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「9歳の壁」「10歳の節目」

9歳の壁とは、こどもの発達課題を示す表現で、1.学習の深化についていくのが難しくなり 2.対人関係の複雑さについていくのが難しくなり 3.本人の発達の凸凹が矛盾となって様々な困難が顕在化してきます。

1.は3年生からの学習が急に難しくなることです。割り算があり、時間の60進法があり、四則演算をつかってものを考えるという学びもはじまります。やっと計算法則を手に入れたこどもたちにこの展開や文章題は本当に難しいのです。3年生の学習はその後の学力を決定づけるターニングポイントです。

2.は子どもたちの対人関係の発達的変化です。ギャングエイジという同性集団で群れ合う時期に入ります。現代は遊び集団が小さくなる中で厳密な意味でのギャングエイジはみえにくくなっているようですが、排他的で、同一性を重視する仲間集団という性質は同じです。3年生だけでは遊びに響きあえない仲間を巻き込める余裕はないので、適応できない子どもは締め出されます。

3.は発達障害児自身の発達的凸凹とその変化のことです。5歳台で難しかった心の理論(相手の立場になって考える)や内言の育ちがこの時期ようやくできる(理屈でわかる)ようになり自己を対象化できるようになります。みんなと違う自分が意識されるようになります。当然できない自分も意識できるので不安も強まります。合わせて幼児期に多動性衝動性のために意識しにくかった母親への愛着がこの時期に形成される子らもいて、不安を家族との密着でしのごうとする言動もみえたりします。「どうせ僕なんか」という語りに直面して家族の困惑も深まります。

この時期はいろんな手立てで困難を軽減=壁を低くする足場つくりをしたいです。高学年に向けて学びの場や仲間の居場所作り。学びの質も、がむしゃらな訓練ではなく普通のエネルギーでできる特性に合った学習方法の確立。また、困難が顕在化してきたらピンチはチャンスという視点も持って別のやり方を模索する機会として考えたいとも思います。自己対象化できる育ちの中で、自分の特性を知るチャンスも訪れてきます。自分を知ることは困難もつらいことも多いですが、そこからはじまることも多いのです

「9歳の壁」の姿は「10歳の節目」ともいいます。早期から支援にとりくみ、継続してきたこと、チャレンジしてきたことが実ってくるのは10歳頃です。障害の影響の強い時期を経て、家族と支援者が頑張ってきたことが、生活の積み重ねとしてかたちになってくる時期です。簡単に言うと、落ち着いてくる。思春期の前のまとまりなんてことを感じる時期でもあります。「9歳の壁」と「10歳の節目」一見すると矛盾すると思われるかもしれません。しかし、こどものあらわれ全体像を見つめた時に困難だけではなく新しい息吹もあるのです。


 

ナンバーセンス

読み書きのつまずきと同じ位に子ども達が苦戦しているのが、算数です。すてっぷにも算数が苦手な子が多くいます。小学校入学前の子ども達は、ことばを次々と覚え理解して行きます。同時に、「数」についての理解も進んでいくのですが、「数の習得」には、視覚・触覚・筋感覚など全身の感覚が関与しています。「大きさ・長さ・重さ」などは目で見るだけではなく、手で持って感覚的に理解していきます。1個の積木を運ぶだけなら、軽くて小さいからつまんで運べるくらい。でもそれが10個だったら?もっと多い20個だったら?両手を使わなきゃいけない位に大きくなり、材質によってはかなり重くなります。こうした経験と運動・感覚によって1より10が、10より20が、大きく重たいということを感覚とともに学んでいきます。

さらに、物の移動を把握することで、「多い/少ない」だけでなく「増える/減る」がわかるようになります。これが、足し算・引き算などの演算の源になると言われています。ことばも体を動かし、経験の中で学びますがそれ以上に「数」と「身体・運動」には密接な関係があります。数はかなり感覚的なもので、日常生活に密着したものです。3歳頃から、めきめきと発達する「数に関する感覚」を「数感覚(ナンバーセンス)」や「数量概念」と呼び、研究が進んでいます。これらは、算数・数学の土台となり視覚的に捉えるものが多いです。

このナンバーセンスが育っていないと、四則演算は意味を成しません。つまり、増えるのか減るのか感覚でわからないまま計算手順だけ獲得してもそれで量を把握したという実感が伴わないからです。分数で躓くのはこの感覚のあるなしで決まります。2分の1と4分の1のどっちが大きいかは二人で山分けと四人で山分けする経験があれば即座に量の感覚がイメージできるはずですが、このイメージがでてこないと4のついた方が大きいと誤解するのです。さらに2分の1と4分の2が同じだという事も、物を切り分けた経験があれば感覚としてわかるのです。算数は論理的で訓練的なものだと思われがちですが、実は経験による感覚がものをいうのです。従って、やってもやってもできない算数があるなら、一度ナンバーセンスを確認してみましょう。子どもの発達は全て具体から抽象へ進むからです。食事の給仕やピザが上手に切り分けられる子は分数理解の素養があるのです。

明日の支度

子どもが明日の支度に自分から取り掛かり、習慣化させる方法はあります。小学生のうちに、自分で明日の支度ができるようになると、忘れ物を減らせたり、自分で予定を決めて実行できるようになります。

夕方の時間帯は1日の疲れが出るので、子どもが明日の支度をするのは、大人が思っている以上に大変です。まずは、子どもと明日の準備がしやすい時間を話し合ってみます。支度をする時間帯は、帰宅後すぐ、おやつ前後、夕ごはん前後、お風呂前後、就寝前などがの候補となります。そのなかに、子どもが取り組みやすい時間が、必ずあります。時間を決めたら、毎日その時間に、明日の支度をするように習慣付けます。

明日の支度や宿題を忘れて困るのは本人だと分かっていても、親はあれこれ言いたくなるものです。しかし子どもは、親からうるさく言われなくても、「自分がやらなければならないこと」を案外よく分かっていますす。宿題をしたり翌日の支度をする時間は、子ども自身が決めるほうがいいです。本人に任せると時間は掛かりますが、自分で決めたことに責任を持つようになっていきます。

学校の持ち物といっても、さまざまなものがあります。教科書、ノート、ドリル、筆記用具、習字道具、体操服のほか、高学年になれば細々とあります。それらを1度にまとめる作業は、子どもにとっては大変です。そこで、まずは教科ごとに分けておく習慣を付けましょう。例えば「国語」であれば、教科書、ノート、漢字ドリルを1つのファイルや袋へまとめてしまいます。「家庭科」なら、エプロン、三角巾、マスクを全て1つのケースや袋へ入れておきましょう。必要な袋やファイルをすぐに取り出せるよう、教科名を書いておくことをお忘れなく。こうしておけば、時間割に合わせてカバンへファイルを入れるだけで支度できるので、支度がぐっと楽になります。

子どもが1人だけで支度できるようになるには、時間が掛かります。まだ1人では大変そうな場合は、親がそばで見守ってあげます。大人がそばで見てくれているだけでも、子どもは嬉しいものです。低学年のうちは、支度と宿題ができたら「ごほうびシール」を貼ってあげるのも効果的です。子どもは一進一退を繰り返しながら少しずつ成長していきます。できるようになったらすぐに任せきりにしてしまわず、時どきそばで見守ってあげると、支度や宿題の習慣が定着しやすいです。

翌日の支度は、できるだけ同じ時間に取り組むようにすると、体が覚えて定着しやすくなります。なかなか支度の習慣が定着しない我が子のせいにする向きがありますが。支度が習慣化しない原因は、帰宅後とても疲れていることが多いのです。支度に取り組む時間を子どもと相談して決め、子どもがスムーズに支度できるようにサポートしていくことで、だんだんと支度の習慣が定着します。「自分で支度できない」「支度をしようとしない」といった問題の背景には、子どもなりの理由があるのです。紹介した方法以外にも、その子にあったやり方が必ずあります。子どもができる方法を一緒に探って、子どもが「自分でできる喜び」を感じられるように応援したいものです。

 

上手く謝ることができない

発達障害の中でも、上手く謝ることができない傾向が多く見られるのは自閉スペクトラム症(ASD)の子どもです。ASDの特性は、コミュニケーションが苦手・他人と目を合わせられない・人の気持ちを理解できない・その場の状況に合わせることが苦手・皮肉やたとえ話が理解できない・柔軟な考え方をすることが苦手・決まった順序や道順、食べ物などのこだわりが強い。これらの共通点は、コミュニケーションが苦手で人の気持ちを理解できないことです。相手がどう思ったか、どんな状態なのかということに関心が持てないのです。このため、自分が悪いとしてもなぜ謝らなければならないのかを理解できないのです。

ASDの子どもに謝ることの大切さを教える前に、まずは大人である私たちが普段どんなときに謝罪しているのかを考えます。1.相手の健康を損なった場合 2.故意や不注意で相手にケガをさせた 3.まわりに迷惑や不利益を与えた場合 4.経済的な損失を与えた 5.行動の邪魔をした 6.時間と労力を無駄にさせた 7.社会のマナーに反した場合 8.公共の場で騒いでしまった 9.飲み物をこぼしてしまった 10.自分がミスをしてしまった場合 11.グループ行動で一人だけ遅れてしまった 12.頼まれたことができなかった。ざっと思いつくだけでもこれだけあります。相手に与えてしまった被害の大きさや状況によって、どの程度の謝罪が必要かは変わってきます。しかし、ASDの子どもはその微妙な加減を理解できません。一般的に考えると、上記の前半の場面では特にしっかりと謝罪する必要がありますから、子どもにも優先的に理解させていきましょう。

ASDのない人は、その場の状況や相手の反応に合わせて謝罪の仕方を変えることができます。しかし、ASDの人は、場の空気や相手の気持ちを汲み取ることを苦手としており上手に謝罪ができません。そのため、「こういう時は謝罪が必要」という風にパターン化させて覚えさせることが必要です。
①どんなときに謝るべきかを理解させる
「ごめんなさい」と言うべき場面をイラストなどを見せて教える。
子どもがイメージできる状況を例示し、そのときの相手の気持ちも交えて、なんと謝ればいいかを教えていきます。
例えば、友だちにケガをさせてしまった。友だちが嫌がることを言ったりやってしまった。友だちとぶつかってしまった。約束を破った。等です。

②ロールプレイングで練習する
同じ謝るという行為でも、目も合わせずにボソッと「ごめん…」と言うのと、きちんと相手の目を見て「ごめんなさい」と言うのとでは、伝わり方が違います。実際に起こりうる場面を再現し、相手が泣いているとき、怒っているときなど、どういう態度でどのくらいの謝罪をすればいいのかを考えて謝ることを練習させましょう。謝ることができなければ、友だちと付き合っていくことが難しくなってしまいます。出来るだけ早い段階から、謝罪の必要性や状況に応じた謝り方を丁寧に教えていきます。他者の感情の学習にもなりますから、理解が進めば子どもの対人関係も良くなっていく場合があります。

また、何より大事なことは褒められること「ありがとう」と言われることを、一方でたくさん準備しておくことが謝罪の学習の成功につながります。教育支援の原則はバランスよくです。

 

疲れやすい原因

発達障害を抱える方は、周りの人や環境に適応しようとする中で神経をすり減らしてしまうことで疲れやすい方が多いです。例えば、ASDの方は、空気が読めないという特性があるために、周囲の人の雰囲気や感じていることを把握するために、頭をフル回転して周りの状況を分析するケースが挙げられます。このように、発達障害ではない多くの人が無意識にしていることでも、発達障害を持つ人にとっては心身に過度の負荷をかけていることがあるのです。

発達障害を持つ方は、二次的な問題として、睡眠障害を抱えて疲れやすい方が多いです。具体的には、音が気になって寝つけなかったり、逆に日中の仕事で疲れ果てて夜に寝すぎてしまったりで、日常生活に支障をきたしてしまう場合がある、ということです。睡眠不足や過眠は、疲れにつながります。特にADHDの方は、子どもの場合25%〜50%が睡眠に問題を抱えていると言われています。発達障害の方の中には、一般的には不快に感じないレベルの音、光、匂いや肌触りなどの刺激に対してとても敏感で、疲れやすい方がいます。例えば職場のエアコンの音が気になって仕事に集中できない、首周りに触れる服(タートルネックなど)を着ると違和感で吐き気がするなどがあります。

発達障害を持つ方の中には、極端に不器用だったり、力の入れ具合を調節することが苦手だったりするために、身体を効率よく動かすことができないことで疲れやすい方がいます。「電車でつり革を持って立つ」、「靴ひもを結ぶ」といった日々行われる動きを上手にできず、普通に生活しているだけでも疲れてしまう方が多く見られます。

発達障害者の方には、注意がそれやすい一方で、自分の興味がある事に対しては過度に集中することで疲れやすい方がいます。締め切り間近の書類仕事を短時間で終わらせたり、学校の試験中に問題へ没頭することで高得点をあげたりといったメリットも見られます。ですが、過集中は、多くの場合で心身に大きな負担をかけることになります。

対策①周囲への適応を気にせず、社会常識にとらわれないようにする
周囲に適応しようと無理をして疲れやすい方は、社会常識にとらわれない考え方を身につけるとよいでしょう。「常識」に無理に合わせないことで、疲れが発生しなくなります。

対策②睡眠のためのリラックス法を行う
睡眠をうまく取れなくて疲れやすい方は、寝る前にリラックスする方法を試してみるとよいでしょう。良質な睡眠を取ることができれば、疲れは発生しません。

対策③敏感な感覚を緩和するため、器具を使ったり服装を工夫したりする
感覚が過敏で疲れやすい方は、ITやテクノロジーの力を借りたり、身体に触れるものを工夫しましょう。特に、周囲の環境によって症状を大きく左右される方にオススメです。自分の特性に合う器具や工夫が見つかれば、疲れなくなります。

対策④身体を上手に動かせないなら、苦手な動作などを避ける。
体を上手に動かせなくて疲れやすい方は、苦手な動作を求められる状況をなるべく避けるとよいでしょう。変えられる動作を見つけて変えることで、疲れなくなります。

対策⑤集中しすぎてしまうなら、アラームを使う
集中しすぎて疲れやすい方は、アラームを使って、意識的に集中を途切れさせるとよいでしょう。特に、自分では集中していることに気づかない人にオススメです。過集中が発生しなければ、疲れも発生しません。

 

解離症状

発達障害の人は二次障害を抱えている場合が少なくありませんが、解離性障害とも関係があると言われています。特にASDの人に多いのですが、対人関係や感覚の問題が多いASDの方は日常生活において他の方より精神的に疲れて不安も高いので解離しやすいのかもしれません。

大きなストレスを感じた時、記憶がなくなってしまう解離健忘症
自分で行っている事でも自分が行っていないような感覚になる離人症
気付いたら知らない所にいる事がある解離性遁走
人と話をしたり体を動かす事が出来なくなる解離性昏迷
昏睡状態や思っているように体が動かなくなる解離性てんかん
複数の人格を持つ多重人格、解離性同一障害

どのような症状かで細かな病名も変わるのですが、記憶がなくなったり過去をすっかり忘れる場合もあります。また、頭の中か遠くから音が聞こえるなどの場合は統合失調症か解離性障害の可能性があり、発達障害の人にとって程度の差はあっても何等かの症状があってもおかしくはないです。

先にも掲載したように「疲れやすい原因:11/12」、定型発達の人でも強いストレスを感じたり嫌な事があれば自己防衛能力が働きます。ASDの人は常に強いストレスを抱えている場合が多く、人間関係が円滑に進まない・空気を読んだ会話が出来ない・人に理解してもらえないなど、普通なら感じない部分で問題を抱えています。そのため常に自己防衛をしている状態だと考えると、診断は出ていなくても同じような状況を感じた事があってもおかしくはありません。

症状があるなら、まずは医療にかかる事が何よりも大切です。ASDやAD/HDの診断と精神疾患を疑い相談すれば、何が問題になっているか分かるはずです。この症状はセロトニンが少ない事で発症することが多いので、ASDは合わせて発症しやすいのかもしれません。早めの処置が出来れば改善していく部分や楽になれる事も沢山あります。本人は混乱していて的確な判断ができないことが多いので、家族や関係者が解離性障害かもと考えて医療に一緒に足を運んであげてください。

いじめの原因と対処

誰にでも、どこでも起りうるのが「いじめ」です。なぜ、いじめられるのか?いじめてしまうのか?大きな原因は「人と違う」ということです。学校は集団で生活をする場所です。全員が同じ勉強や生活をしています。しかし、人には個性があります。体型や性格など違いますよね。大人でも特異な人に警戒心を抱いたりすることがあります。特に子どもは自分と違うということを受け入れることが出来ない場合があります。太っていたり、家が裕福じゃないなど原因は様々ですが自分と違う服装や体型、考えを持った子を見ると「変な奴!」となって、それを受け入れられず排除しようとしてしまうのです。特に年齢が低いほど「人と違う」ことが、いじめのキッカケになりやすいです。

子どもの世界は楽しい事ばかりではありません。勉強や家庭の中でのトラブルなど、ストレスを抱えてしまっている子がストレス発散のために友達をいじめてしまうことがあります。自分より弱い存在をストレスのはけ口にしてしまいます。子どもがストレスを抱えたときに周りの大人が気づいてケアをしてあげることが予防につながります。

親が日常的に暴言を吐いたり暴力をふるったりしていると、子どもはそれが普通だと思ってしまい悪い事だと思わなくなり気に入らないことがあったら暴言や暴力で解決すればいいと思ってしまうのです。それから親が子どもに無関心な家庭もさみしさから、いじめっ子になってしまうこともあります。逆に過干渉な親の子も、普段は家では良い子でいなければならないため、ストレスが溜まってそのはけ口を外に向けて友達をいじめてしまったりしてします。

たとえば、友達が「学校に遅刻した」「宿題をやってこなかった」「遊ぶ約束したのにこなかった」など、周りの和を乱した時、「あの子が〇〇したから注意しただけ!」と言ったことから、いじめが始まることもあります。いじめる方は和を乱した子が悪いから自分は正しいと思っているので、いじめているという感覚がない場合があります。いじめられる側の子も自分が悪いから、といじめられても周りに相談できなくなってしまいます。いじめる側の正義感からくるいじめはエスカレートしやすいです。

いじめというのはクラスの中に首謀者がいるものです。その子がリーダー的存在だったらその子に同調していじめてしまう事も多いです。また、被害者側についたりしたら今度は自分がいじめられるかもしれないと言った不安から、みんなに合わせて、いじめてしまうのです。「みんながするから」「やらないと仲間外れにされる」そんな理由でいじめに加担してしまう子は多いです。

いじめは被害者になるばかりではなく、誰でも加害者にもなれます。我が子が加害者になった時は、まず事実を確認したうえで、子どもと家族で話し合い、何があってもいじめはいけないこと、いじめによって起きる悲しい事件などを良く話し、子ども自身に「いけないことをしたんだ」と自覚させることが大切です。「二度としない」としっかり約束させてください。被害者への誠意を込めた謝罪の覚悟もしなければいけません。被害者が納得いくまで謝罪をしましょう。そして家庭の在り方を見直してみることも再発防止には重要です。子どもがストレスを抱えてないか、信頼関係など良く振り返ってみます。

子どもが、いじめられているとわかった時、なるべく冷静に確実に対処します。「なぜ言わなかったのか?」などと責めたり、問い詰めたりしないで、子どもが話をしやすい雰囲気を作ってあげます。そして子どもが話をしてくれたときは、子どもの話をしっかり聞いて決して否定したりせず子どもの辛い気持ちを受け止めてあげます。できれば父母一緒に話を聞いてあげます。「パパもママもあなたの味方だよ」と、子どもに安心感を取り戻させます。それだけで気持ちがスッキリして元気になることもあります。今後どうするかも親子で意見をすり合わせて行動します。

いじめが原因で「学校に行きたくない」と子どもが訴えてきたときは無理に登校させてはいけません。子どもが学校へ行きたくないと言ってきたときは緊急事態で、もう限界なのです。そんな時は無理に登校させずに、ゆっくり休ませます。いじめを解決するには学校との連携は不可欠です。まずは事実関係をしっかり確認して、まずは担任の先生に相談し、埒が明かなかったときは教頭や校長に相談しましょう。そのときに証拠などがあるのであれば、それも持参しましょう。もし、学校の対応がイマイチであれば教育委員会へ直接訴えることも考えます。

いじめを受けた子の心は深く傷ついて、自分の存在価値を見出せなくなっていることが多いです。しっかり子どもの心のケアをします。親は味方であること、ママもパパもあなたが大好きで大切なんだということを教えます。時には抱きしめて気持ちを伝えます。家は子どもにとって安らげる場所であることが一番です。いじめは何があってもいけないこと、気に入らないからといじめて良いわけがないのです。

もしも、自分だけで解決する自信がないならいくらでも相談機関がありますから遠慮しないで利用しましょう。

インチュニブ

最近インチュニブと言うお薬を服薬されている方が増えてきました。これはAD/HDの症状を軽減するお薬です。AD/HDの治療薬というのは大きく二つに分けられます。一つは中枢神経刺激薬です。これは脳のドーパミンを増やす事で脳の覚醒度を上げ、AD/HDの症状を改善させるお薬になります。具体的には、コンサータ(一般名:メチルフェニデート)などがあります。中枢神経刺激薬は、AD/HDの諸症状に対してしっかりとした効果がありますが、耐性・依存性や乱用などといった副作用の問題もあります。「効果は良いけども副作用にも注意が必要なお薬」なのです。そのためコンサータはどんな医師でも簡単に処方できるお薬ではありません。「コンサータ錠登録医師」に登録されている医師が処方します。リタリン(一般名:メチルフェニデート)というお薬も以前はAD/HDの治療薬として用いられていましたが、現在では依存性や乱用の問題からAD/HDの治療薬としては使えなくなっています。リタリンもコンサータも同じメチルフェニデートという中枢神経刺激薬ですが、コンサータは徐放製剤というゆっくり効き始めるタイプのお薬ですからリタリンよりも安全性が高いのです。

もう一つは、非中枢神経刺激薬です。これはノルアドレナリンを増やす作用を持つ「ストラテラ」、そしてアドレナリン2A受容体を刺激する「インチュニブ」があります。非中枢神経刺激薬は効果の強さの面で言えば中枢神経刺激薬に劣りますが、その分安全性に優れます。耐性や依存性、乱用といった問題が生じにくいというのが特徴です。中枢神経刺激と非中枢神経刺激薬はそれぞれ作用機序が異なるため、一方のお薬が効かない場合でももう一方は効く可能性があります。一般的には中枢神経刺激薬が効果が強くて、非中枢神経刺激薬は効果が弱いそうですが個人差があります。人によっては非中枢神経刺激薬の方が効く方もいるそうです。

インチュニブはAD/HDの治療に用いられ、効果は穏やかで、アドレナリンA2受容体を刺激する事で、AD/HDの症状を改善させる効果が速いそうです。不注意・多動性・衝動性の三大症状すべてに効果を認めます。中枢神経刺激薬ではないため、依存性や乱用のリスクがないといった特徴があります。また中枢神経刺激薬のコンサータはコンサータ錠登録医師として登録している医師しか処方できませんが、インチュニブは医師であれば誰でも処方することが可能です。従ってインチュニブは、AD/HDの方で薬物療法が必要である場合、まず用いるお薬として適しています。お薬は安全性の高いものから始めることが原則となるため、まずは安全性の高いインチュニブなどのお薬から開始し、それでも効果が不十分である場合はコンサータなどの中枢神経刺激薬を試すのが良いと言われています。

インチュニブを開始するに当たっては、次の2つを満たしている必要があります。6歳以上18歳未満である事。AD/HDと診断されている事。またインチュニブは体重によって「開始用量(飲み始めの量)」「維持用量(維持で用いる量)」「最高用量」が細かく設定されています。また中止・減量する際もいきなり中止するのではなく、原則として3日以上の間隔をあけて1mgずつ慎重に減薬していく必要があります。インチュニブがこのようにゆっくりと増量・減量するように決められているのは、急激に増減すると血圧や脈拍に変動をきたす副作用が生じやすい事が分かっているためです。元々アドレナリン2A受容体刺激薬は血圧を下げるお薬として使われていますから、血圧低下には注意が必要です。インチュニブはアドレナリン2A受容体を刺激する事で、血圧を下げたり脈拍を下げたりする可能性があります。特に飲み始めや量を増減した時に生じやすいため、投与初期やお薬を増減する時は特に慎重に経過を見る必要があります。インチュニブは効果発現の早いお薬で、1~2週間で効果を感じられる事も少なくありません。特に衝動性や多動性については服用開始1週間後から効果が認められる事が多く、不注意も服用開始2週間後には効果が認められるそうです。

ビバンセは、今年3月に認められたAD/HDの新薬です。

感覚統合アプローチ

頭の固い支援者によくあるのが、椅子に座っていない、立ち歩く、姿勢が悪い、頬杖を付く、寝そべる、体をゆするのは集中していないからと理解して、その行動を叱ったり修正しようとします。或いは、姿勢を正して人の話がきけないのは支援者や大人へのリスペクトが足りないからと、何時代だよと思うような発想の方もいます。頭の柔らかな支援者は、体を動かすのは子どもが体を覚醒させて集中しようとする表れかもしれないと考えます。このように旧態依然とした考えの支援者とスマートな支援者では発想が真逆なのです。

感覚統合によって、人は脳に入ってくる様々な感覚を整理したり、まとめたりしています。人は普段、様々な「感覚」に囲まれています。感覚には一般的によく聞く「五感」(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)の他にも、「固有受容覚」と「前庭感覚」という感覚が存在します。脳は次々と入ってくるこれらの感覚を統合(整理・分類)し、無意識に自分の身体をコントロールしています。逆に感覚統合がうまくいっていないと感覚の受け取り方に偏りが出て、他人と同じように状況を把握して、それに応じた行動をすることが難しくなります。その結果、落ち着きがなかったり、乱暴な動作が多いと思われたりします。感覚統合を理解することで子どもの行動を理解し、問題がわかったうえで対応することができるようになります。

「固有受容覚」とは、筋肉や関節によって自分の身体の位置や動き、力の入れ具合を感じる感覚です。固有感覚の役割は大きく分けて5つあり、 ①自己存在感 (例:抱っこを求める) ②身体のイメージの把握 (例:人がしていることを真似できる) ③力加減、動きのコントロール (例:飲み物をそっと注ぐ) ④距離感、方向の把握 (例:自分の下駄箱の位置がわかる) ⑤一連の手順の記憶 (例:文字の学習) があります。子どもは様々な経験をしながら、固有受容覚を養い、他の感覚と統合させて発達しています。例えば、固有受容覚があることで、自分の力や動きをその場に応じて変えることができます。子どもたちは綱引きで力いっぱい引っ張ったり、ジャングルジムをぎゅっと掴んだりして100%を知ったあと、飲み物を注いだり、卵をそっと持ったりするなど力を加減することを学びます。逆に、固有受容覚が未発達だと力の加減がうまくできず、自分は軽く叩いているつもりでも相手にとって痛いと思わせるほど強く叩いてしまうなどのトラブルが起きる可能性があります。

私たちは「前庭感覚」によって、耳石器と三半規管が受容器となって、揺れ、傾き、重力、スピードを感じています。
前庭感覚の役割は大きく分けて4つあり、 ①姿勢とバランスの発達 (例:なわとびができる) ②眼球運動 (例:鬼ごっこをする) ③覚醒の調整 (例:ジェットコースターに乗って興奮する) ④自律神経系の調整 (例:車酔いを防ぐ) があります。前庭感覚は、加速、回転、傾き、高さ、重力などに対して身体のバランスを保つために大切です。例えば、動きながら物を見続けることができるのも、前庭感覚によるものです。子どもたちが遊んでいるときにボールを目で追いかけながら走ったり、教科書を読みながら音読したりすることにも関係しています。一方で、前庭感覚がまだ未発達の状態だと、トランポリンでジャンプしたときにうまく着地できなかったり、ブランコなどで身体が大きく揺れたりすることを極端に嫌がったりします。

固有受容覚と前庭感覚などの感覚の統合がうまくいかないと、落ち着きが無かったり、発語の遅れおくれが見られたり、友達と上手く遊べなかったりと情緒面、言語面、対人面などでつまずくことがあります。しかし、感覚統合が未熟な子どもたちが直面するつまずきに対して、様々な方法で支援することができます。例えば、教科書の文字を意味で句切って読むことができない子どもには、行ごとに定規をあてたり、色を変えたりして指導することで視線があちこちに飛ばないように指導します。これを繰り返すことで上下・左右の眼球運動をコントロールできるようになります。また片手で消しゴムを持ち、もう片方の手で紙を押さえて文字を消したり、アーチ状に浮いている定規を使ったりと、両手を使った動作がうまくできない子どもに対しては、押さえている感覚を強調する支援を行うことで改善することができます。これらはあくまで一例で、それぞれの子どもにあった、感覚統合を成熟させるための支援を行うことが大切です。また、大人にとっては支援・指導でも、子どもたちにとっての遊びになるようにすることが大事です。子どもたちが支援を楽しみ、成功体験を積むことで、さらに別の支援にチャレンジして感覚統合を発達させていくことができます。

感覚統合アプローチは、例えば、子どもたちが立ち歩いたり集中できなかったりするのは感覚統合がうまくいっていないからではないかと考えます。上履きを脱ぎたい人は「机の下できちんと並べる」というルールを作り、自分の集中しやすい、落ち着く姿勢で学習して良いと伝えたクラスでは、子ども達の集中力が上がり、今まで授業中に席に座り続けることができなかった子どもが授業中に立ち歩かなった事例もあります。傍から見ると変な体勢でもその子にとってはその姿勢が一番集中できるのです。このように、子どもたちの行動を頭ごなしに否定するのではなく、その裏にある原因を考え、「気になる」行動が良くなっていくように様々な工夫をするアイデアの理屈が感覚統合理論なのです。

要保護児童対策地域協議会

「児童虐待防止法」が2000(平成12)年に施行され、それ以降、様々な防止施策が講じられてきました。しかし、2013(平成25)年に公表された「第9次報告」によると、この間も保護者からの虐待により50人(親子心中を除く)近い子どもが毎年のように貴重な生命を失っていると報じられています。特に残念なことは、同報告の中に子もの人権を守る立場にある児童相談所や健全な発達を保障する立場にある保健センター等の専門機関が関与していたにも関わらず、子どもが虐待死しているという事例が数多く見られたことです。

国はこのような実態を踏まえて早期対応や早期介入等を行う児童相談所の機能強化に努めてきました。加えて、近年では児童虐待の防止に関係する連携が必要なことから、要保護児童対策地域協議会(以下「要対協」)の設置を促し、体制強化を図り設置率はほぼ100%近くになました。しかし、その要対協が関わっていながら虐待死したケース数は第9次報告によると14例、全死亡事例(54例)に対する割合は約25%を占めています。この数値は要対協の有効性について疑問を持たざるを得ない数値です。

本事業所でも、各市町の要対協のメンバーとして参加することがありますが、「誰が鈴をつけるか」と言う責任所在のはっきりしない会話が多いのが気になります。もちろん児童やその保護者との接触を日常的に持つ保育所や学校はその矢面に立ちますが、対象家族への指導権限があるのかというと何もないわけです。あくまでも、利用側とサービス提供側という関係で、子どもの支援はしますが、親を指導する立場にはありません。また、この国の法体系は、事案が生じてから動き出す仕組みで、予防的な視点が抜け落ちています。また、相談事業はあくまでも保護者が利用するもので、その押し売りはできません。「もっとも相談してほしい保護者が相談してくれない」のです。

児童虐待は、リスク要因が様々な形で複合して発生しているだけでなく、支援を阻むような要因(情報把握の凸凹など)も少なくないため、その支援が非常に難しい問題です。また対応機関である児童相談所だけでなく、地域の要対協でも職員の専門性、機関による児童虐待の認識の差異などが加わるため、支援者にとっては非常にストレスフルな問題です。調整者として職務についた行政職員はこうした状況に置かれ、自らの能力不足もあって辛い状態におかれます。

こうした状況を軽減するためには、ノウハウを持っている外部コンサルタントの力が有効です。大阪市では、行政事情を十分に認識した上で、外部コンサルタントを導入する方針をだされた。それが「SV(スーパーバーイザー=虐待事案専門相談職)の要対協への派遣事業」です。この派遣事業にはいろいろなメリットがあり成果も上がっています。さらに「地域の医師が参加できないため専門的意見が聞けない」や「法的な問題がよくわからないから不安である」といった場合、派遣されている区の担当SVがそうしたケースに対応できる専門家を呼ぶことが出来るということでも有効です。児童虐待は確かに難しい問題ですが、まったく歯が立たない問題ではありません。それは問題を解く人間の質的、量的確保や社会資源の充実で改善されるし、短期的には不足分をいかに補うかは、子どもの人権をどのように行政や地域が考えているかによって大きく変わってきます。