発達障害の中でも特にASD(自閉スペクトラム症)の方は、相手の気持ちを汲み取る事や、相手の発言の行間を読むことが苦手です。その為、SNS上でも相手の気持ちがわからず、当事者が気づかない間に相手を傷つけてしまう可能性があります。Twitterで不適切な発言をしてしまい、本名が晒される報復を受けたりします。この場合、被害を受けるのは本人だけでなく、家族や親戚に迷惑をかけてしまうことになる為、「拡散」がされやすいSNSでの発言は要注意です。また、その他に、発達障害を持つ方がSNSを利用する際に気を付けないといけないことは、他のユーザーから誹謗中傷等のリプライ(返信)を受けてしまう事です。
インターネット上には様々な人がいます。中には憂さ晴らしの為にわざわざ攻撃の対象を見つけて、誹謗中傷を浴びせかけるような人たちもいるのです。発達障害の方がターゲットとされた時に、そのような人たちをうまく無視することができればいいのですが、ムキになって相手をしているとどんどんメンタルが疲弊してしまいます。ただし、不適切な発言をしてしまうのは発達障害の方やその特性に限りません。むしろ人口から考えれば少数です。匿名性が不適切発言を助長すると考えられます。ADHD(注意欠陥・多動障害)を抱えている方は衝動的な言動が少なくないので、SNSの利用時に衝動性が出てしまうと、SNS上での対人関係においてマイナスの影響が出てしまいます。
発達障害を抱える方が上手にSNSを使う為には、文章や画像を送る前に、「この投稿を見た人はどのような気持ちになるだろう」「この投稿をすることによってどのような影響が出るだろう」と考えるルーチンを作るために、キーボードの横に【入力したら吟味する】等の標語シールを貼っておきます。また、多くのSNSには「限定公開」という機能があり、自分の友達や知り合いの間のみでSNSを楽しむという事もリスク回避になります。おススメは「ミュート」です。ブロックをすると相手のアカウントと自分のアカウントを完全に隔離することができますが、ブロックをしたこと自体が相手にバレてしまうSNSが多いですが、ミュートであれば、相手にミュートしたことがバレずに相手からのリプライを見えなくしてくれるので、相手に余計な感情を抱かれる危険性がありません。
SNS上では自閉スペクトラム症(ASD)のことを「アスぺ」と呼んで揶揄する人がいます。そして、その「アスぺ」という言葉の使い方は間違った意味で使われていることが多いです。特に、文を誤解して捉えてしまった人に「アスぺ」という言葉がかけられることが多いのですが、読解能力と、ASDのコミュニケーションの特性とは関係がありません。また、ADHD(多動症・注意欠陥)についても、誤った認識のもと、SNS上に投稿がされているケースが散見されます。こうしたSNS上でのスラングが発達障害に対して間違った認識を生む原因の一つにもなっています。
発達障害の当事者やその両親の方がSNSから得ることができる恩恵はたくさんあります。例えば、発達障害に特化したSNSを利用して発達障害による日常的な困りごとについて相談できる相手が見つかるかもしれません。発達障害の当事者やその両親は、周りに発達障害の悩みを相談できる人がおらず、孤独感を抱えてしまいがちです。しかし、SNSならば同じ悩みを相談し、共感しあえる相手が見つかるかもしれません。発達障害の当事者やその両親にとって、悩みを共感しあえることは大変喜ばしい事です。また、発達障害に特化したSNSではなくても、Facebook等には、発達障害の情報交換を目的としたコミュニティもあります。
自分が「馴染めそうだな」と感じたコミュニティに入ってみて、普段抱えている発達障害の悩みを打ち明けあったり、共感したりすることができれば孤独感の解消に繋げることができます。直接、発達障害のコミュニティが主催する場に足を運ぶのは抵抗があるかもしれません。しかし、SNSを利用することで発達障害のコミュニティに入ることの心理的障壁を下げることができるかもしれません。ただし、SNSは匿名性が前提なので、場所や氏名等の個人情報が特定できないようにする注意が必要です。
SNSは根拠がなかったり、嘘を平気で拡散して喜びにする人や、その嘘に乗っかって本気で信じてしまう人たちも少なくありません。でもそれはSNSに限ったことではありません。テレビや新聞など大手のメディアでも平気で根拠のないことを拡散することがあります。メディアの目的は嘘だろうが真実だろうが大衆に注目してもらい金を稼ぐことですから、過激になり尾ひれがついて連日報道されます。
今流行りの「#検察庁法改正案に抗議します」も、発端は63歳で今年2月退職のはずの検事長を、検事総長にするために退職延長したのはけしからんし、これでは65歳定年の総長を68歳まで任用を延長できることになるので更にけしからんと言います。しかも今回の法案はこれを正当化するので言語道断というものです。しかし、この法律を施行するのは2年後の4月なので、仮に今の方が総長になっても2か月前に65歳を過ぎており新しい法の影響はありません。現行政の人事権限の問題は法案とは関係のない話で、法案の何が問題なのか説明になっていません。それでも、著名人がこのハッシュタグ付けるとファンが爆発的に拡散します。もう、正しいか間違いかは法案の内容とは関係ないようです。
武漢ウィルス恐慌という最大の危機を前にして、今そんなことでもめてる場合かというのが、大勢の意見ではないかと思います。SNSとは情報の一方通行時代から、市民が双方向性のメディアを手に入れたという意味では画期的なものです。ただ、使い方によっては、個人だけでなく社会の毒にも薬にもなる代物だという事も理解しておくことが大事です。