今日の活動
はしゃいでしまう理由
S君はパート職員が関わるとはしゃいでしまうと職員が言います。何故パート職員だとはしゃぐと思いますかと聞くと、子どもの不適切な行為にパート職員は驚いてしまいオーバーリアクションをするからだという意見が多かったです。つまり、不適切な行動は反応せずにスルーすればいいという事です。このブログでは「スルーはあんまり効果はないよ」と何度も書いているのですが、一度身に着いたものはなかなか変わらないようです。
確かに、不適切な行動に着目して声を上げたり笑ったりするオーバーリアクションは子どもの強化子になってしまい良くありません。しかし、スルーするだけでは何が適切なのか子どもにはわからないままです。そこで、不適切な行動の原因は何かを見つけて、それが注目要求行動なら「遊ぼう」要求を出させたり、それが、暇つぶしの反応なら「ビデオ」とか「タブレット」の要求を出せるようにやり直しを教えます。
しかし、いきなり行動問題爆発の場面ではベテランでも行動修正は難しいです。二人が簡単な交渉を何度も経験していることが大事です。課題が嫌だと拒否したときに、終わったら大好きなビデオ見せるよとか、外とに行きたいと要求したら、この課題をしたら外に行こうとか、もっと簡単な交渉はおやつの場面で「まって」で5秒待つことを指示する等、職員と子どもが交渉で向き合う場面を設定する必要があります。
パート職員さんには交渉は難しかろうと、見守りだけをお願いしている職場は少なくありません。しかし、それでは子どもも大人も適切な関係は結べません。前にも書きましたが、重度の子どもははしゃいでいるのは何も楽しい時だけではないのです。不安な時も興奮してはしゃぐことがあります。
つまり、子どもにしてみれば\適切な交渉の経験のない、つまり、交渉したことを達成して「OK!グッジョブ!」の関係性のない大人は子どもにとっては不安で緊張するのです。それが、はしゃぐと言う行動につながっていることがあると思います。パート職員も常勤職員と同じように子どもと交渉して「すごいね。できるね」の関係をどれだけ作るかが問われているということです。
単位の勉強にいいものがあります!! Y先生のじゃんぷ通信7
単位の勉強に苦しむ子どもたちにいいものがあります!!Y先生のじゃんぷ通信7
じゃんぷに通う子どもたちが宿題を持ち込みます。算数の宿題でお母さんたちが口をそろえて相談されることの一つに単位の計算があります。最初は1~2年生の時計が読めない、時間の計算ができない悩みです。算数科の中では「量と測定」という領域です。低学年の時間、長さ、重さから始まり、中学年の面積、体積(厳密にはL、dLは2年生から)、高学年ではすべての単位換算が出てきます。
ずっと悩み続ける中身です。色々な単位のイメージがない中で、頭の中だけで操作しようとしても、正解なのかどうかわからないので余計に定着しません。中学校に行くと、もうそこは分かりきったものとして授業が進みます。
そこで算数を研究している先生方がある道具を見つけました。 「単位計算尺」というものです。昔の先生は手作りで全員が持ち、授業の中で使っていました。現在いいものが発売されています。(写真参照)乙訓でも今の大学生が小学生だったころは使われていました。
よくかけ算で九九表に頼らないで自分で答えを見つけようと必死で覚えさせる練習になりやすいです。同じような発想で単位換算も道具に頼らないで自分で見つけようと最後は暗記に頼りがちです。まだ定着ができずに悩む時にこそ、いつも正解を示してくれる計算尺を手がかりして解くことで次第に単位の仕組みを理解していきます。
不注意がある子やイメージがわきにくい子、記憶※が苦手な子はこの仕組みがなかなか分かりにくいのです。単位のイメージを押さえながら教えることは大前提ですが、単位が複雑になってきた計算をする時には正解が分かることが大事です。(※ワーキングメモリー:換算単位記憶を呼び出して短期記憶に保持しながら換算作業を行うと、作業記憶が容量オーバーで保持できなくなる)
学習障害や発達障害の子どもたちにとって学習する時に、道具を使いながらもいつも正解が分かって、最後にはなかみの仕組みや手順に結びつけられるような支援になることが重要です。
Y先生手製単位計算尺
ベテランは道具のせいにはしない
中学生のR君、昨年までは学校でスケジュール表を使っていたけど、予定変更でパニックを起こすので今年度はスケジュール表を使っていないと職員が聞いて返す言葉がなかったそうです。でも、それは、学校ではあるある事例です。他にも、絵カードスケジュールを使っていたら、気にいらない絵カードを捨てるようになったから、せっかく作ったのにもったいないから絵カードはやめたとか、勝手に好きな絵カードをスケジュールに入れてかえって教員との摩擦になるのでやめたなど、スケジュールを使ったけど諦めたというケースはたくさん聞きます。
でも、それは、スケジュール支援をしたから生じているのではありません。このブログでは何度も書いていますが、スケジュール支援は、PECSでは交渉スキルのかなり後の方のスキルなのです。また、ASDの子どもはビジュアルドライブと言って、見たものに従属しやすい傾向があって、自分は嫌なのに従う事があって後で怒り出す事例があります。つまり、これは自閉症のビジュアルドライブの特性や、スケジュール支援は交渉スキルの積み上げがないと躓きやすいことを、知らないまま指導して起こっている事がほとんどです。
私たちの事業所でもこうしたケースは何度も出会しますが、先の2つの原因がほとんどです。原因を調べる時に必ず職員に聞くことがあります。それは、子どもの自発表出の要求スキルを鍛えないまま、子どもの理解スキルばかりに注目していなかったかどうか、2つ目は子どもの「些細なお楽しみ」の後回しや変更について、大人との交渉トレーニングを地道に積んだかということです。つまり、子どもが絵カードで驚くほど従うようになったのを良いことに、子どもが要求を伝えるトレーニングや交渉トレーニングを抜きに、大人の思い通りに動かそうとしていなかったか聞くようにしています。
絵カードスケジュールのせいにするのは、腕の悪い職人が道具のせいにするのとよく似ています。道具が悪いからいい仕事ができないと言うのです。良い職人は、どんな道具でも上手に使いこなして、一人前の仕事をするものです。そして、ベテラン職人は半人前の職人に向かって「道具のせいにするより、テメーの腕を鍛えやがれ」と檄を飛ばすものです。ベテランはこうも言います。すぐに何かを作ろうとせず、まずはカンナが曳けるように何度も何度も取り組めと、一人前はいきなりなれるものではないと諫めます。道具のせいにするとは、困ったものです。
約束は守る
言葉のないQ君が通所してきたので、これからすることを伝えました。絵カードで「公園」「ぶらんこ」と「事業所」「おやつ」を示して、公園でブランコした後事業所でおやつにしようという意味です。
公園に行くと、ちょうど雨が降った後だったので、ブランコの下に水たまりができてブランコができずに事業所に帰ってきたそうです。それでは、別の公園でブランコしてきたらどうかと他の職員が指示したそうです。
すると、Q君は事業所を少し出た道路で座り込んでしまいました。それをなだめすかして他の公園まで連れて行きブランコをして帰ってきたそうです。道路に座り込む理由はこの経緯を考えれば明確です。もしもQ君が喋れたらこう言うでしょう。「公園に行って帰ってきたらオヤツだって示したのに、なんでやね~ん!」です。
「いやいや、それはブランコの下に水が溜まってから遊べなかったので、ブランコができる別の公園に行こうとしているわけで・・・」そんな理屈は、すでに事業所に帰ってきたQ君には理解不能です。変更の交渉もなく無理やり連れて行かれたという理解になります。「だから大人は信用できない」とQ君が思っても仕方ないです。
絵カードを示すと言うのは言葉で約束したことと同じです。言葉のわかる子に「公園行って帰ったらおやつにしましょう」と言ったなら、必ず変更の際には、「ごめーん、他の公園行ってからおやつでいいかな?」と聞くはずです。あるいは「なんでやね~ん」と子どもが怒ったら説明して交渉をしたはずです。
言葉だろうが絵カードだろうが約束は守るもので、変更が必要なら交渉するのが世の中のルールです。もちろん変更の交渉をしたからといって、納得してくれるかどうかは分からないですが、それはどの子も同じです。言葉がわからないからこそ、「絵カードを示す大人は信用できるよ」と思ってもらえるように、約束は大事にしてほしいと思います。
動画研修と視覚支援
すてっぷでは、今年度になってからパートの方にも支援方法を学んでもらおうとLINEで動画を配信しています。忙しいので編集したものではなく生で1分間ほどの動画をやりとりします。文章であれがどうしたこうしたと書いてもその場の条件や支援者の間の取り方などがわからないので生の動画の方がわかりやすいです。
主にはコミュニケーション場面について動画をグループラインでやり取りしています。Pちゃんのおやつ場面の動画では、Pちゃんが確実なおかわり合図を出してから食べさせる行動を1分ほど撮影したのですが、Pちゃんのおかわりサインがだんだん強化されてきているのが1分間見ててもわかりました。子どものリアクションを待つことが大事と1分喋っても大して重要性を伝えることはできませんが、「目に物を言わせる」と説得力があります。
唸り声でうるさかったQ君の「うるさい+タブレットなし」カードも、ホンマかいなと思うほどの絶大な効果があることが、「論より証拠」でグループライン全員に配信できています。結局、私たちにも視覚支援は有効なのです。音声言語で意味を全部つかみ取っているわけがないのです。ましてや文字言語でも同じです。読むのが苦手な人は何も利用者の小学生だけではないのです。歳をとればとるほど読むのは面倒になってきます。視覚支援最高!
暗黙の了解
P君に、「公園に行くから、みんなのおやつとお茶をリュックに入れて用意してね」と職員がお願いをしました。素直なP君は「わかったー!」といそいそと、準備を始めました。職員は、「低学年なのに言いつけたお手伝いができて偉いなー」と公園で褒めようと車に乗り込んだそうです。
公園に着いて、「P君、用意したリュックは?」と聞くと「え?事業所にに置いてきたよ」と平然と答えたというのです。「いやいや、おやつとお茶はどこで飲むと思ったの?」と職員が聞いてみると、P君は「????」と言う感じだったっと職員から報告されました。
つまり、P君にしてみれば確かにおやつはリュックに詰めろとは言われたけど、そのリュックを公園に持っていけとは指示されなかったと言うわけです。職員一同「あるある」と大笑いでした。暗黙の了解がわからないので字句通りに行動してしまいやすいのがASDの特性です。P君が悪いわけではないので、今度からは「リュックを用意して、そのリュックを車まで持ってきてね」と付け加えればいいのです。
大人でも、「その子を見ておいてね」と指示を出すと、子どもが色々不適切なことをしていても「見ておけ」と言われたから見ているだけにしたと平気で言われる方もいます。でも、その人だけが悪いと言うわけではないでしょう。ユニバーサルな指示は、「見ていて危険な行動をしたら、その行動を防ぐか応援を呼んでください」と言うべきなのです。と言っても、またその行動の防ぎ方でトンでも支援がありそうですが・・・。
子どもの目標と大人の行動
Oちゃんの支援計画を考える時に、コミュニケーション支援のところで「手を伸ばすなど自分から要求できるようになる」という自発のコミュニケーションの目標を掲げました。Oちゃんは機能的なコミュニケーションはまだできない子どもです。
自らコミュニケーションの存在を意識していない人に「要求できるようになる」という目標を掲げること自身は問題ないにしても、目標達成しなかったときの原因がはっきりするような、支援方法を書くべきだという話をしました。
大人がOちゃんの表情や素振りを読み取って、その時におやつを食べさせたり、欲しいものを手渡したりするわけですから、支援者の「間」が非常に大事になります。以前にも(スナックタイム改めコミュニケーションタイム: 08/26) で、支援者が「食べさせる時間」だと考えてしまうと、この「間」がなくなってしまうから、スナックタイムではなくコミュニケーションタイムと改名しようと書きました。
つまり、本人の目標が達成できるもできないも、支援者の見立てと対応如何だと言うことがわかるように、支援方法に書く必要があるということです。「おやつは、手がおやつに動くか、支援者に視線を合わせてきたら「おやつだね」と言いながら口元に持って行き最後は自分で口に入れる動作を引き出す」などと具体的に書きましょうと話し合いました。
そうすれば、支援方法が正しかったのかどうかが、確認しやすくなるという事です。重度の人や支援が難しい人の場合、目標自体は正しくても具体的にどう支援するのかと言う方法が書かれていないと、延々と同じ目標が続き、支援計画が形骸化してしまうと思うからです。支援は、大人がどう行動するかがカギなのです。
強化子・動機付け
事後評価の会議でM君に靴を靴箱(段ボールBOX)に入れるように取り組んでいるが全くできないと報告がありました。M君は注意が転導しやすく周囲がざわついていたり好きなものが目に着いたりすると気が散ってしまいます。
けれども、郵便物を二階の先生に渡してきてねとお願いすると、移動中に様々な刺激があるのに郵便物を届ける事ができ、「ありがとう、じゃぁ1階のN先生にこれを渡してきて」と再びお願いしても正確に持帰ることができます。これだけの目的行動がとれる人が本当に目の前の靴箱に脱いだ靴を入れる事ができないのかどうか話し合いました。
話し合った結果、何故郵便物は運べるのに自分の靴は目の前の靴箱に入れられないかの推測は二つでした。一つは、部屋に入るときは全員が入ってきて、玄関口がざわつくので気が散りやすいことです。この際、玄関口の子どもたちがいなくなってから、プレイエリアが視界に入らない場所で取組むことにしました。
もう一つは、郵便物が一人で運べるのは、人が好きなM君にとっては二階の先生の場所に行くこと自体が動機になり、先生に会う事が強化子になっているということです。靴をBOXに入れても彼にとっては利得はないので学習しないという推測です。したがって、彼のお気に入り絵本を通所後はすぐに手に取ろうとするで、これを強化子にして、BOXに靴を入れる→絵本を与えるというルーティンで支援すればどうかという話をしました。
障害の重い人にはマンツーマンで介助をすることが多いので、できそうなことでも介助者がやってしまいがつです。実際にできるように支援しようとすれば、動機や強化子を把握して自発行動を引き出す必要があります。支援学校の子ども中心につけられる「個別サポート(Ⅰ)」とは介助行動の加算ではないのですが、日常生活動作が全介助を要する人が対象とあるので、障害を固定化して見てしまいがちです。
休憩・遊び??
よく子どものスケジュールに「休憩」とか「あそび」とか示して「自由にしていいよ」と言う意味で使っていることがあります。でも、これは子どもによっては、何をしていいかわからない事になります。今日は子ども自己刺激の声が大きかったと言う報告があったりしますが、その前にその時子どもがどうしていたのかが大事です。
何かをしていて声が出るなら、貧乏ゆすりとか椅子のギッタバッタンと同じようなものですが、何もしていない時に声が出てしまうなら、暇なので自己刺激をしているか、声を出していると誰かがするべきことを指示してくれる事があるので、「暇なので指示して」という注意喚起かも知れません。
コミュニケーション障害が重い子どもの場合は、後者が多いです。そうであるならば、やり直し行動で絵カードで好きなものを要求する等を教えます。大事なことは、大人が思っている「休憩」「あそび」は目に見えるものではありませんから何をしていいかわからない子が少なくないのです。「休憩」ではなく「忍たまビデオ見る」とか「髭男のアルバムを聴く」「シルバニアンファミリーを並べる」等具体的な余暇の過ごし方を提示することが大事です。
神支援 視覚支援 分化強化
L君はタブレットで遊ぶ時に、「うーうー」と自己刺激の低い声を出しながら遊びます。最近特に声が大きくなってきたので、本格的に唸り声の消去に取り組むことにしました。本人に自覚がないとはいえ、集団生活をする場合は他の人の迷惑も考える必要があります。また、唸り声があるだけで皆から遠ざけられるのは、L君にとってもマイナスだからです。以前にも耳障りな声については(奇声を減らす支援 : 08/06)で掲載しました。
言葉のないL君に自覚してもらうためには「うるさいからやめて」と言葉でお願いしても意味が分かりません。「うるさい」というのは他者の気持ちですから見えません。また「うるさい声」そのものも見えません。これを言葉でお願いしてL君に理解してもらうにはハードルが高すぎます。視覚支援にして絵にするにしても、「うるさい」をどう表現するか「唸り声」をどう表現するか難しいですが、言葉よりは理解してもらえる可能性は100倍あるとは思います。
そこで、L君がタブレット遊びで「うーうー」唸っている時に、タブレットを取り上げて「うるさい顔✕」と「静かにシー顔〇」カードを渡します。絵カードを見て声がなくなったタイミングで、タブレットを返すというやりとりを何回か続けました。すると、タブレットで遊んでいても、ほぼ声がでなくなったのです。「神支援でした」と職員は言います。
視覚支援が功を奏したと言うよりは、応用行動分析で考えると、唸り声を出すと強化子(タブレット)が取り上げられ、唸り声をやめると強化子が与えられるという分化強化※が成功下のだろうと考えています。しばらくこの対応を続けてみようという事になりました。
※分化強化とは、心理学、行動学用語。複数の反応が出現した際に、片方の反応は強化し、もう片方の反応を弱化する事を指す。正しい反応だけを強化していくことで、その行動はより確実になる。