みんなちがってみんないい
「強度行動障害」医療が果たすべき役割
家族や施設では支えきれず…「強度行動障害」医療が果たすべき役割は
2020/10/1 19:00【西日本新聞】
自傷行為や身近な人への他害なども見られる強度行動障害。家族や施設だけでは支えきれず、長期間、精神科病院に入院する人も少なくない。「医療」はどんな役割を果たすべきなのか-。治療や支援に詳しい国立病院機構・肥前精神医療センター(佐賀県)療育指導科長の會田(あいた)千重さんが福岡市内で講演。病院側も地域生活への移行を見据え、「普段から福祉や教育など関係機関と連携を密にし、暮らし全体を支えていく意識が大切だ」と訴えた。
「医師が1人でできることは限られている」。同センターで約15年、強度行動障害の患者の治療や研究に携わってきた會田さんは、冒頭からそう指摘した。行動障害が表れるのはもともと自閉症や知的障害の人が多く、その特性や周囲の環境のミスマッチが原因とされる。治療にも、表面上に表れた行動を分析し、検証しながら当たる必要があることから「患者の24時間の生活に接する多職種の力が欠かせない」と言う。
家族などの安全網
全国で強度行動障害のある人は療育手帳交付者の1%程度とされ、行動障害関連の福祉サービス利用者を含めると5万人を超える。多くは自宅で通所施設などを利用しながら暮らしたり、障害者施設に入所したりしている半面、地域の精神科病院や、国立病院機構など専門の医療機関で入院している患者もいる。
行動障害そのものを軽減する治療だけでなく「自傷行為による失明や、キーホルダーなどを飲み込んで開腹手術が必要になるなど、病院が関わらないと命を落としかねない例も少なくない」(會田さん)ためだ。福祉での短期入所が難しい場合は、同居する家族や施設職員の一時的な休息のための短期入院も受け入れており、医療が「在宅や福祉での対応が難しい人々のセーフティーネットの機能」を果たしていることは間違いない。
薬物療法から脱却
ただ精神科病院では、特に状況が切迫しているような場合など、行動障害を薬で鎮静化する薬物療法が一般的。「薬を使いすぎれば、消化管の動きやのみ込みが悪くなるなど副作用も心配される」。個室や保護室などで24時間、行動を制限する対応も珍しくない。このため會田さんが強調したのは、問題行動に至る前後の様子をよく観察し、本人が落ち着きやすいよう部屋などの環境を整え、写真や絵のカードを用いて意思疎通する-など、福祉施設などで実践されている支援を医療に取り入れる「非薬物療法」の重要性だ。
同センターには看護師だけでなく、保育士や心理士、児童指導員など多様なスタッフが所属。入院患者には一日の生活スケジュールに合わせて治療や薬の調整を行い、徐々に個室から出て、小グループでの活動など行動の場を広げていくようにしている。いずれも患者が「自宅や施設に帰ったときのギャップ」を回避し、スムーズに地域生活に移行できるようにする狙いがある。「地域の精神科病院でも、個室でその人が好きな音楽や絵本を提供するなど行動拡大を促す取り組みは可能では」(會田さん)
院内にヘルパーも
理想の支援のあり方として會田さんが思い描くのは、医療が「セーフティーネットの最終手段」ではなく、本人や家族を中心に福祉施設や相談支援事業所、行政、学校などがつながるネットワークの輪に「医療機関も当初から関わる」姿。外出時にヘルパーが付き添う行動援護など、福祉サービスの入院中の利用も病院が積極的に認める▽本人が得意な意思疎通方法など個別の情報を学校が提供し、関係機関で共有、統一する-などしてそれぞれが多様なサービスを行えば「地域に帰ったときの生活保障」につながるからだ。
しかし現状では医療と福祉の間でさえ分断しがちで「連携していても、一病院と一事業所がお互い何とかしようと無理を重ねる例が多く、限界が出てくる」。どうすれば関係機関が手を携えていけるのだろう。現在は入院患者が行動援護を利用している同センターでも、当初、看護師からは「抵抗」があった。「本人はヘルパーとの外出を楽しみに出掛け、機嫌良く帰ってくる。そんな効果を実感すると、今後も(福祉サービスを)入れましょう、と変わっていった」という。
大事なのは「患者が地域に帰った姿を想像しながら、支援者同士も、お互いを知っていく」こと。それが支援の地域格差の解消にもつながっていくと、會田さんはみている。(編集委員・三宅大介)
【ワードBOX】肥前精神医療センター(佐賀県吉野ケ里町)
1945年に「国立肥前療養所」として開設された精神神経疾患の基幹医療施設。計564床のうち、全国の国立病院機構でも数少ない「療養介護・医療型障害児入所支援病棟」(計100床)で、重い知的障害や自閉症などの発達障害があり、強度行動障害を伴う患者の治療や療育を行っている。
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機能的コミュニケーションが確立していない子どもの場合は、思春期から大人と子どもの力の逆転が起こり、行動障害が激しくなることがあります。行動の問題は小さい時と同じなのですが、力が強くなるので家族や事業所では耐えきれないようになってきます。そんな時に、入所施設や入院施設を頼るしかない場合があります。ただ、どこも何人も同じ境遇の方が空ベットを待っていますので、簡単には入所も入院もできません。
また、入所や入院をして落ちついたからと帰宅すると、行動障害のリバウンドのような現象や、当事者のいない生活に家族が慣れてしまい、入所・入院前より家族の養育力が落ちてしまうことがあり、なかなか地域に戻れないことがあります。
従って、医療や入所施設は最後の砦と考えるのではなく、日常的に幼少から利用して関係者が当事者情報を共有しておくことがとても大事です。家族がちょっと疲れたらレスパイト的な利用もしていくと、お互いの対応の違いにも気づきますし、当事者も慣れたところ安心できるところを増やしていくことになります。そういう意味で、精神科医療も関与したグループホームなどの設置がもっともっと地域に必要です。
行動障害の多くの原因は機能的コミュニケーションの不全から生じるものですが、それだけでは説明できない気分変動や感覚の問題などがあり、記事にあるような「非薬物療法」だけではうまくいかない方も少なくありません。記事の真意は服薬だけに依存しないで、当事者の特性に合わせた実践が必要だと言いたいのだと思います。服薬にも頼りながら表出コミュニケーションの力を伸ばしていく取組が求められるのだと思います。
代筆・代読
視覚障害者高いニーズ代筆・代読「支援充実を」先進自治体、ボランティア養成し派遣
2020年10月1日 07時19分【東京新聞】
視覚障害者の代わりに、郵便物を読んだり、書類に必要事項を記入したりする「代筆・代読」。日常生活に必要な支援で、市町村が家事援助などの障害福祉サービスとして行っているが、十分に知られていない。代筆・代読の訓練を受けた人を有料ボランティアとして派遣する自治体もあるが、まだ少数で、関係者は支援体制の充実を訴える。(長田真由美)
「飲み物のメニューもありますが、全部読み上げましょうか」
八月上旬、名古屋市であった、視覚障害者の代筆・代読をする支援員の養成講習。受講生のうち、支援員役の女性(49)が障害者役の女性(47)に食事のメニューを読み上げた後、尋ねた。視覚障害者役の女性は「全部読んでもらっても覚え切れなさそう。冷たい飲み物は?」と質問。支援員役の女性は希望をていねいに聞きながら、やりとりした。
講習は、視覚障害者の支援に取り組む社会福祉法人「名古屋ライトハウス」が同市の委託を受け、七月から実施。ライトハウスの相談員で、講師を務めた藤下直美さん(46)は「一語一句正確に話す音訳とは違い、代読は相手への伝え方が重要」。例えば、メニューを上から全部読み上げると、情報量が多い場合は、聞き手も覚えきれない。まず大まかなイメージを伝えたり、好みを聞いたりと、利用者が望む情報を伝える必要があるという。
一方、代筆は支援員が障害者の思いを推測するなどして自分の意思を持ち込まないのが原則。障害者の意思をしっかり聞き取り、誰が見ても読める字で書き、下書きをすることもある。同市は今年から、「意思疎通支援事業」として視覚障害者向けの代筆・代読に特化した支援を開始。二日間の講習を受けた人を支援員として登録し、十月以降、希望者のもとに有料ボランティアとして派遣する。希望者は無料で、一カ月上限十時間まで、市内の自宅や外出先などで利用できる。ボランティアの報酬は一時間千五百円で、市が負担。支援員はこれまでに一般の主婦や会社員、ヘルパーなど四十~八十代の三十一人が登録している。
代筆・代読の支援は従来、市町村が行う障害福祉サービスのうち、外出時に同行する「同行援護」と、調理や掃除など家事援助をする「居宅介護」の中で行われている。ただ、藤下さんによると、同行援護の支援は同行中に限られ、居宅介護も、優先度が高い掃除や食事などに時間が取られることが多い。また、家族に頼もうとしても書類が多くて気兼ねしたり、家族が不在だったりすることも。藤下さんも全盲で、今は夫に代読を依頼。一人暮らしの頃は、職場の同僚に自宅に届いた郵便物や書類を読んでもらったこともあった。「個人的な手紙など、友人や家族に読んでもらうのはちょっと…という時に気軽に利用できるサービスが今までなかった」と意思疎通支援事業に期待する。
同事業は一三年に施行された障害者総合支援法に基づき、市町村が実施。ただ、任意のため、導入している自治体は少ない。日本視覚障害者団体連合(日視連)による一八年度の調査では、回答した全国千百三十四市区町村のうち、同事業の枠で代読・代筆の支援を行うのは十四自治体にとどまる。一方、千葉県我孫子市は〇九年から市独自で代筆・代読のヘルパーを派遣する事業を実施するなど、先進的な自治体もある。
日視連が視覚障害者に行った調査では、回答した約四百八十人のうち、全盲の人の九割、弱視の人は八割が「読み書きに困る」と回答。一方、障害福祉サービスで代筆・代読などの読み書きを支援する公的な制度があることは、四分の一が「知らない」と答えた。日視連の担当者は「支援のニーズは多い。将来的には全国の成功事例をまとめ、モデルとして紹介したい」としている。
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昔は長屋の熊さん八っつあんが字が読めないので、大家のご隠居さんに読んでもらおうと文書を持っていきます。「何々・・・」とご隠居さんが読み始めてお話が始まるというのが長屋落語のパターンです。識字率が低かった昔、代読代筆は日常茶飯でした。視覚障害の人も読み書き障害の人も、御隠居さんや旦那衆に気兼ねなく代読代筆をお願いしていたのかもしれません。
今の時代も、読み書きの困難は視覚障害者だけではありません。字が流暢に読めなかったり書けなかったり、意味がつかみにくかったり、作文ができなかったりするのは、視覚機能だけでなく手の運動機能の障害、音韻意識の問題や知的障害など様々な原因で顕在化します。長屋のご隠居さんがいない今、視覚障害者用のサービスだけでなく、ICT支援も導入し、障害のあるなしに関係なく、障害の軽重に関係なく、代読・代筆サービスがどんどん広がればいいなぁと思います。
コロナ下の運動会
長さ2mのバトン、掛け声は紙で、競技はテレビ中継…コロナ下の運動会
2020/09/27 18:50【毎日新聞】
新型コロナウイルスの影響で、学校の運動会も中止が春以降相次ぐなか、秋からは感染拡大防止と競技の多様性を両立させながら開催する動きが出てきている。
相模原市中央区の市立田名北小では27日、ウレタン製の棒にビニールを巻いた長さ2メートルの「ロングバトン」でソーシャルディスタンスを保って行うリレーや、かけ声を発さずに紙に書いて掲げながら踊るソーラン節など、工夫を凝らした12のプログラムが催された。
午前中の開催で、保護者の観覧は1家庭2人までに限定。校庭にいる児童と保護者を2学年ごとに入れ替え、待機している児童は教室でテレビ中継を見て応援した。
5年生の小菅優香さん(11)は「大きなバトンのリレーでは距離を保つことを意識できた。運動会が開かれるかどうか不安だったけど楽しい思い出になった」と喜んだ。【滝川大貴】
運動会でソーシャルディスタンスを意識した長さ2メートルのバトンを使うリレーに臨む児童たち=相模原市中央区の市立田名北小で2020年9月27日午前11時11分、滝川大貴撮影(毎日新聞)
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中止、規模縮小…コロナで変わる運動会・体育祭
2020.9.29 11:00【産経新聞】
新型コロナウイルスの影響で多くの学校行事に影響が出るなか、運動会や体育祭も様変わりしている。中止とする学校が多く、開催する場合も来場者を制限したり、種目を減らしたりして規模を縮小している。落下事故などの危険性が指摘されてきた組み体操は、感染拡大につながる接触が多いとして行わない学校が増えそうだ。(木ノ下めぐみ)
6年生だけで
大阪府東大阪市の市立英田(あかだ)南小は1~5年生の運動会は実施せず、10月30日に6年生89人だけで行う。全学年での実施も検討したが、近隣には全面中止を決めた小学校もあり、参加者が多ければ感染症リスクも高まると判断した。
例年、6年生の花形種目となっている騎馬戦は、接触を防ぐため中止に。比較的子供同士の距離がとりやすい大玉転がしや棒引きなどの種目を中心に構成する。それでも狩元(かりもと)渚さん(12)は「騎馬戦ができないのは残念だけど、誰のせいでもない。今できることを全力で楽しむ」。植田修史さん(12)も「下級生の応援がないのは寂しい。でも運動会をとても楽しみにしていたので、中止にならなくてうれしい」と練習に励む。
6年生は修学旅行が中止となり、日帰りの校外学習に変更された。池田ゆり校長は「6年生に『コロナのせいで何もできなかった』と思わせたくない。一つでも多くの思い出を作りたい」と話す。
代替イベント検討
体育祭や運動会は春に予定していた学校もあったが、臨時休校の影響で中止を余儀なくされたところも多い。同府教育庁の調査では、府内の公立高校の約半数の74校が今年度の体育祭や運動会の中止を決めた。担当者は「体育祭は当日だけではなく、準備期間がかなり必要。授業日数の確保やコロナ対策など難しい部分もある」とする。
毎年5月に京セラドーム大阪(大阪市)で開いている体育祭を中止とした奈良県の私立西大和学園中学・高校は現在、代替のスポーツイベントを検討中だ。同校は「ドームで一丸となって競技を行うことは何ものにも替えがたい経験だが、中止はやむを得なかった」と振り返る。
バトン消毒、騎馬戦せず
体育祭や運動会を開催する場合も、各校は感染予防に細心の注意を払う。同府立岸和田高校(同府岸和田市)は29日、体育祭を開催したが、保護者ら来場者を入れず、生徒だけとした。競技も、リレーはレースごとにバトンを消毒。玉入れはマスクを着けたままで、球を投げる位置も決めて接触を減らした。また、騎馬戦などの種目は取りやめ、全体の時間を1時間半短縮した。
同庁がまとめた感染症対策マニュアルでは、体育祭や運動会については密集する競技を見直すよう求めている。このため、練習や本番で骨折などの事故が相次いでいて近年問題となった組み体操も、もともと実施しない学校が増えていたところに子供同士が接触することを考慮し、見送る学校が増えそうだ。
同庁の担当者は「具体的な種目名を挙げてやめるように通知したわけではないが、身体接触が多い組み体操は感染防止策を取りにくい。今年は中止を決める学校が多いのではないか」と話している。
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とうとう漫画のような競技が出てきました。そもそも戸外の空気感染はなく、物を触った手は洗えば良かったのだし、リレーをする状態にある子どもが感染者である危険性は限りなくゼロに近いです。
おそらく、企画している教員もこれで予防ができるなどとは思ってもいないのでしょうが、クレーマーへの先手を打っているのだと思います。もしも感染者が出ても、予防の努力はしたのだというアリバイ作りです。こうなるのは学校のせいではないです。メディアの煽りや感染バッシングを予防する意味でも、速やかに感染症2類相当を5類相当に修正してもらいたいものです。
睡眠障害…初の治療薬
発達障害の子に多い睡眠障害…初の治療薬寝付き改善
2020年9月26日【読売新聞】
寝付きが悪い、何度も目覚めてしまうなどの不眠は子どもにも起こり、情緒の安定や体の成長などに悪影響を及ぼす。特に発達障害の子どもに多く、問題行動の増加が懸念される。この夏、発達障害の子ども向けに、眠りにつきやすくなる国内初の治療薬が登場した。(野村昌玄)
鍵握るホルモン
睡眠には、脳や体が休んでいる「ノンレム睡眠」と、脳の一部が起きている「レム睡眠」がある。ノンレム睡眠中は、成長ホルモンが分泌される。このホルモンは、骨や筋肉の成長を促し、体の疲労を回復させる働きがある。
眠くなるのは、脳にある松果体から分泌されるホルモン・メラトニンが関わっている。夜に暗くなると眠りを誘い、日中は目覚めて活動的になるといったリズムを作る働きを持つ。ただ、夜更かしや寝坊などで生活リズムが乱れると、メラトニンの分泌が鈍り、夜の寝付きが悪くなる「入眠困難」や、寝ている途中に何度も目が覚めてしまうなどの睡眠障害が起こりやすい。
人との交流や意思疎通が苦手な自閉症スペクトラム障害や注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害などの「発達障害」を抱える子どもは、睡眠障害の割合が高い。睡眠不足の影響を受けやすく、発達障害の症状が悪化しやすい。多動や興奮症状などが目立つようになり、問題行動の頻度が増える恐れがある。学校生活にも支障が出て、不登校につながることもある。
そこで、発達障害の子どもの睡眠障害の治療薬として、メラトニンを主成分とする「メラトベル」が公的医療保険で認められた。今年6月から医療現場で処方されるようになった。メラトニンは、欧米では睡眠薬やサプリメントがある。日本では従来、医薬品として承認されておらず、個人輸入などの方法で使われてきた。
睡眠障害を抱える発達障害の6~15歳の子ども99人を対象にしたメラトベルの治験では、服用から約半年間で眠りにつくまでの時間が27・5分~31・5分短くなった。昼間に強い眠気を催したり、頭痛が起きたりするケースがあったが、死亡などの重い副作用は確認されなかった。
小2からADHDの治療を続ける東京都内の小3男児(8)は、眠りの問題も抱えていた。深夜まで寝付けず、眠っても1時間に1回は起きてしまう。睡眠不足のストレスで学校での問題行動も増えるなど、悪循環の状態に陥っていた。男児は、7月上旬から、メラトベルで治療を始めた。1~2週間で寝付きが良くなった。毎晩服用から1時間半後の午後9時半には眠り、朝7時過ぎには起きられるようになった。母親(34)は「学校での態度も落ち着き、ありがたい」と喜ぶ。
生活習慣が重要
睡眠障害の治療には、生活リズムを整えることも欠かせない。朝日の光を浴びる、朝食をとる、昼間に体を動かす、といった生活習慣の改善も併せて進める。男児が通院する瀬川記念小児神経学クリニック(東京都千代田区)理事長の星野恭子さんは「睡眠障害の治療で、薬は補助的なものです。自然な眠りには生活習慣の見直しも重要です」と話す。
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子どものころから寝つきが悪かったですが、さすがにもう慣れました。眠ろうとすると苦しくなるので寝ないことを選択すると少しは眠れます。あとは、レタスを食べることです。レタスには催眠効果があるそうです。でも、この夏は、一玉が薬を買うより高価な買い物になるので諦めました。
メラトニンが睡眠障害に有効なことは昔からわかっていました。日本の薬事行政は、あれこれ理由をつけてなかなか認めようとしません。武漢風邪の早期治療薬としてアビガンの承認も5月にはと言いながらもうすぐ10月です。早期に使うなら町医者で使えるようにしなければ意味がないのに、大学病院のような倫理委員会のある病院でしか使えていません。
薬にだけ頼るのは間違ってはいますが、それをコントロールするのは医師と当事者や家族であって、お役所ではないはずです。治療の存在すら知らずに、自分はみんなと違うと自分を責めて、人知れず苦しんでいるいる人もいます。
また、他の人はこんなにクリアに見えているという眼鏡体験が目の悪さを当事者に気づかせるように、服薬して、自分以外の人はこんなに簡単に眠れているという実感が、眠れない自分の困難を気付かせる場合もあります。自分の身体に向き合う習慣がそこから生まれ、生活を見直すきっかけを作ることもあるのです。そのためには、なぜ服薬するのか理解できるように話す必要があるのはいうまでもありません。
発達障害に優しい日用品
ノートやTシャツ、発達障害に優しい日用品登場
2020/9/25 10:51【日本経済新聞電子版】
白地を避けて装飾を排したノート、着替えが苦手な子どものためのTシャツなど、発達障害者が使いやすい製品が相次いで登場している。当事者の声から生活の中でのストレス、違和感に注目し、色彩や設計に工夫を凝らしているのが特徴だ。支援団体は「発達障害者に優しい商品が普及すれば暮らしやすい社会になる」と期待を寄せる。(三浦日向)
薄紫色の紙にグレーの網掛けが1行おきに配置され、日付やページ番号を書く欄もない――。紙製品メーカーの大栗紙工(大阪市生野区)が開発したノート「mahora(まほら)」は通常と異なる変わった色合いや装いが特徴だ。
「発達障害者は普通のノートを使いづらく感じている」。大栗康英社長が取締役を務める妻から聞いた一言が開発のきっかけだった。同社は大手文具メーカーの大学ノートを製造。使い勝手について発達障害者100人から意見を聞いたところ、「ノートの白色がまぶしい」「日付やページの数字などの装飾は気が散る」といった違和感が次々と寄せられた。
紙の色合いや線の配置、行の幅を1ミリ単位で調整するなどし、今年2月にインターネットを通じてノートの販売を開始。3千冊が売り切れ、増産分の8千冊も既に半分が売れた。8月から全国の雑貨店や文具店でも展開している。大栗社長は「ノートを使いづらいと思っている当事者の方の悩みが予想以上に大きかった。驚いた」と話す。
発達障害のある家族との生活をヒントに商品を開発したケースもある。
和歌山市の前田香さん(36)は発達障害の長男(10)が着替えに苦労する様子を目の当たりにしてきた。場所の把握がうまくいかず袖から頭を通してしまうなど一人で着替えることが難しく、これらの問題を解決する発達障害の子ども向けの衣服の開発に乗り出した。
前田さんが工夫したのは「どう着ても正解になる」設計だ。ロゴを表裏で同一にし、タグを付けず縫い目を目立たなくして表裏と前後に関係なく着ることのできる「オールフロントT」を開発。裾に手のひら型のプリントを施し、着るときにつかんで利用してもらう「タッチdeきるんT」も作製した。
クラウドファンディングで資金を集めて4月からサイト「fukufuku312」で販売する。「一人で着脱できるようになってありがたい」といった声が寄せられたといい、前田さんは「発達障害者だけでなく認知症や視覚障害の方にも役立つのでは」とみる。
相次ぐ商品開発の背景には、発達障害の認知度が高まってきたことがある。日本では1980年代ごろから医療と教育の分野で発達障害の研究が本格的に進んだ。2005年4月に発達障害者支援法が施行し、発達障害のある子どもへの支援を制度化した。近年は発達障害を抱える大人の存在も知られるようになり、当事者であることを公表する著名人が出ている。
発達障害の当事者で「mahora」の開発に協力した支援団体代表の元村祐子さん(50)は「発達障害者が使いやすい商品はすべての人にとって使いやすい。日常生活の違和感を解消する商品が普及すれば様々な立場の人が暮らしやすい社会になる」と強調する。
■診断は48万人、特性の個人差大きく
厚生労働省によると、発達障害者は脳の一部機能の障害により、行動や言語表現、社会的関係を築く上で困難を抱える。
自閉症やアスペルガー症候群などの自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、限局性学習症(学習障害、SLD)などがある。聴覚などの感覚が敏感、集中力の低下、こだわりが強い、読み書き計算が難しいなど、特性は多様で個人差も大きい。
2018年に厚労省が公表した調査によると、医師から発達障害と診断された人は推計で約48万1千人。12年の文部科学省の調査では、公立小中学校の通常学級でも6.5%の児童や生徒に発達障害の可能性があるとの推計がある。
京都教育大の小谷裕実教授(特別支援教育)は発達障害のある子どもの学習について「一人ひとりで得意不得意が異なり、必要な支援も多岐にわたる」と指摘。「当事者自身が不得意なことや必要な手助けを周囲に発信できるようにし、学習面の選択肢を増やしていくことが望ましい」と話している。
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ノート地の色と読み書きについての科学的な関連性は知りませんが、米国での読字障害と網膜細胞の研究があります。透明な青いカラーシートを紙面に被せると80%、読字能力が上がることが報告されています。原因は解明されていませんが、光の中の赤の光がマグナ細胞に拡散することが細胞の処理速度を落としており、青のフィルターが赤の光を取り除くことで、マグナ細胞を正常に機能させるのではと推定されているそうです。
表裏と前後に関係なく着ることのできる「オールフロントT」は、コロンブスの卵的発想で驚きました。ユニバーサルデザインもここまで行けばすごいです。まずは自分だけの力で着衣できれば自尊感情は100倍高まります。「また反対着ている。また裏側着てる」と着るたびにやり直しをしている子どもには朗報です。
着脱時につかむ場所をわかりやすく工夫した「タッチdeきるんT」をもつ前田香さん
障害者差別解消に証明のデジタル化を
障害者差別解消条例10月施行横藤田教授に聞く
2020年9月23日 10時00分【朝日新聞デジタル】
障害を理由とした差別のないまちに――。そんな理念を掲げ、市の相談体制なども定めた広島市障害者差別解消条例が10月1日、施行される。条例案を検討した協議会で会長を務めた、障害当事者の横藤田誠・広島大大学院教授に条例の意義について尋ねた。(宮崎園子)
障害を理由とした差別を禁じ、できる限りの配慮を国や自治体に義務づけた「障害者差別解消法」の施行から4年。その実効性を高めようと、広島市は今年3月、条例を制定した。
条例を機に、障害者自身の意識が変わることも必要だと思います。というのも生まれてからずっと差別されてきて、差別を特別におかしいと思わない障害者もいる。私は生まれつきの障害者ではないけど、できないことから始まっているから「できない」ことについて周りの健康な人が思うほど大変じゃないんです。
だから、障害者差別を禁止し、障害者の社会参加を権利として認めた米国の法律(ADA法、1990年制定)で「合理的配慮」の考えを知ったとき、びっくりしました。「これって差別なん?おれ、毎日こんな感じじゃん」と。
合理的配慮とは、社会のバリアーを取り除くために何らかの対応が必要と障害者が表明した場合、過度な負担にならない範囲で対応すること。障害者差別解消法は国や自治体に合理的配慮を義務づけたが、事業者に対しては努力目標とした。
私が本屋に行き、好きなミステリー小説が2階にあるとき、階段に物が置いてあって手すりをつかめず、上がれない。こんなとき、「障害者のことを考えていない」と腹が立つわけじゃなく、「ああ上がれんのう」って何も買わずに帰る。でも、商品を持って下りてくれたら絶対に買う。だから、合理的配慮はウィンウィンなんです。今まで客じゃなかった人が客になるわけだから。
差別解消法には、今は大して影響がなくても、長期的には日本の障害者施策を変える大きな意味がある。社会に障害者の平等・差別というものの新しい概念を訴える、それ自体に意味がある。
2016年の法施行を受け、広島市は協議会を設置。相談事例を共有するなどして、市条例案の骨格を議論した。横藤田さんは、協議会の会長を務めた。
初めて協議会に参加したとき、障害者がほぼいないことに驚きました。市は何回も障害者団体と意見交換の機会を持ち、委員の皆さんも障害者の立場を踏まえて議論してくれましたが、今後はもっと当事者の参加する場で行われることを期待します。
相談や紛争処理についてはある程度、専門家や障害当事者が入り、市の対応が問題になった場合でも忖度(そんたく)せずにちゃんとできる体制かどうかが重要。条例施行時にある程度しっかりした体制を用意し、市民や当事者の声を踏まえてよりよく改善されることを望みます。
10月施行の条例は、付則で「社会環境の変化等を勘案し、必要があると認めるときは、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」と定める。
残念ながら世の中から差別はなくならない。でも差別することが恥ずかしい社会にはできる。一定数以上の人が、差別に反対するとか違和感を持つような社会が僕の目標。一歩でも前進したらいいと思います。
車いすユーザーはわかりやすくて世間の人が気づきやすいけど、精神障害者に対して何が合理的配慮か、具体的なことは分かりません。それは本人に聞く必要があります。その辺の違いを無視してはいけません。
障害がある人、ない人、いろんな事情を抱えた人がいる。それが多様性だと少しでも思いを致すきっかけになればと思います。
◇
よこふじた・まこと1956年、福山市生まれ。生後7カ月でポリオ(小児まひ)となり、両足に障害がある。中学まで養護学校(現在の特別支援学校)で学び、県立府中高、広島大を卒業。広島国際大学医療福祉学部教授を経て2006年に広島大へ。広大大学院人間社会科学研究科教授。
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差別を解消してほしいと思うのは、障害者手帳です。顔写真と氏名年齢住所の表記と、ICチップに公共交通割引やら受給者証やらと紐づけてくれたら、様々な手続きで後ろの人を待たせたり長々と時間をかけなくてすみます。
障害があるのにあれこれ書かされて証明させられる時、障害を強く感じさせられ、人とは違うと感じさせらるときだと言う人は少なくありません。この手続きはデジタル社会には必要のないものです。
障害者手帳など廃止して、マイナンバーカードに障害者証明や受給証明、税控除証明などをデジタルで紐づけてくれたら、さっさと手続きは終わります。そして、マイナンバーカードは誰もが所持するカードですから、年齢証明から所得証明まで使えて、障害だけを証明するカードではなくなります。様々なゲートを通る時、障害証明のための渋滞はおこらなくなります。
多様性を認める社会とは人との違いを際立たせることではありません。誰もが公平な社会です。障害があることを証明するために、健常者より待たされて当たり前の社会ではもうないはずです。平井卓也デジタル改革担当大臣!よろしくお願いします。
ロービジョンフットサル
弱視の子にもサッカーをロービジョンフットサル、ソルアが出前授業「可能性信じ、楽しさ伝えたい」/東京
毎日新聞2020年9月22日地方版
視覚障害のある子にもサッカーを楽しんでほしい――。ロービジョンフットサルのチーム「CASOLUA(ソルア)」(葛飾区)は毎年、都立葛飾盲学校で出前授業をするなどしてサッカーの楽しさを伝えている。【五十嵐朋子】
ロービジョンフットサルは、弱視の選手4人と弱視または視覚障害のないゴールキーパーでプレーする。パラリンピック競技のブラインドサッカーでは、アイマスクを着けて戦い、音の鳴るボールを使うが、ロービジョンフットサルは自分の視力でプレーし、ルールは健常者のフットサルとほぼ同じ。選手たちは視力や見え方の特徴を伝え合いポジションや戦略を決める。
ソルアを立ち上げた岩田朋之さん(34)は26歳の時、視神経の病気「レーベル病」で視力が急激に低下した。その後、視覚や聴覚に障害のある学生に特化した筑波技術大に進学し、ロービジョンフットサルを始めた。2015年に日本代表に選ばれ、主将も務めた。
茨城県のクラブチームに所属していたが、18年にソルアを作った。きっかけは葛飾盲学校へオリンピック・パラリンピック関連の出前授業に行った時に、先天的な障害で盲学校に通う子どもたちはサッカーの経験がほとんどないのを知ったことだ。接触プレーのあるサッカーは危険と判断されていたためだ。「視覚障害者サッカーの裾野を広げるためにも子どもたちに競技の魅力を知ってほしい」。社会人フットサルチーム指導者の古川将士さん(現ソルア監督)と出会った縁もあり、チームを立ち上げた。
葛飾盲学校での出前授業は毎年1回。ボールを持って歩くことから始め、徐々にサッカーに近い動きを取り入れていく。「子どもたちの可能性を信じて、工夫しながら楽しさを伝えたい」(岩田さん)。ソルアが別の学校で開いた体験会をきっかけにチームに入った高校生もいるという。
現在、選手10人、スタッフ4人。篠瀬翔平さん(24)は「この競技を知らずにブラインドサッカーを始める弱視の人もいるが、この競技は見える状態を生かしてプレーできる」と魅力を話す。大平英一郎さん(32)は「同じ弱視の人と出会えた。世界大会もあり、チャレンジできる環境がある」と手応えを語った。チームは昨年の日本選手権で2位と実績も重ねている。
作文コン作品募集
ソルアは、視覚障害のある小中学生を対象にした作文コンクールの作品を募集している。新型コロナウイルスの影響で普及活動に影響が出たため、代わりとなる企画を考えた。テーマは「この夏、私が挑戦したこと」。点字か活字で書く。入選者はオンラインで表彰する。10月31日締め切り。詳しくはソルアのホームページ(http://casolua.com/2020/07/26/summer?step?challenge/)または電話(048・982・7177)。
〔都内版〕
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昨日は、事業所でボーリングに行きました。ボーリング場は早い時期からガーターレスといって溝にボルーが落ちない仕組みが子ども用に作られています。ルールが難しければ難しくないようにして万人が楽しめるスポーツにすることがユニバーサルスポーツの観点です。
もう一つは、パラリンピックのように、障害の程度によって公平に試合ができるように対戦メンバーを均質にする方法があります。ルールはそのままなのでそのゲームの醍醐味が楽しめるというわけです。
そうはいっても、昨日のボーリングゲームでは、初めて参加した子が他の子に比べれば成績が振るわず「二度とやらない」とへそを曲げていましたが、練習をしてだんだん上手になっていく自分に自信が持てるようにするにも、スポーツは万人に取り組めるようにする工夫が必要だと思います。
とても敏感な子ども(HSC:Highly Sensitive Child)
すららネット「子どもの発達支援室」主催<不登校生徒の出席扱い><HSCの子の関わり方講座>を9月9日にWEB開催
220名の参加者のお悩みに回答
【株式会社 すららネット】2020年9月11日 10時00分
株式会社すららネット(本社:東京都千代田区 代表取締役社長:湯野川孝彦)は、9月9日に<不登校生徒の出席扱い><HSC*の子のかかわり方講座>をWEB会議システムにて開催しました。小中学生のお子様を持つ保護者約約220名へ、説明と質疑応答を行いました。
すららネットは、「教育に変革を、子どもたちに生きる力を。」を企業理念とし、アダプティブな対話式 ICT 教材「すらら」と「すららドリル」を、国内では 約 1,400 校の塾、学校等に提供しています。全国の有名私立中高、大手塾での活用が広がる一方で、発達障がいや学習障がい、不登校、経済的困窮世帯を含む生徒に学習の機会を提供するなど日本の教育課題の解決を図ることで成長を続け代表的な EdTech スタートアップ企業として2017年に東証マザーズに上場しました。
AI×アダプティブラーニング教材「すらら」は小学校から高校までの国語、算数/数学、英語、理科、社会 5教科の学習を、先生役のアニメーションキャラクターと一緒に、一人一人の理解度に合わせて進めることができるアダプティブな eラーニング教材です。レクチャー機能、ドリル機能、テスト機能により、一人一人の習熟度に応じて理解→定着→活用のサイクルを繰り返し、学習内容の定着をワンストップで実現できます。初めて学習する分野でも一人で学習を進めることができる特長を生かし、小・中・高校、学習塾をはじめ、放課後等デイサービス等においても活用が広がっています。
すららネット 子どもの発達支援室では、主に家庭学習で「すらら」を活用しているお子さまとその保護者を対象に、日々学習サポートを行っています。子どもの発達支援室宛には毎日、家庭学習における親子の関わりに関する問い合わせが寄せられています。学力を上げる方法は「すらら」で解決できるものの、勉強に気持ちを向かせる方法は心理面から紐解く必要性を感じ、すららネットでは2018年より、社内臨床心理士を中心とし「子どもの気持ち」へ目を向けることに力を入れています。 2019年は親子の関わり方について行動分析学、教育学、認知行動療法を中心とした保護者向けサービスやイベントを開催し約1,000名の保護者が参加しました。今年は新型コロナウイルス感染拡大による休校や、休校の影響による授業の遅れを取り戻すための夏休みの短縮など、子どもたちを取り巻く状況が例年と大きく異なる中、すららネットには保護者からの悩みが多数寄せられています。
第一部では、子どもの発達支援室長佐々木から、不登校生徒の出席扱いについて紹介しました。文部科学省が公表している「不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行った場合の指導揚力上の出欠の取扱いについて」通達の説明や、出席扱いを認めれた児童生徒数の推移、出席扱いになる7つの要点、具体的なアクションや流れについて説明し、事前に寄せられた質問への回答を行いました。平成30年度文部科学省調査によると、全国に約16万人いる不登校児童・生徒のうち、出席扱いを認められた児童・生徒は年間286人であり、出席扱いの制度は認知も活用も依然高いとは言えません。通っている学校とのコミュニケーションが必要であること、担任の先生が制度について知らない場合でも、まずは相談することが重要であると伝えました。
第二部では臨床心理士 道地より、HSCの子とのかかわり方について事例を交え紹介しました。HSCならびに不安症のチェックリストについて、HSCであることをきっかけとして不安症の症状が出た子どもの事例、HSCや不安症に対する保護者や子ども本人の正しい認識・理解の重要性、認知行動療法の知見に基づく思春期の子どもとのかかわり方について紹介し、事前に寄せられた質問への回答を行いました。保護者から寄せられた悩みは多岐にわたり、ほめ方、不登校の子どもへの介入の仕方、カウンセリング専門機関の選び方、他者とのかかわり、睡眠について、勉強について、やる気や集中力について、漢字の読み書きが苦手な場合のアプローチ、ゲームとのかかわり方等について回答しました。大切なのは、学ぶ楽しさを知れるかどうかであるということ、学校での学びにとらわれず子ども自身に合った学習方法を見つけることだと強調し締めくくりました。
参加した保護者からは「現在の状況では、不登校への対応のニーズが増えていると思います。学校側の理解も進めてもらえるように、学校にかけ合ってみようと思います。」「この講座に参加して、同じような悩みを持っている方が沢山いて色々な話しが聞けて良かったです。先生からのアドバイスやHSCについて聞けて参考になりました。」「不登校になり学業に関して悩むことが多く、また心のケアについても何か行っていけないかと気になっていました。我が家の項目が当てはまるかどうかと思いつつ参加しましたが、全体を通して気づかされることも多く、参加してよかったと思います。非常に有意義な時間を過ごすことができました。開催いただきありがとうございました。」といった感想が寄せられました。
すららネットは今後も、新しい学習体験を届ける事業活動と同時に「子どもの気持ち」へ目を向ける活動に引き続き注力し、子どもと保護者双方に向けたサポートを続けていきます。
*HSC:とても敏感な子ども(Highly Sensitive Child)
HSP:大人の場合の呼称
■イベント概要
テーマ: <不登校生徒の出席扱い><HSCの子の関わり方講座>
日時:9月9日(水)19:00~21:00
対象:「すらら」で学習中または「すらら」学習を検討いただいた小中学生のお子さまを持つ保護者
講座内容:
<不登校生徒の出席扱い>
・出席扱いを満たす3つのポイント、出席カウントの要件、具体的なアクション
<HSCの子のかかわり方講座>
・HSCと不安症について、思春期の子どもとのかかわり方、学習方法の見つけ方
講師:
すららネット 子どもの発達支援室 室長 佐々木章太
すららネット 子どもの発達支援室 臨床心理士 道地真喜
■スピーカープロフィール
すららネット 子どもの発達支援室室長 佐々木章太
グロービス経営大学院 経営学修士
「すらら」家庭学習部門 事業責任者
家庭学習の保護者サポーター「すららコーチ」統括マネージャー
すらら総合窓口として毎年500名以上の保護者から相談を受ける。
放課後等デイサービス(1)の学習支援、自身も生徒指導を行う。
ペアレントトレーニング講師。KABC-Ⅱ検査官。
子どもの発達科学研究所 学びの発達アテンダントアドバンスコース受講終了。KABC-Ⅱアドバンスト講習会受講修了。
すららネット 子どもの発達支援室 臨床心理士 道地真喜
San Diego State University(アメリカ・カリフォルニア州)教育学修士
Allliant International School(アメリカ・カリフォルニア州)心理学博士
カリフォルニア州臨床心理士免許
カリフォルニア州での臨床経験約10年
ASD(2)のお子様向けのABAセラピー(3)、3歳から18歳を対象とした心理検査、認知行動療法、プレイセラピー、大人の鬱、不安症のカウンセリングを主に実施。アメリカでの臨床経験を活かし、(株)すららネットにて発達障がい児への心理検査、カウンセリング、保護者向けのペアトレーニングなどに従事。
(1)障がいのある就学児向けの学童保育サービス。
(2)自閉症スペクトラム・アスペルガーといった発達障がいの一種。
(3)応用行動分析学(ABA)を用いたセラピー。障がい児療育方法の一種
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HSCやHSPは発達障害や不安障害の特徴との類似します。例えば、すぐに驚く▽チクチクする布地の服を嫌がる▽興奮した経験の後なかなか寝付けない▽細かいことに気づく▽うるさい場所を嫌がる――などです。発達障害の一つである自閉スペクトラム症はこだわりが強く、感覚過敏がある人もいます。「空気が読めない」と言われがちですが、他者の気持ちが分かる人もいます。HSCの子どもの中には、知的水準が高く、軽い(発達障害の)自閉傾向がある子どもも含んでいるようです。
また、親に不安が強いと、子どもも敏感になりやすいです。母親が「頭痛いんじゃない? 大丈夫?」と何度も聞くと、子どもは頭痛がなくても親に気に入られようと「痛い」と答え、本当に頭が痛くなることもあります。HSCの概念に当てはまる子どもの話を聞くと子どもよりも母親へのアプローチが必要なこともあります。
何故このようなあいまいなカテゴリーが作り出されたか考えると、発達障害の診断技術が未熟であることを示しているようにも思います。ASDの診断条件に全てはあてはまらないグレーゾーンの人をHSCと呼ぶのかもしれません。定まった診断基準がない中では、かえって子どもの理解を混乱させないか懸念されます。
ただ、あいまいさがあっても、本人や親が訴えている過敏さについて良く耳を傾けて、しっかり受け止めていくことで、発達障害やその他の問題を明らかにするきっかけになる場合もあります。新しいカテゴリーの流行はいつの時代にもありますが、科学の進歩と共に淘汰されていきます。大事なことは子どもの困り感を正しく理解することだと思います。
スペシャルズ!
映画は“世界の見方”を変えられる。「最強のふたり」監督コンビの最新作「スペシャルズ!」
2020.09.11【朝日新聞デジタル】
大ヒット作「最強のふたり」を生んだ、フランスの2人組監督エリック・トレダノ&オリビエ・ナカシュの最新作「スペシャルズ! ~政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話~」が公開中だ。長~い副題が示す通り、フランスに実在するケア施設の奮闘を臨場感たっぷりに描いたヒューマンドラマ。四半世紀かけて実現にこぎつけた作品への思いを、トレダノ監督に聞いた。(文・深津純子)
◇
自閉症の子供たちのケア施設を手弁当で運営するブリュノは、助けを求められるとノーと言えない男。受け入れ先が見つからない重度の子供たちを次々と預かり、日夜その対応に奔走する。外出先で介助者を振り切って駆け出す少女、駅の非常ベルを鳴らして電車を止めてしまう青年……相次ぐ非常事態も、彼にとっては日常の一部だ。
そんなブリュノの頼れる相棒が、ドロップアウトした若者の自立を支援するマリク。施設は若者たちの職業訓練の場にもなっている。社会からはじき出された若い世代を一手に救おうとする2人だが、無認可で赤字経営、しかもスタッフの多くが無資格ということで、監査局から厳しい査察を受けることになる。
駆け出し時代の運命的な出会い
息つく間もない施設の日常に圧倒されるうち、いつしか緊密な人間関係に引き込まれていく。モデルになった2人の福祉活動家と監督たちが初めて出会ったのは、まだ学生だった1990年代半ば。献身的な活動に共鳴し、資金集めのためのPR映像作りを引き受け、監督デビュー後にはテレビのドキュメンタリー番組も制作した。
「でも、僕らが本当にやりたかったのは彼らをフィクションで描くこと。2人の立場になって人々と寄り添い、そこから見える世界をじっくり考えたいと思っていました」とトレダノ監督は語る。
「私自身もいとこが自閉症なので、支える家族の苦労はよく知っているつもりです。だから、関係する人々の人生に映画でオマージュを捧げたかった。とはいえ、深刻な題材だけに、ひるむところもありました。映画はコミュニケーションの言語ですが、駆け出し時代の我々は語彙(ごい)も文法もまだ不十分。試行錯誤しながら足りない部分を補い、やっとできると思えるまで20年以上かかったというわけです」
脚本完成の1年前に出演交渉
ブリュノを演じるのはハリウッドでも活躍するスター俳優ヴァンサン・カッセル。クールでゴージャスなイメージから一転、情に厚いが女性とは縁の薄いブリュノの悪戦苦闘を見事に演じ、新境地を開いた。
マリクに扮したのは、「涙するまで、生きる」や「永遠のジャンゴ」で知られるレダ・カテブ。ともにフランスのアカデミー賞にあたるセザール賞の受賞歴もある名優コンビと、自閉症の当事者や本物の介助者ら素人キャストが織り成すアンサンブルもこの作品の大きな見どころだ。
「先週まで別の作品に出ていた俳優が、いきなり現場に来て演じられる役ではありません。自閉症の子供たちや介助の人々と実際に触れ合い、学んでもらうことが不可欠。なので、ヴァンサンとレダには脚本完成の1年前に、実際に施設を見学してもらった上で出演交渉しました。『脚本はこれからなんだけど……』と切り出すと、異口同音に『脚本なんか無くてもいいよ。一緒にやろう』。その後も何度も施設に通って、本当に熱心に準備してくれた。レダはアフリカの施設まで足を運んでくれました。そんな人たちが演じてくれたからこそ、真実味が出たのだと思います」
コミュニケーションが困難な現実だからこそ
ブリュノは野球帽の下にキッパという小さな帽子を被ったユダヤ教徒。一方のマリクは敬虔(けいけん)なイスラム教徒。文化や宗教、立場の違いを超えた信頼や連帯の力は、この監督コンビが過去作でも繰り返し描いてきたモチーフだ。
「フランスには様々な宗教や文化的背景の人々がともに暮らしています。経済格差もあるし、社会からはみ出てしまう人もいる。健常者同士でもうまく意思疎通できないのが現実です。だからこそ、コミュニケーションに困難を抱える自閉症の人々と、様々な困難を抱えた健常者が力を合わせて前に進もうとする姿を描きたかった。そこから学ぶことがきっとあると思うのです」
「マクロン大統領がエリゼ宮(大統領官邸)で上映会を開き、施設への支援を呼び掛けてくれたことも、自閉症の人々が抱える問題を広く知ってもらういい機会になりました。当事者の家族から『今までは閉ざされた世界で孤立していると思っていたが、この映画で救われた』などの反響をいただいたのもうれしかった。私たちは世界を変えることはできないけれど、世界の見方を変えることはできると信じています」
「スペシャルズ! ~政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話~」
出演:ヴァンサン・カッセル、レダ・カテブ
監督・脚本:エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ
9月11日から、TOHOシネマズ シャンテほか全国順次ロードショー
配給:ギャガ
公式サイト
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エリック・トレダノ
1971年パリ生まれ。共同監督のオリヴィエ・ナカシュとは、95年に短編映画の監督・脚本を共同で手掛けて以来、コンビを組んで活動する。2005年に長編劇映画デビューし、11年の「最強のふたり」で東京国際映画祭グランプリを受賞。無職の黒人青年と障害がある白人富豪の友情を描いた同作はフランスで歴代観客動員数3位を記録し、日本でも大ヒット、19年にはハリウッドでもリメイクされた。主な作品に国外退去を命じられたアフリカ系移民と白人女性の連帯を描く「サンバ」(2014年)、引退目前のウェディング・プランナーの最後の仕事を追った「セラヴィ!」(18年)などがある。
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昨日から映画ネタですが、これはメジャーな監督と俳優で作った自閉症映画です。とはいいつつも、京都のTOHOシネマズではやらず小規模劇場の京都シネマで上映しているので、そんなに収入は見込んでいないのかもしれません。ハリウッド発の自閉症映画というと、レインマンを筆頭にアイアムサム、フォレストガンプやマーキュリー・ライジング、最近だとリチャード・ジュエルとたくさんあります。韓国映画ではマラソン、中国映画では海洋天堂、邦画ならぼくはうみがみたくなりました・山田洋二の学校3等です。フランスはフロイトの精神分析が主流だったので自閉症の理解がうまくいかず、2次障害としての行動障害が昔は少なくなかったそうです。このドキュメンタリー風映画は、私たちが自閉症の人に初めて接したときの「あるある」がたくさん描かれているといいます。
だってしょうがないじゃない
大人の発達障害者、自立を考える ドキュメンタリー映画上映
2020年09月16日 10:23【岐阜新聞】
大人の発達障害をテーマにした映画「だってしょうがないじゃない」が上映された会場=岐阜市司町、みんなの森ぎふメディアコスモス
大人の発達障害を描いた映画「だってしょうがないじゃない」(2019年)の自主上映会が、岐阜市司町のみんなの森ぎふメディアコスモスで開かれ、知的障害がある子を持つ家族ら約50人が親亡き後の障害者の自立の難しさや、引きこもりの50代と80代の親が生活に困窮する「8050問題」に伴う住居問題について理解を深めた。
上映会は知的障害者やその親たちでつくる県手をつなぐ育成会(岐阜市)が、当事者やその家族だけでなく地域全体で支援の在り方を考えてもらおうと企画した。
映画は、発達障害を抱えながら独居生活を送る60代の伯父の日常を、発達障害と診断された坪田義史監督が3年間撮り続けた長編ドキュメンタリー。障害年金や福祉サービスの支援を受け、住み慣れた借家で暮らす伯父が直面する現実などが描かれており、参加者が見入っていた。上映後は、同会の社会福祉士ら専門家による相談会も行われた。
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坪田義史監督の言葉
まことさんと出会ってから約三年の月日があっという間に過ぎました。
こだわりが強く偏った僕の視線は、まことさんのどこまでも純粋な感性に触れ、フレームに収まりきらないありのままの姿に惹かれました。
まことさんを撮りたい。 当時、鬱や不眠に悩み、精神科を受診して注意欠如多動性障害と診断を受け、破れかぶれの状態で撮影に及ぶ僕を、まことさんは「義史さん」と呼び、穏やかな表情で受け入れてくれました。 取材を終えた別れ際の玄関先では、必ず「またね」と言って自ら手を差し出して握手をしてくれるまことさん。
本作「だってしょうがないじゃない」は、まことさんの協力なしでは、成立しえなかった作品です。僕は、これからも、まことさんに会いに行きます。
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京都シネマではもう上映していました。こういうマイナーな映画はなかなかヒットしないのですが、「カメラを止めるな」のように口コミとSNSで大ヒットする場合もあります。でもドキュメンタリーはなかなか難しいです。時間経過を追うので、どうしても平たんになってしまうのですが、それをカバーするのが編集力と言われています。5080問題は発達障害者の場合が少なくありません。ぜひ見てみたい作品ではあります。もう一回京都シネマやってほしいなぁ。