みんなと歩調を合わせる
外出する機会に、一人で歩ける子どもはできるだけ一人で歩けるようにしています。ただ、困ったことに全体に合わせると言う歩きができない人が多いと職員の手が足りなくなり、早い人を見失ったりしやすくなります。別に特別に早いわけではないのですが、とても遅い人がいてこの人に合わせると普段の倍ほど時間がかかります。
L君にしてみれば、これまで誰かが手をつないでくれていたので、遅いと引っ張られたり背中を押されて歩いていたのです。手を離されると、全体の速度などはお構いなしにどんどん遅れてしまい最後には前の人が見えなくなってしまいます。この場合に、背中を押したりひっぱたりしないで歩けないかどうか職員で話し合いました。
とにかく、周りが気にならないならそれは無理だということになり、その前に自分とともに歩いている人を意識できるようにするのが先だと言う話になりました。ではどうするか、いつもはできないけど山登りの時にリュックに入れて荷物を運んでいるのをやめて、交代で二人で運ぶのはどうかという案が出ました。担ぎ棒を二人で担いで棒に荷物をくぐりつけるのです。これなら少しは相手を意識しないだろうかと言う提案です。
できることは何でもやってみようという事で明日から取り組んでみようという事になりました。コミュニケーションが取れない人の場合、一人でできるけど周囲が不安なので何でも介助されて、自分の意志と関係なく依存性が高まります。結果、周囲に合わせるという経験の機会を失い、周囲に合わせられないというレッテルを貼られて一生過ごすことが少なくありません。個別化するとは一人一人がばらばらでいいと言っているのではありません。個性は認めつつもお互いに工夫や折り合いをつけて共生しようとするのが個別化の目的です。ただ言うは易し行うは難しです。