すてっぷ・じゃんぷ日記

2023年3月の記事一覧

言葉のシャワー

「周りの評価を気にしてしまう」人に伝えたい秘策

「発達障害と自己肯定感」についての記事があったので少し気になりました。元記事について興味のある方は上記のリンクから飛べるので読んでみてください。

教員時代、筆者が2年目の時に支援の必要な子どもが教室の中に何人かいたのですがその中でも多動傾向があり、悪目立ちのする子がいました。その学校は生徒数が少なく、単級だったので学年主任もおらず、正直どのようにすればわからない状態でした。その時教務主任と教頭先生に教えてもらったことが「とにかく普段はずっと褒めてあげて」でした。

「他の子よりも怒られることが多いし、担任じゃない先生からも怒られることもあるから普段はたくさん褒めて、よしよしするだけでもいいから」

お二人共、筆者が持ったクラスを低学年の時に担任していた先生方だったので子どもたちのことをよくわかってくださっていたようで、どうすればよいかわからなかった筆者にそのように教えてくださりました。学校現場を離れた後、すてっぷ、じゃんぷでも普段はとにかく子どもの話を聞き、褒めまくることを意識しています。

学校の中で出来ない、わからないことが多い子ども達はそれだけで自己肯定感が低くなっていきます。ただそういった子ども達は褒めにくい部分もあります。実際に「どこを褒めたらいいかわからない」という声も聞きます。どの子ども達にも良いところが必ずあります。それを見つけ、褒めて関係性を作っていくことが授業でも療育でも必要だと考えています。もちろん技術や知識があることが一番大事ですが、大切なのはそういったことなのではないでしょうか。

 

オタマトーン

オタマトーンという電子楽器をご存じでしょうか?見た目がオタマジャクシや音符のような電子楽器で、長年アート作品を発表しているアーティスト「明和電機」が生み出した、ヒット商品です。指を押すだけで音が出て、見た目の可愛らしさも相まっておもちゃとして大流行したようですね。

ただこのオタマトーンはリコーダーのように「ここを押さえたら『ド』が出る」等決まった音の出し方はありません。なので曲を弾こうと思ったら絶対音感を持っていないとかなり難しいです。最近筆者は初めてオタマトーンを触ったのですが音を出す場所の感覚が掴めず、心が折れそうです。

じゃんぷに通う子ども達の中にもオタマトーンで遊んだことのある子どもが何人かいます。「難しいよな~」と話してみると「え、おもしろいやん!」と返してきました。「いやいや、あれリコーダーとかピアノみたいにどこがどの音かわからんやん。」と返すと…

「え、わかるやん」

 その子は絶対音感を持っているようで、知っている曲はじゃんぷに置いているおもちゃのピアノでもパパパッと弾いています。学習に苦手感があり、明るいけれども「私出来ないから~」というのが口癖でしたが、そういった出来ることもあるのです。それを見つけ、子どもが自信を持つと苦手なことにも挑戦しようとします。長所を見つけることは大事ですね。

「読むだけなら」

(活躍できる場 2022/12/15)で少し紹介した子どもですが、今は「宿題決め」→「タイピング練習」→「お話作り」→「お話読み練習」の学習の流れが定着しています。

かなり学習障害が重い子どもなので、何度も書いていますが文章を読むなんてことは本来相当エネルギーを使い、しんどいはずなのです。こちらとしても最初は一日に一回、長くても5分程度集中して学習に取り組むことが出来ればそれで充分だと思っていました。それは今でも変わっていないです。

そんな子が30分以上、個別の時間をはみ出しても「今日作ったお話の読み練習は絶対今日中にする!遊びは後回しでいいから自由時間(本来は自立学習の時間)にしたい!」と言ってきます。それだけ彼にとって重要なことなのでしょう。また、「学習をした」という実感にも繋がっているようです。「読むだけなら」と言っていましたが、それがよかったのでしょう。

学習障害のある子にとって、さらにそれが重たい子にとって教科書の学習はしんどいことだらけです。だからまずは「その子の興味のあること(好きな事)を題材にする。」「無理なことはさせない。」「パターン化する。」とよく言われていますがそれがまさに効果的だったと言えるでしょう。学校でも活躍の場が出来、ノートも少しずつですが書くようになってきているみたいです。「書くこと」も苦手ですが自分が「出来るな」と思った範囲で書いているようですね。

支援が必要な子にはいろいろと支援をしたくなりますが、まずは出来ることを取り組み、その子の自信に繋がることが何よりも大事です。

↓学習障害の子どもへの支援がわかりやすくまとめられた動画です。興味があればぜひご覧ください。

侍ジャパン!

侍ジャパン世界一おめでとう!!

じゃんぷに通う子どもの中にもWBCの話題で持ち切りのZ君がいます。大人顔負けの知識で驚くことも多いです。

さて、ここで問題なのがZ君はプロ野球に興味があっても他の子が興味のない時です。Z君はとにかく熱がすごく、一方的な会話になってしまう傾向も多いため、令和ロマンのコントのように「ちょっと喋りすぎか~」と気づくことはありません。「僕の話を聞いてくれ!」と言わんばかりです。

みんながみんなZ君ほどWBCに興味があるわけではないので、「し~ん」となります。なのでZ君には「WBCの話がしたいのはわかるけど、まずは他の子に家で見てるかどうかを聞いてごらん。それで見てたら「あのシーン見た?」って聞いてOK。見てなかったら「〇〇って知ってる?僕好きやねん」で止めとき。その時は勉強終わってから先生がいくらでもWBCの話付き合うわ」と伝えました。Z君に「自分の話が出来る時間が作れる」ことを前提に、自分の好きなことを話す時、相手にそれが興味がない時どうすればよいのかを伝えました。先日はその興味のない子も「お家の人が見てるわ。お母さんもお父さんも必死になって見てるよ。」と面白い話をしてくれ、その子が話に乗ったことがZ君も嬉しかったようです。

自分の好きなことについて話したいという気持ちはよくわかります。誰もがそのような気持ちを持っているでしょう。それを尊重しつつ、円滑にコミュニケーションが出来るような支援がこういう場合必要なのでしょう。

 

学習障害のサポート

引用元記事はこちら

~以下一部抜粋~

学習障害のサポート
 ゆうきさん本人も、学習障害があって支援が必要だ。3年生の段階でカタカナが書けず、日常で使う簡単な単語もうろ覚えだった。机の前に、座ることはできる。一回も宿題を提出したことがないのに、学校では「いい子」という評価だった。同じクラスに、かなり暴力的な子がいて、先生は、その子にかかりきりだったそうだ。

 鈴木さんが学校に相談しても、「困っていないので、支援は必要ない」と言われた。行政の施設は、学校経由でないと利用できない。鈴木さんは、独自に福祉施設に依頼し、保護者の了解を得て検査を受け、学校に「こういう傾向がある」と知らせた。みんなと同じ量の宿題はできないので、減らしてもらうためだ。

 ついに学校は動き、学習障害の専門員を頼み、ゆうきさんの授業の様子を観察した。それから宿題を減らしてもらえたものの、一時だけでまた通常の量に戻った。

 居場所では、スタッフがマンツーマンでゆうきさんに付き、一緒に学校の宿題に取り組む。ゆうきさん本人も変わり始め、「やらなきゃいけない」という気持ちになった。2時間かかっても、宿題をやり遂げようとする、その気持ちを優先しているという。

 鈴木さんは、保護者と学校に「支援学級に入るのも、ゆうきさんにとっていいのではないか」と伝えた。本人は「今の友達との関係がいいから、入りたくない」と答えた。子ども自身が決めることが一番重要だが、それまでに周りの大人がその子のためにどんな話し合いをして、どんな選択肢を用意できたかという過程も大切にしている。

 居場所が利用できるのは、小学6年生まで。これから、居場所を卒業後の「アフターケア」事業が、行政の予算に盛り込まれる予定だ。ゆうきさんが中学校に行っても、ときどきは居場所に来たいと話している。鈴木さんは、ゆうきさんが進む中学校と、入学前に個別に相談する約束も取り付けている。

------------------------------------------------------------------------------------------------

本文中にあるように、実は学習に困っていても本人が真面目で授業にも熱心に取り組んでいるが故に見逃されてしまうケースは少なくありません。さすがに「困っていないので支援は必要ない」とまではいかないでしょうが、なぜかテストの点数が取れず、担任もどのようにしたらよいかわからないままになっている、というのは今でもあるのではないでしょうか。なんとなく「学習に困難があるのだろうな」とは感じつつも具体的な支援にまで手が回らず、放課後に少し教える時間を作ったりモジュールの時間を使ってわからないところを教える、といったことで精いっぱいだと思います。

最近は学校でもコグトレをクラス全体で取り組んだり等、医療のノウハウが学校現場でも使わられることが増えてきました。しかし担任、もしくは学年団で出来る支援は限られているのかもしれません。通級は週に一回です。学習障害の専門知識を持った学習支援員を設置したり、SSWとの密な連携などがまだまだ必要なのかもしれません。「どこにそんな予算が!」と言われそうですが。

自分のやりやすい方法で!

じゃんぷの自立学習の場には「おしえてください」「てつだってください」カードがあります。これは援助要求のしにくい子どもがそれをしやすいように、と口で言わなくてもこのカードを渡せばいいんだよ、と置いているものです。

ただじゃんぷに通う子ども達はコミュニケーションの得意不得意はあるもののみんな言葉での機能的コミュニケーションが可能な子ども達なのでこちらの意図とは反対に「このカードは一体…?」となっていた子もいたようです。

なので自立を始める時に「先生に聞きたいことがある時に使ってください。いらない人は先生に返してください。」と最初に示し、子ども達がどのような形で援助要求をするかを自分たちで決めさせました。すると自分がどう援助要求をしたらよいかをわかったようで、自分たちなりの方法で聞くようになりました。

ただ方法を提示するのではなく、複数提示し、子ども達が自分で取捨選択をし、それぞれのやりやすい方法を考える良い機会になったのではないかと思いました。

子どもなりの見通し

去年の12月頃から、じゃんぷに通うX君が「今日の宿題は自立の時間だけじゃ出来なさそうやから個別の時間にしてもいいですか?」と聞いてくるようになりました。

その子は算数に苦手意識を持っており、「わからん~!」となることが多いです。(といってもやり方を整理すればすぐに出来るのですが…)

彼が「個別の時間に宿題してもいい?」と聞くときは決まって「算数の宿題が筆算の計算20~30問」の時です。基本的に問題なく出来るのですが、彼からすると一目で見て量が多いと「うっ…」となるようです。それよりも文章問題や分数、図形の問題が不得意なのですが、そういう問題の時は「今日は問題数少ないから大丈夫!」と言って実際に直面したときに「教えてください」と聞いてきます。

つまり彼は「量が多い時は困っている」と自己理解をしているようです。本質的には違うのですが、今はそれでもいいのかなと思っています。彼なりに見通しを持ち、「こういう時は助けを求める」ということが芽生えてきているのでまずはそこを大切にしています。その中で「今日はどんな問題なの?」「今日は宿題自立で出来るって言ったけどどんな問題なの?見せて~」と整理していき、彼の自己理解に繋げられたらいいな、と思っています。

ひらがな聞き取りテスト

ずいぶん前にMIMについてこのブログで取り上げました。(めざせ読み名人!! : 2022/04/22)

ひらがなの拗音、促音が3、4年生でもまだあやふやな子も中にはいます。ふと筆者が教員だった頃に学校で取り組んでいたことを思い出しました。

「ひらがな単語聴写テスト」といい、京都市の小学校全体で取り組んでいました。(おそらく今もしているはず。)これは標準化されている『平仮名単語聴写テスト』(村井敏宏氏)と、『多層指導モデル MIM』(海津亜希子氏)を基に、京都市の景山功一先生(元向島南小学校教諭)が作成されたものです。 

これをした時、筆者のクラスの中にテストの点数がそこそこ良く、授業態度も真面目で勉強もしっかり頑張っていたある一人の子が「ほかいどう」「しゅぱつ」と促音をほとんど間違えており、驚いたことを今でも覚えています。

この時恥ずかしながらMIMのことなど全く知らず、ただただこれの補充プログラムに沿って放課後にその子の指導をしました。今考えるともう少し工夫出来たのではないかと反省しているのですが…

こういった「目立っていないが困っている子ども」を見つけるための工夫が各自治体でも取り組まれています。「ひらがな聞き取りテスト」もその一つです。ただこのテストは「そもそも書けない子」への支援がないので万能という訳ではありませんが…しかし学習に悩んでいる子、悩んでいることに気づいていない子を見つけ出し、一人でも多く適切な支援を受けて学習出来ることが何よりも一番です。

京都市が取り組んでいるひらがな聞き取りテストについてはこちら

「今度はこおり鬼!」

 「いっしょにあそぼ!」(2023/2/7)で紹介した支援学校小学部のPさん。友だちのことが大好きで、今日は友だちと遊べるかな?と思いをはせて帰ってきます。すてっぷに着くと、まずは自分や友だちの予定が書かれているホワイトボードを確認。下校時間の都合でPさんが先に公園に行くことが多いのですが、友だちと遊べることを心待ちにしていて、「〇〇くん、もう来る?」と職員に尋ねる姿も見られるようになってきました。

 友だちとの遊びは、職員が支援しながら行っています。鬼ごっこは職員との1対1からスタート。最初は逃げるだけだったのが、タッチされたら鬼が交代して、今度は自分が追いかけるということが理解できるようになってきました。職員が付いて、友だちと一緒に鬼ごっこすることにも最近取り組んでいて、今は「こおり鬼」にチャレンジしています。鬼の交代がなくPさんにとって分かりやすい中で、こおりの人を助けたり、逆にこおりになっているところを友だちに助けてもらったりと、友だちと関わりながら遊んでいます。

 先日のこと、Pさんは一足早く大きなU公園へ行き、友だち達は学校が終わって集まり次第、近くのV公園へ行くことになっていました。すてっぷに帰ってきたPさんはいつも通りホワイトボードを確認。するとPさんは、「1番U公園、2番V公園!」と職員に伝えました。最初にU公園に行って職員と遊び、次にV公園に行って友だちと遊びたいと伝えたのです。Pさんが自発的に伝えられたことを職員はほめ、友だちの来る時間に合わせてU公園からV公園に移動しました。V公園は比較的狭い公園で、「田んぼの田」をすることに。Pさんはいつもの鬼ごっこのように田のエリアに気づかず逃げていきます。ですが職員がPさんに田のエリアを注目させると、友だちの動きをまねながら、田のエリア内をぐるぐる逃げ回るようになりました。次は大繩での八の字跳び。これも始めはその場跳びになっていたのですが、後半は友だちの動きをまね、外から縄に入ろうと伺うように。職員がタイミングを教えることで、見事縄に入って一度跳んでから外に出るという、八の字跳びの動きができて、友だちと一緒に続けることができました。

 学校が違っても一緒に遊べる場を作れることが放課後等デイサービスの強みの一つだと紹介してきましたが、そこで発揮される子どもの能力のすごさには改めて驚かれるばかりです。それと同時に、その機会を逃さないためには、適切に支援できる能力が必要であり、職員としては身を引き締まる思いがします。Pさんの保護者の方によると、Pさんは家でも姉妹やその友だちも意識して、いっしょに遊ぼうとする姿が見られるようになってきたそうです。Pさんを初め、すてっぷの子どもたちが豊かな放課後を過ごせるよう、励んでいきます。

算数障害スクリーニング検査

今年の1月に発売された『算数障害スクリーニング検査 ~適切な学習指導は正確なアセスメントから~』(熊谷恵子・山本ゆう 著)を購入し、読みました。

本書は算数障害の背景、具体的事例、そして算数障害のスクリーニング検査用紙がついています。算数の困難がある子ども達の中には知的能力は低くないものの、認知能力のアンバランスがあり、学習障害の中の算数障害である場合があります。これらの認知能力のアンバランスさについてはWISC-VやK-ABCⅡ等の知能検査の中で明らかになることが多いですが、本書の検査でも同様に知ることが出来ると感じています。

本書の検査では子どもの算数に関する認知のアンバランスの傾向をおおまかに捉えることが出来ます。数処理が苦手なのか、数概念なのか、計算なのか…等々。それぞれの苦手への具体的な支援のポイントも書いてありました。

家庭での子どもの苦手の把握だけでなく、学校の教室で取り組み、グレーゾーンだと思われる子どもの苦手を教員が捉えるために使用してもよいかもしれないですね。