正しいコミュニケーション学習
お話の出来ないU君は、何かをお願いするとき片手で頭を押さえてお辞儀をします。それがとてもかわいい仕草に見えるので、大人はついついリクエストしていました。新しく入ってきたスタッフがその様子を見て悪気はないにしてもリクエストしているのは疑問に思うと言ってくれました。
おそらくこの行動は、最初は大人が頭を下げるように手で押さえて教えていたのが、いつの間にか、自分の手で頭を押さえてお辞儀するようになったのかもしれません。
彼は今PECSのフェイズ3で要求物を選んでお願いができるようになっています。それでも、大人があの仕草を求めて自然に待ってしまうタイムラグがあるので、お辞儀も続けてするのです。それは良くないだろうというのがスタッフの意見です。確かに、可愛いからと言ってこちらの基準でお願いのオプションを求めるのはおかしな話です。今まで怒ることで要求が叶うと思っていたU君が自発要求していているのですから、そのことを第一に喜んであげて、早く要求のものを渡してあげてほしいのです。
同じように、VOCA(音声出力ボタン)の練習中の子に、大人は「ただいま」とか「ありがとう」などから教えたいと思うのが人情ですが、まずはボタンを押せば自分の要求が叶う事がVOCA練習の1丁目1番地です。つまり「おやつほしい」とか「喉乾いた」とか「おかわり」「もっとほしい」です。これが結び付けば、自分の意志で言葉(ボタン)を選ぶ方向に結びつきます。大人の求めていることと子どものコミュニケーション学習の順序は違うのです。