今日の活動
「野球よせて!」
じゃんぷでは学習支援のほかに、低学年や高学年のグループごとで、集団活動の支援も行っています。その一つが公園遊びです。公園遊びには子ども達の運動を保障することや、気分転換(活動のメリハリ)などの目的もあります。ですが何より、多くの子どもにとっては社会性・コミュニケーションを育むのにとてもよい機会。集団で行動することや、遊びやルールを友だちと相談して決めること、負けたり鬼ごっこで鬼になったりしたときの気持ちの調整などを支援しています。
先日も、低学年グループで大きい公園に遊びに行きました。アスレチックでしばらく遊んだあと、Bさんが「おにごっこしよう!」とみんなを誘いました。それに全員が賛成。「なにおにー?」「かわりおに!」「じゃんけんしよう!」と最初のおにを決めてスタートしました。
ここまでは花丸。でしたが、1年生のCくんがおにになると、一人だけ1年生ということもあり、全然友だちに追いつくことが出来ません。そのうち、Cくんは「やめる」と言って、おにごっこをやめました。代わりにおにになった2年生のDさんもぜんぜんタッチできず、涙目に。そこで職員が残りの全員に声を掛けました。「CくんもDさんも、楽しめていないよ。」すると2年生のEくんが「だって(逃げている)僕らも鬼になりたくないもん。逃げて当たり前やん」と答えます。職員が「みんなで遊んでいるんだから、みんなが楽しめるルールにした方がいいよ」と言いますが、Eくんは「だって」「でも」と納得しません。そこで職員は、「1回お茶休憩にしましょう」と仕切り直し。お茶休憩後、職員からEくんを含めた男の子たちに「野球しよう」と誘いました。はじめEくんは「やらない」と言っていましたが、残りの男の子たちと職員とで順番に野球を楽しんでいると、「寄せて」と自分から寄ってきました。そして友だちと順番にバッティング! 守備やキャッチャーの役割も順番交代しながら、いっしょに楽しみました。
「だって僕らも鬼になりたくないもん」と答えた2年生のEくん。まだまだ友だちの気持ちを考えたり、気付いたりする力はついていません。日々の振り返りの中で積み重ねていく段階です。この日の事もまた取り出して、Eくん自身が自分の気づきや力になるような振り返りを支援する必要があります。ですがこの日大事にしたのは、楽しむこと。Eくんはおにごっこのことを引きずらず、自分から野球している友だちに「寄せて」と言って一緒に遊び、楽しく野球ができたことで、友だちと楽しい気持ちを共有できました。公園遊びはまず第一に楽しむこと。その中で、様々な課題に少しずつチャレンジしてほしいと思います。
「キーボードください」
高等部3年生のAくんはすてっぷに来て6年以上が経ちます。発語はほぼなく、来た当初は自分からコミュニケーションを取ることも、大人からのコミュニケーションを理解することも難しいことの方が多かったお子さんです。机のものをひっくり返したり、投げたりしては、大人の反応を見て、ケラケラと笑う姿が、よく見られました。
来てしばらくしてから、視覚スケジュールと絵カードコミュニケーションに取り組みました。スケジュールは大きい絵カード2枚から、絵カードコミュニケーションは大きく段ボールで作った「ください」カードからのスタートでした。少しずつ取り組みを続けてくる中で、スケジュールカードは3枚、4枚と増えてきました。「ください」のコミュニケーションもだんだんと成立しだし、次は離れている人へ、次はいつもと違う人へと、コミュニケーションの幅が広がり出しました。絵はどうやって見分けてるかな? イラスト? 色?と職員も工夫しながら、少しずつ見分けて使い方を覚え、使える絵カードも増えていきました。
今では、スケジュールカードは6枚ほどの見通しを持ち、自分で終わった取り組みのカードを外して、次の活動が何かわかって、自分できりかえるようになりました! また絵カードコミュニケーションも、いろんなカードがしまってある自分のブックから、今はおやつと分かってヨーグルトカードを取り出して職員に渡しに行きます。そしておやつが終わったら、次はキーボードカードを取り出して、職員に要求しています!
少しずつ成長してきたAくん。こだわると動けなかったり、気が散って寄り道してしまったりと、まだまだ職員に頼ることはあります。ですが、これだけ自立してコミュニケーションを取れるようになってきたのは、Aくんが積み上げてきた力です。卒業まであと5ヶ月ほど。次の場所でも活躍できるよう、職員と一緒にできることを増やしていきたいと思います。
「ここまでは覚えた」
ようやく秋らしい気候になってきました。行事盛りだくさんの2学期ですが、10月に入り、いよいよ本番。多くの中学校では、体育大会が先週今週とで開かれました。体育大会翌日にじゃんぷにやってきた中学生は「筋肉がバキバキやー」という第一声。その後も「なんで筋肉痛のときに勉強しなあかんの」と言いながらも、学習に取り組んでいました。
子ども達に運動会や体育大会のことを聞くと、一番多く返ってくるのが「鳴子いややー」「ソーラン節しんどいー」といった、集団演技への苦手感です。すてっぷやじゃんぷに通っている子の中には、ダンスが苦手という子が少なくありません。その要因の一つは、手や足の動きがイメージしづらく、見本を見ながら同じように動かせない、音楽に合わせて動かせないと言った、目や体の使い方や同時に使うことの不器用さがあります。またいっしょに踊っている人との動きのズレが見てわかるので、他の人から指摘されやすく、失敗感を積んでしまうこともあります。
一昔前までは、授業や放課後に全員でグラウンドに集まり、前の先生の見本通りに踊るという練習がメインでした。ですが今の子ども達は一人1台のタブレットを持っています。先日も小学生のZくんが、すてっぷでダンスの練習をしたいと先生に伝えました。先生がいいよと言うと、Zくんが取り出したのがタブレット。そしてタブレットで、先生の見本が映っている動画を流しました。なんでも先生が見本を撮ってくれたのだそうです。そして見本を見ながらダンスの練習をするZくん。タブレットをタッチしながら動画の時間を調整します。「ここまでは覚えた。今日はここから」友だちの前でも、とても張り切って練習を始めました。
全員でダンスの練習をすることは、コミュニケーションや社会性の能力が必要になってきます。中学生になれば、体育大会や文化祭の準備や練習など、より複雑になっていきます。そこに運動や模倣の不器用さも合わさると、結果苦手感を積んでしまうという結果になってもおかしくありません。そんなとき、タブレットの動画で見本を見て練習することは、不器用な子にとってはとても重要な個人練習の機会になります。いよいよ来週は運動会本番。子ども達みんなが、できた、できてよかったという経験になるよう、応援しています。
「なんで、僕が勝ったやん」
小学2年生のWくんはじゃんぷに来て半年ほど。家ではお兄ちゃん勝りのお話上手で、じゃんぷでも5、6年生のお兄さんたちとも対等のようにお話を楽しんでいます。一方で外遊びで友だちと遊ぶことや学習といった、じゃんぷで取り組む課題はまだまだあるお子さんです。
先日、Wくんと3年生のXくん、1年生のYくんとでフルーチェ作りをしました。最初に役割分担をし、①粉と牛乳を入れる、②混ぜる、③小さい器に移すの3つの役割を選ぶことになりました。Xくんは先に①を選んだのですが、WくんとYくんは二人とも②の混ぜるがいいと言いました。相談することも課題の1つ、と職員が様子を見ていると、Wくんは「じゃんけんで決めよう」とYくんに提案しました。
じゃんけんで決めることは、よく子どもが提案する方法の1つです。Wくんもよくじゃんけんを提案していて、じゃんぷに来たばかりのまだ1年生だったころ、けん玉を誰が使うかで、Wくんとお兄さんとで相談することになりました。するとWくんは自分から「じゃんけんしよう」と提案したのです。そのときの職員はWくんに「じゃんけんで決めるということは、負けたら後になるということだよ」と確認しました。するとWくんは「分かってるよ」と答え、ジャンケンでけん玉の順番を決めたのでした。
フルーチェの混ぜる役を決めるのにジャンケンを提案したWくん。もちろん負けるということは、混ぜることはできず、③の小さな器に移す役になるということです。「いいよ」と答えたYくんとさっそくジャンケンし、勝ったのはWくん。混ぜる役になるのはWくんのはずでした。ところが職員がYくんに「じゃあYくんが移す役ね」と言うと、Yくんは「しない! 混ぜる!」と言ったのです。「なんで、僕が勝ったやん」とWくんは言いますが、Yくんは首を振り、黙ってしまいました。そこで職員が「Yくんは負けたら混ぜるをしないということが分かってなかったんだね」と尋ねると、Yくんは頷きました。Wくんにとっては当たり前のことが、年下のYくんには分かっていなかったんだと受け止めたWくん。職員から「どうする?」と聞かれると、「譲ってあげる」と混ぜる役をYくんに譲ってあげたのでした。
相談して決める、ということは子どもにとっては難しい課題の1つです。そこには、妥協点を見つける、折り合いをつけるという要素が含まれる場合があり、それがまだできない子どもも少なくありません。Wくんにとっては、ジャンケンで負けた、ということが妥協する理由になるのですが、Yくんにとっては今はまだ、そうではないということです。こういう課題に繰り返しチャレンジしていく中で、妥協点を見つける、折り合いをつけることを少しでも増やしていくことが、相談して決めるために必要な力になっていきます。子ども達が楽しみながら、前向きに取り組めるようにしながらも、そういったコミュニケーション・社会性の力をつけられる支援をしていきたいと思います。
体育館でボール遊び!
いよいよ2学期が始まりました。今夏も酷暑となる日が多く、お出かけを控えた方もいらっしゃるかもしれません。夏休みは子どもが朝から夕方まで過ごす、すてっぷやじゃんぷ。暑いからと室内でずっと過ごしていると、子どもたちは体を動かせないイライラが溜まってしまう場合があります。
そこで今年は、定期的に文化教養体育館の半面コートや小体育室をお借りし、室内でも思い切りスポーツできる日を作りました。日陰の過ごしやすい気温の中、子どもたちはボールやソフト積み木を使って、元気に体を動かします。そんな中で、職員が驚いた場面がありました。
支援学校高等部生のUくんは公園ではブランコや草いじりが大好き。ボールで遊ぼうと職員が誘うと、その場でボールをポイっとしたり、職員と近い距離でパスができても気が逸れたりと、続けることの難しさがありました。そして先日体育館に行った時、もう一人の高等部生のVくん、職員といっしょに、ボールパスをすることになりました。それを遠目に見ていた職員が驚きます。なんとUくんとVくんとでボールパスを何度も続けることが出来たのです! 職員の声掛けや支援があるとはいえ、Uくんが何度もボールを返している姿を見て、職員はその成長をとても嬉しく感じました。
後日、職員間でこの話を共有し、Uくんの成長を皆で分かち合いながら、体育館にはUくんの好きなブランコや草っぱらがないからかなと話しました。そう考えると、Vくんも公園では砂を蹴りがちでスポーツに集中できない場面があるのですが、体育館では当たり前ですがそういった行動は無く、ボールパスすることができました。当たり前と言えば当たり前ですが、子どもの活動をよりよくしていくためには、環境を整えることが大事だと改めて意識しました。
2024年夏季休業のお知らせ
いつも「あゆみの広場 いっぽ」「育ちの広場 すてっぷ」「学びの広場 じゃんぷ」の活動に、ご理解・ご協力いただき、誠にありがとうございます。
「あゆみの広場 いっぽ」「学びの広場 じゃんぷ」は8月14日(水)から8月16日(金)まで、「育ちの広場 すてっぷ」は8月15日(木)から8月17日(土)まで、夏季休業となります。
営業再開は3事業所いずれも、8月19日(月)からになります。
よろしくお願いいたします。
「え~! それだけの違いで?」
夏休みに入り、すてっぷやじゃんぷではさまざまな場所に社会見学に行っています。先日もじゃんぷで防災センターにお出かけしてきました。
最初はいろんな電話を使って通報体験ができるコーナー。今時はあまり見かけない公衆電話や、お家によってはないかもしれない固定電話があります。大事な勉強ではありますが、子ども達は一通り体験はしてみるものの興味なさげ。そこそこにして、次のエリアに行きました。
次のエリアは実物大の防災ヘリコプターが中央にあり、四方にさまざまなコーナーがあります。その一つにゲームセンターにあるようなゲーム筐体が置いてありました。中身は消防士になって火を消すゲームや、防災に関わるアイテムを集めるゲームです。一人が遊び始めると自然と全員がそのコーナーに集まりました。他のコーナーに行ってほしいという大人心を少し抑え、「あと10分したら次のコーナーに行くからね」と予告し、順番交代で遊ぶ時間にしました。順番を待つ、次の人に譲るといった社会性の課題にもチャレンジ。1回ずつ遊べると、ほとんどの子は次のコーナーに移っていきました。
それからは、防災ヘリや消火器、地震などさまざまなコーナーで体験してきた子ども達。子ども達が体験して驚いたことの一つが、水害時の自動車の中を再現したコーナーでした。そこでは車内からドアを開けようとしたときに、浸水時だとどれだけの力が必要か、実際にドアを押して体験できました。30cmの浸水だと、子どもの力でも軽く開けられます。ところが40cmになると力いっぱい入れてなんとか開きますが、50cmではまったく開きません。大人でも開けないほどでした。その後、ドアと比較できるように描かれている水の高さを見て、「え~! それだけの違いで??」と驚いた子ども達。実際にドアの重さを体験することで、少しの差でそんなに違うのか、と印象深く感じたようでした。
子どものときの体験というのは、学習を始め、大人になっていく中でのさまざまな学びにとって、とても大事なものになります。例えば上記の体験でも、水圧という学習をする上では、とても重要な気付きになります。またそういった経験を大人がいっしょにしたり、別の場所で経験してきたことを話しておいたりすることで、子どもが学ぶ場面で思い出させたり共感することでより気づきを深めたりすることができます。体験や気づき、共感を大事にしながら、子どもの成長の機会をたくさん作っていきたいと思います。
「もう1回したいなら、静かにするよ」
「ぼくもやりたい!」(2024/6/29)で紹介したOくん。『街コロ通』でボードゲームへの敷居が下がったのか、他のゲームも「やりたい!」と言うことが増えてきました。「これ、なんだっけ?」(2024/7/20)で紹介した『ナナ』もその一つ。友だちが『ナナ』で遊んでいるのを見て、「ぼくもやりたい!」と友だちの輪に入ることになりました。
ただOくんはまだ小学1年生。対してこのとき『ナナ』で遊んでいたのは小学5年生のTくんをはじめとしたお兄さんばかりのグループでした。Tくんたちは優しくOくんを受け入れて、ゲームスタート。Oくんはルールがよく分かり、順番も待って、正しく遊びに参加できています。まずこのこと自体がOくんのすごいところで、よくがんばっていました。Tくんたちもそのことが分かり、2回目、3回目とゲームを進めていきます。
ただやはり、感情コントロールはまだ難しいOくん。当たって嬉しい時は「やった!」、外してくやしいときは「あー!」と声が大きくなりがちです。少し顔をしかめるTくんたち。しかしOくんがゲームに負けて本当に悔しくて「きー!!」と声にならない金切り声を上げたときには、さすがのTくんたちも耳をふさいでしまいました。
職員が声の大きさレベルを提示したり、「そういうときは『負けた。くやしい』と言ったりするよ」と言い換えを示したりと、支援をしながら、もう1回『ナナ』で遊ぼうとした時のことです。Tくんからすばらしい声掛けがありました。
「Oくん、もう1回したいなら、静かにするよ」
職員が支援でも使う事前の約束。それをTくんが自分からOくんに提示したのです。「わかった」と答えるOくん。その後、少し大きな声になってしまうこともあったOくんですが、最初のころの金切り声などはなくなり、子どもたちだけでも遊びを続けられるようになってきました。
夏休みになり、じゃんぷでも子ども同士で遊ぶ時間が増えてきた中で、子ども同士だからこそ、素晴らしいやり取りや関わりが生まれます。その機会を逃さず褒めて、コミュニケーション・社会性を育むとともに、自己肯定感を積み上げていきたいと思います。
「これ、なんだったっけ?」
トランプは一番身近なテーブルゲームと言っても過言ではないでしょう。修学旅行にトランプをもっていって、友だちと遊ぶなんてことも、今でもまだ見られる光景かもしれません。
トランプで友だちと遊ぶなら、最も有名なゲームの一つが「ババ抜き」です。他にも「神経衰弱」や、中学生になれば「大富豪」がよく遊ばれます。すてっぷやじゃんぷでも、友だちに誘われたときに「したことない」とならないよう、狙って遊ぶことで、ルールや勝ち方(負け方)を学ぶこともありますし、子どもから「ババ抜きしたい」と提案されることもあります。基本的にはトランプを混ぜて遊ぶのでランダム性があり、またシンプルなゲームが多いです。
ただし、シンプルだからこそ実力差が出やすいものもあります。神経衰弱はそういったゲームの一つで、ランダムに伏せられたカードをめくっていくので運要素があるものの、一番大事なのはめくったカードの数字を覚えておく短期記憶の力になります。そしてすてっぷやじゃんぷに来ている子は、その短期記憶の力が弱いことが多いです。そのため、「神経衰弱」と聞くだけで、「絶対しない!」と大きな声で主張する子も少なくありません。
逆に言えば、そういったゲームをする中で、短期記憶にチャレンジする場面を作ることができるかもしれません。そこで「ナナ」というゲームを紹介することにしました。「ナナ」は簡単に言えば、プレイヤーの手札と場に伏せられているカードで神経衰弱をするというゲームです。ただし手札のカードはどれでも出せるかというと、そこにルールがあり、自分や他のプレイヤーの手札からは一番大きな数字か一番小さな数字を出す(出してもらう)ことしかできないのです。
先日はじゃんぷの子どもたちが、この「ナナ」にチャレンジしました。みんなで手札を配り、残ったカードをテーブルに伏せます。あとは「神経衰弱」と同じように、順番を回していきます。自分の番が回ってきたRくん。「Sくん、一番低い数字を見せて」とSくんに伝えます。Sくんが1のカードを出すと、「やった!」とRくんは喜び、自分の手札から1のカードを続けて2枚出して、3枚そろった1のカードはRくんのものになりました。最初は運要素で数字を揃えるRくんやSくん。ですが外れたときはその数字を覚えて手札や場に伏せて戻します。「これ、なんだったっけ」や、「Sくんの一番高い数字、なんだったかな」と悩むRくん。手札に同じ数があることを手掛かりに思い出し、「Sくん、一番高い数字を出して」と言って、Rくんは見事その数字を3枚そろえることができました。
今では休憩時間でも「ナナがしたい」とリクエストする子も少なくありません。「神経衰弱は苦手」という子どもも、「やってみようかな」と参加することが増えています。もちろん中には、「苦手でやってみたけど、やっぱり外してしまうことがくやしい!」と、1回で終わってしまう子もいます。そういったときはあとで職員との1対1の場面を作り、リベンジすることで次につなげようとしています。楽しめる友だちがいるからこそ、集団作りに向けて個別にも丁寧に対応していきます。
「ぼくもやりたい!」
「1+1は何?」 大学時代に私が数学教育課程の先輩から尋ねられた問いです。子どもならいじらしく「田んぼの田!」と答えるかもしれません。大人なら当たり前に「2」と答えるでしょう。このとき私も「2」と答えました。続けて先輩が問います。「どうして2になるか分かる?」さて、みなさんはどう思われるでしょうか?
「そう決まってるから?」「そうそう」このときの私の答えを、先輩はよしとしました。つまり2というものは「1+1」、3は「1+1+1」、10進法なら同じように9まで続きます。10からはその規則通りに増えていきますが、1から9に関しては、そう定義されているものなので、そのまま覚えるしかありません。
小学校1年生のOくんはじゃんぷに通い始めて1ヶ月。工作や公園遊びが大好き。宿題はやらない!と初めは言っていましたが、スケジュールで見通しを持つことで、楽しみにできる事を励みに学習に取り組めるようになってきました。ただ見通しを持てても、算数の宿題を渋ることがたびたびありました。他の職員に聞くと、どうやら数唱が5までも出来ていないのでは、というのです。それで宿題を見てみると、バスに乗り降りする動物たちの絵が描いてあり、その動物たちを数えるというプリントでした。数唱が出来ないのでは、何を書けばいいかさえもわからなかったでしょう。このときは全部したくないと言うOくんと、1問はじゃんぷでやって、残りは家ですると約束し、「まる」で終われるようにしました。同時に1から9まで書いた表を用意して、それを使って1問解き、残りの問題も同じ表を持ち帰ることで、家で取り組んでもらえるようにしました。
さて、Oくんの算数への支援をどうしようか考えていた矢先のことです。Oくんが公園遊びから帰ってくると、お兄さんたちが遊んでいた「街コロ通」というボードゲームが机の上に置いてありました。「これ、やりたい!」とOくんが先生に伝えます。Oくんには難しいかも…。待てよ、数唱の学習にいいかもしれない、と考え、いっしょに遊ぶことにしました。「街コロ通」はサイコロの目を数えたり、お金を数えたりと、数唱がいろんな場面で出て来ます。最初に1コイン5枚をもらい、値段に注目して買うお店を決めていくOくん。準備ができて早速サイコロを振ると、自分からサイコロの目を数えようとします。数が出てこない時は先生に教えてもらいながら、Oくんもいっしょに数を数えます。もらって貯まったお金が10を超え、12コインのお店を買うときは数えるのをあきらめかけますが、先生が10コインを見せると喜んで1コインを10枚数え両替。両替したお金で12コインを数えて、お店を買うことができました!
遊びを通じて数を数えることの抵抗感がなくなって来たのか、最近のOくんは、学習の時間でも表を使って算数の宿題をやり切れるようになってきました。学習と同時に遊びや生活のなかでも、数を数えることが意欲的にでき、成功体験ができたことが、学習の場面にも生きてきたのでは、と思います。