕様のコントローラーを友人とともに設計した。昨年のことだ。動かせる指先でコンピューターのキーボードも使いながらゲームを始めると、すぐに感覚がよみがえったという。
今では障害のある他のプレーヤーのコーチも務め、複雑なコンボや個々のキャラクター対策を教えている。
「もし格闘ゲームをやっていなかったら、困難にぶつかったときに解決策を探そうとしなかったと思う」と畠山さんは振り返る。
普段は呼吸補助器を装着し、電動車いすで生活をしている畠山さん。「ゲームの中だけは本当に自由に動くことができて、格闘ゲームでキャラを操作するために不自由さを感じることはほぼない」と話す。
eParaの加藤さんは、障害のあるゲーマー向け市場の拡大を確信している。「聴覚障害の人でも全盲の人でも遊べるように、プレーヤーが増えれば企業が対応するようになっていく」
■「一緒のルール、一緒の大会」
加藤さんは、eスポーツを通じて障害のある人たちの才能を知ってもらいたいと思っている。日本では「障害者のことを知る機会が少ない」と感じている。
小眼球症のために生まれつき目が見えない北村さんは、障害者は「助けなければいけない」存在だという考え方を変えるためにeスポーツが役立つと言う。
「パソコンを使うのはめっちゃ得意ですよ」と北村さん。「目が見える人よりできるところもある」
「支援されるだけじゃなく(中略)場合によっては協力できることもある。お互いに協力し合えるんだよ」
五輪の正式な種目として導入されることが期待されるeスポーツ。しかし、オリンピックとパラリンピックとを分ける必要性について、加藤さんは首をかしげる。
「車いすであろうとなかろうと、一緒のルール、一緒の大会でプレーできる」
そこがeスポーツの面白いところだと、力を込めた。
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近年eスポーツへの注目が日に日に増しています。
福祉業界でも「e-Sports」は大変注目されています。年齢性別を問わず参加でき,少しの操作でプレイできること。またリハビリや社会参加への観点からも医療や福祉業界にも浸透し始めているのです。ゲームを通じて社会に参加,コンピュータースキルの取得や向上というメリットも大きいといえます。
筋ジストロフィー患者でもあるパク・スンヒョン選手(韓国)に代表されるように,障害を持ったe-Sportsのプロ選手が、世界各国から続々と誕生しています。eSportsは、医療・福祉業界においても、ますます盛り上がりを見せているのです。
発達障害の特性とeSportsは相性が良いと言われています。普段チームで物事に取り組んでいる時に周りを気にせず自分のしたいことをしてしまったり,寝てしまったりすることがある方でもゲーム,eSportsの分野になれば自分の得意を活かして大活躍することがあります。
以下一部ディーキャリアより抜粋
〇「好きなこと」に対する集中力
発達障害の特性のひとつとして、興味を引かれたこと、好きなことへの集中力が
非常に高い傾向があります。集中力を発揮するまでの過程は特性によって
個人差があり異なりますが、ゲームスキルの向上やクリア目標達成に対して、
高い集中力を発揮するのです。
〇他者との難解なコミュニケーションが少ない
e-Sportsの選手は、競技以外の時でも「ゲーム」が仕事。スキルアップなどに多くの
時間を費やします。スポーツのアスリートでいうところの「トレーニング」です。
そのため、オフィスワークで必要な難解で複雑なコミュニケーションを
あまり必要としません。
このことは、発達障害の方にとって弱みが現れる場面が少なく、
とても良い環境といえるでしょう。
〇勝敗、スコア、など結果や成果がはっきりしている
e-Sportsは、ほとんどのタイトル(種目)は、その場で勝敗やスコアなど
成果が明確になるものばかり。オフィスワークや営業といった業務のように、
自分の仕事に対しての不安感が少なく、また、成果が明確になるため、
すぐに飽きてしまう特性でも続けられるという利点があります。
〇スキルアップへのこだわり / 地道な作業への集中(ASD特性)
ASDの特性のひとつとして挙げられるのが、「特定の事柄に対して非常に強いこだわり」を
持つことです。e-Sportsにおいても、技術向上や戦略・攻略のために、探求力や努力が必要であり、
ASD特性の強みが遺憾なく発揮されます。
また、バトルサバイバルゲームのような、展開によっては我慢強さを
求められる場面の多いタイトルや、パズルゲームのような緻密さを
求められるタイトルに対しても、ASDの特性は非常に高い集中力を発揮するので、
とても相性が良いといえるのです。
〇クエストやバトルを優位に進める独特な発想 (ADHD・SLD特性)
ADHDの特性では、クリエイティブな感性が強く、誰も考えつかない発想を生み出しやすいと言われています。この特性はe-Sportsでも大いに活かすことができ、相手の予測を上回る戦略で相手の隙を突いたり、想像を超えたスキルフルなプレイで戦いを有利に進めたりと、
能力を発揮する可能性が高いのです。
(一部「ディーキャリア」より抜粋、引用)
もちろん中毒性や依存等,注意することも多々あります。しかし障害のある方も他の人と同じステージに立って活躍できる場があることはこれからのインクルーシブ社会で大事なことだと考えています。まだまだ日本は海外に比べるとeSportsは広まっていないですが,良い方向で広がっていくことを期待しています。