「自分なりの完璧を追い求めて」
2025年1月21日、アメリカ野球殿堂入りに日本人選手だったイチローさんが選ばれました。日本プロ野球のオリックスで活躍されていたイチローさんは、2001年にアメリカ、メジャーリーグのマリナーズに移籍。最初の年から10年連続で200本以上のヒットを打ち、2004年には一年間の最多安打になる262安打を記録。この記録はメジャーリーグ記録を84年ぶりに更新し、20年経った今でも、これ以上の安打を打った人はいません。
アメリカ野球殿堂は、メジャーリーグのチームで選手としてどれだけ活躍したかや、チームにどれだけ貢献したかで、選手の候補者が選ばれ、そこから全米野球記者協会に10年以上所属する記者の投票で決まります。イチローさんは今年の殿堂入りの候補者の中で、一番得票率が高く、99.7%の票を得ました。満票には惜しくも1票足りませんでしたが、イチローさんはこのことに対して、「1票足りなかったのはすごく良かった」と笑顔でコメント。そして、「足りないものって(努力などでは)補いようがないんですけど、いろいろなことが足りない人って、自分なりの完璧を追い求めて進んでいくのが人生だと思う。(それとは別の話だが)生きていくうえで不完全だから進もうとできる。そこに向き合えるのはよかったと思う」と続けて話されました。
イチローさんが上のように語られた人生観は、福祉に携わる者としても、考えさせられるものでした。もちろん福祉に関する言葉ではありませんし、イチローさんが追い求めてきて辿り着いたのは比類なき成功です。ですが、『不完全な中で自分なりの完璧を追い求めて進んで行く』という言葉を、子ども一人ひとりの顔を浮かべながら考えると、どの子どもにも目指してほしい姿のように思えます。そして辿り着いた成功の場でイチローさんが語ったように、子どもたちも自分なりに辿り着いた成功の先で、「不完全な中で自分なりの完璧を追い求めてきた」と、さらに年下の子どもたちに伝えてほしいと思います。
読み書きに苦労してきた中学生のHくん。勉強がイヤでもなんとかがんばってきて、初めての文章でも自分なりの方法で読めるようになってきました。実際に上の1段落目もある程度スムーズに読みます。ですが、すぐに「どんな話だった?」と聞かれると、「イチローさんの…、あとは分からん」と答えました。職員がタブレットで写真を示しながら読み上げると、「その人知ってる。」と続きの文章にも理解を示します。続けて「どう思った?」と聞かれると「うーん…」と返答に悩みます。そこでマインドマップを使いながら、状況やイチローさんの言葉を整理し、感想を伝える練習をしました。すると「自分なりの完璧を追い求めて進んで行く」というイチローさんの言葉に「すごいなって思った」と職員に伝えられました! その後、自分でもマインドマップを書く練習をしたHくん。Hくんが、不完全な中であっても、自分なりの完璧を追い求めて進んで行けることを心から願っています。