2022年7月の記事一覧
友だちといっしょ
小学生のMくんはここ最近、2つのマイブームがあります。一つはひそひそ声で話すこと。職員に話しかけられても、ささやくように返事をします。もう一つはおやつを持ち帰ること。なので、スケジュールで次がおやつだとわかると、職員に「もちかえります」と伝え、職員がおやつを見せて「どれがいいですか?」と聞くと、「これ」と答えます。
先日、Mくんと支援学校高等部のNくんとがいっしょの車で公園にお出かけしました。しかしNくんは公園に着いても車から離れません。先に公園に行っていたMくんがそのことに気づくと立ち止まり、「Nくんは?」と職員に尋ねます。職員は「車かな」と答えると、Mくんは車の方を気にして動きません。「迎えに行く?」と聞くと、Mくんはうなずき、職員と一緒に車に戻りました。
迎えに行くとNくんは車から離れ、Mくんといっしょに公園までやってきました。ですが、Nくんは見晴らしのいいところまで来ると、そこから動こうとしません。Mくんも、職員にボールで遊ぼうと誘われますが、Nくんのそばを離れません。そこで職員はMくんに、「Nくんを誘いに行く?」と尋ねました。うなずいたMくんといっしょにNくんのもとへ。職員が「Mくんがいっしょに行こうって言っているけど、どう?」と聞いてみました。するとNくんは、いいよと言わんばかりにMくんの近くに歩いてきます。そのままMくん、職員と一緒に公園を散歩して、ぐるっと大回りの一周を歩きました。
職員が言っても動かなかったNくんが、友だちの誘いで長めの距離を歩けたこともそうですが、Nくんを気にかけたMくんにも驚いた職員。今回は職員が声をかける形になってしましましたが、次回はお誘いのカードを持って行って、Mくんが友だちに手渡しして伝えられるようにしたいと思っています。
漢字の読み方
漢字の音読みと訓読みに苦戦する子どもは多いです。「読み」が苦手な子どもにとってはなおさらです。しかし覚えるために繰り返し練習をしても中々結果が伴わず,学習が苦手になるきっかけになってしまうかもしれません。
例えば「重い」を「おもい」と読むことが出来ても,「重ねる」「体重」を読めないことがあります。「重」の漢字を習うときに「おも(い)」「かさ(ねる)」「じゅう」は習いますが,その時だけで定着するわけではありません。しかしその習った単元の中で出てくる言葉は「重い」なのです。だから「重い」は読むことが出来ても他の読み方が定着しないことがあります。
こういうときは身近に使う文章にして指導をしています。「紙を重ねる」「体重をはかる」等,日常で使える短い文章にし,それを一目で見てわかるようにプリントやホワイトボードにまとめます。子どもが一目で見て読み方がわかるように支援し,日常でも使うことで音読み,訓読みを覚えることが出来るかもしれません。
わりばし鉄砲作り!
ここ最近じゃんぷに通所してくる子ども達が夏を感じさせることを話してくれます。「セミの抜け殻見つけたで~!」「プールいきたい~!」と元気に話す子もいれば,「暑い…」「夏バテや~」と疲れた様子も見せる等,それぞれです。
さて,今年は3年ぶりに祇園祭の山鉾巡行(やまぼこじゅんこう)が行われました。子ども達に話を聞くと「祇園祭行ったことあるよ~りんご飴食べた!」「祇園祭行ったことないなぁ~」「"イオン"祭りって何?」とこれまた子ども一人一人違った反応を見せてくれます。
先日じゃんぷの放デイでは「じゃんぷ祭り2022」ということで射的遊びをしました。射的をするためのわりばし鉄砲を自分たちで作り,それを使って射的をし,当たったお菓子をもらうという活動です。
小学1年~6年まで様々な年齢の子どもがおり,工作が得意な子もいれば苦手な子もいます。なので使う道具は最小限にし,それぞれのパーツで使うものをまとめてみました。
すると「こういうの苦手やなぁ…」と話していた子も自分で手順書を見たり説明を聞いて組み立てることが出来ました。輪ゴムを留めることは難しかったようですが,そういうときはきちんと援助要求が出来ています。こういった遊びの中でも構造化をし,子どもが「自分で出来た!」という達成感を得られるように支援をしています。
「ただいま!まずはくつ!」
すてっぷでは、帰ってくる子どもたちに「おかえり」と声をかけています。「ただいま」と答える子どもはすてっぷではそう多くありませんが、あいさつをする子はあいさつをし、到着後の活動に入っていきます。帰ってきた子はまず、靴を脱いで靴箱に片づけます。次にICカードをタッチして出席確認をして、かばんから連絡帳を取り出してかごにしまいます。最後にかばんも棚に片づけ、自分のスケジュール確認に向かいます。子どもによっては順番が変わるかもしれませんが、これらのことは到着後にしてほしいこととして職員から子どもたちに提示しています。このとき、すてっぷでは子どもが自立的にできるように、到着後にすることをイラストと文字で視覚的にわかるようにしています。これが以前から紹介しているワークシステムです。
このワークシステムの表ですが、最近新しく2パターンのものを作ってみました。1つは、することを一つずつ1枚にイラストと文字で描き、リングでまとめて1枚ずつめくれるようにしたものです。すてっぷではおやつ作りや工作をするときの手順書を、これと同じめくり式にしていました。もう1つは、上からすることが並んでいるのですが、一つずつカードにして、輪ゴムでくくるように固定することで、1つ終わるごとに1つずつめくれるようにしたものです。めくったらカードの裏が白紙なので、せっかくだからとはなまるのイラストをつけてみました。
新しいワークシステムの表を作ってから1か月ほど経ちましたが、変化が少しずつ見られます。Kさんは以前の表だと流れがわからず、職員が先に示すことで、次の活動に向かっていました。ですが今はめくり式を使っていて、靴を片付けたら靴のカードをめくって、次の活動を確認。ICカードだとわかって、ICカードを取りに行きます。その後も一つずつめくって次の活動に向かうことを繰り返し、職員が何もしなくても、自分だけですることを全て終えられるようになりました。またLさんは、以前の表でも流れを理解しているようでしたが、他に興味を持ったことにどんどん転導していきます。結局は職員が表ですることをLさんと一緒に確認しながら、Lさんが終えるまで側にいるという形で、到着後の活動をしていました。それが一つずつめくってはなまるが出てくる表にしてみると、Lさんは打って変わったかのように、自分から次の活動に向かいます。そして終わったら「はなまる」と嬉しそうにカードをめくります。はなまるが出てくることを楽しみに、自立的に到着後の活動ができるようになったのです。
普段使っているワークシステムの表でも、振り返って評価してみることで、子どもがうまく活用できていないことに気づけます。「PDCAサイクル」(Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(確認)→ Act(改善)の4段階を繰り返して業務を継続的に改善する方法)という言葉が「放課後等デイサービスガイドライン」にも載っているように、福祉の現場でも意識されています。今回は改善からの計画、実行がうまくいったというケースでしたが、また次の確認のため、職員で振り返りと評価をしていきます。
「漢字をきれいに書けるかな?」
夏休みが近づいてきました。夏休みと言えば、子どものころの「宿題」を思い出します。小学校では「夏休みの友」という愛称で提出されていましたが、学生時代までずっと夏休みの宿題に苦労してきた筆者にとっては、友だちというよりは「戦友」と言った方がしっくりときます。
すてっぷでも宿題に取り組んでいる子がいます。L君は毎日、漢字ドリルの写しを頑張っている頑張り屋さんです。ただ最近、字の形が崩れてきているのが気になると、お母さんと職員の間で話題に上がりました。字が崩れてきている要因は、いくつか考えられました。
・宿題をしているときにL君が、近くで遊んでいる友だちの動作や音が気になるのではないか。
・宿題が終わっても、評価されたり褒められたりすることがなく、適当に流しているのではないか。
そこで2点、改善することにしました。まずLくんは今まで共有の机で宿題をしていたのですが、それを少し離れた仕切り板がある場所に変えました。また、宿題が終わったら「できました。」とNくんから職員に伝えられるよう、Nくんとシミュレーションして練習しました。そして職員がノートを確認することにして、時には修正することもあるかもしれませんが、最後は褒めて終えるようにすることを職員で共有しました。
新たに宿題をする場所を移したL君。仕切り板によって、他の子の動作や音に気が散ることなく、漢字一文字に対して時間をかけて、丁寧に取り組めました。また、宿題が終わった後に、職員に「できました。」と報告することもできています。職員がノートを確認すると、最近の崩れていた字と比べると一目瞭然!きれいな字が書けていました。職員から「字をきれいに書いているね。」と伝えると、N君は嬉しそうにノートを受け取りました。
今回改善したのは環境整備と振り返りの時間を作ることでした。子ども本人に「きれいな字を書こう」と目標を伝えるだけではなく、周りを変えてみることで、より目標を達成しやすいようにすること、そして何より本人が達成感を得られるようにすることが大事だと思います。