みんなちがってみんないい
障害者のスポーツ取り上げて
障害者のスポーツ取り上げて
2021/12/18 【産経WEST】
東京パラリンピックでお世話になったNPO法人「アダプテッドスポーツ・サポートセンター(ASSC)」の高橋明さんに誘われ、大阪市舞洲障がい者スポーツセンター(大阪市此花区)で開かれた「i-ボッチャ ぷっちょ杯2021」をのぞいた。
改めて簡単に説明すると、ボッチャはジャックボールと呼ばれる白い目標球に向けて赤と青のボールを投げ合い、より近づけた方が勝者となるルール。もともとは欧州で、脳性まひなどの比較的重度の障害者向けに考案されたが、年齢や障害の有無に関係なく誰でも参加できるインクルーシブ(包括的)なスポーツとして注目されている。
大会は今回が4回目。インクルーシブを示す「i」が大会名の冒頭についている通り、障害者だけで編成したチーム以外にも、健常者のチームや混成チームも参加。選手3人の合計年齢が約250歳のチームもあり、東京パラで脚光を浴びたボッチャの盛況ぶりを肌で感じることができた。ASSC副理事長で「愛ボッチャ協会」代表の岡田良広さんは「東京パラが終わってから、学校や自治体からの問い合わせが増えている。協会の審判を派遣し、体験学習会などを開催している」と話す。
今年話題になった言葉に贈られる「現代用語の基礎知識選 2021ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞には、米大リーグ、エンゼルスで活躍した大谷翔平選手の「リアル二刀流/ショータイム」が選ばれたが、東京パラのボッチャ個人で金メダルを獲得した杉村英孝選手の必殺技「スギムライジング」もトップテン入りした。
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オリパラ開催の効果で、全国各地でパラスポーツの普及が大々的に言われ始めています。ボッチャの金メダリスト杉村選手の活躍も国民にスポーツが引き出す人間の可能性を見せつけてくれました。先ごろは京都府議会で京都府ボッチャ協会のプレゼンテーションが行われ、いわゆる障害者のスポーツではなく障害のある人もない人も一緒に取り組めるユニバーサルスポーツとして普及を議会に説明がされました。
スポーツを国を挙げての取組にすると、スポーツを政治利用する危惧が言われますが、一方でスポーツにアクセスしにくい障害者や身体の弱い方にも参加できるようにすることは、公共の福祉の役割でもあります。ボランティアはどんなスポーツにも必要ですが、障害者が参加するスポーツにはたくさんのボランティアが必要です。
しかし、ボランティアや個人寄附だけでは競技場や競技場への移動支援の整備までは資金的に手が届きません。欧米では、資金力のある企業や篤志家がスポンサーになって障害者スポーツは支えられていますが、企業が巨額の寄付をして民間団体を支援する土壌は我が国には十分育っておらず公的な支援がもっと必要で議会や各自治体の力量が問われています。
障害者スポーツは民主主義の花開く中でこそ育つものです。冬季五輪の北京開催について、民族弾圧やジェノサイドを隠す中国共産党に民主主義国から批判が続いています。誰もが公平にスポーツに参加するためには思想信条、性別や民族、障害のあるなしで政治的に差別されることがあってはなりません。いったい、中国政府は北京冬季五輪のパラリンピックをどんな思いで開催するのでしょう。パラリンピックの開催で人権弾圧を覆い隠すようなことは許されません。障害者スポーツは民主主義の最高レベルの到達点でもあるからです。
放課後デイ再編 子ども本位のサービスに
社説:放課後デイ再編 子ども本位のサービスに
12/19(日) 【京都新聞】
障害のある子どもが通う「放課後等デイサービス」などの通所支援について、厚生労働省が事業所のタイプの再編など制度の見直しを進めている。保護者のニーズの高まりを受け、事業所数、利用者数は近年、ともに急増している。半面、質が低かったり、習い事のような特定のプログラムに偏ったりしたサービスも問題となっている。
支援を受ける子どもの視点に立った見直しとなるよう議論を深めてほしい。
障害児通所支援サービスには、未就学児向けの「児童発達支援」と、小中高生向けの「放課後等デイサービス」がある。関連法の改正で2012年度に制度化された。療育手帳や身体障害者手帳が必須ではなく、発達障害などの子どもも受け入れる。全国で計約40万人が利用している。事業所の設置基準が緩やかで株式会社など営利法人も参入し、子どもが身近な地域で支援を受けられるようになったのは歓迎されよう。
一方で、利益優先の事業者や不適切なケアが後を絶たない。給付金の不正受給や、職員による子どもへの虐待行為も発覚している。サービスの質の向上に向け、厚労省は、事業所のタイプを、運動や認知、コミュニケーションなど多様な面で発達を促す「総合支援型」と、理学療法士によるリハビリなど専門性の高い「特定プログラム特化型」の二つに再編する方針だ。
テレビを見せるだけなどの単なる預かりや、塾やピアノなどの習い事のような支援は公費の支給対象から外すという。ただ、事業所からは「サービスからの除外の線引きはどうするのか」「必要とする保護者もいる」などと困惑の声も上がっている。ジム機能や音楽療法など独自の特徴を打ち出したサービスを提供し、子どもの発達支援につなげている施設もある。適切な支援の在り方について、現場の実態や専門家の意見も踏まえて判断する必要があろう。
国や自治体による継続的な監視、指導も求められる。
今回の見直しでは、サービスの利用上限日数に自治体間でばらつきがあるのを是正する方向だ。現在は、障害の状態などに応じて市町村が判定しているが、平均で月5日しか認めない自治体もあれば、20日以上のケースもあり、不公平感が出ている。このため、全国共通の判定の指標やガイドラインを新たに設けるという。
負担額は、児童発達支援が19年10月から無料化され、放課後デイサービスも原則1割で上限が決められている。学校や自宅との間の送迎を行っている事業者も多く、利用しやすい。そうした背景もあってサービスの需要が高まっているとみられるが、保護者の意向だけでサービスを多く利用することは子どもの主体性を損ねてしまう、との指摘もある。子どもの利益のため、家庭と事業所、計画作成の担当者が連携をより深められる制度を目指してもらいたい。
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地元紙も社説で取り上げるくらいですから、先日の厚労省の検討会議の報告は通常の改定を通り越えた提言だったのだと思います。しかし、まず改定ありきという焦りが見え具体性に乏しいので、地方行政にしてみれば、類型をどこで線引きするのかはっきりしません。放デイ利用者の中に占める理学療法士を必要とする肢体不自由児の絶対数そのものは少なく、最も多いのは発達障害の子どもです。ここへの、専門的なプログラムができるのは理学療法士ではありません。行動療法士や言語聴覚士も必要な職種だとは思いますが、子どもに対応する人材を育てる養成学校は少なく、そもそも児童に対応するにも、教育や保育の専門性に対応した経験をもつ人材は少ないです。いったい何を想定して専門的プログラムと言っているかはっきりしないままです。
放課後デイは、小規模ですから何人も専門家は雇用できないので大きな発達療育センターのように先輩からノウハウを教えてもらう機会もありません。検討会の言っていることは理想的ではありますが、絵に描いた餅とも言えます。専門的な療育を提供するうえで資格は確かに必要ですが、資格があれば適切な療育が提供できるわけではないからです。こうした、専門家周りの環境も同時に考慮していく丁寧さが必要です。そして何よりも、給与が低すぎる事が、専門性の高い人材が集められない理由でもあります。
学習塾と学習障害支援の違いをどう見極めるのかも不明です。そもそも、学習の問題は学校に任せるべきだと言う、発達障害に学習障害が明記されていることも知らないような自治体職員もいる中でこの区別が科学的な視点で行えるとは思えません。学習障害支援は、自前で知能検査や発達性読み書き障害の検査を行ったアセスメントを前提にして、個別に療育の支援計画が実施されていることが最低条件だと思います。こうした障害支援のルーティンを踏まえたうえでの適切な線引きが行われることを期待します。
一番の問題は、9割は税金を使う公的な支援なのに、サービス利用回数があまりにも違う不公平と、その違いについて地方行政が説明責任を果たさないことです。利用者増が先か新規事業者参入が先かは鶏卵の堂々巡りですが、質の良い支援ならニーズに応じてどんどん提供すれば良いのです。児童期の質の良い投資は必ず未来に納税で返ってくるからです。
大事なことは監督する行政が低品質な放デイを認めず、質の高い放デイを優遇する方略を持つことです。国のレベルで言えることはせいぜい専門資格を持つものがいるかどうかまでしか言えません。しかし、現場を知る行政なら、何が適切な支援かどうかは見ればわかるはずです。現場に足を運びマニュアルの字面に頼らない確かな視点が行政に求められています。質が低い放デイがあるのは民間参入が原因ではなく、行政に見抜く力が不足していたと言うべきです。
発達障害の子が相談に回答…ネットで開設、悩む親に
発達障害の子が相談に回答...ネットで開設、悩む親に「当事者の思い」代弁
2021/12/20 【朝日新聞】
発達障害がある子どもが「先生」となって、同じ特性の子を育てる親の悩み相談にネットで応じる「でこぼコ・ラボ」が、今秋始まった。我が子には聞けない当事者の思いを知ることで、特性への理解を助け、親子間の関係をさらに深めてもらう狙いがある。
「ゲームがやめられず、取り上げるとけんかになる」。発達障害の息子を持つ親が「でこぼコ・ラボ」のウェブページに投稿すると、「先生」から「ちゃんと勉強した時間の分、ゲームができるルールを作る」「取り上げるのではなく、他のもので興味を引く」などの助言が返ってきた。
回答するのは、発達障害の子どもの学習支援教室「よつばCOLORS」(奈良市)に通う児童・生徒約100人。教室のスタッフだった 綾(あや) 美津子さん(53)らが今年10月、親が子どもの気持ちを理解するのを支援しようと、会員制ウェブサービスとして始めた。
背景にあるのは、発達障害のある子どもが周囲の理解が得られにくく、親も孤立しがちという現状だ。綾さんは「親は我が子の特性を自分で何とかしないといけないと、思い詰めてしまう」と指摘する。
全国の自治体では、発達障害の子を育てた経験がある親らが相談を受け付ける「ペアレントメンター」制度を導入しているが、綾さんは「子どもから思いを聞くことで、納得できることもある」と、サービスを思いついたという。
多く寄せられるのは、宿題や不登校など、学校や日常生活に関する悩み。子どもたちの回答は、それぞれの心情や経験に基づいたもので、利用した親たちからは「元気が出た」などの声が上がっている。
回答する子どもは、学習支援教室の言語能力トレーニングの一環として、質問に答えている。回答に「いいね!」と反応を返す機能もあり、「人の役に立てた」という達成感から自信を得る効果もあるという。
綾さんは「子どもたちもしっかりと考えていることを知ってもらい、子どもの主体性に任せてみようと思ってほしい」と期待。発達障害に詳しい楠凡之・北九州市立大教授(臨床教育学)は「子どもの意見を聞くことで、我が子への見方や関わり方を冷静に振り返る機会になる」と評価している。
会員登録は無料。問い合わせは「でこぼコ・ラボ」を運営する「アンラベル」(06・6136・5609)。
発達障害 脳機能の障害で、対人関係を築くのが苦手な「自閉症スペクトラム障害」、衝動的に行動しがちな「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」、読み書きや計算が難しい「学習障害(LD)」などがある。「こだわりが強い」「順番を待つのが難しい」などが特性。文部科学省の2012年の調査では、公立小中学校の通常学級に通う児童生徒の6.5%が、発達障害の可能性がある。
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事業所の中でも、大人にとって困った子ども行動の原因を、あれこれ大人の立場から話し合うのではなく、本人はどう思っているのか聞いてみるようにしています。とても、いい取り組みだと思います。もちろん、回答する子どもは当事者ではないので確実な答えではないけれども、子どもがどう考えるのかという視点に立ち戻れるので、とても参考になると思います。
回答する子どもは子どもで、親と言うものはそんなことを心配したり、考えたりするものかと第3者的な支援で考える事ができます。普段は自己フィードバックの弱い子どもで、家ではうまく行かない事でも、このサービスでは上手く回答できるかもしれません。そういう意味で双方で学び合えると言う対等の関係がとても素敵だなと思います。
こうした関係は、事業所内でも作れたら良いなと思います。利用者の親子の考えていることが全然違う事は良くあることです。これは別に障害のありなしは関係ないことですが、親同士で話すと少し客観的に子どもが見られたり、子ども同士で話し合うと「うちの母親もいっしょや」という共感も得られます。それが他人の子だが、よく似た特性の子どもならその論理は参考になるし、腹を立ててばかりいたのが冷静に見られるなと思います。こんな素敵なシステムを考え出した綾さんも素晴らしいと思います。
「勉強ばかりしてないで、ゲームしなさい」四国新聞のメッセージ広告が話題
「勉強ばかりしてないで、ゲームしなさい」四国新聞のメッセージ広告が話題 「最高にロック」「凄い勇気」
2021/12/21【神戸新聞】
「勉強ばかりしてないで、ゲームしなさい」。香川県の地元紙、四国新聞の12月20日付朝刊にこんなメッセージ広告が掲載されました。子どものスマートフォンやゲームの利用時間を制限するとした香川県独自のネット・ゲーム依存症対策条例(ゲーム条例)を念頭に置いたもので、広告出稿元のゲムトレ(東京都渋谷区)は「子どもたちがサンタさんに欲しいものを「ゲーム」とお願いできるように、ゲームが障害ではなく、教育としての魅力があることを伝えたいと考えました」「ゲームを障害と考える一側面だけではなく、クリアすることで育まれる自己肯定感や世界中のユーザーとつながり感じる多様性など、正しくゲームと向き合うことで生まれる学びがあります」としています。
同社の小幡和輝代表が広告にふれたツイートには「最高にロックですね!」「かなり挑戦的な広告だなぁ」「香川県で広告出す勇気も凄いです」など賛同の声が上がり、いいね!は1万5千超。香川県民はこのメッセージ広告をどう受け止めたのでしょうか。
ゲムトレはゲームを使った教育事業を手掛け、主力事業の「ゲムトレ」では、ゲームを「楽しく脳を鍛える習い事」と位置づけ、子ども向けのゲームのオンライン講座を提供しています。同社サイトによると、例えばオンラインゲームの「FORTNITE」(フォートナイト)では、過度なグロテスク表現がなく、認知力や情報処理能力が向上するとしています。
話題になった15段の新聞広告は、文豪夏目漱石が東京帝国大学(現在の東京大学)を卒業後、当時、低俗と見られていた小説家としてデビューし、代表作『吾輩は猫である』などで文化人になったことに触れ「ゲームの捉え方も変わりはじめた」と述べています。続けて、ゲームのプレイを通じて得られる試行錯誤や仮想空間上での達成感の分かち合いを挙げ、「ゲームは人生を豊かにする力がある」と訴えています。小学低学年も読めるよう漢字にふりがなも打っています。
香川県のゲーム条例は家庭内でのゲームの利用時間を制限する全国初の条例として2020年4月施行。罰則規定はありませんが、18歳未満のゲーム時間は平日1日60分、休日90分、スマホの利用は中学生以下が午後9時まで、それ以上は午後10時までという目役を定め、保護者にルールを守らせる努力義務を課しています。報道によると、この条例の内容や制定過程に問題があるとして、県内外から反対の声が上がっており、香川県弁護士会は廃止を求める会長声明を出している他、県内の大学生が「条例は憲法違反」として、県を相手に損害賠償を求めて提訴しています。
ゲムトレのサイトによると、小幡代表は10年間の不登校を経験しましたが、その間、ゲームを通じて多くの友人に恵まれ、大会への出場を通じて自己肯定感を高められたといい、それが起業につながったと記しています。今回のメッセージ広告については、「ゲーム好きならば誰もが一度は言われたであろう、この言葉を反転させました。伝えたいメッセージは、世代間の価値観や文化の違いにより子どもたちが苦しめられているということ。子どもは野球を頑張ることと同じようにゲームを頑張っています。なぜ、野球は評価されるのに、ゲームは悪とされるのでしょうか」などとコメントしています。
メッセージ広告は、東京メトロ丸ノ内線新宿駅メトロプロムナード内でも12月26日まで掲示されています。
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<広告掲載文 全文>【ゲムトレHP】
「勉強ばかりしてないで、ゲームしなさい」
と言われる未来があるかもしれない。
かつて、小説や漫画は毒と捉えられていた時代があった。あの夏目漱石も、小説家デビュー当時は「帝大出身のエリートが低俗な職業に就いたもんだ」と嘲笑されたと言う。しかし、今はどうだろう。人々の心を掴み、人生の糧となっている。
同様にゲームの捉え方も変わりはじめた。プレイしながら試行錯誤を繰り返して、自分の成長を実感。難しいステージをクリアすることで、自己肯定感が高まる。仮想空間上で世界中のユーザーと分かち合う。ゲームは、人生を豊かにする力がある。
日本初のゲームのオンライン家庭教師「ゲムトレ」では、特別な体験で子どもの成長をサポート。楽しみながら、力を伸ばせるように心がけています。成長の新しいステージへ一緒に進みませんか。
②東京メトロ丸ノ内線新宿駅メトロプロムナード内
掲載期間:2021年12月20日(月)~12月26日(日)
※駅係員へのお問い合わせはご遠慮ください
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香川県のゲーム条例は、昨年大阪市も巻き込んで話題になりました。大阪市松井市長がすでに規制を始めるかのような報道内容でしたが、松井市長は「現場からの声はあるけど、まずは専門家を交えてエビデンスを検証してから」と答えており、記事のミスリードだったようです。「ゲーム障害」が国際診断基準に収載される予定ですが、最近になって国際的にも、その妥当性に疑義が投げかけられています。現実に治療介入が必要なゲーム依存の患者もいれば、問題なくゲームと共存する人が圧倒的多数であることも事実で、「障害」の原因だと煽ることで新たな差別・偏見の起源になる恐れもあります。
しかも、この広告自身はゲムトレ社の学習ソフトの宣伝なのですから目くじらを立てるような話ではありません。しかし、コロナ禍の下、ゲームに向かう時間が増え運動時間や学習時間が減ってて困っている家族がいることもまた現実です。引きこもりのトレードマークのようにゲームが受け止められているのは問題ですが、一概にゲーム万歳とは言えない人たちもいることは忘れてはいけないと思います。
とは言え、ゲムトレ社の社長自身も10年間の不登校経験者ですから、彼の言う事にも説得力があります。なんでも新しい娯楽は批判されるけど、確かな文化や職業になっているものは小説だけではありません。高速大量印刷社会から、世界を駆け巡るデジタル情報社会の中で、遊びもまた、テクノロジーによって高度化し、時代の人々のモノになっていきます。テレビの見過ぎが自閉症や微細脳損傷を誘発すると真面目にいわれた昭和の頃を思い出します。
昭和の子どもたちにテレビは害だと言ってきた今の高齢者かつての親たちが、毎日テレビ漬けで、テレビの垂れ流す情報を鵜呑みにしてコロナ禍で煽り報道の片棒を担がされたのも事実です。その結果、公園遊びも野外活動も、競技場でのオリパラの観戦すら否定され家籠りを余儀なくされた子どもたちに、今度は「ゲーム障害」だとエビデンスもなく煽るこの循環はどこかで断ち切る必要があります。そういう意味でゲムトレ社のメッセージは、子どもたちへの救いの言葉にも読めるのです。
「不登校の子が学校に関心」 eスポーツの教育活用、米領事館が発信
「不登校の子が学校に関心」 eスポーツの教育活用、米領事館が発信
2021年12月22日 【朝日新聞】
eスポーツと聞くと、テレビゲームのプロが高額賞金の大会で技を競うイメージがある。だが、米国の高校や大学では、チームスポーツとして採り入れ、教育ツールにしているという。この取り組みを紹介するウェブセミナーを開いた名古屋米国領事館EducationUSAアドバイザーの田中里佳さんに聞いた。
――eスポーツと教育。どう結びつくのですか。
eスポーツはテレビゲームと思われがちですが、デジタルコンテンツと考えれば教育とつながるのではないかと思います。
教育ツールとしてのeスポーツは、チームスポーツであることが前提です。生徒や学生がチームを組み、コンピューターゲームでどう攻略して成果を上げるか、ほかのチームとどう競うかを考え、議論しながら取り組む。先生やコーチがサポートします。野球のような、ふつうのスポーツと一緒です。
例えば、米国務省と北米教育eスポーツ連盟(NASEF)によるプログラム、ファームクラフト2021では、子どもたちは農場をつくるゲームに挑戦します。土地を整備し、種や苗を育て、収穫までを競います。農業生産技術をゲームで疑似体験をしながら、アグリビジネスの進め方を学ぶことができます。その他にも文化遺産を保護しながらゲームスキルのレベルアップも出来るような国際ビデオゲーム開発競技大会「ゲームジャム」なども開催されました。
ゲームに挑戦することで、チームの仲間やサポートする大人たちと関わりながら、論理的な思考(クリティカル・シンキング)やコミュニケーション能力、協調性、自分の感情をコントロールする自律や自己管理能力を育てていく。さらには、プログラミングなどのITに触れる入り口になればと考えています。
――ウェブセミナーでは米国の大学や高校が積極的にeスポーツを採用していることが紹介されました。どんな効果を期待しているのですか。
一つの例ですが、不登校の子どもがeスポーツのチームに参加することで、学校生活に関心が持てるようになりました。ふつうのスポーツや勉強が得意でなくても、ゲームなら入りやすい。家にいてもできるし、学校へ行く動機付けにもなる。チームで人間関係も学べるし、自信も持てるようになり自己肯定感が高まる。北米にはeスポーツの公認クラブがある大学も多く、奨学金もありますから、ITやAIに携わるデジタル技術者、ウェブのデザイナー、ゲームの開発者など、キャリア選択や自分自身の可能性を広げることにつながります。
一人で引きこもってテレビゲームをやっているのではなく、社会に積極的に関与できる人材を育てることが狙いです。
――なぜ名古屋米国領事館がeスポーツと教育のセミナーを開いたのですか。
米国政府はeスポーツを進める目標として「世界的な共感を高め、地域や国のつながりや理解を築き、深める」「クリティカルシンキングのスキルを奨励することで民主主義の原則を強化する」ことなどを掲げています。eスポーツが、民主主義の根幹を支える能力を育むという考え方です。
日本ではセミナーが最初の取り組みですが、米国政府はすでに台湾、インド、韓国、ニュージーランド、メキシコなど多くの国で教育eスポーツの交流に取り組んでいます。
教育eスポーツは、これまで紹介してきた効果にとどまらず、英語を習得するのにも役立つことも強調しておきます。今回のセミナーは学校の先生向けに教育eスポーツを知ってもらうことが目的でしたが、今後は日本と海外の学生がeスポーツで交流する機会をつくっていきたいと思っています。(聞き手・鈴木裕)
◇教育ICTツールとしてのeスポーツ・ウェビナー
9~11月に計3回、教員や教育行政の担当者らを対象に開かれた。名古屋米国領事館と北米教育eスポーツ連盟(NASEF)日本本部が主催。米国の高校や大学での教育eスポーツの現状や可能性、eスポーツのフィジカルとメンタルケアなどについて専門家が話した。
11月14日には、米国大使館が後援して「eスポーツ国際教育サミット2021」(主催・北米教育eスポーツ連盟日本本部)が開催された。国内の高校での教育eスポーツの取り組みの紹介のほか、高校生たちが現代社会が抱える様々な課題をeスポーツを活用し解決するアイデアを発表する「eスポーツ・クリエイティブ・チャレンジ」があった。
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デジタル王国のアメリカは百歩先の感があります。日本も半導体産業が伸びている頃は、破竹の勢いでコンピュータ産業もあらゆる分野に伸びて米国ゲーム界まで進出していました。ところが、30年前頃を境目にして、貿易摩擦の名のもとに米国に開発や進出を阻まれ、国内産業は日銀の異常な金融引き締めと政府の借金キャンペーンで産業活動そのものが30年間足踏みしました。その結果、日本の未来を背負うデジタルベンチャー企業は息の根を止められたと言っても過言ではありません。
その証拠に、日本に圧力をかけた米国はGAFA(グーグル・アップル・フェイスブック・アマゾン)というベンチャー巨大企業を登場させ中国を除いて世界制覇を成し遂げようとしています。キャッシュレス化をはじめとしたデジタル化をいつまでたっても先導できなかった役所にも責任があります。従来通りこれまで通りの役人根性が、既得権益を結果として擁護してしまい、社会のデジタル化を遅らせてしまいました。未だに、デジタルゲームの善悪を論じているのも、デジタル先進国から三十年間遅れをとった証拠とも言えます。
そんな日本でアメリカ大使館による教育eゲームのサポートとは、何とも情けない気もしますが、気を取り直して追い付け追い越せの大和魂と言うと古臭いですが、ここは日本の教育界とeスポーツ界に奮起してほしいと思います。「クリティカルシンキングで民主主義を育てたい」とすっと表現し、民主主義は論理的なものというのも言い得て妙です。ちょっと日本の教師には真似できそうにない台詞ですが、次世代の子どもたちが表現してくれることを期待して、学校公認のeスポーツクラブがあちこちに誕生すればいいなと思います。
浦安市議会「手洗い条例」可決 コロナ禍長引く中で環境整備を
浦安市議会「手洗い条例」可決 コロナ禍長引く中で環境整備を
12月23日【NHK】
千葉県浦安市の市議会は、コロナ禍が長引く中、効果的な手洗いの習慣と環境を整えたいと今月、「手洗い条例」を可決しました。
浦安市の「より良い手洗い環境づくりの推進に関する条例」では、「手洗いは誰もが容易に実践できる効果的な感染症などの予防策」だとして市や学校の役割などを定めています。
具体的には、小中学校の手洗い場で直接、手で触れずに水道が使える「自動水栓」が現在は38%の普及にとどまっているのを拡大させていくことや毎月15日を「手洗いの日」と定めて手洗いへの関心を高めることなどに市が取り組んでいくとしています。
そして、条例をつくる際の調査の中で、遊びたい気持ちが先立って手洗いがおろそかになったり、見ていないときちんと手洗いをしなかったりする子どもたちがいることがわかったとして、学校などが感染症や食中毒を防止するための手洗いの重要性を伝えていくことで、学級閉鎖などにより学びの場が失われることを防ぐとしています。
手洗いに特化した条例は全国初とみられるということで、提出者の西川嘉純議員は、「新型コロナの影響が長引く中であらためて市全体で手洗いへの意識を高め、感染拡大防止につなげたい」と話しています。
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さらっと聞けば、ごく普通のニュースに聞こえますが、よく考えてみると市議会で議決して地方の法律にするようなことだろうかと思いました。予防のため手洗いはエチケットなのだからそんな大げさにと言われるかもしれません。しかし、この2年間、感染予防をめぐっての建前と本音の乖離が政治とメディアの中に何度も見られました。オリパラの観戦では千葉県は教育的な意味で積極的に児童に観戦を進めてきましたが、スタジアムなど屋外観戦に近い状態でも、児童が感染したら責任が取れるのかとメディアは世論を誘導し、結局途中で感染源は分からないままですが感染者が出て断念した経緯があります。そのオリパラの取材打ち上げで報道クルーが酒場で騒ぎ批判を浴びると言う事件がありました。
また、同じ千葉で副知事をはじめ県会議員らがスポーツ懇親会の忘年会で、酒場に長居した事が発覚してわざわざ陳謝する報道がありました。オミクロン型の拡がりはあるが重症化例はないし、感染は収まってきたと言うのが大方の本音だからという向きもあるでしょうが、公の建前に晒されると本音は言えない状況です。このように、建前と本音がかけ離れた状況で、建前をさらに突き進めるような条例制定は相応しくないと考えるのが政治の役割だと思います。
予防啓発を推進すること自体に異存はありません。しかし、エチケットやマナーに属する事柄が「地方の法律」と言える条例になじむのかということです。手洗いは予防のためのエビデンスもあり、建前とは言いませんが、家庭や学校での躾に関する内容まで、議会で条例化する必要があるのかどうか考えた議員はいたのでしょうか。啓発するだけなら、役所や学校のトップダウンで十分ですし、水栓の自動化の予算は議会で議論すればいいことです。罰則はないから良いという事ではなく、条例はそれなりに市民の意識や行動を拘束する法律であることは間違いないです。
条例制定は地方自治の権限ですが、だからと言ってなんでも条例化すればよいと言うものでもありません。先日否決となった外国人投票条例も、公平や平等という建前ばかりが前に出ていますが、外国人を入れて国防を左右する意見決議を地方議会に要請されてはまずいと、本会議になってはじめて気が付くと言う頼りない地方議会もあるのですから、市民の監視は欠かせません。政治家は市民にばかりあれこれお願いするのではなく、どこの病院でもワクチン接種ができるように医療に働きかけ、行政はその施策が速やかにできるようにすることこそ、最も予防効果があがるのではないかと思います。
ハンディある人の夢かなえたい 日本科学未来館館長・浅川智恵子さん
ともに・共生社会めざして
ハンディある人の夢かなえたい 日本科学未来館館長・浅川智恵子さん
2021/12/28【毎日新聞】
日本科学未来館(東京都江東区)の館長、浅川智恵子さん(63)=IBMフェロー=は全盲の研究者だ。今春に就任し、未来館を「アクセシブル(利用しやすい)なミュージアム」として世界のロールモデル(模範)にすることを目標にする。障害者などマイノリティー(少数者)の生活に科学技術がどう貢献するのか。ダイバーシティー(多様性)との関連について、浅川さんに聞いた。【聞き手・明珍美紀】
――日本科学未来館は、新館長のもと、2030年に向けたビジョンに「あなたとともに『未来』をつくるプラットフォーム」を掲げました。
◆一方的に科学技術を享受するだけではなく、利用する方それぞれが、テクノロジーの進歩によって実現される新しい生活を想像し、社会実装に向けた活動に関わっていく。そんな思いが込められています。
――利用者自ら、実用化のために参加するのですね。
◆どんなに素晴らしい技術が発明されても利用されなければ、価値が失われてしまいます。私自身、長い間、視覚障害を中心に、アクセシビリティーの分野で研究開発に従事してきました。研究者という立場だけでなく社会実装を促進するために未来館の館長を引き受けようと決意しました。
――障害者にとって科学技術とは?
◆できなかったことを可能にするツール(道具)です。視覚障害を例に取ると、音声合成という科学技術がなければ、本を読む時は点字か録音されたものを聴く、あるいは人に読んでもらうことになります。実際にそういう時代が長く続いていました。それが、インターネットの普及でコミュニケーションの手段が変わりました。パソコンの画面の情報を音声で読み上げるソフトが開発され、目が見えなくてもキーボードを操作して文章を書き、メールで送ることができます。
また、携帯電話で写真を撮れるようになった時、それまでは周囲の人に聞くしかできませんでしたが、周りの風景を撮影して友人に送り、自分がいる場所を教えてもらうことができるようになりました。これからは、センサーを駆使することで、街を一人で歩くことが可能になるかもしれない。その一歩手前まで技術が進んできました。
――ご自身が開発中の「AIスーツケース」はその一つですね。
◆これは、視覚障害者の移動を補助するスーツケース型のロボットで、スマートフォンの専用アプリケーションを使って、目的地や途中経路を音声で案内します。ロボットにはセンサーが付いていて、危ない場所を回避したり、周囲の人と適切な距離を保って移動したりする機能を備え、未来館でも実装する準備を進めています。
年齢や国籍、障害の有無にかかわらず、まずは未来館が誰でも楽しめるアクセシブルなミュージアムとなり、展示を見に来た来館者が交流し、議論するような場にしたいと思っています。
多様性支える科学技術
――かつては日本では、女性の研究者は少なかったのではありませんか。
◆私がプログラミングの専門学校を経て日本IBMで学生研究員として研究を始めた1980年代半ばは、女性の研究者はごくわずかでした。仕事と生活の調和を図る「ワーク・ライフ・バランス」や女性の視点はほとんどなく、女性の管理職も少ない。そうした環境で、点字のデジタル化などの開発に取り組んでいたところ、当時にすれば(会社側も)大変な決断だったと思いますが、正式な研究員として採用されました。
入社後、米国IBMに出張する機会が多くありました。米国で驚いたのは、管理職に女性がいるのは当たり前だったこと。同僚には、さまざまな障害者やLGBTQなど性的少数者がいたので、視覚障害者の私が仕事に加わることを当然のように受け入れてくれました。ダイバーシティーに関しては日本よりはるかに先を行っているという印象を受けました。
――未来館は、国立研究開発法人の科学技術振興機構が運営しています。今回は、国が関わる施設のトップに女性が就いたことでも話題を呼びました。
◆女性であるというよりは、目の見えない自分が館長を引き受けることの方が大変ですし、新たなチャレンジです。見えない分を補うためには、周囲とのコミュニケーションを図り、多くの人々から意見を聞く。これらは同時に、これからの研究に役に立つことです。
――どのような未来を求めますか。
◆国連がSDGs(持続可能な開発目標)に掲げる「誰一人取り残さない」という理念のように、誰もが社会の一員として、自分らしく生きる権利を保障されることです。
私は目が見えないことは、自分の個性だと受け止めています。世の中にはいろいろな人がいて、そうした多様性によって社会が成り立っていることを理解してもらいたい。
科学技術は、ハンディキャップのある人の自立生活に役立つだけでなく、さまざまな困難を抱えた人の夢を実現できるツールになる可能性があります。その意味で、科学技術とダイバーシティーは密接なつながりがあるのです。
■人物略歴
浅川智恵子(あさかわ・ちえこ)さん
1958年大阪府生まれ。プールでの事故がもとで14歳の時に視力を失う。追手門学院大、専門学校を経て85年日本IBM入社。92年日本語デジタル点字システムを開発。97年視覚障害者向けにウェブページを読み上げる「ホームページ・リーダー」を開発し、世界の視覚障害者の情報アクセス向上に寄与。2004年東京大大学院修了、博士号(工学)取得。09年IBMの最高技術職であるIBMフェローに就任。14年米国赴任。19年全米発明家殿堂入り。21年4月に日本科学未来館の初代館長だった宇宙飛行士、毛利衛さんに続く2代目館長に就任。
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我が国は古から海外の文化を吸収して、日本風にアレンジしてその文化を我が国のものとして長く後世に伝えると言う文化スタイルをとり続けてきました。遣隋使や遣唐使は今から1500年も前に当時の中国へ派遣されました。隋や唐の先進技術や優れた社会制度を求めて、西暦600年頃から894年のおよそ300年間、計23回に渡り日本から遣わされたのです。帰ってきた彼らは、大和政権で古来の八百万神に仏教を同居させた「神仏」を文化とし、農耕・土木・加工技術をはじめとする当時の我が国にとってのハイテクを発展させたのです。
先日終了した大河ドラマ『青天を衝け』の渋沢らが駆け抜けた時代もまた、わが国独自の社会体制に西洋の民主化の流れを輸入して和製立憲君主制と言う独自の政治スタイルを作り上げました。他国の侵略を防衛するために海外技術を取り入れ生産力を高め、国防に多くの国家予算をつぎ込んで、アジアで唯一植民地化を免れて主権を守り抜きました。明治維新を前後する我が国の歴史に多くの人が共感を寄せるのは、古いものを変えていくために必要なものを吸収しアレンジして独自のものにして新しいパワーにしていく姿を分かりやすく表現しているからだと思います。
1980年代の日本のデジタルテクノロジーは国内でWindowsと競り合っていたトロンOSが開発され、日本が世界に先駆けてネットワーク化したマルチプラットホームOSの花開かせるはずの時代でした。残念ながら国防力の弱い我が国は米国との同盟関係強化と引き換えに、米国経済覇権の政治圧力に負けてしまいます。しかし、そんな時代にも米国に渡って多様性社会の洗礼を受け障害者のためのAIプログラミングを学んでいた若き研究者がいました。先進国に渡り多様性を活かす社会制度とそれを支える最先端技術を学んだ浅川館長をはじめとする現代の遣唐使が子どもたちに伝えてくれるものは、我が国の古からの伝統であり未来の可能性だと思います。
学校でのいじめ厳罰化へ 自殺なら禁錮10年 仏
学校でのいじめ厳罰化へ 自殺なら禁錮10年 仏
2021/12/29(水) 【時事通信】
フランスのマクロン大統領=17日、ブリュッセル(AFP時事)
【パリ時事】フランスで、学校でのいじめを厳罰化する動きが進んでいる。
国民議会(下院)は11月、いじめ被害者が自殺または自殺未遂した場合に最大で禁錮10年と15万ユーロ(約2000万円)の罰金を科すことなどを定めた法案を可決。来年1月には上院の審議が始まる。
現行法では、いじめ加害者が13~17歳の場合は最大で禁錮2年6月と7500ユーロ(約100万円)の罰金、18歳以上の成年なら最大で禁錮5年と7万5000ユーロ(約1000万円)の罰金が定められている。被害者が自殺または自殺未遂した場合に刑が最も重くなる。刑事責任を問われない13歳未満の加害者は罰則の対象外。
教育省報道官は時事通信の取材に対し、今回の法案について「罰則の適用年齢など詳細は今後の審議で決定される」と説明した。
ここ数年はインターネットを通じたいじめが増加している。政府は来年2月、いじめ被害者のスマートフォンに届いた嫌がらせメッセージの画面内容を保存した「スクリーンショット」などを送信できる通報アプリの運用を開始予定。子供のパソコンやスマホなどを親が管理できるようにする措置も検討している。
教育省の発表によると、フランスでは全児童・生徒の6%に当たる年間約70万人がいじめの被害に遭っている。報告されていないケースも多く、今回の法案によると、実際の被害者は80万~100万人に上るとみられている。
10月には、東部アルザス地方で14歳の少女がいじめを苦に自殺した。地元メディアによれば、同性愛者であることやモロッコ人の母親を持つ人種的ルーツに関して、女友達のグループから2年にわたり暴言を受けていた。
マクロン大統領は事件を受け、11月にインターネット交流サイト(SNS)上に投稿した動画で「いじめの被害に遭っている全ての若者へ。われわれは君たちの味方だと知ってほしい」と支援を表明した。
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日本のいじめ認知件数が50万人でフランスは70万人ということは、人口比で考えると日本の3倍近い認知率となります。フランスの深刻さはそれが移民に向けてのものが多いという事です。多様性社会のトップランナーともてはやされるフランスですが、社会の鏡と言われる学校でこの有様ですから、現実にはさらに深刻ないじめや差別が存在することは容易に推察されます。
中世から近世にかけて経済でも芸術でも世界に影響を与えたフランスのプライドは今でもフランス人の中に息づいています。未だにパリでは英語が話せてもフランス語でしか応えない年配のパリジャンは少なくありません。フランス語も話せないくせにパリに来るなと言葉では言わないかわりに、こうしたイケズをするのです。こうした古い慣習の滓と、大量の移民問題を抱えているフランスの政治的な課題が合わさって差別やいじめが起こっていることが深刻なのです。
その政治的課題が学校生活にまで及んでいるゆえに、日本からすれば考えられない量刑が課されようとしているわけです。中2(コレージュ3年)で禁固2年半ですから在学中は塀の中となります。それが少年院なのか刑務所なのかはこの記事ではわからないですが、多様性社会を守り抜くためとは言えフランスの民主主義への向かい方は半端ではありません。
中国共産党によって思想弾圧や女性の凌辱という人権弾圧が今起こっているのに、糾弾する「タイミングではない」と言う政党幹部や国会議員を見ていると情けなくなります。人権侵害を知ればその非難はタイミングで発言するようなものではなく、リスクを背負ってでも声を上げるべきものだと子どもにも教えるのが人の道です。
凍える心、温め解かした感謝の言葉 駿府学園で矯正教育を受ける少年
凍える心、温め解かした感謝の言葉 駿府学園で矯正教育を受ける少年 高齢者と交流【幸せまでの距離③】
2022年1月5日(水)【静岡新聞】
「自分はずっと社会の邪魔者だと思っていた」。県内唯一の少年院「駿府学園」(静岡市葵区)で矯正教育を受ける少年(17)は、高齢者からの感謝の手紙と写真を見て自らを振り返った。他人のために尽くし、感謝されたのは初めての経験。「自分もこの社会で生きていける」。更生を信じる周囲の支えが、凍り付いていた少年の心を解き放った。
同学園で暮らす少年たちが週1回ほど、食事介助やリハビリの手伝いなどに通っているのは、近くの特別養護老人ホーム「楽寿の園」。コロナ禍が拡大してからは訪問活動を休止している。寝たきりや障害のあるお年寄りらは、少年たちを孫のように思い、再会を待ちわびている。
交流を始めたのは43年前、高齢者との関わりが更生の手掛かりになればと、学園側から相談したことがきっかけ。力仕事も快く引き受ける少年たちに、言葉がままならない入所者が「ありがとう」を伝えようと涙を浮かべて声を震わすこともあった。今では互いになくてはならない存在になっている。
少年(17)は幼い頃に両親が離婚し、父の下で育った。兄妹はそれぞれ障害を抱え、少年自身も発達障害がある。高校までバスケットボールに打ち込んでいたが、コロナ禍で部活動が思うようにできず中退し、不良仲間と一緒に知人を殴って逮捕された。
「どんな顔をして生きていけば良いのか分からない」。目標を失って自暴自棄だった少年を変えたのは、楽寿の園の利用者との交流だった。「自分を必要としてくれる人がいる」と実感し、前を向くことができた。
敬老の日に合わせ、少年は学園内のグループ7人でプレゼントする貼り絵を制作した。デザインや色使いを決め、仲間と協力して仕上げた作品のタイトルは「支え合い」。コロナ禍で閉められたカーテンが開き、少年とお年寄りが再び交流する姿を表現した。
貼り絵を受け取った有馬良建理事長(64)は「お年寄りに心を寄り添わす彼らは、純粋な心を持っている。犯した罪の痛みを知っているからこそ、他人の痛みが分かるはず」と更生に期待を込める。
少年は2021年11月、ハローワークでとび職の仕事が見つかった。内定を出した建設会社の会長が身元引受人になってくれる。「楽寿の園のみなさんを裏切りたくない。人に役に立つことができた喜びを忘れず生きていきたい」。進むべき道は開けた。困難があっても、今度は逃げないと誓う。
(社会部・崎山美穂、写真部・小糸恵介)
<メモ>駿府学園は関東甲信越と静岡県の家庭裁判所で短期間の処分を受けた、主に14歳から17歳3カ月未満までの少年が暮らす。2021年12月24日現在、定員90人に対して入院する少年は14人。多くは窃盗や傷害・暴行、詐欺容疑で、高齢者をだました特殊詐欺の受け子もいる。
少年犯罪の背景にはさまざまな要因が複雑に絡む。学園が力を入れるのは、再犯・再非行を防ぐための居場所づくり。地元企業を招いた資格取得授業などを展開する。「楽寿の園」での職業体験は矯正教育の最終段階。43年間でトラブルはなく、連携して少年の立ち直りを支えている。
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少年犯罪を繰り返す子どもの多くが発達障害を持つと言われています。吟味しないで行動してしまう。感情のコントロールができない。何度も同じ失敗を繰り返して学習効果があがらない。相手の感情がわからない。いずれも発達障害のADHDやASDに見られる特徴です。低学力の原因が文章がすらすら読めないことで学習が苦痛になるLDの子どももおり、やってもやっても成果が上がらないので学習性無力感を持つ子どもや自尊感情の低い子どもが多いです。
そして、これまでの研究では安心できない家庭環境が、幼い子どもの脳にダメージを与え、感情をコントロールする前頭葉・言葉や文字を認識し変換する部位の機能等が著しく低下し発達障害の脳と同じようになってしまうという報告がされています。この研究は脳画像の研究から明らかになったものですが、古くはチャウシェスク症候群として知られています。
1960年代後半、ルーマニア社会主義共和国の国家元首となったチャウシェスクは人工妊娠中絶や離婚を禁止した結果、貧困と育児放棄によって産後間もなく貧困な環境の養護施設に引き取られる子どもが増えました。1989年社会主義政権崩壊後、子ども達は先進国で育てられますが、その多くは発達障害と診断されました。6カ月以上施設にあずけられた子どもには自閉症のような症状がみられ、見知らぬ人にまったく警戒心を抱かずに接近する、不注意で多動といった症状が成人期まで一貫してみられたといいます。
逆に、親子分離が6カ月以内であり、里親が育児を引き継げば、子どもは問題なく育ち、失業率も10%でした。愛着に関するもっとも感受性の高い時期は、子どもが安定した情緒的関係を築きつつある時期で、およそ6カ月から2歳頃までです。この時期に母親(養育者)との関係が断ち切られてしまうと、その影響は後々まで外傷体験として残ることは多くの専門家が知るところです。幼少期に負った心的外傷=脳機能の低下で触法行為に至った子どもたちが治療的教育で回復するのは大変険しい道のりです。しかし、駿府学園のような取組の成功例を見ると、子どもの可塑性とそれを信じて長年こつこつと実践を積み上げる関係者の愛情の深さに感動をおぼえます。
伴走者が陸上トラックの内側を走る理由 ~パラ陸上伴走者・中田崇志
伴走者が陸上トラックの内側を走る理由 ~パラ陸上伴走者・中田崇志
1/5(水) 【ニッポン放送】
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(12月29日放送)にパラ陸上伴走者・パラスポーツメッセンジャーの中田崇志が出演。伴走者として走る楽しさ、また気を付けていることについて語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。12月27日(月)~12月31日(金)のゲストはパラ陸上伴走者・パラスポーツメッセンジャーの中田崇志。3日目は、伴走者として走る楽しさ、また気を付けていることについて―
黒木)伴走者としての楽しさはどういうところにありますか?
中田)「選手が力を出し切れるように走れたな」と思えたときは嬉しいです。自分1人であれば、自分がいま苦しいかどうかは自分でわかります。でも選手が苦しいかどうかは外から見るだけなので、難しいです。「いまここでスパートしても、選手は最後まで持つかな」などと思うのですけれど、そこをいつもの練習のなかで、「こうなれば選手が苦しい」ということが感じ取ることができると、本番でもうまく行きます。
黒木)そのときの阿吽の呼吸みたいなものはどうやって培うのですか?
中田)伴走ロープが2人の呼吸を合わせてくれるのです。伴走ロープが、あるとき「グッ」と固くなることがあります。選手が疲れて来ると、腕の振りが小さくなり、「あれ、いつもと変わった」ということが、その瞬間に感じるのです。
黒木)固くなったときに。
中田)伴走ロープはただの「もの」ではなく、2人の間をつないでくれるものなのです。
黒木)走っているとき、中田さんの場合は、選手の内側に入るというころです。選手が縁石を踏むのが怖いと伺いましたが、それはどういう意味ですか?
中田)400メートルの陸上競技場のトラックは、内側に10センチくらい出っ張っている縁石があるのです。
黒木)10センチもあるのですか。
中田)そうなのです。踏んでしまうと転倒する可能性もあります。だから視覚障害の選手をあえて外側にして、私が縁石のギリギリを走るようにしています。そうすると選手は安心して一歩を踏み出せるのです。内側を走る方が距離は短くなるのですが、外側であれば安心して走れます。どちらがいいかは、選手によって異なります。
黒木)縁石は10センチもあるのですか、怖いですね。
中田)私たちがメダルを獲ったアジア大会でも、1位の選手が最後の200メートルで内側に一歩入ってしまって失格になりました。
黒木)そういうこともあるのですね。
中田)ですので、私たちは伴走者が内側を走ることにしています。
黒木)日本では、伴走者が内側を走ることが多いのですか?
中田)世界では半々くらいです。意外なことに、短距離の選手は伴走者が内側の方が多いです。ものすごいスピードで走るので、一緒にコントロールするのが難しいのですね。
黒木)そうでなくても危険を伴う、早さを競い合う陸上競技ですからね。
中田)早さも大切ですが、何よりも選手が安心して安全に走れるということが最も求められることです。
黒木)中田さんはいろいろな経験をなさったアスリートでいらっしゃるのですけれど、どなたでも伴走者になれるのですか?
中田)伴走者に資格はありません。黒木さんもいま、視覚障害の人と走ろうと思えばすぐに走れます。大会も出られます。
黒木)具体体に、どういうことを声かけなさっているのですか?
中田)走るときには大きく2つあります。まずは安全面。コースで、「30メートル先、右90度カーブです。20メートル、10メートル、5、4、3、2、1。はい曲がります。はい曲がり終わりました」というような声かけが1つです。
黒木)コースの状態ですね。
中田)もう1つは、周りの選手の状況を伝えています。「ケニアの選手があと10メートルまで迫って来ましたよ。ちょっとずつ迫って来ました。もう少し、ジワジワ追いかけて来ますよ」というように実況する場面もあります。
中田崇志(なかた・たかし)/ パラ陸上伴走者・パラスポーツメッセンジャー
■1979年・宮城県仙台市出身。
■中学時代に陸上競技を始め、大学時代には日本インカレ・3000m障害で7位入賞。
■東京学芸大学卒業後、NTTデータに勤務しながら、陸上競技を継続。
■2003年にパラ陸上長距離の伴走に取り組む。
■2004年、高橋勇市選手と共にアテネパラリンピックに出場。マラソンで優勝。
■2012年、ロンドンパラリンピックでは、和田伸也選手と共に出場。5000mで長距離立位初となる銅メダルを獲得した。
■2021年の東京パラリンピックでは、パラ陸上にかかわるきっかけとなった髙橋勇市とともにパラトライアスロンの伴走者として出場を目指した。
■パラ陸上における百戦錬磨の伴走者であり、パラ陸上のスペシャリストである。
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この記事を読んだとき、聴覚的支援も視覚的支援も同じだなと感じました。聴覚的支援は視覚に比べ聴覚が相対的に優れた方に、視覚的支援は聴覚に比べ視覚が相対的に優れた方に行う支援です。感覚的には真逆の支援ですが、認知的には同じ支援です。声掛けをするとありますが、要するに周囲の状況や今後の見通しを聴覚で伝えるか視覚で伝えるかの違いで、伝えていることは同じです。
伴走者が内側を走って縁石で躓かないようにというのも、環境の調整として構造化したり嫌な刺激を少なくする配慮を支援者が先回りしているASD支援に似ています。視覚障害者への伴走ロープの役割は、ASD者にとっては支援者への発信です。表出コミュニケーションの絵カードであったり感情表出であったりするのかもしれません。ASD者の表現で支援者は適切な支援が提供できます。逆に言えば、伴走ロープや表出コミュニケーションツールがなければ相手の体調や思いを知る術もないということです。
「伴走者に資格はありません」「視覚障害の人と走ろうと思えばすぐに走れます。大会も出られます」とは言いますが、それは中田崇志さんが縷々説明したように、支援を提供する人に適切な支援ができ、伴走ロープがあってこそだという事を忘れてはならないと思います。もちろんその他の障害の支援でもこれは同じ事です。誰でも支援はできますが、前提条件は個性に合わせた環境調整と支援を受ける側に表出手段があることです。