今日の活動
4ステップエラー修正
X君は、絵カードで欲しいものを離れている人に要求できるのですが、弁別ができないために選ぶことができません。例えば、お茶よりカルピスジュースが欲しい、ボールより音楽が鳴る絵本が欲しいなどです。具体物では選べるはずですが(あまり取り組んでいません)カードでは選べそうにないとスタッフがあきらめていたからです。理由は認知レベルが弁別まで達していないだろうということです。本来PECSは「アセスメント(検査)フリー」の支援方法です。健常者を標準にした発達検査器具には反応しなかったかもしれないけれど、それがPECSの成功不成功を判断するものではないという考え方です。
X君は最近拒否が強くなってきたのはいいけれど、拒否だけではその先がありません。何が欲しいのか選ぶことができれば彼の姿はまた変わってくるはずです。具体物でできるならカードでもできるかもしれません。そこでフェイズ3Aに取り組んでみてはどうかと話し合っています。フェイズ3Aは、エラー修正が重要です。子どもが間違えたら教えることは良くありますが、修正方法が人によって違うと子どもは混乱してわかりません。修正方法を統一することでX君のフェイズ3Aのエラーが修正できないか取り組んでいこうと話し合っています。
【フェイズⅢA】
・このフェイズからコミュニケーションパートナーは一人で良い。
・要求カードを2枚に増やす段階。しかし2枚のうち1枚は必要な物、1枚は本人にとってどうでもよいもの(ダミー)にする。ダミーは本当に興味のないものを使うが、大嫌いなものを使ってはいけない。コミュニケーションカードが嫌いなってしまうから。
・欲しいものvs欲しくないもので始めて、欲しいアイテムを手に入れることと、欲しくないアイテムを避けること(分化強化)を覚える。
★ダミーのカードを渡してきたら
・人的強化子は与えずに実物を渡す。ダミーで遊んでしまったら、強化子になった可能性があるので次回からはダミーを変える。また、強化子自体も飽きてしまっている可能性も考えられるため変える。
・正しい(期待する)絵カードをブックから外せた瞬間に「そうそう!」「すごい!」など人的強化子を与える。
★ダミーを拒否したら
・4ステップエラー修正。スイッチの内容は毎回変えること。
・2~3回試行して失敗を繰り返すなら、フェイズⅡへ戻り、時間を経過してから再度スタートする。また、代替方略(絵カードの大きさを変える、カード同士を話す、空白のカードに少しずつダミーを色を加えていく、ダミーカードを小さくし、少しずつ大きさを一緒にするなど)を用いる。
熱がこもりやすい肢体不自由児
毎日夏日の気温となる今日この頃、Wさんの体温を計ると37.8度です。肢体不自由の子どもの中には体に熱がこもりやすかったり、また反対に冷えやすい人がいます。熱が上がったあとWさんは、衣服が全部濡れた様になるまでブルブル汗をかきます。汗を拭いて衣服を着かえ、給水すると体温は下がっていきます。通常は徐々に汗をかいて体温上昇を防ぐのですが、Wさんはこの調節がうまく働かないようです。
発熱の原因として、脳に障害のある子どもの場合、以下のような関連が考えられます。
感染症・感染症以外の炎症性疾患・心因性
↓
体温調節機能不全 ⇔ 発熱 ⇔ 筋緊張亢進
↑ ↓↑
環境の高温 脱水
肢体不自由の人で体温調節機能が弱い人は少なくないです。汗をかけと言う脳からの指示が遅くて熱がこもったり、発熱し汗をかき続けて脱水すると言う悪循環や、発熱が筋緊張を誘発してさらに発熱する場合もあります。
筋緊張の亢進が第一原因であると考えられる場合には、リラックスできるように身体を丸めるような姿勢で横にします。感染や外気温などが原因であると考えられる場合には、アイシング、室温や衣服を調整したりするなど、原因に応じて的確に対応することが重要です。
絵カードスケジュールは何のために貼るのか
V君が久々に通所してきました。V君はトイレの個室が苦手です。原因は分からないのですがドアを開け放っておくか、人が付いていく必要があります。今日も、声掛けなしには行けなかったので、どうすればひとりで行けるんだろうと話し合いました。
考えられることは、トイレへの拒否感もあるが、その繰り返しから大人が促してトイレに行くと言う行動ルーティンが形成されおり、自分で尿意を感じて一人で行ったり、外出の前に自発的に行く行動は形成されていないのではいかという話になりました。それなら、まずはスケジュールにトイレタイムを設定して通所時に示して意識してもらい、忘れているようならトランジッションカードを渡してトイレタイムにまず自ら気づいてもらうことが大事だと話し合いました。
トイレに一人で行くかどうかの前に、まず自分でトイレの時間に気づくことが必要で、大人が必要ならついてきて欲しいと言ってもいいということにしました。ついでに、話はそれたのですが、スケジュールはASDの方のためだけではなく、記憶できない子だからと大人に頼るのではなく、一人で日課を過ごす自立性と自尊感情を育てたいと言う目的から使っているという話もしました。
放デイは何するところ?
近頃五年生のU君が宿題をすてっぷでやらなくなりました。理由を聞いてみると、1.すてっぷは勉強する場所ではない。2.一緒に勉強する人がいない。とのことでした。今までもきっとそう思ってたんでしょうが、5年になってやっと言えた感じです。
すてっぷは狭義で勉強する場所ではないのはその通りです。ただ、高学年の場合は短い放課後の時間を遊びに当てるなら、帰宅してから1時間は勉強時間をとる必要があります。その時間はどこでとるのか彼と話をする必要があります。また、みんなが遊んでる中では自分も勉強する気になれないのはわかるので勉強ルームがあれば30分でも集中して宿題などができるのか話し合う必要があります。子どもが言ったことはそのままにせず、ではどうするのがうまくいく方法なのか話し合って終わらないと、せっかくの子どもの発言をリスペクトしたことにはなりません。
異性とのソーシャルディスタンス・ソーシャルコミュニケーション
高等部のT君は、新しく来た女性スタッフの脚が気になってしかたがありません。吸いつけられるように見てしまい、接近してきます。スタッフが2階へあがると階段の下から「ちょっと、ちょっと、おねーさん!」と下に降りてくるように声を掛けます。
ASDの人は、社会性、社会的コミュニケーション、社会的イマジネーションのそれぞれに質的な偏りがみられる「3つ組の障害」があります。他者と相互的な交流を行うことが困難という社会性の特性。自分の好みのことを一方的に話し続けることや、言葉を字義通りに受け取ってしまう、言葉の裏を読むことが苦手という社会的コミュニケーションの特性。ただ蒐集することだけで満足したり、目に見えない物(イメージ)の共有は苦手という社会的イマジネーションの特性です。こうした特性を持ちつつ、子どもの頃からの特性に合わせた「異性とのソーシャルディスタンス・ソーシャルコミュニケーション」の支援がないと、異性に興味を持った場合、周囲から嫌がられたり怖がられたりすることが少なくありません。
相手の了解なく一方的に近寄ったり、「今はだめ」なら後ならいいんだと思ったり、気に入った部位を見続けたりすることで怖がられて社会参加の機会を失ってしまう人もいます。「異性とのソーシャルディスタンス・ソーシャルコミュニケーション」に、T君と取組んで行こうと思います。
お庭の裸足教育
Sちゃん、公園の砂地を見つけると靴を脱いで走り出します。それはまだいいのですが、川遊びの時も頑として怪我防止のための靴を受け付けてくれません。砂地と水は裸足と決めているようです。
最近はだいぶん少なくなってきたのですが、就学前の施設の園庭で裸足保育を推奨しているところがあります。足裏の感覚刺激は脳への良い刺激となり良い発達の一助になるという昭和伝説です。欧米では、赤ちゃんの頃から家の中でも靴を履き、はだしは風呂と寝るときくらいです。裸足保育で過ごした子どもの身体、認知、情緒面での発達が統計的に有意に高いと言うデーターもありません。どうやら、裸足が良いという科学的根拠はないようです。
就学してきたASDの子どもの中には、砂地を見つけると靴を脱いで走る子が時々います。就学前施設に引き継ぎに行ってみると子ども全員が裸足で園庭で遊んでいたというケースが多いです。ASDの子どもは、場所と行動がセットになり、なかなかそれを変えてくれません。Sちゃんには、公園には遊び靴の入った靴袋を、川遊びには川遊び靴の靴袋を運んでもらい遊びと靴はセットだよと教えるプロジェクトを検討中です。
読み書き指導どうしましょう
自粛開けの新学期が始まって、放デイスタッフはお迎えの際に利用者の子どもたちの担任の先生方に御挨拶をしています。そこで、昨日掲載したような子どもたちの視覚支援による見通しの持たせ方をお互いに交流したりもします。
小学校では、特別支援学級の担任の先生とお話しすることが多いですが、そこで話題になるのが、子どもたちの読み書きの学習の進捗です。全般的に遅れのある子どもには、発達に合わせた課題を与えていけばうまくいくので、そう大きな問題にはならないのですが、発達性読み書き障害が疑われる子どもの場合は、子どもの見方からずれが生じてしまう事が少なくないので、少し情報を交換するくらいでは、今後の学習指導の見通しが持てないことが多いです。
先日もR君の書きの指導についてどうすればいいか、考えあぐねているという話を先生から聞きました。「どうすればいいんでしょうねー」と言われるので、「生活型の放デイは行動の問題については療育的アプローチができます。ただ、学習障害への支援はいくつか提案できますが、取り組みの機会はあまりないので是非学校で取り組んでください」とお願いしました。
読み書き障害の支援の全国的な傾向は東高西低のようです。関西にも大阪医科大学LDセンター等の民間センターはあります。しかし、関東は市川のLD・Dyslexiaセンターが筑波大陣営、四ツ谷のスマイルプラネットは学芸大陣営と連携しています。そして、港区には老舗のディスレクシア支援団体であるNPO法人 EDGE(エッジ)がLD支援の詳細な研修まで引き受けています。そんなわけで、読み書き障害の支援策は民間からの情報量の多い関東の先生方は関西の先生方より良く知っているのかもしれません。関西でも急速に読み書き障害の存在と最新の支援策を広げて現場の先生方に知ってもらう必要があります。
送迎トラブル
毎日放デイの送迎車は、支援学校や小学校にお迎えに行きます。低学年や障害の重い人にとっては、今日はスクールバスに乗って帰るのか、放デイの送迎車に乗ってどこの事業所に行くのか覚えるのは困難です。Qさん、今日も放デイのお迎えでスクールバスに乗るつもりが崩れて大泣きです。
そこで、視覚支援が登場するわけですが、多くの場合の誤解は、視覚でわかるようにしておけば理解できるだろうと考えてしまうことです。もちろんそれでOKな人も少なくないですが、低学年時などはそもそも不注意で、記憶にとどめる時間が短いとか、覚えていたけど違うものを見た瞬間に選択が変わってしまうなどいろいろ課題があります。
こういう人の場合は、教室から「本日の行き先カード」(写真でも絵でもいい)を本人が昇降口まで運んで、乗り場のカード入れにマッチングさせると自分の行動について記憶が保持しやすくなる場合があります。自閉症支援・視覚支援と言ってもその人の状況に応じてやり方を工夫する必要があります。効果があると言われる支援はどんな場合も、個別化してカスタマイズしてこそ威力を発揮します。
学童保育
これまで機嫌の悪かったP君がニコニコして登所してきました。たぶん、学童保育問題が解決したのでしょう。学童保育で、年を重ねていくと子どもの集団の中でそれなりの関係性が築かれていきます。
ところが加配職員がついている場合、本人と子ども集団との関係性が悪くなる時があります。この関係性は微妙なので、スタッフ同士の連携が欠かせません。小3頃から子どもたちは同世代で徒党を組み、いわゆるギャング集団を形成します。ところが加配スタッフの動きが目立つと、この絆がうまく築けないことがあります。この関係性を構築するにはスタッフ自身が集団に直接介入する場合もありますが、子どもだけの群れに本来の意味があるので良い介入とは言えません。ここは、学校の学級集団とは質が違う集団だと言う理解が必要です。
最近の学童保育集団は縦関係が非常に弱いので、少し空気が読めなかったり、タイミングを合わせるのが遅かったりする子どもは、ナチュラルサポートしてくれる先輩がおらず、なかなか集団に入るのが難しくて本人もしんどい思いをすることが多いようです。私たちは、しんどい思いまでしていく必要はないと考えています。学童保育は学校といわゆる地続きなので、学校までが嫌になってしまうからです。もしも、他に方法があるなら、遊ぶため、ほっこりするための放課後を無理して過ごす必要はありません。というわけでP君やっとストレスから解放されてすっきして学校にも登校でき、すてっぷでも機嫌よく過ごせた模様です。
学生アルバイト
N君に、学生アルバイトのOさんに一緒に帰ろうと声をかけて欲しいというと「わかったー♪」と喜んで声をかけてくれました。隣で聞いていたP君は「本当は先生が一緒に帰りたいのとちがうの?」と話しかけてきます。P君も一緒に帰るのがまんざらでもない様子です。
子どもたちにとって、父母や祖父母ほど離れているスタッフと過ごすのとは違い、少し自分の未来の姿がイメージできる学生さんは特別な存在のようです。女子学生の応募が多いのですが、男子学生も募集中ですので、お知り合いの方がおられましたらご連絡ください。
リビング京都西南版のリビング求人案内にも募集要項が出ています。ご覧ください。