すてっぷ・じゃんぷ日記

2の声でお願いします

Mさんは、最近送迎車から降りて事業所に入る時「コンニチワー!」と絶叫します。2学期になってからですが、うるさくて聴覚過敏の子の攻撃ターゲットにならないかヒヤヒヤしています。すてっぷでの対応はとりあえず強化はしないという消極的な意味でのスルー作戦です。しかし、他の場所で大声に反応して強化してしまうこともあるし、反応がないとさらに行動が激しくなるバースト行動を誘発する可能性もあります。案の定、日に日に絶叫挨拶は大きくなっていきました。

そこで、事業所の玄関に入る前に職員が予告をすることにしました。「Mさん、こんにちわは2の声でお願いします」と声のレベルメーターでの提示をしました。職員の声も2の声よりもさらに落としてヒソヒソ声でお願いしてみました。すると、玄関に入るとMさんは職員と同じように小さな声で「コンニチワ」と言ったのです。つまり、Mさんは玄関に入ったら「コンニチワー!」と絶叫するのが、お決まりの行動になっていただけだったのです。何か特別な思いがあって絶叫していたわけではなかったのです。

私たちは、不適切な行動には私たちに何か訴えるものがあるという対人関係上の理由を想定してしまいます。しかし、「2の声で」とお願いすれば従ってもらえるくらいの行動だったということです。「こんにちわ」と玄関で言うのは間違った行動ではありません。ですから、私たちは、この行動を止める理由はありません。ただ、適切な音量というものがMさんにはわからないので、皆が反応する大音量になったのではないかと推測しています。

つまり、挨拶したら反応が返ってきて1セットだという認識です。このセットを完成させるために大声を出せば何らかの反応が大人からあったと言うことかもしれません。ASDの子どもたちの世界は、よく考えてみると、なるほどなぁと頷かされるとてもシンプルな理由があります。明日のMさんの挨拶対応は2の声作戦で行きましょう、適切な音量なら視線を合わせて優しくコンニチワを返しましょうと、全員で意思統一しようと思います。