当たったらホームラン!
「ぼく、野球苦手やねんなぁ…。」とつぶやいたのは、小学生のBくん。Bくんは野球に限らず、苦手だと思っているものや遊びが多く、また拒否しやすい傾向があります。すてっぷに来た1年前くらいから、野球にも少しずつ取り組んできました。当時、職員がBくんに苦手な理由を聞くと、「ぼくは、投げることが下手やねん。」「グローブでボール も取れない。」「バットで打つこともできない。」といった否定的なイメージが。それがこの1年取り組んできた中で、少しずつ抵抗なく遊べるようになってきて、ティーバッティングも以前より打てるようになって喜ぶことが増えました。友だちから「キャッチボールしない?」と誘われても、「ぼくは、絶対しない!」と強く拒否していたBくんでしたが、最近では、誘われると「いいよー。」と返事してキャッチボールに向かう姿も見られます。
先日も、友だちと一緒にティーバッティングをして遊んでいました。Bくんのバッティングも上達しましたが、他の友だちも上達していて、この日は友だちがホームランを連発。「ホームランやー。すごいなぁ。」と感心するBくん。それに続けてとバッティングにチャレンジしましたが、その日の調子はあまりよくなく、友だちほどボールを飛ばせませんでした。バッティング後、「ぼく、野球苦手やねんなぁ…。」と、久々のBくんのつぶやき。見るとBくんは肩をがっくり落としていました。
そこで職員は一計することにしました。次のティーバッティングの取り組みの日。普段は公園やグラウンドなどの広く空いた場所で取り組みますが、その日は高架下のコンクリートの壁の前にティーを置きました。壁までの距離も、普段のホームランの距離の半分くらい。いつもと違うセッティングに子ども達には?が浮かびます。職員は「今日は壁に当たるとホームラン!」と説明すると、子ども達は狙え!ホームランと言わんばかりに次々とバッターボックスへ。Bくんも意気揚々とバッティングにのぞみ、1回目は3球中1球が見事壁に! 「ホームランだよね?やったー。」と喜ぶBくん。2回目では、なんと3回とも打ったボールが直接壁に当たって3連続ホームラン!「3回連続や!(ヤクルトスワローズの)村上選手みたいや!」とBくんは大喜びでした。
普段のティーバッティングでは、やった!ホームラン!と言っても、小学生の遊びのことですので、プロ野球みたいにフェンスを越えたといった視覚的にわかりやすいものではありません。Bくんも、これはホームラン?と疑問に思うことが何度もあったでしょう。今回Bくんがホームランを打てた!と実感できたのは、「当たったらホームラン」という視覚的にわかりやすいルールにしたことが大きいと思います。いつもの遊びとは違うやり方やルールにチャレンジすることで、普段とは違う楽しみが生まれます。そこで成功体験を積めたり、感じた事を職員や友だちに伝えたりすることも、子どもの力になっていくのではないでしょうか。