すてっぷ・じゃんぷ日記

2024年11月の記事一覧

「野球よせて!」

 じゃんぷでは学習支援のほかに、低学年や高学年のグループごとで、集団活動の支援も行っています。その一つが公園遊びです。公園遊びには子ども達の運動を保障することや、気分転換(活動のメリハリ)などの目的もあります。ですが何より、多くの子どもにとっては社会性・コミュニケーションを育むのにとてもよい機会。集団で行動することや、遊びやルールを友だちと相談して決めること、負けたり鬼ごっこで鬼になったりしたときの気持ちの調整などを支援しています。

 先日も、低学年グループで大きい公園に遊びに行きました。アスレチックでしばらく遊んだあと、Bさんが「おにごっこしよう!」とみんなを誘いました。それに全員が賛成。「なにおにー?」「かわりおに!」「じゃんけんしよう!」と最初のおにを決めてスタートしました。

 ここまでは花丸。でしたが、1年生のCくんがおにになると、一人だけ1年生ということもあり、全然友だちに追いつくことが出来ません。そのうち、Cくんは「やめる」と言って、おにごっこをやめました。代わりにおにになった2年生のDさんもぜんぜんタッチできず、涙目に。そこで職員が残りの全員に声を掛けました。「CくんもDさんも、楽しめていないよ。」すると2年生のEくんが「だって(逃げている)僕らも鬼になりたくないもん。逃げて当たり前やん」と答えます。職員が「みんなで遊んでいるんだから、みんなが楽しめるルールにした方がいいよ」と言いますが、Eくんは「だって」「でも」と納得しません。そこで職員は、「1回お茶休憩にしましょう」と仕切り直し。お茶休憩後、職員からEくんを含めた男の子たちに「野球しよう」と誘いました。はじめEくんは「やらない」と言っていましたが、残りの男の子たちと職員とで順番に野球を楽しんでいると、「寄せて」と自分から寄ってきました。そして友だちと順番にバッティング! 守備やキャッチャーの役割も順番交代しながら、いっしょに楽しみました。

 「だって僕らも鬼になりたくないもん」と答えた2年生のEくん。まだまだ友だちの気持ちを考えたり、気付いたりする力はついていません。日々の振り返りの中で積み重ねていく段階です。この日の事もまた取り出して、Eくん自身が自分の気づきや力になるような振り返りを支援する必要があります。ですがこの日大事にしたのは、楽しむこと。Eくんはおにごっこのことを引きずらず、自分から野球している友だちに「寄せて」と言って一緒に遊び、楽しく野球ができたことで、友だちと楽しい気持ちを共有できました。公園遊びはまず第一に楽しむこと。その中で、様々な課題に少しずつチャレンジしてほしいと思います。

「キーボードください」

 高等部3年生のAくんはすてっぷに来て6年以上が経ちます。発語はほぼなく、来た当初は自分からコミュニケーションを取ることも、大人からのコミュニケーションを理解することも難しいことの方が多かったお子さんです。机のものをひっくり返したり、投げたりしては、大人の反応を見て、ケラケラと笑う姿が、よく見られました。

 来てしばらくしてから、視覚スケジュールと絵カードコミュニケーションに取り組みました。スケジュールは大きい絵カード2枚から、絵カードコミュニケーションは大きく段ボールで作った「ください」カードからのスタートでした。少しずつ取り組みを続けてくる中で、スケジュールカードは3枚、4枚と増えてきました。「ください」のコミュニケーションもだんだんと成立しだし、次は離れている人へ、次はいつもと違う人へと、コミュニケーションの幅が広がり出しました。絵はどうやって見分けてるかな? イラスト? 色?と職員も工夫しながら、少しずつ見分けて使い方を覚え、使える絵カードも増えていきました。

 今では、スケジュールカードは6枚ほどの見通しを持ち、自分で終わった取り組みのカードを外して、次の活動が何かわかって、自分できりかえるようになりました! また絵カードコミュニケーションも、いろんなカードがしまってある自分のブックから、今はおやつと分かってヨーグルトカードを取り出して職員に渡しに行きます。そしておやつが終わったら、次はキーボードカードを取り出して、職員に要求しています!

 少しずつ成長してきたAくん。こだわると動けなかったり、気が散って寄り道してしまったりと、まだまだ職員に頼ることはあります。ですが、これだけ自立してコミュニケーションを取れるようになってきたのは、Aくんが積み上げてきた力です。卒業まであと5ヶ月ほど。次の場所でも活躍できるよう、職員と一緒にできることを増やしていきたいと思います。