今日の活動
人の気持ちになる
みんなでおやつ作りをしていた時の事です。R君がおやつ作りに参加せず、暗い顔をしてソファーに寝そべっていました。当然、他の小学生たちは「R君何してるん?」と声をかけます。それを見ていた2年生のS君がみんなにそっと言います。「R君、さっきブチギレて暴れていたから、自分でカームダウンしてはんねん。落ち着けるまでそっとしてあげてな」と。すると、他の小学生たちも「そうなんかー」と納得してR君に声をかけるのをやめました。
2年生でこんなに上手にカームダウンの説明が他の仲間に出来ていることに職員は驚きました。S君は最近通所してきた子どもで、見かけも実際の言動も穏やかな優しい2年生です。こんなに穏やかな子どもの何が課題なのかわからないと、職員から疑問があがっていました。家庭の主訴によると、学校で友だちにいじられるとブチ切れて、その後自己イメージが悪くなって集団参加ができないとのことでした。なるほど、S君はR君の姿を見て自分を投影していたのです。
大人は、子どもに人の気持ちになってみなさいと言いますが、実は簡単なことではありません。人の気持ちになるには、自己体験と他者の様子を重ねた時が最も深く理解できます。もちろん、道徳をテキストとして理解することは理由や規則を理解する6歳前後の発達の力があればできますが、心情として理解するには自己理解や他者理解の力が不可分です。悲しい体験の心情をS君はソファーで落ち込んでいるR君にかぶせました。「そっとしてあげて」と周囲の仲間に促せたのはS君だからできたのだと思います。そして、そんな体験の多い子どもたちだからすっと理解したのは、嬉しいような悲しいような複雑な気持ちになりました。