子どもの虐待を防ぐため、児童相談所で相談、調査、指導をする「児童福祉司」を、2019年度から2022年度までの4年間で「約2000人増員」することになりました。度重なる子どもの暴行死亡事件を受けての緊急対策です。
児童相談所の業務は、「養護相談」「保健相談」「心身障害相談」「非行相談」「育成相談」など、多岐にわたっています。児童福祉司」を増員することは、いいことだと思いますが、「虐待対応」には、高度な専門性と知識・技術が必要で、そのスキルを得るためには、最低5年から10年かかると言われています。
ところで「児童福祉司」になるには、自治体の公務員試験を受けて採用され、所定の資格を持つ人が「児童相談所」に配置されて1年で任用資格が出来ます。だから、異動等で配置された職員が、よくわからないまま対応に当たることも少なくないと思います。
この状況を打開するには「児童福祉司」を専門職にし特別に育成していくことが急務です。また、「児童福祉」に関係する機関との密な連携をすることで、関係機関とも協力でき、「虐待」だけでなく、総合的に対応ができるシステムが構築できると思います。
「虐待」に関しては、「早期発見・早期対策」「児童の保護」が必要ですが、目に見える体罰など物理的な虐待のすそ野にはその何千倍ものネグレクトや心理的虐待が存在します。見えない虐待は氷山モデルで見ていきます。「育児スキルの低下」や「子どもへの愛着欠如」の本質は世代間で繰り返される「貧困」と「被虐待」が少なくありません。
表面化された虐待への保護は欠かすことはできませんが、この水面下の問題に取り組むには、今回の増員では少なすぎます。今できることは、業種を超えたチーム支援ですが、このチーム支援も曲者で、指揮権や責任が曖昧なので「船頭多くして舟山のぼる」様子が散見されます。児童福祉司の専門職化に加えチーム指揮権の付与が求められていると思います。