みんなちがってみんないい
児童養護施設
児童福祉施設に入所する理由のNo.1は「虐待」です。児童養護施設に入所している子の約6割が、虐待を受けたことがあると答えています。また、障害などのある児童も近年増加していて、平成25年では28.5%の児童が障害ありとなっています。もし何らかの事情により児童養護施設に子供を預けたいと思ったときは、お近くの児童養護施設、もしくは児童相談所、民生委員・児童委員、福祉事務所、保健所、市町村保健センターへご連絡ください。秘密を守りながら、相談を受けることができます。
まずは各都道府県が運営している「児童相談所」や市町村の「福祉課」に連絡をすることが必要です。専門の職員が相談内容を聞いて、心理的検査や医師の診断・家庭環境の調査などを行います。その結果に応じて生活指導をし、必要と判断したら児童養護施設に入所という流れです。
入所理由で一番割合が多いのが虐待で、「父または母の虐待・酷使」が18.1%です。それに次いで多いのが「父または母の放任・怠惰」、つまりご飯を作らなかったり子供に無関心で世話をしないネグレクト(育児放棄)で14.7%です。特にネグレクトは、父1.8%なのに対して母12.9%と、母の方が割合が多いことが表からわかります。特に虐待を受ける児童の数については、近年急激に増加しています。児童相談所に報告される児童虐待の数は、1990年から2010年の20年で50倍以上に拡大しています。児童虐待の背景には、母親の育児ストレスが挙げられます。実際、虐待行為の6割は実の母親によって行われているというデータがあります。つまり、母親だけの理由で言えば1位ネグレクト、2位精神疾患となります。この母子への社会的セフティーネットが日本は大変弱いといます。
近年社会情勢が大きく変化しているのに、未だに母親が育児の大半を担うのが日本の社会です。自己責任論で育児の責任全部を背負ってストレスを溜め、その矛先が子供に向いてしまうこともあるのでしょう。虐待の場合は通報等により発覚し、親の意思に関係なく養護施設に預けられることが多いのですが「今のままでは虐待をしてしまう!」と苦しんでいる親が福祉施設に相談をし、一時的に児童養護施設に預けるといったケースもあります。
精神疾患は全体の12.3%です。育児ストレスやその他の原因により、親が精神疾患になり治療をしながら子を預ける方もいます。子供が病気になったら休むのも、PTA会議に出るのも母親が未だに多いので、ママ友づきあいや仕事のストレスで精神を病んでしまい、子供を施設に預ける判断をする親御さんもいます。こちらも母親が精神疾患になってしまった例が父親よりも多く、父0.6%に対して母は11.7%です。ひとり親ではない場合、父親が精神を病んでも傷病手当等を利用し、母親が仕事と育児を担当することができますが、父親が仕事をしながら育児家事をすることが社会的にまだ難しいです。
仕事や入院などで、物理的に子供と離れなければならなくなった場合も、児童養護施設の入所対象となります。仕事や入院の他には父や母が警察に捕まった(拘禁)などの理由で、養護施設に預けられるパターンもあります。経済的に子供を養育できないというのも、養護施設に子供を預ける理由の一つです。
これらの一番の問題は、障害のある子もない子も一時預かりを含めて入所できる余裕がほとんどないことです。これは虐待が増えだしてからというより、慢性的にキャパが少ないのです。特に障害のある子は児童相談所では人手の問題で預かれない事が多いので児童養護施設に一時保護になるケースがほとんどですが、私の知る限り簡単に2カ月までの一時保護が実現したケースは見たことがありません。行政も児相も他にもケースがあるからと言う理由をつけて、速やか(訴えから1週間以内)に措置されたケースを見たことがありません。お任せされる施設にしてみれば空きのスタッフをいつも複数名用意するには財政負担があるので、できるだけ絞り込んで経営しようとしますから無理もないのです。財政的制度の面から見直さないとこの問題は解決できません。障害者をできるだけ地域に戻すというインクルージョンの流れから入所施設への資金の流れがさらに弱くなったことも原因の一つかもしれません。