みんなちがってみんないい
ワンダー 君は太陽(映画)
「ワンダー 君は太陽」という映画が2017年に上映されました。先天性の疾患で顔立ちが人と異なるオギーは、生まれた時から何度も顔の手術を繰り返してきました。10歳になって学校へ通い始めたオギーは、勇気を出して同年代の子どもたちの中へ入っていきますが、オギーの顔をじろじろ見たり、避けたりするクラスメートばかりです。ある日、勉強が得意なオギーは、理科の授業でクラスメートのジャックに自ら話しかけ、二人は仲良くなる。オギーは持ち前の強さと家族の温かい支援によって、学校を楽しみ、居場所を作りつつありました。しかし、ハロウィンの日、オギーとジャックの仲を裂く出来事が起きます。
オギーの姉・ヴィアは、オギーにかかりっきりの両親が自分を見てくれないことに、ずっと寂しさを感じていました。さらに親友ミランダとも上手くいかず、孤独な日々を感じています。「オギーは太陽。私たちは皆、その周りを回る惑星」と、ヴィアは自らを形容します。オギーの友達・ジャックや、ヴィアの親友・ミランダの思いや悩みついても、語られます。この映画は障害を持つ人だけでなく、周囲の人々にもスポットを当てた映画の構成になっています。
本作は評価が高い一方で、一部「障害者を利用した感動の押し付け」といった批判もあるようですが、群像劇という形で、多角的な見方を提示する映画です。邦題の「君は太陽」は、オギーだけを指すのではなく、周囲の人たち一人一人も、それぞれの人生においては太陽である…という意味のような気がします。
この作品は、障害者が障害を持っているというだけで、あるいは持っていることを含みにして、「感動をもらった、励まされた」と言われる場面を描いているという批評があります。そこでは、障害を負った経緯やその負担、障害者本人の思いではなく、積極的・前向きに努力する(=障害があってもそれに耐えて・負けずに頑張る)姿がクローズアップされているというのです。「清く正しい障害者」が懸命に何かを達成しようとする場面を取り上げることを「感動ポルノ」というそうです。
日本においては、2016年8月28日にNHK Eテレが『バリバラ 障害者情報バラエティー』「検証!『障害者×感動』の方程式で感動ポルノを取り上げ、裏番組に当たる24時間テレビを批判しました。英国BBCは1996年、障害者の「困難に耐えて頑張る」姿ばかりが描写されがちなことに対する抗議運動を受けて「障害者を“勇敢なヒーロー”や“哀れむべき犠牲者”として描くことは侮辱につながる」というガイドラインを制定しています。日本社会においても一般にもこの「困難に耐えて頑張る」ことで納得するような、隠された安易な差別意識があり、これは「覗き見」への興味であり「人の不幸」見たさのことであるというのですが、それはあまりにもひねくれた見方ではないかと思います。良いものは感動できるし、そうでないものは感動できない。表現の受止めはそれだけでいいと思うのです。