みんなちがってみんないい
習い事型放課後等デイサービス
放課後等デイサービスについては以前掲載しましたが、前回は施行初期の頃の意義や厚労省が掲げたことをそのまま説明しました。しかし、実際は一言に放課後等デイサービスと言っても、取り組みの内容や一日の過ごし方など、施設によってかなりの違いがあります。
施設ごとの特徴としては次の4タイプ、もしくはそれらの混合があるようです。
A.生活型 B.療育型 C.お勉強型 D.運動型
CDは習い事型といってもいいかもしれません。
A.生活型
ゆったり過ごせる雰囲気を大切にした放課後等デイサービスのことです。「それ、家でよくない?」と思うかもしれませんが、発達障害のある子は、人間関係を築くのが苦手な子が少なくないです。「他人に興味がない」「人の気持ちがわからない」という子には、生活型でゆったりと人とのかかわりを学んでいけます。
もちろん適切なかかわりを促せる大人の存在が必要なので、障害特性や支援のノウハウをスタッフが身に着けているかどうかでサービスに大きな差が付きます。
「学童保育」に近い内容、おやつを食べたり、宿題をしたり、友達と遊んだりするだけの場所なのですが、そういう「学校が終わった後に障害のある子も友達と遊べる場」という内容は最初に放デイに求められた社会的役割です。
また、親もスタッフと子育ての悩みや将来の不安などを相談できるという保護支援の観点も前回書いたところです。
B.療育型
療育型の放課後等デイサービスでは、子どもの発達支援に特化した取り組みをおこなっています。そのため、OT(作業療法士)やST(言語聴覚士)、PT(理学療法士)や心理士、音楽療法士などの専門スタッフが在中し、子ども一人ひとりの特性に合わせたカリキュラムを設定します。■感覚統合(バランスボールなど)■自立課題(弁別・マッチング・組立課題など)■自己理解 ■ソーシャルスキルトレーニング ■リラクゼーション訓練 ■日常生活動作訓練(ボタンの付けはずしなど)■学習支援(鉛筆の握り方など)■絵カードによることばの支援(理解・表出)■発音の訓練 ■基本動作の訓練(座る・立つ・歩くなど動作の維持・向上)■変形・拘縮の予防■姿勢の調整・管理 などを個別か小集団で取り組みます。
就学後の発達障害児が療育を受けるとなると、各自で専門の病院に通ったりする必要がありますが、このように放課後等デイサービスで療育をおこなうというのが特徴です。ただ、その分とても人気がある施設なので、かなりの数の待機児童がいます。
C.お勉強型
放課後等デイサービスの中には、■学力補充 ■英会話 ■ピアノ ■パソコン(プログラミング) ■ダンス などの個人レッスンを、本人や保護者の希望によりおこなってくれるところもあります(多くは時間制のようです)。発達障害児の場合、なにか習い事をさせたいと思ってもその環境(人の多さ・一斉指導など)に苦手感が出てしまい通えないという子も少なくないかと思います。「興味の幅を広げてやりたいけれど、一般的な習い事に通わせるのは敷居が高すぎる」と感じている方にニーズがあるようです。
D.運動型
お勉強型と同じように運動に力を入れた施設もあります。運動は、発達障害児の心身の成長にも良いので結構ニーズがあります。スイミングスクールで「プールサイドを走り回り、プールに飛び込み、ルールも守らないので危険」という理由で断られた経験のある親は少なくありません。聴覚過敏がある子もいるので室内プール特有の音の反響でスイミングが苦手になった子どももいます。こうした事態を把握してスイミングに力を入れ室内プールを持っている放課後等デイサービスも存在します。他にも■体操 ■テニス ■卓球 ■フットサル などスタッフの得意なスポーツを取り入れているようです。「運動面を伸ばしてやりたいのだけど、一般の習い事やスクールには通えなくて…」という方のニーズをくみ取ったのが運動型の放課後等デイサービスです。
ステップは生活型と療育型の混合を目指しています。様々な年齢、様々な違いのある子ども達が、スタッフの支援を受けつつ助け合ったりぶつかり合ったりして社会性が育つように取り組んでいます。また、子どもたちの自立性を高めるために構造化支援(視覚支援)を行い個別学習に取り組んだり、表出のコミュニケーション支援として個別指導を行っています。私たちは、社会性と自立性は多様な個性を基盤としながらも表裏一体なので日常生活の様子を把握してこそ生きた療育ができると考え、このAB混合型を選択しています。
CやDの習い事型は、このサービスの発足当初は想定されていなかったと思います。民間に任せれば、子どもを放置してビデオ・ゲーム漬けの悪徳放デイが出る一方で、利用者目線で痒い所に手が届く新しいサービスが生まれたのだと思います。障害のない子には学童保育も塾も習い事も家庭収入の差はあれども選択が可能です。やっとその選択の可能性が障害のある子にも広がってきたのだと思います。公立だから良くて民間だから劣るというのは間違いだと思います。利用者ニーズにこたえる公正な競争は良いサービスを生み出していくと期待したいと思います。また、そこに働く人々の労働条件や賃金も向上するようにバランスの良い業界の成長を期待します。
地震対策
先日、新潟で震度6強の地震があり驚きました。東北地震は日中でしたが、真夜中や明け方が多い気もします。もしも日中放デイの時間帯に地震が起こったらどうするか避難計画を検討しています。この建物は軽量鉄骨製ですから、家屋が傾くことはあっても倒壊はしません。ただ周囲は木造家屋が多く夕食前などは火災が心配され、北側の家屋が火災を起こすと避難が必要かもしれません。
すてっぷの前は狭い市道ですが、もう一本南側は外環の府道が走り東側は171号国道ですので信号停電による大渋滞や渋滞から逃げる車が前の道をたくさん通行することが予想され徒歩による避難所=向陽高校(徒歩5分)への避難には注意が必要かもしれません。被災程度によって避難所で過ごすか火災などがなければここで過ごすのが妥当かの判断が必要になります。
電話が通じなくても最後までネットは通じるので、このホームページやSNSなどで被災状況を発信します。保護者の皆さんはホームページやツイッターのチェックをお願いします。(現在、ツイッターでの発信はしていませんが、重大地震が起これば #すてっぷ地震 で検索してください)
こうした児童福祉施設の災害」による非常事態の対策は、非常災害対策計画として厚生省令でガイドラインが示されていますので興味があればご覧ください。計画が確定したら保護者の皆さんにも配布したいと思います。
不注意や集中しにくいADHD症状の治療(緩和)薬について
ADHDやASDの子どもの中に、勉強に向かうのにとても時間がかかったり、机に向かってもすぐに集中できなくなって他のことに興味が行ったりする子どもがいます。本人がとても好きな事でも、少し細かな作業や集中を要する内容があるとすぐに疲れてしまい、大人に代わりに作業をして欲しがったり、興味のあることなのにあきらめてしまうケースがあります。周囲には、「辛抱ができない」とか「あきっぽい」とか思われてしまったり、本人も「自分は皆と同じようにできなくてだめだ」と思い込んでいます。こうした子どもには、何をどれくらいすべきか視覚的に示したり、周囲の環境を調整して気が散らないようにしてあげたり、本人が集中できる時間を計測して学習や作業は短時間で休息を入れたインターバル構成にしたり、いくつか他の内容をするように設定してあげたりします。しかし、それでも本人の気が散って本来の能力が発揮できない場合や、自尊感情を失って意欲がない場合などは、服薬の力を借りて取り組みやすくしてあげることが必要な場合も少なくありません。ここでは、著しく不注意や気が散って集中しにくい子どもへの服薬について正しい知識を持ってもらうために、いくつかの資料からまとめてみましたのでお読みください。
コンサータ
鎮静効果があり、多動傾向や衝動的な行動を軽減することが出来ます。この事により、学校生活や仕事に集中することができ、生活にメリハリをつけることが出来ます。効果が出るのも比較的早く、服用をはじめて1週間以内にその効果があらわれます。効果時間は服用後、10~12時間継続し、1日1回(朝)が基本となります。最も多かった副作用としては、食欲低下で、不眠、頭痛と続きますが、副作用の有無は子どもによって違います。
ストラテラ
コンサータと同様に集中力の向上や多動傾向や衝動的な行動を軽減することが期待出来ます。ストラテラは即効性はなく、服用開始から効果が出るまでは約2週間かかり、安定した効果が得られるまでには6~8週間程度必要となります。ストラテラの効果の持続時間は服用から24時間です。子どもの場合は1日2回(朝・夕)が推奨されています。内用液剤もあり、カプセル剤が飲みにくい子どもにも飲みやすい物となっています。副作用の強さとしてはコンサータよりも軽く、副作用が発症しても2、3日で治まります。
インチュニブ
インチュニブはコンサータやストラテラと違い、小児用(6~17歳)のADHD治療薬として開発されました。効果自体は、コンサータやストラテラと同様に多動性、不注意、衝動性の症状を和らげる効果があります。服用開始からインチュニブの効果が出るまで期間は1~2週間であり、効果の持続時間は24時間です。服用は1日1回です。副作用として多いのは傾眠(うとうとする)で、血圧低下、頭痛と続きます。
ビバンセカプセル
2019年3月26日に日本で承認された新しい薬ですが、覚醒剤原料の規制対象となっていますので管理が厳しい薬です。小児にはリスデキサンフェタミンメシル酸塩として30mgを1日朝1回服用します。副作用は食欲減退(79.1%)、不眠(45.3%)、体重減少(25.6%)、頭痛(18.0%)、悪心(11.0%)などが報告されています。
効き目も副作用も個人差があり、人によってはほとんど効果がないものもあります。服薬の目的は「日々の生活を不自由なく、落ち着いて暮らせるようになる」ということと、学習は分かれば達成感のあるものだと感じてもらうことです。精神科が扱う薬だから不安だという感情をお持ちの方もおられますが、いつまでも処方するものではありませんし、服薬している多くの子どもたちが楽に過ごせているのも事実です。薬で無理に子どもを落ち着かせるという認識ではなく、また、効果について過度の期待もしないというスタンスが大事です。生きやすくなる手助けをするための「いくつかの中の一つの手段」として服薬があるということを理解することが大切だと思います。もしも、不注意の診断や治療を考えたい方があれば近隣の医療機関もご紹介できますのでスタッフまでご連絡ください。
あさイチ「どう向き合う? 思春期の発達障害」
今日の朝のEテレで、あさイチ「どう向き合う? 思春期の発達障害」の放映がありました。思春期になると、周囲との違いを意識することで、生きづらさを感じることも多いですが、なかには発達障害が引き金になっていることもあり、周囲にはどんなことができるのか考える企画です。
ASD専門医の大御所でもある信州大学の本田秀夫先生の最初のお話は、発達障害は大人から見て変に見える事を基準に診断している面があるけど、大人からは見えていないけど、独特な感じ方や考え方をしている子ども達が思春期になってくると悩みが表面化するということでした。
通信制高校に通う女子は教室の明るさに疲れて授業が受けられなくなっていました。光過敏のASDの特性をよく知る専門の先生が、暗い部屋に導いて何故彼女が苦しくなったのか今後どういう配慮をすればいいのかを相談にのっている様子が流されました。人との煩雑な交流を配慮した通信制高校ではあったけど感覚の問題も見抜いてくれる助っ人がいるなんてすごいなぁと感心しました。
二つ目は、読み書き障害の書字障害のために字を書くと頭が混乱して勉強ができなくなるという中学男子の話です。彼の訴えを中学校が理解してくれてPCでのキーボード入力を認めて(?)くれ安心して教室で授業に向かえるようになったそうです。ただ、気になったのは、彼はわざわざ自分の書字障害をクラスにカミングアウト(障害を自分から公開する)してクラスメイトから許容(?)してもらったという下りは、なんで自分でカミングアウトしないとパソコン入力如きが教室でできないの?と思ってしまいました。この程度の合理的配慮は学校の責務だからです。同じように感じたゲストからは、オーストラリアでは、教室でのPC利用は生徒全員が利用できるという話や、入学の最初に学校から生徒と保護者に向かって違う学び方をする人もいるから理解してほしいと説明するのが当たり前なので、みんな違う学び方をする人に違和感はないと発言されました。本田先生もPC利用はメガネと同じことじゃないかと助言されました。
最も心に残ったのは、発達障害の人たちに一番必要なのは好きなことを心ゆくまで仲間と楽しめる趣味の場の保障だという映像です。興味のあること好きなことをとことんやれる居場所を保障している東京のNPOでは、アニメの教室やボードゲームの教室で活躍している発達障害の青年を取材していました。好きなことだから難しくても追求できる、得意なことだから人にも教えられる、そしてそのことで仲間から必要とされている自分に気づき自尊感情を高めていくことができるという映像です。このブログでもすてっぷが、PCプログラミングでもカードゲームでもeスポーツでも岩石集めでも遺跡ほりでもなんでもいいから好きなことを見つける場になれればいいと書き続けてきたので、この放映はとても心強く感じました。
教育支援委員会
この時期は特別支援学校の学校説明会やら各自治体の教育支援委員会が主催する就学相談会が始まっています。自分の子どもはどんな教育環境が適しているのだろうとお悩みの保護者の方もおられるかもしれません。そもそもこの教育支援委員会は昔「適正就学指導員会」といういかにも上から目線みたいな名前がついていました。「適正」とは誰が決め、誰が誰に何の権限があって「指導」するのでしょう。やがてこの名前は時代と共に就学支援委員会という名前になり、最近は教育支援委員会という名前に衣替えしています。
前年度の半年ほどの期間で学校や学級を決める話をするのでは相談にも支援にもならないというのが名前変更の理由みたいです。もっと前から相談利用者と相談担当者が子どもを真ん中に置いてどういう教育をすればいいのかというやり取りを続け、その経過として学校選択や学級選択があり、義務教育が終了するまで相談員や関係者が伴走するような理想的なイメージで文科省のHPには説明されています。ただ、この相談に係るのは教育委員会の担当者と就学前施設の園長だったり学校の校長や関係職員の兼務が殆どです。就学だけでなく特支級入級や特支校への転学や中学校のことまで扱うので(本当は特支級から通常級への戻りも検討することになっています)、その相談数は長岡京市や向日市クラスの自治体でも半端ではない数です。文科省の言うとおりに長期間に何度も相談をするとなれば他の業務が滞ると関係者は言います。
虐待問題で児童相談所の職員数が少なすぎるという事を以前掲載しましたが、相談者の人手不足は特別支援も同じです。相談と名はついていますが、相談担当者と保護者の意見が違う時には説得担当者になってしまうと言う声も聞かれます。相談担当者にすれば人的配置の権限は行政にありますから来年度の職員体制を想像しながらの相談になるので立場は複雑です。また、相談から決定に至る期間が短いようにも思います。本当に相談してよかったと利用者に思われるにはまずは相談担当者にも時間的余裕が必要です。そして、利用者である保護者が結論を保留しているときでも、教育の在籍場所で教育内容が決まるのではなく、どこにいても可能な限り必要な教育サービス(例えば専門的支援の人員)が行われる財政的な裏付けが必要です。
では相談利用者である保護者はどうすればいいでしょう。一昔前よりははるかにましになったとはいえ、まだまだ特別支援に関する理解もその財政的な規模も先進諸国と比べれば不十分ですし、居住する場所によって地域格差もあります。居住地域の教育サービス情報を親の会などから仕入れ、まずは信頼のできる診断の専門家と支援の専門家を助言者にして子どもの特性や支援についての正しい知識を得ていくことが大事ではないかと思います。放デイは学校の行き先の相談はできませんが、子どもの特性のことやその支援についてなら助言はできます。ご希望の方があればスタッフまでご連絡ください。
ディー君
https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20190625000325.html
(ひと)ディー君 タイでAIプログラミングの一日塾を始めた日本人少年
2019年6月25日05時00分 朝日新聞デジタル より
まだあどけなさが残る少年は、人工知能(AI)に話題が及ぶと目つきが変わる。「AIは怖いものではなく身近なもの」
バンコクで4月に始まった、AIを使うためのプログラミングを教える一日塾で、70代の高齢者も相手に手ほどきする「塾長」だ。
こだわりが強く、集団生活になじめない発達障害の自閉症スペクトラムと診断された。5年前、環境を変えようと家族で日本から移住。AIの活動では本名を使わず、自ら愛称「ディー」で通す。タイ語で「良い」という意味だ。
9歳のとき、父親を事故で亡くした。働き始めた母親の帰りを待つ退屈しのぎに、自宅マンションの共用パソコンで遊ぶようになった。我流で操作を覚え、画面が突然シャットダウンするイタズラができるまでに上達した。叱る住民はいなかった。「おおらかな環境が息子には合っているんだと思います」と母(55)は感謝する。
パソコン好きが高じ、2017年に、孫正義氏が設立した育英財団の奨学生に選ばれた。AI開発会社グリッドからもネットを通じて東京から技術支援を受け、プログラミングの課題に取り組む。
「10年以内に、世界の家庭でAIプログラミングをする時代が来る」と予言、自らの将来をこう描く。「塾の経験を生かし、タイのスラムの人々にAIの技術を出前したい」。その表情は大人びて見えた。
(文・写真 大津智義)
大陸文化は個人主義が基本。多様な文化を持ち合う人たちが共生するには大事な流儀とも言えます。日本の独特の同調圧力の中で暮らすのが苦手な特性の人には、大陸文化の中で自由にできることで才能を開花する人も少なくないようです。
場面緘黙
場面緘黙(かんもく)とは、家庭なら話せるが学校のような「特定の状況」では声を出して話すことができないことをいいます。「家ではおしゃべりで、家族とのコミュニケーションは全く問題ないのに、家族以外や学校で全く話せないことが続く」状態です。この症状のために、本来持っている様々な能力を、人前で十分に発揮することができにくくなります。人見知りや恥ずかしがりとの違いは、「そこで話せない症状が何か月、何年と長く続くこと」です。人によって症状(話せない場面・程度)にはかなり差があります。
場面緘黙は、育ての方の問題ではなく、「不安症や恐怖症の一種」と考えられるようになってきました。「自分が話すことに怖れを感じる」人として支援を行なうのが主流となっています。発症原因は、『不安になりやすい気質』などの生物学的要因があり、そこに複合的な要因が影響していると考えられています。脳が新しい刺激に敏感に反応する「行動抑制的な気質」を元々もつというケイガン(Kagan 1989米)の仮説が有力です。不安が高まりやすく、行動が慎重となるため、環境に慣れるのに時間がかかります。10~15%の子どもがこの気質を持ち“その傾向は生涯続く”といいます。
入園や入学、転居や転校時などの環境の変化により、不安が高まって発症することが多いようです。クラスでの先生からの叱責やいじめがきっかけとなることもあります。一旦話せないことが続くと、「自分が話し出すとみんながなんていうだろう」など、注目されるような気がして強いプレッシャーを感じます。話さないでいる方が不安レベルが下がるため、この症状が定着するのではないかと考えられています。
場面緘黙を「家庭環境のせい」と考えるのは誤解です。過去の研究では「虐待」や「トラウマ」に関連付けられてきましたが、ほとんどの子どもには関係ないことがわかりました。学校の先生は「親の過保護のせい」と考えがちですが、子どもが人前で話せなければ親が心配そうにするのは当たり前ですし、親も不安になりやすい繊細な気質をもつ場合が多いので理解が必要です。親も周囲から「過保護」「心配し過ぎ」と言われて傷つき孤立しがちです。子どもの一番の理解者になれるのは親と先生です。親と先生が協力しあうことで、子どもへの必要な支援が始められます。
「必要な支援」を行ったうえで「子どもの成長の伸びしろへの手出し(過保護)」を控えることが大切です。症状改善や二次的問題予防には、親や先生、友だちなど、周りの人たちの「場面緘黙への理解」が大きく影響します。場面緘黙は、お医者さんや学校の先生から「大人になったら自然と治る」と言われることが多いですが、場面緘黙には、早期発見と対応が大切です。場面緘黙の子どもは、おとなしい子どもが多く、園や学校で先生が困るような目立つ問題行動がないため、支援を受けにくく、見過ごされがちです。自然に改善したように見える事例でも、事後検証すると、偶然、環境が治療的な設定になっており、本人の努力で治癒したケースも多いようです。支援を受けずに成長すると、症状改善が遅れるだけでなく、うつや他の不安症状、不登校や人間不信などの二次的な問題が生じやすくなります。
場面緘黙の子どもは、自分でも自分がなぜ話せなくなるのかわかりません。それなのに、人から「なぜ話さないのか?」と問われます。周囲の理解やサポートがない幼稚園や学校生活は、緊張の連続です。腹痛や頭痛などの身体への影響、誤解や理不尽な扱いに、悲しみ、無力感、自責感、孤立感、自分への怒りが生じます。先生のサポートがなければ、いじめを受けるリスクも高くなります。話せないことから、社交スキルやコミュニケーション力の練習機会も狭まります。そのため、うつや他の不安症状、不登校や人間不信などの二次的な問題が生じやすくなります。
場面緘黙は、「専門家だけで治せる症状」ではありません。家庭と学校が協力して、まず「安心できる環境」を調整することが最も大切です。研究では、不安が低い場面からスモールステップでチャレンジを進め、活動参加、動作、発話ができる場面を増やしていく行動療法的アプローチが最も効果的とされています。この方法は、「自転車の練習」と似ています。自転車に乗るのを避けていては、自転車はうまくなりません。逆に、いきなりロードレースに参加しても怖い思いをするだけです。補助輪をつけたり、人に支えてもらったりしながら、少しずつ怖くなくなるようにします。米国では、極微量のSSRI(抗うつ薬)で不安をさげて、このようなスモールステップと組み合わせる方法がもっとも有効と言われています。
大事なことは、話さないことを責めないことや、不安が高すぎる場面で発話を強要しないことです。答えが返ってこなくても、あたたかく話しかけてあげてください。返事は返せなくても、とてもうれしいと感じているはずです。筆談が出来る場合は、書くコミュニケーションを促しましょう。よく考えてみれば、私たちも緊張して声が詰まったり、頭が真っ白になることがあります。そんな時に何を言われても落ち着くまでは状況は改善しないことも思い出すはずです。その傾向が強いか弱いかの違いです。だとすれば、どの子にも傾向濃淡の度合いは違うがそういうことがあるはずです。つまり、発達障害の特性の濃淡の傾向と同じだという事です。
発達段階とあそび
前回は、習い事型放課後等デイサービスのことを掲載しましたが、今回は年齢別のニーズを考えてみます。小学校の低学年は体験型で、遊びながら考えていく段階ですが、高学年になると思考型で、計画してから遊びをデザインするように変わっていきます。集中時間も格段に伸びてきます。同じことを半日ぶっ通しでも平気になってきます。中学生はさらに価値観を計画に取り込みながら「いけてる」「ださい」と判断して遊びをデザインしていきます。これはもう趣味といってもいいレベルです。
このように、年齢によって遊び方は変わっていきます。これは別に、年齢別でないと遊べないというのではなく、各年齢のニーズを満たす内容が遊びに必要だという事です。例えば構成(役割)遊びや製作(ものづくり)遊びなどは、それぞれのニーズを満たす内容が準備されています。
しかし、遊びきるとなると、それぞれのニーズを満たしていく段階別に用意された遊びがやはり必要です。となると、放デイのありかたも年齢別に内容が変わってくるはずです。年齢が増すにつれて、専門的な事、普段はできないことを子どもは求めるようになっていきますし、このニーズにこたえることができない放デイは子どもの心が離れていきます。放デイの内容をデザインすることは子どもの発達のニーズに合わせていくことといえるのかもしれません。
ただ、対人サービスである限り子どもの信頼を得るのは内容だけではなく内容に導くスタッフの人格であるのはどんなところでも変わりはありません。
みんなの学校
「大阪市立大空小学校。大阪市住吉区にある公立小学校。2012年度の児童数・約220人のうち、特別支援の対象となる数は30人を超えていたが(通常学級数6・特別支援学級7)、すべての子供たちが同じ教室で学ぶ。教職員は通常のルールに沿って加配されているが、地域の住民や学生のボランティアだけでなく、保護者らの支援も積極的に受け入れた「地域に開かれた学校」として、多くの大人たちで見守れる体制を作っている。学校の理念は「すべての子供の学習権を保障する学校をつくる」であり、不登校はゼロ。唯一のルールとして“自分がされていやなことは人にしない 言わない”という「たったひとつの約束」があり、子供たちはこの約束を破ると“やり直す”ために、やり直しの部屋(校長室)へとやってくる。テレビ版「みんなの学校」の放送後には全国各地から、支援を必要とする子どもたちが数多く、校区内へと引っ越している。」
これは映画「みんなの学校」ホームページの掲載文です。この放送を見たとき、大阪出身の人は昔こんなクラスに自分もいたと思い出す人は少なくないかもしれましません。差別をしない教育として大阪のあちこちでこの風景はみられました。でもこの映画の感じとは全然違うと感じた人は多いと思います。差別禁止という考え方が先に立ち、子どもや先生たちの言葉がきれいごとで本音じゃない感じがあったのです。この映画を見た多くの人が感動をします。こんな学校であってほしい、こんな校長先生であってほしい、こんな職員であってほしい、こんな子どもたちであってほしいと思うのです。それは本音で子どもも木村校長も話すからでしょう。きれいごとを言わずに、現実は現実として受け止めながら人としての在り方を観ている人に考えさせるからかもしれません。正しい答えはないけど、正しい答えを探す努力を惜しまないところに感動するのかもしれません。まだ観たことがない方は上映会スケジュールが出ていますのでご覧になってはどうでしょう。
強度行動障害
強度行動障害とは、自分の体を叩いたり食べられないものを口に入れる、危険につながる飛び出しなど本人の健康を損ねる行動、他人を叩いたり物を壊す、大泣きが何時間も続くなど周囲の人のくらしに影響を及ぼす行動が、著しく高い頻度で起こるため、特別に配慮された支援が必要になっている状態のことを言います。
この定義に加えて、「家庭で通常の育て方をし、かなりの養育努力があっても著しい困難が持続している状態」という但し書きも付されています。つまり、精神医学的な診断(例:精神遅滞、自閉症、統合失調症)とは別に、さまざまな養育上の努力はしていても、行動面の問題が継続している状態に対して付けられる呼称が「強度行動障害」であるということです。
下に厚労省が示した障害支援区分に基づく行動援護の判定基準表があります。合計10点以上が行動援護の対象となる要件の1つとなります。
行動援護の対象が強度行動障害というわけではありませんが、強度行動障害と普通の行動障害に質的な境界線はないといった方が正しいと思います。強度と表現しているのは支援側の理由からです。自傷や他害、飛出や奇声は、またはその前駆症状と認められるような指示待ち等は、その程度に関わらず必ず同じ原因があります。少々の行動障害だから見過ごすというのは、困っている姿を見過ごすのと同じだと思うのです。
下記リンクの「強度行動障害支援者養成研修【基礎研修】」のテキストは支援者用に国立のぞみ園が作成したものです。今回は、このテキストに沿いながら、何故行動障害になるのかどんな支援が行動障害の予防につながるのか、連続シリーズで考えたいと思います。
http://www.nozomi.go.jp/investigation/pdf/report/04/05.pdf