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スクールカウンセラー配置3万件も不登校減少つながらず

スクールカウンセラー配置3万件も不登校減少つながらず

11/4(木) 【産経新聞】

さまざまな理由で学校に通えない小中学生をケアしようと学校を起点に子供や保護者の心理的なサポートを担う「スクールカウンセラー(SC)」の配置が全国の自治体で広がっている。一方で、令和2年度の不登校の児童生徒の数が19万6127人と過去最多となり、SCの増加が不登校の減少に必ずしもつながっていない。財務省も国の事業の改善点を探る調査でSCの資質向上の必要性を指摘するなど、SCの制度自体の改善を求める声も上がる。

文部科学省は平成7年度からSCの配置を始め、その職務を「不登校や、いじめなどの問題行動の未然防止、早期発見および対応」などとした。配置件数はほぼ毎年増え、令和2年度に計画された配置は3万件超。一方、同省の調査では不登校の小中学生は平成24年度から毎年増え続けている。

不登校増加の背景には、無理をして登校しないことも選択肢の一つと捉える社会認識の変化もある。だが、いじめの認知件数も25年度から令和元年度まで毎年増加。2年度は減少したが、新型コロナウイルスによる休校などが要因とみられ、SCの配置の成果に疑問符がつく状況にある。

文科省は「個別に見れば、SCのサポートで不登校から学校に復帰した例もある」と評価。一方で、ほとんどの自治体では1校あたりのSCの勤務日が週1日以下のためきめ細かな対応が難しいとし、SCの人数や勤務日数を増やしたい考えだ。

だが、SCが常駐して常に子供たちを見守り、保護者にアドバイスできる環境があれば不登校の防止につながるとはかぎらない。全国で唯一、SCを全市立中学に常駐させる名古屋市では、段階的にSCの常駐配置を始めた26年度から、不登校の生徒が毎年増え続けているのが実情だ。

財務省では毎年、各省の事業から計数十件を選んで有効性や効率性を調べる「予算執行調査」を実施しており、今年度はSCが対象になった。この調査では自治体への聞き取りも行われ、多くの自治体が「SCの資質向上が課題だ」と回答。これを受け、財務省が9月に公表した調査結果では、文科省に対し、SCの配置効果を検証する際の基準を示して効果的・効率的な配置ができる仕組みを求めるともに、「現在配置されているSCの資質の向上が最重要事項」と指摘した。

■専門資格の創設 検討が必要

なぜ、スクールカウンセラー(SC)を頼れる環境があっても、安心して学校に通い続けられる子供が増えないのか。元中央教育審議会副会長の梶田叡一氏(心理学・教育研究)は「SCという固有の資格の創設を検討する必要もある」と指摘する。

SCに特化した国家資格はないが、臨床心理士の資格を持っているケースが多い。一方で、梶田氏は「臨床心理士とSCとでは必要な技能が異なるということが理解されていない」と話す。

臨床心理士が医療機関などで担うカウンセリングでは、相談者の話を傾聴してアドバイスはしないのが一般的。一方で文部科学省はSCに対し、児童生徒にカウンセリングを行い、保護者に問題解決に向けた助言をするよう求めているが、話を聞くだけで助言しないSCが目立つという。

2年前の夏、当時中学1年だった長女(14)が体調不良を訴えて学校に行かなくなった愛知県の女性(53)は、SCと半年間、週1回の面談を続けた。だがSCは毎回、「本人が登校する気になるのを待つしかない」と繰り返すだけで、「何をして待てばいいのかも分からなかった」と振り返る。

焦った女性は、再登校を支援する民間の専門家を頼った。そこでは学習のつまずきが原因と判断され、長女は算数の復習や生活リズムの改善などに取り組み、3学期から学校に通えるようになった。今も明るい様子で登校しているという。

30年以上にわたり不登校の児童生徒の復帰を支援する明治学院大の小野昌彦教授(教育臨床心理学)は「SCの人数は増えたが、専門性の低い人も多い」と感じている。保護者がSCを頼り、面談を重ねても具体的な分析やアドバイスもなく、やがて子供が完全な不登校になる-。そんなケースが後を絶たないという。

こうした状況の背景には、SCの養成体制の脆弱さがある。SCに特化した養成は行われておらず、各自治体が採用後に開く研修会は講演会などが多いため、実践的な指導法を学ぶのは難しいのが現状だ。梶田氏は「SCになる前に大学などで履修する専門的なカリキュラムをつくることも必要ではないか」としている。(藤井沙織)

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スクールカウンセラー、先生以外の大人が学校で子どもの支援をするのは大事なことです。財務省はコストパフォーマンスをいうのでしょうが、スクールカウンセラーとは不登校予防人材では決してありません。親や友達、先生以外の人に聞いてもらえる環境が学校にあることが大事なのです。日本は先進国の中で教育予算の財政投資が最も少ない国です。そういう意味では、安上がりの学校経営をしてるのだから、不登校もいじめも虐待も減らなくて当たり前と言ってもいいかもしれません。

記事にある中学生の学力問題を民間で見つけて不登校が解決されたという事例は、学力問題を見落としたスクールカウンセラーの責任ではありません。学力問題は小学校時代からあったはずだし、それを見過ごしているのは担任をはじめ学校の責任です。彼女がLDかどうかは分かりませんが、どの学校にも特別支援教育コーディネーターを兼任ですが配置していますから、読み書きに躓きがあれば通級指導教室教員などチームで深刻なケースは扱っているというのが建前です。しかし、この機能がうまく働いている中学校は片手で数えられるほどしか知りません。

昔から、子どもの発達や学習障害のことを知らず、傾聴だけの臨床心理士がやってきてもそんなに効果は上がらないし、心理士が個人の秘密を守るということを機械的に優先するので、心理士から子どもの情報が支援チームに流れないという致命的な問題が言われ続けていました。一方で、心理士は学習内容や学級経営には首を突っ込まないでほしいという教員側の保守主義もあって、心理士を含めた支援チームが形成できないという課題を未だに抱えている学校は少なくありません。スクールカウンセラーはもっともっと必要です。学校の抱えている風通しの悪さを解決もせずに、スクールカウンセラーに不登校対策の責任を押し付けて人件費削減の理由にしないでほしいです。

新資格「子ども家庭福祉ソーシャルワーカー」案 専門家からは異論

新資格「子ども家庭福祉ソーシャルワーカー」案 専門家からは異論

2021年11月5日 【朝日新聞】

児童虐待による死亡事件が後を絶たないなか、子どもや家庭の支援に携わる人材の専門性を高めようと、厚生労働省は5日、新たな資格「子ども家庭福祉ソーシャルワーカー」の案を有識者らでつくる専門委員会に示した。ただ、国家資格の位置づけでないことなどから反対意見もあり、結論は先送りとなった。

政府は児童虐待への対応強化に向け、児童相談所で働く児童福祉司を2022年度までに2千人増やす計画だ。人数を増やすことと併せ、長年の課題になっているのが専門性の向上で、子どもや家庭福祉の分野で新しい資格をつくることが検討されてきた。

厚労省が示した案では、いずれも国家資格の「社会福祉士」か「精神保健福祉士」を持つ人が、児童虐待への対応や母子保健といった教育課程を終えれば、「子ども家庭福祉ソーシャルワーカー」に原則認定する。認定は民間団体が担う。当面の経過措置として、こうした分野で4年以上の実務経験がある人も、認定されるようにする。

この日の専門委は、新たな資格を国家資格にすることや、社会福祉士などの保有を条件としない独立型の資格とすることを求める委員もおり、紛糾。「国家資格ではないのに子どもに携わる専門職に必要な資格と法律上、本当に位置づけられるのか」という反対論の一方、今の国家資格へ上乗せする形は「採用する側の行政からは(何でもできる)オールマイティーの人材が期待されている」と賛成する声も上がった。資質向上には、短期間で異動する自治体の人事運用の見直しが必要とする意見もあった。

厚労省は来年の通常国会に関連する改正法案の提出をめざしており、年内にも結論をまとめたい考えだ。(久永隆一)

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児相で働く児童福祉司は「社会福祉士」か「精神保健福祉士」が任用されます。どちらも、「児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度(児童・家庭福祉論)」か、「現代の精神保健の課題と支援」でさらっと児童問題に触れるだけで、現代の児童問題を総合的に扱う知見を与えられているとは言えません。任用前の講習では「子ども虐待対応の基本」も1日講義を聞くくらいです。従って、厚労省が言うように専門性を持った職員が必要なのは言うまでもありません。争点になっている、国家資格か否かという問題は現状では大した問題ではないようにも感じます。それよりも、足しげく家庭訪問する職員を増やすことが、虐待の抑止には効果的だと思います。

児童問題は、家族に国家権力が介入して最悪の事態を予防する場合があります。親が子どもを養育するという親権を奪うわけですから、間違いがあってはなりませんが、この間の死亡事件を見ていると親権を奪うのに慎重になったというより、職員や上司がぐずぐずしていて素早く決断できなかったというケースばかりです。家庭内暴力があったなら過去の事でも警察に通報すればいいし、近隣住民が子どもの悲鳴を聞いたなら警察と一緒に自宅に踏み込むべきです。さらに、児童虐待のフットワークを悪くしているのは、都道府県管轄の児相と、市町行政の児童問題を扱う部署の連携がぎくしゃくしていることです。

市町行政の子ども家庭課等の虐待事案担当者は相談の窓口であり、児相に連絡する前捌きのようなことをしています。児相の職員ですら勤務5年で半数以上の職員が他部署に交代していきますが市町も同じようなものです。この職員同士で連携するのですから上手くいかない連携部門も当然出てきます。ケースで上手くいかない理由をお互いに擦り付け合う姿もあります。専門性の問題ではなくお互いの面子の問題だったりします。こうして考えてみると現場のリアル感と霞が関の会議には相当の隔たりを感じます。昨日もスクールカウンセラーが増えているのに不登校が減らない理由はカウンセラーの専門性の問題よりもそもそも学校内の連携ができない風通しの悪さではないかと書きましたが、こちらの専門性論議も同じように思います。

障害者の性被害の訴え届くか 「罪の新設」議論、法制審で本格化

障害者の性被害の訴え届くか 「罪の新設」議論、法制審で本格化

2021/11/8 【西日本新聞】

性犯罪を適切に処罰するため、刑法の規定を見直すかどうかの法制審議会(法相の諮問機関)の議論が本格的に始まった。立場の弱さや不十分な判断能力に付け込まれて性被害に遭う知的障害者らを想定した「脆弱(ぜいじゃく)性や地位・関係性を利用した罪の新設」も論点となる。抵抗したり、被害を訴えたりすることが難しい上、訴えても「証言に一貫性がなく信用できない」などとされ、泣き寝入りしてきた障害者の声は届くのか。(玉置采也加)

「嫌って言いたくても怖くて言えなかった」「我慢しちゃった」。福岡県内の知的障害のある20代女性は言葉少なに振り返る。

同県久留米市の障害者施設に通っていた女性は2017年、所長だった40代男性からわいせつな行為を受けたと訴える。元所長側は当時、取材に対して「お互い好きだった結果」などと主張。女性が住む自治体は18年、元所長の行為を障害者虐待防止法に基づき性的虐待と認定。久留米市も障害者総合支援法などに基づき施設を調査、指導した。

一方、県警久留米署は昨年1月、強制わいせつ容疑で元所長を福岡地検久留米支部に書類送検したが、不起訴処分に。地検支部は「起訴に足る証拠がなかった」と説明した。

女性は同10月、元所長と施設運営法人に慰謝料を求め、福岡地裁久留米支部に提訴。現在も係争中だ。

女性の母親は「娘はずっと苦しんでいる」と話す。4年たっても女性は「男の人は怖い」と顔を曇らせ、元所長に似た男性を見かけた日は涙が止まらないという。

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家族らによると、女性の知的能力は小学校中学年程度。警察に事情を聴かれた際、一貫した説明をすることが難しかったとみられる。

久留米市の障害者施設関係者は、知的障害者が苦手なこととして、状況判断▽意思の伝達▽記憶の定着-などを挙げる。自覚しないまま性被害に遭う例もあるとし、女性のケースについて「知的能力は10歳前後なのに、検察は実年齢で判断した」と疑問視する。

法務省によると、18年度に「嫌疑不十分」で不起訴になった性犯罪で、被害者に障害があった事案は60件。内訳は、精神障害26人▽知的障害25人▽発達障害7人▽身体障害2人。「供述に看過しがたい変遷あり」など、証言の信用性が疑われた。

長崎総合科学大の柴田守准教授(被害者学)は「現行制度は犯罪が成り立つ構成要件として供述や証言を重要視しており、障害のある被害者の特性や、強い立場にある加害者側との関係性に配慮できていない」と指摘する。

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性犯罪に関する法制審の部会は10月下旬、初会合を開催。「施設職員と障害者」「教師・指導者と子ども」のように、優越的な地位や関係を利用した性行為を処罰する規定の必要性などを話し合う。

今年5月に報告書をまとめた法務省の検討会では「障害者が生活を依拠している人物からの行為は犯罪としてよい」「障害者虐待防止法の中で検討すべきだ」など意見は分かれている。

性犯罪などの捜査に詳しい元検察官の江藤靖典弁護士(福岡)は(1)判断能力や意思表示能力が十分でない人の場合、同意の有無や犯罪の成否の判断は難しい(2)障害者との性行為を一律に処罰すれば、障害者の性的自己決定権の制限につながりかねない-などの懸念を示す。その上で「法制審で多角的に知恵を出し合い、被害者が理不尽に泣き寝入りせずに済む法制度を実現してほしい」と求める。

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施設職員や学校教員がサービス利用者である子どもや女性に手を出すこと自身が社会モラルを逸しており、これに対する法制化に二の足を踏む方が常軌を逸しています。まずは支援したり指導したりする立場にある者との性的関係を禁止すれば問題は大きく解決の道に進むと思われます。もちろん、市民社会の中でこうした職権関係のない障害者の性被害は明らかになっておらず、メディアに報じられる事件は氷山の一角です。社会の中で障害者への性犯罪をあぶり出して断罪するのは、元検事が言うように難しいのかもしれませんが、まずは第一歩を踏み出すべきです。

職員や教員の場合は懲役刑以上の罪にするべきです。性犯罪が発覚しただけで彼らは社会的地位を失うのだから罰金刑までで良いという声もあります。しかし、現行の制度では未だに性犯罪をした職員や教員が年月を経てほとぼりが冷めれば再任用される可能性があるままです。法制化を押しとどめたのは、罪を償えば職業選択の自由があり人権の平等性を担保するという硬直化した憲法観です。性犯罪者には二度と子どもや女性と関わる職権を与えてはならないと思います。罪を反省し自分を客観視できたのなら、また同じ職に戻ろうなどとは普通は考えないものです。

起訴に足る証拠が当事者証言で曖昧な場合が多いというなら、裁判には代理者を立てることを認めればよいと思います。性犯罪や虐待事案専門の法曹関係者を代理者にすれば良いのではないでしょうか。被告人弁護士の追及に知的障害者が怯んで前言を変えてしまうのはむしろ当たり前のことです。法廷のような周囲の視線を全方位から感じる場所で堂々と被告の性犯罪を証言できるほうが不自然です。知的障害者の他の被害においても公判証言は困難と思われる場合が多いですが、特に性犯罪においては格別の配慮が新しい法律の中に組み込まれるべきだと思います。

小学校でいじめについて考える集会 新潟見附

小学校でいじめについて考える集会 新潟見附

11月08日【NHK】

いじめのない学校づくりにつなげようと、8日、見附市の小学校でいじめについて考える集会が開かれました。

見附市の今町小学校ではすべての児童が参加していじめについて考える集会を毎年開いていて、8日は全校児童およそ400人が参加しました。
集会では6年生が司会を務め、学校のいじめ防止の一環で、友達のよいところを書いたカードを校舎の階段の壁に貼る取り組みの意義について説明したほか、友達が嫌なことをされているのを見たときにはどうしたらいいかを児童らがその場で話し合っていました。

さらに、県がすすめる「いじめ見逃しゼロ県民運動」のサポーターである見附市出身のタレント、今井美穂さんが、自分の個性を大切にして自信を持つことの大切さなどを話していました。

文部科学省によりますと、昨年度、県内で認知されたいじめの件数は1万7千件あまりで、新型コロナウイルスにより学校が休みとなったりした結果、前の年度からおよそ3000件減りましたが、1000人あたりの認知件数は77.1件と、全国の都道府県で4番目に多くなっています。

6年生の女子児童は「集会ではどんなことがあってもいじめはダメだということを伝えたかったです。人を褒めてあげることでいじめはなくなると思います」と話していました。

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こういうストレートにいじめの撲滅を掲げた児童集会をしている様子をあまり聞きません。確かに学級など小さな単位で、いじめ事象のたびにホームルームなどで調査と反省を促すようなものは聞きますが、どうすればいじめがなくせるのかを低学年から高学年まで一堂に会して児童会で行うスタイルはベタ過ぎてやらないのかもしれません。

もちろん児童会の指導は教師の手が入っていますが、教員が言うから従うのではなく、学校ムーブメントとしてやろうという意気込みが感じられてかえって清々しいです。中野の小学校でのICTいじめの自殺も、旭川の中学のいじめが原因での凍死自死も、大人ばかりが右往左往して児童生徒の動きがまるで見えないのが気になります。

いじめは社会の問題であることを示すには、問題が起こってからではなく、子どもの知恵を集める前向きなムーブメントは有効だと思います。前向きな議論のある大集会は、マイナスの同調性を蹴散らすパワーを持っています。もちろん、児童や生徒のいじめ撲滅運動だけで事が解決するわけではないですが、事件が起こるたびに大人だけで立ち回って、当事者以外は関係がないのだという風潮を変えていく動きが大事だと思います。

 

元看護師は「更生の道が相当」 無期懲役判決で横浜地裁

元看護師は「更生の道が相当」 無期懲役判決で横浜地裁

2021/11/09 【産経新聞】

横浜市の旧大口病院(現・横浜はじめ病院、休診中)で平成28年、入院患者3人の点滴に消毒液を混入し中毒死させたとして殺人罪などに問われ、9日の判決公判で無期懲役(求刑死刑)を言い渡された元看護師、久保木愛弓(あゆみ)被告(34)。横浜地裁の家令和典裁判長は量刑理由について「公判で自己に不利益な事情を含め素直に供述し、反社会的な傾向も認められない」とし、「死刑を科することがやむを得ないとまでは言えず、生涯をかけて更生の道を歩ませるのが相当だ」と述べた。

家令裁判長は久保木被告の責任能力について「犯行時は(発達障害の一種の)自閉スペクトラム症の特性があり、うつ状態にあった」と認定した一方、弁護側が主張した統合失調症の影響は否定。「『勤務時間中に自身が対応を迫られる事態を起こしたくない』という犯行動機は了解可能で、違法な行為であることを認識していた」として、完全責任能力があったと認めた。

被害者3人のうち1人が終末期患者ではなかったことに触れ「苦痛の中で生命が奪われ、被害結果は極めて重大」と非難。「看護師としての知見と立場を利用した犯行で計画性も認められ、動機も身勝手極まりない」と断じた。

一方、犯行動機の形成過程については、情状酌量の余地を認めた。被告は「終末期医療を中心とする大口病院であれば自分でも務まる」と考えて勤務を開始したが、患者の家族から怒鳴られて強い恐怖を感じ「視野狭窄(きょうさく)的心境に陥った」と認定。「このような動機形成過程には、被告の努力ではいかんともしがたい事情が色濃く影響している」と指摘した。

また、公判の経過とともに被告が贖罪(しょくざい)の意思を深めていったことも重視。「被告人質問では償いの仕方が分からないと述べていたが、最終陳述では死んで償いたいと述べるに至った」と認め「他者に対する攻撃的傾向もなく、更生可能性も認められる」と結論づけた。

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判決は、『勤務時間中に自身が対応を迫られる事態を起こしたくない』と、家族と対応するのを避けるために薬殺したと殺人の動機をASDの特性から説明しました。そして、被告を「公判で自己に不利益な事情を含め素直に供述し、反社会的な傾向も認めない」し更生可能性があるとして無期懲役を言い渡しました。ASDの人たちが陥りやすいロジックを公判は分かりやすく説明したと思います。

福祉・医療・教育の対人サービスで、対人関係に困難のある人が働くことになると、強烈なストレスを感じることになります。相手の立場に立って言動を考える事がとても難しいからです。その結果、対象者からも同僚からも上司からも叱責や嘲笑の対象になりやすいです。そして、誰に相談することもできず真面目さゆえに限界まで働き続け、やがて精神を病んでいきます。

もっと早く、幼少期からASDが見つけられ、支援を受けて成功した経験を持つことができれば、きっと違う進路を見つけ、真面目さと几帳面さが活かされる職種につけたはずです。医療や教育職は試験のハードルは高いのですが、記憶勝負の所があり対人関係の躓きを見つけるようなシステムを現段階では持っていません。椅子に座った採用者との面接で対人関係障害を見抜くことは不可能に近いです。

しかし、向き不向きという職業適性が客観的には判断ができたとしても決定するのは本人です。だからこそ、小さな時期から自己フィードバックのトレーニングを受け、支援を享受する様々な体験が必要です。自分の適性と働く将来の姿を考えていくキャリア教育は全ての子どもに必要ですが、中でもASDの子どもたちには最も必要な教育だと言えます。ASDの特性に関わる公判の過程を知れば知るほど、発達障害のある人の支援について幼少期からの途切れない支援の重要性を感じます。

15歳少女「エスカレーター右側しか乗れない」苦悩

15歳少女「エスカレーター右側しか乗れない」苦悩
「どいて」「なんで右に立ってんだよ」と言う人も

2021/11/10 【AERA dot.】

埼玉県で、10月1日に全国初となるエスカレーターに立ち止まって乗ることを求める条例が施行され、ひと月が経った。条例には賛否両論があったが、世の中には身体に障害を抱え、エスカレーターの片側にしか立って乗れない人もいる。その当事者である15歳の少女の現実と、両親の願いとは。

横浜市に住む高校一年生の林姫良(はやし・きら)さん(15)。生まれてすぐに脳に異常が見つかり、生後6カ月で頭部を手術した。左半身に麻痺があり上手に動かせず、歩く際はバランスを取りながら足を運ぶ。握力も、左手はとても弱い。

本来、2人乗りのエスカレーターは2列に立って、手すりを持って乗るという前提で設計されている。異常で緊急停止した際の転倒を防ぐためだ。だが、日本や世界各国では急いで歩きたい人のために片側空けの習慣が根付いており、過去には鉄道会社やメディアが乗り方のマナーとして推奨していた時期もあった。2000年以降はメーカーや業界団体などが立って乗るよう呼び掛けるようになったが、片側空けをマナーのようにとらえている人は今も多い。

身体を守るのも簡単ではない
姫良さんの住む横浜市を含め、関東は左側に立ち、右側を歩く人のために開けるのが一般的になっている。だが、姫良さんは左手でしっかり手すりをつかめない。

「もし姫良が左側に立っていて、エスカレーターが異常などで緊急停止したら、間違いなく転倒してしまいます」
父の正和さん(52)と母の太佳子さん(54)は、そう口を揃える。歩いて追い抜く人にぶつかられたら、転倒してしまう可能性もあるという。さらに転んだ時に手をついて身体を守る、ということも姫良さんには簡単ではない。

姫良さんは、「右側にしか乗れない」のだ。
脳の病気のためうまく思いを表現できないことがある姫良さんだが、エスカレーターに右側空けの慣習があることは理解している。

実際、小さいころから右側に立っていて、後ろから舌打ちされたことはしょっちゅうあったという。時には「どいて」と怒られたり、「なんで右に立ってんだよ」と言い捨てて去っていったりする人もいた。

誰が姫良さんを注意するか、後ろにいたグループがひそひそ話していたこともあった。本来の乗り方からすれば、右側に立つことは正しく、姫良さんが怒られる筋合いは何もないのだが、現実はそうではない。

エスカレーターに乗る際はいつも、親が左側、姫良さんが右側に並んで立つようにしている。後方から来た人に、事情を説明することもあるためだ。だが、姫良さんが小学校低学年くらいの頃、突然、左側の太佳子さんの一段下に移ったことがあった。

「小さいなりに、怖いと感じたんだと思います。大人だって右側に立つのは勇気がいることで、今でも後方から足音が聞こえると、怒られはしないかと私自身も怖く感じますし、長いエスカレーターだと不安がより大きくなります。姫良は今も人が多い時や、後ろから歩いてくる人の気配を感じると、遠慮して左側に移ろうとしてしまうんです」

と太佳子さん。人が多いときはしばらく乗るのを避け、タイミングを見計らって空いてから乗るようにしているという。

ヘルプマークを着けてはいるものの、効果はてきめんとは言えない。
「姫良は、ぱっと見では障害があるとはわからないので、右側に立っている事情が何かあるんじゃないかとはなかなか想像してもらえないんだと思います」(太佳子さん)

立ち止まって乗る文化の定着願う
埼玉県の条例が各地に広がって、エスカレーターに立ち止まって乗る文化が定着してほしいと願う両親だが、一筋縄ではいかない現実も理解している。取材中、正和さんと太佳子さんは「すぐには無理だと思う」「難しいですよね」という言葉を何度も口にし、考え込んだ。

苦悩は尽きないが、それでも両親の思いは切実だ。
姫良さんは赤ちゃんの時に、ハイハイした経験がない。左半身が麻痺していたため、できなかったのだ。物心もつかない幼少期から懸命のリハビリを続け、やっと立って歩けるようになった。

正和さんは当時を思う。
「リハビリの先生がスパルタで、小さな姫良はいつも泣きながら頑張ってきたんです。あのときの頑張りがなかったら大きくなっても歩けなかったでしょうし、エスカレーターにも乗れていなかったと思います。

今でも、ペットボトルのふたを、持ち方を工夫して開けるようになるなど、ハンディを抱えながらも頑張って生きていて、親として娘から教わったことはたくさんあります。だからこそ、障害がある人のことを知ってほしいですし、ハンディがある人が安心してエスカレーターに乗れる時代が来てほしいと、声を大にして言いたいんです」

太佳子さんも続ける。
「いつか姫良が親の手を離れる時、世の中がどうなっているか。姫良だけではありませんが、難しい障害がある人がいるということを、ひとりでも多くの人に知ってほしいです。知ってくれれば、時間はかかったとしても、少しずつ社会も変わっていくのではないかと思います。

エスカレーターを歩かない文化が根付くことが一番の希望ですが、まずは右側に立っている人がいたら『邪魔だ』と思うのではなく、何か事情があるのかなと思ってくれる社会になってほしいと願っています」

社会が変わらなければならない
当の姫良さんは、がまんしがちで弱音を吐かない性格もあってか、エスカレーターを歩く人たちへの考えや自分の願いは、今のところ言ったことがない。これからも、言わないかもしれない。

ずっと静かだった姫良さんだが、取材が終わった後、正和さんが「親がいなくなっても姫良はひとりで頑張っていけるかな」と聞くと、ニッコリ笑って「うん!」と答えた。

泣きながらリハビリを頑張った赤ちゃんが大きくなり、ずっと頑張り続けながらいつか親元から巣立つ。その時、どんな社会を作れているだろうか。(AERAdot.編集部・國府田英之)
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急ぐ人は元気なんだから、階段を走って上がりましょう。エスカレータ前にでっかく書いておけばどうかとすら思います。そもそも、右側空けの関東圏、左空けの関西圏、2014年のアンケート調査によると、「左に立つ」が57%、「右に立つ」は13・1%で、左に立つ関東方式が圧倒的に多く、右に立つ関西方式は少数派だそうです。

関西の左空けは、1970年開催の大阪万博のとき、他国の慣習にならって右立ち、左空けを呼び掛けたらしいです。最初の左空けは第二次世界大戦中で、ロンドンの地下鉄構内が防空施設とされたことからです。ドイツ軍の空襲で急ぐ人のために左側を空けたことに始まっています。それが世界各地に広まり、左空けの国が多かったために、日本もそれに合わせたそうです。

一方、東京では大阪よりも遅く、1980年代後半から片側空けが始まりました。左立ち、右空けが一般化したのは、古来の左側通行の歴史にしたがったからだと考えられています。日本の左側通行は、武家社会から始まったとされます。刀を持った武士が右側通行をすると、鞘さやが当たってトラブルが起こりがちだったため、これを防ごうと左側通行になったそうです。どうでもいいトリビアでしたが、時代や文化によって片方の空け方もまた文化なのです。バリアフリーの時代なのだから、エスカレータは止まって乗り、急ぐ人は階段を使えという文化になって当然です。

特別支援学校のICT環境整備を共生社会モデルに 文科省会議

「特別支援学校の環境整備を共生社会モデルに」 文科省会議

2021年11月11日【教育新聞】

教育格差特別支援教育
特別支援教育の新たな学びに対応した学校施設の在り方を検討する、文科省の有識者会議の第2回会合が11月11日、オンラインで開かれ、ICT活用を見据えた学校施設の整備をテーマに、中野泰志臨時委員(慶應義塾大学経済学部教授)が報告した。中野臨時委員は、特別支援教育でのICT活用は困難さを軽減するためにいち早く進められてきた経緯に触れながら、視覚障害や聴覚障害など多様な障害を包括できるインフラ整備が教室内外で必要だと指摘。「特別支援学校の環境整備は共生社会のモデルとなるように進めるべきだ。一般社会をけん引する特別支援学校を目指してほしい」と提言した。

オンラインで行われた特別支援教育の施設の在り方を検討する会議
新たに設置された「特別支援教育の在り方を踏まえた学校施設部会」(部会長・上野淳東京都立大学名誉教授)では、▽特別支援学級と通常の学級の子供が共に学ぶ活動への対応▽ICT利活用による特別支援教育の質の向上▽医療的ケアが必要な児童生徒への対応――などについて議論を進めている。

国立特別支援教育総合研究所で主任研究官などを務めた中野臨時委員は、視覚障害や聴覚障害などのある児童生徒にとって、AI活用のナビゲーションシステムなどを搭載したICT機器は欠かせない重要なツールになっているとして、教室だけでなく学校のどこでもスマホでネット接続できる環境が必要だと指摘。こうした障害種別に応じて必要な機材が活用できる「情報保障」として、高速ネットワークや電源に加え、遮光カーテンや静かな環境への配慮も求められると強調した。

さらに非常時に聴覚障害者に文字で知らせるデジタルサイネージや、主体的な学びのためには寄宿舎などでも学習できるネット接続環境なども必要になると説明。「多様な障害を包括できる環境整備を進めて特別支援学校を共生社会のモデルとし、一般社会をけん引する形を目指してほしい」と提言した。

 これに対する質疑では、委員から「小中学校の1人1台端末は進んでいるが、障害のある子供に同じタブレット端末が配られがちで、配慮についてどう考えるべきか」「ICT環境整備について、普通学校での展開と特別支援学校の展開についてどう考えるか」といった質問が出された。

中野臨時委員は「障害の特性に応じた端末が配られているかというと、必ずしもそうなっていない。通常学級に在籍する子供も授業場面で使えるような個別の合理的配慮は不可欠だと思う。また、ICT環境整備については、理念として特別支援学校が模範になるべきで、まず重点的に整備して地域の学校に広げる形が望ましいと思う」と答えた。

同部会では、来月にかけて先進的な施設を視察した上で議論を重ね、今年度中に報告書を取りまとめて、同省の学校施設整備指針の改訂に反映させる。

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中央官庁で話されている事と、地方の現場では意識の格差を大きく感じてしまいます。高等部の生徒には10年以上前から、就学奨励費として親の代理で学校が申し込めば誰でもタブレット端末が購入できるようになっていましたが、それでも学校のWiFi環境が悪くてわざわざ無線ルーターを教室までに持って行って接続するような事が続きました。それでも、小中学生には配布されず、少ない学校予算の中からタブレットや周辺機器を購入していました。

今でも、学校中がWiFi環境にある所は数えるほどだと思います。それなのに、個々の障害にカスタマイズされたICT機器だのAI活用のナビゲーションシステムだの防災に役立てるデジタルサイネージ(電子看板)だのを学校環境に用意してはどうかという提案が現場とはあまりに違ってぶっ飛んでいて驚きました。そもそも、個性や障害に応じてカスタマイズするにもその知識を持つ人が配置されていません。

現場とかけ離れたあまりにも能天気な話とは思いましたが、障害のある人の学校にこそICTが縦横無尽に活かされることは賛成です。全ての子どもが端末を携帯し個性に応じてスケジュールやコミュニケーションデバイスとして使えるならどんなに素敵だろうと思います。ただし、教員の「便利遣い」ではさすがにカスタマイズやオーダーメイドの道は開けません。テクノロージーの普及と開発にはその道のプロフェッショナルが各校に複数は必要です。

妊娠、相談しやすい環境必要 知的障害者への支援提言

妊娠、相談しやすい環境必要 知的障害者への支援提言

2021年11月16日 【朝日新聞】

約2年前に佐賀県武雄市で起きたトイレのタンク内に出産直後の女児の遺体が放置され、知的障害のある母親(当時23)が逮捕された事件を受け、県が設置した検証会議の報告書がまとまった。妊娠を自覚しながらも周囲に相談できないまま命が失われた事件を検証し、障害者への支援や性教育の必要性を提言した。

報告によると、母親は2019年12月に武雄市の自宅トイレのタンクに女児を産み落とし、死亡させた。約1カ月後、トイレのくみとり業者が遺体を見つけ、事件が発覚した。20年、死体遺棄の罪に問われた母親に対し、佐賀地裁で懲役1年2カ月執行猶予3年の判決が言い渡された。

県はこれを虐待事案に認定し、大学教授や弁護士、医師など6人で構成される検証会議を設置した。当事者やその家族、保健所や特別支援学校などに聞き取りを重ね、20年11月~21年9月に6回にわたり会議を開いて報告書をまとめた。

報告書によると、母親は通った特別支援学校の同級生の男性と卒業後に交際。事件の4カ月前に検査薬で妊娠を確認して男性にも伝えたが、互いに誰にも伝えなかった。母親と父親となった男性には軽度の知的障害があったという。

報告では、①知的障害者に対する性教育と支援のあり方②知的障害者とその家族に対する支援の問題点、を挙げている。

①では、特別支援学校では妊娠したら病院を受診し、身近な人に相談するように教えられていた。だが今回、母親は妊娠が体に与える影響や赤ちゃんを育てることを理解できておらず、たとえ性教育を受けても日常生活で行動に移すのは難しい場合があると指摘している。

②では、複数の関係機関が母親の妊娠に気づけなかったことを指摘し、障害者の障害の度合いが中程度なら福祉サービスが充実している一方で、軽度の場合は本人からの相談が無いと手厚い支援をする機会が少ないとしている。

例えば、障害が軽度だったこの母親の場合、特別支援学校卒業後、国と県が業務を委託する障害者就業・生活支援センターが中心となって支援することになっていた。だが、あくまでも就業に関する支援が主で、本人からの相談が無いためプライベートな問題にまで踏み込んで支援して妊娠を把握することができなかったとした。

また、母親と同居する姉と弟の一人も母親より重い知的障害を抱えており、「比較的障害が軽度な母親に(対し母親の)両親が関わる機会が少なく、母親は両親と気軽に相談などができる関係性が築けていなかった」としている。

こうした事情を指摘したうえで報告書は、特別支援学校の卒業時に相談先をまとめた冊子を配ったり、妊婦らを支援したりする「子ども家庭総合支援拠点」を全市町に設置するように働きかけていくことなどを提言。相談しやすい環境づくりの必要性を訴えている。

報告書を受けとった県の担当者は「事案は母親が父親以外の誰にも相談できず、周りも誰も気づかないなかで起きた。相談しやすい環境や、周囲が気づいて支援に結びつく態勢の整備に努めたい」と述べた。(松岡大将)

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学校での性教育は時間通りにスライドを見せて一方的に説明してしまえば終わりというものが少なくありません。家庭や地域の生活感が薄れ、出産・子育て、介護や看取りは日常の事なのに子どもの目からはどんどん遠ざかります。今回の事件は知的障害があるからというより、カプセル化した家族や人との関係性の希薄さが原因で、そういう意味では最近の児童虐待の原因と同じように思えてなりません。

障害者や青年が相談しやすい環境といっても、私が相談員だから話してみなさいという人が何人いても話す気にはなりません。支援は小さな時期から何度も享受して上手くいった体験があるから関係性があるから受けようという気になるもので、いきなり深刻な内容を相談するには障害がなくてもハードルが高すぎます。まずは、身近な細かな困り事で何度も支援を受け相談して良かったという経験が大事です。

高等部の軽度知的障害と言われる生徒の場合、中学までは一応自立して生活やコミュニケーションができていた人も少なくありません。通所支援も受けたことのない人もいます。進路先の支援学校は高等学校よりははるかに仕事や暮らしのことについて教えてはくれますが、実生活のことまでは対応ができません。また、卒業してアフターケアーが業務として行われるわけでもなく、仲間も相談相手にはなりにくい場合が多いです。

子どもの頃から、支援を受けながら大人になっても相談できるようには現在のサービスシステムは設計されていません。生活を支える時には子どもの時に支援してもらって上手くいった経験がものを言うのではないかと思います。人生の伴走者としての支援サービスのシステム設計が必要なのだと思います。

加賀まりこ「自閉症の息子と向き合うパートナーを見続けて・・・〈生まれてきてくれてありがとう〉」

加賀まりこ「自閉症の息子と向き合うパートナーを見続けて。だから言いたい〈生まれてきてくれてありがとう〉」

11/16(火)【婦人公論】

現在発売中の『婦人公論』11月24日号の表紙は女優の加賀まりこさんです。11月より公開の映画『梅切らぬバカ』で自閉症の息子を持つ占い師・珠子を演じている加賀さん。自身のパートナーの息子も自閉症であることから、どうしても入れたかった台詞があるそうで――。発売中の『婦人公論』から記事を掲載します。
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◆パートナーの息子がもってきてくれた役
私はテキパキして口調が強いけど悪気はないとか、しっかり者の役が多かったけど、今回の映画『梅切らぬバカ』は自閉症の息子をもつ地味な占い師。夫がいなくなってから二人で生活していて。隣の家族や地域との関わりを通じて、息子の自立を模索していくのね。

偶然なんだけど、パートナーの息子が自閉症なの。監督(和島香太郎)に45歳になるそういう子どもがいるって話したらびっくりしてた。私たち夫婦のことをまったく知らないからね。

あの子がこの役をもってきてくれたのかな。塚地武雅さん演じる息子の忠さんのような感じだもん。いつもあらぬほうを見てるのよ。視線を合わせないの。でも目はすごく綺麗。澄んだ瞳で、純真で。その子がいたから映画で塚地さんと自然に親子になれたのね。

パートナーと最初に会ったのは、三浦友和さんと共演した1980年のテレビドラマ『しあわせ戦争』。

86年の『男女7人夏物語』では、私が明石家さんまさんの義理の姉役で、関西弁の台詞を猛特訓したの。その時のディレクターだった。

◆監督に「入れてね」って言って
98年の『ハムレット』の公演中に彼と一緒に仕事する話があって、舞台を観にきたの。私が55歳の時ね。「あ、コイツ、いい顔になったなー」って思った。それから「つき合って」って言うんだけど、なかなか「うん」と言ってくれない。

でも彼をノックし続けたの。息子さんのことも、若くして離婚したのも知ってたからね。お母様が年取って弱ってきて、孫の面倒みきれなくなったし、彼の仕事は忙しいし。預けたいと探してたら見つかったの、いい学園が。それが5年後ね、私が60歳。彼、54歳。で、やっと「いいよ」って。(笑)

その学園には両親を亡くした60歳の人も元気に過ごしてる。それを見ると安心よね。救い。どうしたって親は先に逝くからね。忠さんを施設に入れるって決めた時も将来が不安だからだし。

パートナーは障害がある息子と向き合って変わったから、人間としての成長の糧になってるのよ。「息子に感謝ね」っていつも言ってる。あの子のためにと思い、あの子の力になりたくて頑張ったことがいっぱいあるのよね。忍耐強いし、優しい。

私はそれを見てるから、『梅切らぬバカ』で、忠さんに、「生まれてきてくれてありがとう」っていう台詞を言いたかったの、どうしても。監督に台本の段階で、「入れてね」って言って。

この映画を観て、障害がある人たちに優しい眼差しを向けてくれると、やった甲斐があるなぁ。忠さんは作業場でお菓子の箱作ってる。ああいうふうに仕事しながら生きていってほしいよね。

(構成=小西恵美子、撮影=鍋島徳恭)
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京都での上映館はTジョイ京都1館だけですが、月曜でも8割の入りでこの手の映画では良く入っていると思います。主役が加賀まりこ、塚地武雅。脇を固めるのが渡辺いっけい、森口瑤子、徳井 優、高島礼子のベテラン陣ですから安心して観られるというのも観客を動員するのか知れません。

桜切るバカ梅切らぬバカからとったタイトルですが、桜は切ったら木が弱るから切らぬ方が良く、梅は枝を落とせば良い実がなるというのが「常識」だが、邪魔でも梅の枝は切らぬというのが映画のテーマです。グループホームに入れた息子が地域に迷惑をかけ、反対運動につながっていく中で、住民が「私たちはただ普通の暮らしがしたいだけです」と拡声器で訴える声に「普通って何だろう」という疑問が湧いてきます。

障害者を良く知らない人は、障害者は怖い、障害者は自分の近くにはいない方がいいと思い、身近に知った人は、別に近くにいてもいいと思い始める両者のコントラストを映画は描きます。福祉法人の人がいつも申し訳なさそうに住民に詫びているのが辛いのと、塚地さんのASD役が上手すぎて個人的には鼻につくという向きはありますが、どこの街でも起こりうるグループホームをめぐる軋轢ですから是非ご覧になって、「普通」を考えるきっかけになればと思います。

AI❎アダプティブラーニング「すらら」、放課後等デイサービスでの導入が200事業所を突破

AI❎アダプティブラーニング「すらら」、放課後等デイサービスでの導入が200事業所を突破

2021年11月18日【ICT教育ニュース】

すららネットは17日、同社のAI❎アダプティブラーニング「すらら」を導入する放課後等デイサービスが200施設を突破したと発表した。

放課後等デイサービスは、学校に通学中の障がい児に対し、生活能力向上のための訓練や社会との交流促進などを行い、放課後の居場所づくりを推進するためのサービスで、2012年に児童福祉法改正により制度化された。

近年、将来の就職を見据えた就労準備型の同デイサービスが増えており、就労準備には学習支援が不可欠と考える同デイサービス経営者が増えてきていることから、「すらら」の導入が進んでいるという。

また、複数事業所を運営する法人が複数拠点で「すらら」を導入する事例が増えていることも導入校増加の要因になっており、同デイサービスでの導入は約1年半で2倍に増え、11月10日に200施設を突破した。

「すらら」を導入している同デイサービスのスタッフは、学習支援の面では未経験ながらも、子どもたち一人ひとりに寄り添い、多方面から支援を実施。

その結果、子どもたちの学習や意欲に効果が現れ、時間を忘れて集中して学習する児童・生徒の姿が見られるようになった。

未就学児童が2桁の繰り上がりのある足し算まで学習を進め、学習面の不安なく小学校に進学する例や、意思表示はできるものの発話がほぼない中学生が黙々と「すらら」学習を行って成績向上させたといったケースも数多く出ているという。

「すらら」小学校低学年版は、子どもの発達科学研究所の監修のもと、一般の児童はもちろん、学習障がいなどの発達の課題を持つ児童でも取り組みやすく、学力を伸ばしやすいよう、カリキュラム構成や画面の見やすさ、説明の理解しやすさを考慮して制作されている。

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前回の(放課後デイサービスは2類型へ厚労省方針:10/26)でも掲載したように、こうした学習支援をただの「学習塾のような」事業所とみて放デイ認可はしないのか、2類型の一つ「特定プログラム特化型」事業所とみるか境界線は曖昧です。学習支援の面では未経験な職員がICT学習ソフトを用いているのなら特化型とは言えないので、認可を得たいならもう一つの類型である総合支援型事業所の特色の一つとするのだろうと思います。

しかし、放課後のわずか2時間ほどの間に学習ソフトでの支援時間が占める割合がどれくらいになれば「学習塾のような」事業所とみなされるのかは不明です。それでも、下手な学習塾より、学習障害支援も念頭に置いたこの学習ソフトを用いたほうが、はるかに合理的に学習ができる子どもが多いだろうというのは想像に難くないです。ただ、発達性読み書き障害の場合、このソフトがどの程度障害に合わせたカスタマイズができるのかは明示されていません。

今日のICT学習ソフトはインターネットにつながれて、膨大なビッグデーターから学習内容や到達の傾向を類型化して個に応じて支援することが可能となっています。人の手が入らなくてもAIを用いてカスタマイズが可能となってきているのです。そういう意味では、一昔前の、PC学習機とは質的に全く違う学習機器に進化する可能性があります。教育界でもデジタルインフラは海外資本に占有されていますが、学習ソフトくらいはわが国独自のAI学習ソフトが開発され普及することに期待が集まっています。

残念なことにこうしたAIソフトが、様々な力量の人が教えるより有効な場合が多いということが現場では知られていません。学力の低い子どもにはいつも人がついて学習を支援をしてもらっている姿があります。しかし、そのままではいつまで経っても自分で学習に向かうという体制にはなりません。自学自習の経験を積み上げるためにも、良質の学習ソフトが支援現場で利用される機会が増えれば良いと思います。