注意されたことは忘れる?
Q君が「事業所に早く着けばタブレットでゲームする時間伸ばすって約束だったよね」と職員にいうので「それはQ君が勝手に言った事で約束はしていないよね」「約束は双方が合意しないと約束って言わないよ」と懇々と職員が話すにつれて、Q君の顔色が暗くなっていき「約束したやんけ」とうめくように呟いて塞ぎ込んだ様子で事業所に入っていきました。
Q君は、こうした記憶違いがよくあり、それを大人から訂正されても翌日には忘れていることが多いです。あたかも記憶を飛ばしているようにも見えるのです。しかし、一方で服薬調整が成功したこの半年間は、自分の感情のコントロールがとても上手になり、友達もQ君はこのごろ怒らなくなったと評価しています。残っているのはこの思い違いと、注意されたことが記憶に残らず、注意されるとおなかが痛くなることです。
逆に、褒められたことで翌日にその行動を忘れることはありません。どうやら、注意されてブルーな感情に落ち入ると、記憶が残らないようです。友達と興奮してディスりあってお互いにあそこまで言うことはなかったなという結論があっても、次の日また同じように喧嘩していることが多々あり、周りの子どもは「また同じ事言って」と次第に相手にしなくなるのですが、Q君は気づいていないことが多いのです。
Q君は気分が崩れてしまうような失敗経験は学習が成立しないようです。良かれと思ってQ君を安易に注意するよりも、あらかじめ約束をして、うまくできたことをほめて、良い経験の学習を成立させることが大事なようです。職員にも、Q君には苦言よりも誉め言葉と頑張った彼へのリスペクトが重要だと話しています。Q君が背負ってきたこれまでの体験が、嫌な気分から記憶を飛ばす癖を作っているなら、これからは良い気持ちで学んだ記憶を増やしていくことを支援しようと言うことです。