すてっぷ・じゃんぷ日記

2023年3月の記事一覧

自分のやりやすい方法で!

じゃんぷの自立学習の場には「おしえてください」「てつだってください」カードがあります。これは援助要求のしにくい子どもがそれをしやすいように、と口で言わなくてもこのカードを渡せばいいんだよ、と置いているものです。

ただじゃんぷに通う子ども達はコミュニケーションの得意不得意はあるもののみんな言葉での機能的コミュニケーションが可能な子ども達なのでこちらの意図とは反対に「このカードは一体…?」となっていた子もいたようです。

なので自立を始める時に「先生に聞きたいことがある時に使ってください。いらない人は先生に返してください。」と最初に示し、子ども達がどのような形で援助要求をするかを自分たちで決めさせました。すると自分がどう援助要求をしたらよいかをわかったようで、自分たちなりの方法で聞くようになりました。

ただ方法を提示するのではなく、複数提示し、子ども達が自分で取捨選択をし、それぞれのやりやすい方法を考える良い機会になったのではないかと思いました。

子どもなりの見通し

去年の12月頃から、じゃんぷに通うX君が「今日の宿題は自立の時間だけじゃ出来なさそうやから個別の時間にしてもいいですか?」と聞いてくるようになりました。

その子は算数に苦手意識を持っており、「わからん~!」となることが多いです。(といってもやり方を整理すればすぐに出来るのですが…)

彼が「個別の時間に宿題してもいい?」と聞くときは決まって「算数の宿題が筆算の計算20~30問」の時です。基本的に問題なく出来るのですが、彼からすると一目で見て量が多いと「うっ…」となるようです。それよりも文章問題や分数、図形の問題が不得意なのですが、そういう問題の時は「今日は問題数少ないから大丈夫!」と言って実際に直面したときに「教えてください」と聞いてきます。

つまり彼は「量が多い時は困っている」と自己理解をしているようです。本質的には違うのですが、今はそれでもいいのかなと思っています。彼なりに見通しを持ち、「こういう時は助けを求める」ということが芽生えてきているのでまずはそこを大切にしています。その中で「今日はどんな問題なの?」「今日は宿題自立で出来るって言ったけどどんな問題なの?見せて~」と整理していき、彼の自己理解に繋げられたらいいな、と思っています。

ひらがな聞き取りテスト

ずいぶん前にMIMについてこのブログで取り上げました。(めざせ読み名人!! : 2022/04/22)

ひらがなの拗音、促音が3、4年生でもまだあやふやな子も中にはいます。ふと筆者が教員だった頃に学校で取り組んでいたことを思い出しました。

「ひらがな単語聴写テスト」といい、京都市の小学校全体で取り組んでいました。(おそらく今もしているはず。)これは標準化されている『平仮名単語聴写テスト』(村井敏宏氏)と、『多層指導モデル MIM』(海津亜希子氏)を基に、京都市の景山功一先生(元向島南小学校教諭)が作成されたものです。 

これをした時、筆者のクラスの中にテストの点数がそこそこ良く、授業態度も真面目で勉強もしっかり頑張っていたある一人の子が「ほかいどう」「しゅぱつ」と促音をほとんど間違えており、驚いたことを今でも覚えています。

この時恥ずかしながらMIMのことなど全く知らず、ただただこれの補充プログラムに沿って放課後にその子の指導をしました。今考えるともう少し工夫出来たのではないかと反省しているのですが…

こういった「目立っていないが困っている子ども」を見つけるための工夫が各自治体でも取り組まれています。「ひらがな聞き取りテスト」もその一つです。ただこのテストは「そもそも書けない子」への支援がないので万能という訳ではありませんが…しかし学習に悩んでいる子、悩んでいることに気づいていない子を見つけ出し、一人でも多く適切な支援を受けて学習出来ることが何よりも一番です。

京都市が取り組んでいるひらがな聞き取りテストについてはこちら

「今度はこおり鬼!」

 「いっしょにあそぼ!」(2023/2/7)で紹介した支援学校小学部のPさん。友だちのことが大好きで、今日は友だちと遊べるかな?と思いをはせて帰ってきます。すてっぷに着くと、まずは自分や友だちの予定が書かれているホワイトボードを確認。下校時間の都合でPさんが先に公園に行くことが多いのですが、友だちと遊べることを心待ちにしていて、「〇〇くん、もう来る?」と職員に尋ねる姿も見られるようになってきました。

 友だちとの遊びは、職員が支援しながら行っています。鬼ごっこは職員との1対1からスタート。最初は逃げるだけだったのが、タッチされたら鬼が交代して、今度は自分が追いかけるということが理解できるようになってきました。職員が付いて、友だちと一緒に鬼ごっこすることにも最近取り組んでいて、今は「こおり鬼」にチャレンジしています。鬼の交代がなくPさんにとって分かりやすい中で、こおりの人を助けたり、逆にこおりになっているところを友だちに助けてもらったりと、友だちと関わりながら遊んでいます。

 先日のこと、Pさんは一足早く大きなU公園へ行き、友だち達は学校が終わって集まり次第、近くのV公園へ行くことになっていました。すてっぷに帰ってきたPさんはいつも通りホワイトボードを確認。するとPさんは、「1番U公園、2番V公園!」と職員に伝えました。最初にU公園に行って職員と遊び、次にV公園に行って友だちと遊びたいと伝えたのです。Pさんが自発的に伝えられたことを職員はほめ、友だちの来る時間に合わせてU公園からV公園に移動しました。V公園は比較的狭い公園で、「田んぼの田」をすることに。Pさんはいつもの鬼ごっこのように田のエリアに気づかず逃げていきます。ですが職員がPさんに田のエリアを注目させると、友だちの動きをまねながら、田のエリア内をぐるぐる逃げ回るようになりました。次は大繩での八の字跳び。これも始めはその場跳びになっていたのですが、後半は友だちの動きをまね、外から縄に入ろうと伺うように。職員がタイミングを教えることで、見事縄に入って一度跳んでから外に出るという、八の字跳びの動きができて、友だちと一緒に続けることができました。

 学校が違っても一緒に遊べる場を作れることが放課後等デイサービスの強みの一つだと紹介してきましたが、そこで発揮される子どもの能力のすごさには改めて驚かれるばかりです。それと同時に、その機会を逃さないためには、適切に支援できる能力が必要であり、職員としては身を引き締まる思いがします。Pさんの保護者の方によると、Pさんは家でも姉妹やその友だちも意識して、いっしょに遊ぼうとする姿が見られるようになってきたそうです。Pさんを初め、すてっぷの子どもたちが豊かな放課後を過ごせるよう、励んでいきます。

算数障害スクリーニング検査

今年の1月に発売された『算数障害スクリーニング検査 ~適切な学習指導は正確なアセスメントから~』(熊谷恵子・山本ゆう 著)を購入し、読みました。

本書は算数障害の背景、具体的事例、そして算数障害のスクリーニング検査用紙がついています。算数の困難がある子ども達の中には知的能力は低くないものの、認知能力のアンバランスがあり、学習障害の中の算数障害である場合があります。これらの認知能力のアンバランスさについてはWISC-VやK-ABCⅡ等の知能検査の中で明らかになることが多いですが、本書の検査でも同様に知ることが出来ると感じています。

本書の検査では子どもの算数に関する認知のアンバランスの傾向をおおまかに捉えることが出来ます。数処理が苦手なのか、数概念なのか、計算なのか…等々。それぞれの苦手への具体的な支援のポイントも書いてありました。

家庭での子どもの苦手の把握だけでなく、学校の教室で取り組み、グレーゾーンだと思われる子どもの苦手を教員が捉えるために使用してもよいかもしれないですね。