チェックリストで忘れ物確認
すてっぷに来ている子どもは、程度や方法によっての違いがありますが、覚えることが苦手な子が少なくありません。仲のいい友だちでも名前を覚えられず、つい「お前」と言ってひんしゅくを買ってしまう子もいれば、伏せられたカードの数を覚えられず、「神経衰弱で遊ぼう」となると「ぜったい嫌だ!」と参加できない子もいます。そして覚えることが苦手な子が特に失敗体験を積んでしまうことが忘れ物です。
忘れ物をしてしまうのは、上記の覚えられないことが要因の一つですが、それ以外にも(あるいはそれと関連したり、重複したりですが)、他のことに気を取られてしまう、雑音などで気が散ってしまう、書いたり読んだりが苦手でメモの習慣がつかないといったことが挙げられます。いずれにせよ、他人(大人)からの「忘れ物あるよ!」という声掛けが続けば、おのずと忘れ物への恐怖感がつのっていきます。
それを防ぐ方法の一つは、自分で忘れ物に気づけるようになることです。そのためにすてっぷでは、帰る前にチェックリストを自分で使えるように取り組んでいます。チェックリストには、すてっぷで使う(または置いておく)基本的なものがイラストといっしょに書かれています。また自由欄を作り、その人の(その日の)持ち物に合わせて記入できるようにしました。そしてルーチン化して自分で使えるようにするために、帰る準備ができたら自分が乗る送迎車の職員に、チェックリストを見せるようにしました。
この1年ほどの取り組みで、多くの子は自分でチェックリストを使い、自分で忘れ物確認ができるようになってきました。買い物学習で買った大好きなゼリーを家で食べたいからと、すてっぷの冷蔵庫に入れたまま忘れて帰ってしまった子も、次の時にはチェックリストに書いてあるゼリーの文字に気づき、帰る前に「ゼリー出してください」と言えるようになりました。
自立的にできるということが、何よりも自信につながっていきます。そのためには大人からの声掛けだけでなく、「視覚優位」「ルーチン化に強い」といった、その子の強みを生かした支援が役立つのではないでしょうか。「忘れ物をした」という失敗体験からでは次のチャレンジがしにくいからこそ、「忘れ物確認が自分でできた」という成功体験を積んでいってほしいと思います。