落ち着いたのは薬のせい?
半年前まではすぐに怒ってぶちぎれていたE君が、薬がうまく合って、ここ3か月以上友達にやさしくするようになったと以前掲載(友達ができる薬?01/07) しました。ただ、いまだに本人は自分が優しくなれたのは薬のせいだと言います。先日もE君がそういうので、「薬のせいじゃない、薬はきっかけを作っているだけで、変わろうとしているのはE君自身だよ」とスタッフは伝えたというのですが、うまく理解している感じがしないと報告していました。
当事者の発達障害理解のためには、子どものための心理学的医学教育が欠かせないと言われて20年近くたちますが、医学とついているせいで医者がやることと思われたり、教育とあるので忙しい医者に教育の暇なんかないから学校ですることと思われていたり、どちらも押し付け合って前に進んでいないのが実情です。結論から言えばその子の関係者みんなでやるのです。月一度しか診察を受けない子なら、その間は、学校や家庭、療育機関の関係者が行うのです。
告知と間違えられている向きもあります。疾病告知は医師にしかできない仕事ですが、心理学的医学教育は告知後の当事者への取組です。治療と言えば治療ですし教育と言えば教育です。大事なことは科学的な根拠に基づいて発達障害の特性や服薬の内容を説明し、定期的にフィードバックを得ていく取組です。もちろん、医療と教育と福祉は連携してお互いの情報を出しあって、自分たちはどこを請け負うのか決めておく必要があります。もちろん重複することもありますが、同じ情報を当事者には提供する必要があります。
衝動的な行動はどういう脳の働きから起こるのか、それは服薬だけでとまるものか、本人の役割は何か、周囲の人の支援は何かということを少しづつ本人に提供し、いずれは減薬しどうしても不安なら頓服程度で済むようにしていく目標を伝える必要があります。医師も親も教員も支援員も心理士もこれらについて連絡しあってどこまで進めるのか決めておく必要があります。これまた、誰が音頭を取るのかでもめるのですが船頭多くして舟山上ることにならないように、通常は医療サイドが音頭を取るのが定石ですが、医療側の動きがないなら、他のサイドから働きかけても子どもにとって不利益がないなら進めていくべきだと思います。