今日の活動
新しい仲間
出会いの季節と言えば春。ですが、まだ肌寒かった2月に、すてっぷへ新しい仲間がやってきました。小学生のAくんは活発な子で、年上の友だちにも物怖じせず、元気に話しかけます。声が大きくなりがちで、職員が声のレベルを提示することで、小さな声で話せるように練習をしています。
もう一つ職員が気になったのは、友だちへの誘い掛けの言葉。「○○くんはこっち、△△くんはあっちをして」と、誘うというよりも、なかば指示のような声掛けになってしまいます。年上の友だちにも同じように声をかけてしまい、「なんで決められな、あかんねん」と反発の声が返ってきます。そこで職員から、「~しよう?」や「~はどう?」といった、相手が受け入れやすい誘いの言葉に言い換えられるように練習してきました。
先日は年上の友だちたちといっしょにボードゲームで遊びました。人数が多かったので2グループに分かれることに。Aくんははじめ違うグループだったのですが、他方がしていた『スライドクエスト』というゲームに興味を持ちました。『スライドクエスト』は箱の四方にレバーがあり、そのレバーを動かすことで箱の中のステージを傾け、駒をゴールへ動かしていくというゲームです。レバーは4つですから、当然一人ではできません。2~4人が協力してレバーを動かすのです。
「『スライドクエスト』したい!」と伝えたAくん。グループみんなもしたいとなり、他方のグループと交代して『スライドクエスト』をすることになりました。早速Aくんは「○○くんはそっち、△△くんはこっちのレバーね。僕は2つする!」と宣言します。そこで職員が「他の子が2つしたかったらどうする?」と聞くと、Aくんは「あっ、そうか! どうする?」と自分から2人に聞くことができました。Aくんすごい!と内心驚きの職員。日々の成長が現れた場面でしたが、Aくんがやりたい!と思える遊びだったからこそ、発揮できたのだとも思います。毎日の取り組みが面白いと思えるよう工夫して、支援の機会を作っていきたいと思います。
お出かけの計画
じゃんぷに通う中学生の中に、お出かけをするのが好きな子どもがいます。先日は友達と淀川河川公園にある「さくらであい館」に自転車で行ったそうです。
その子は読み書き計算にかなり強い苦手意識があります。計算機を使うこと等はルール違反と思っているのか使おうとはしませんが、本来は使うべきでしょう。なので学習の中ではなく、本人の興味のあることの中で使うことにしました。
知的好奇心の強い子なので、いろんな場所に行きたいと思っています。歴史に興味があるので本来は海外にも行きたいそうですが、現実的に行ける場所に絞って、「ここに電車で行くとしたら往復いくら必要かなぁ」というと、計算機を使います。それで計画を立てる練習もしつつ、学習に計算機を使うハードルを下げたい、と考えています。
次は8月にある山科のお祭りに行きたいそうです。山科は乙訓からだと電車を使わないといけないので、また練習をする良い機会になりそうです。
春!
子ども達から「桜見た~」という話をよく聞きます。筆者も先日京都伏見で行われている「桜まつり」を見てきました。
興味がない子もいるかな~と思いつつ桜の話をしますが、意外とみんな反応をしてきます。「僕も花見行ったで~!」「いいなぁ~けど花粉症やから~」とそれぞれの反応を見せてくれます。
じゃんぷで通う子ども達は学習に苦手感を持っています。ただ「詩は好き」「〇〇には興味あるよ!」と子ども達には好きなことがそれぞれあります。桜はみんな好きなようです。国語の教科書には最初大体詩が載っており、合わせて詩を書くことを国語の最初の授業にすることもあり、それが楽しみな子もいるようです。
こういった季節感を味わったりすることも大切です。駅から通所する子ども達は西向日駅の桜並木を見ながら「春だな~」と話しています。こういったほんわかした時間も必要ですね。
今年度もよろしくお願い致します。
R5年度が始まりました。今年度もどうぞよろしくお願い致します。
すてっぷでは4月1日の土曜日に子ども達が来ており、じゃんぷでは明日から子ども達が通所してきます。新しい学年になった子ども達はどんな表情を見せてくれるのでしょうか。春休みの宿題を終わらせて一息ついている子もいるでしょう。宿題が中々進まず、「手伝って~」と助けを求める子もいるかもしれません。中には春休みの宿題がそもそもなく、「〇〇行ってきたよ~」という話をしてくれる子もいるでしょう。まずは何よりも元気な姿を見せてくれることを願っています。
環境がガラリと変わります。それで少し不安定になってしまう子どももいるかもしれません。それは仕方のないことです。私たちはいつもと変わらず、子ども達を受け入れようと考えています。変わった環境の中で頑張っている子ども達を褒めつつ適切な支援をしていきたいと思います。改めて今年度もどうぞよろしくお願い致します。
成長!
R4年度が終わります。すてっぷでは支援学校に通う子ども達が卒業します。
先日筆者が入り用ですてっぷに向かった時、卒業する中の一人の子どもが書いた手紙がありました。そこには、とても丁寧に「ありがとう」と書かれていました。「これ〇〇君が書いたんですか!?」と驚きました。筆者が知っている時も困ったことを中々言い出せなかったりしたのが言えるようになったりと凄い成長を見せてくれていましたが、これまた凄い姿を見せてくれました。
また、作業課題中にお喋りが止まらない子どもがいましたが、その子が黙々と課題に集中して取り組んでいました。筆者の声が聴こえると「T先生?来てるん?」と気づいてくれましたが「〇〇さん課題頑張ってるな~先生もう外いかなあかんしお話出来んねん。ごめんな~」と返すと「そっか~またお話しましょう」と言ってそのまま課題に戻りました。一度話し出すと止まらなかったのがすぐに切り替えて課題に向かっていることに驚きました。
他にも卒業する子ども達がいるのですがタイミングが悪くその姿を見ることは出来なかったのが残念でした。しかしすてっぷの職員から話を聞くとそれぞれ成長した姿を見せてくれているようです。その子ども達からも職員一同たくさん学ぶことがありました。卒業したみんなはまたそれぞれの道に向かって歩みます。そこで一層活躍してくれるでしょう。お元気で!また会いましょう!
言葉のシャワー
「発達障害と自己肯定感」についての記事があったので少し気になりました。元記事について興味のある方は上記のリンクから飛べるので読んでみてください。
教員時代、筆者が2年目の時に支援の必要な子どもが教室の中に何人かいたのですがその中でも多動傾向があり、悪目立ちのする子がいました。その学校は生徒数が少なく、単級だったので学年主任もおらず、正直どのようにすればわからない状態でした。その時教務主任と教頭先生に教えてもらったことが「とにかく普段はずっと褒めてあげて」でした。
「他の子よりも怒られることが多いし、担任じゃない先生からも怒られることもあるから普段はたくさん褒めて、よしよしするだけでもいいから」
お二人共、筆者が持ったクラスを低学年の時に担任していた先生方だったので子どもたちのことをよくわかってくださっていたようで、どうすればよいかわからなかった筆者にそのように教えてくださりました。学校現場を離れた後、すてっぷ、じゃんぷでも普段はとにかく子どもの話を聞き、褒めまくることを意識しています。
学校の中で出来ない、わからないことが多い子ども達はそれだけで自己肯定感が低くなっていきます。ただそういった子ども達は褒めにくい部分もあります。実際に「どこを褒めたらいいかわからない」という声も聞きます。どの子ども達にも良いところが必ずあります。それを見つけ、褒めて関係性を作っていくことが授業でも療育でも必要だと考えています。もちろん技術や知識があることが一番大事ですが、大切なのはそういったことなのではないでしょうか。
オタマトーン
オタマトーンという電子楽器をご存じでしょうか?見た目がオタマジャクシや音符のような電子楽器で、長年アート作品を発表しているアーティスト「明和電機」が生み出した、ヒット商品です。指を押すだけで音が出て、見た目の可愛らしさも相まっておもちゃとして大流行したようですね。
ただこのオタマトーンはリコーダーのように「ここを押さえたら『ド』が出る」等決まった音の出し方はありません。なので曲を弾こうと思ったら絶対音感を持っていないとかなり難しいです。最近筆者は初めてオタマトーンを触ったのですが音を出す場所の感覚が掴めず、心が折れそうです。
じゃんぷに通う子ども達の中にもオタマトーンで遊んだことのある子どもが何人かいます。「難しいよな~」と話してみると「え、おもしろいやん!」と返してきました。「いやいや、あれリコーダーとかピアノみたいにどこがどの音かわからんやん。」と返すと…
「え、わかるやん」
その子は絶対音感を持っているようで、知っている曲はじゃんぷに置いているおもちゃのピアノでもパパパッと弾いています。学習に苦手感があり、明るいけれども「私出来ないから~」というのが口癖でしたが、そういった出来ることもあるのです。それを見つけ、子どもが自信を持つと苦手なことにも挑戦しようとします。長所を見つけることは大事ですね。
「読むだけなら」
(活躍できる場 2022/12/15)で少し紹介した子どもですが、今は「宿題決め」→「タイピング練習」→「お話作り」→「お話読み練習」の学習の流れが定着しています。
かなり学習障害が重い子どもなので、何度も書いていますが文章を読むなんてことは本来相当エネルギーを使い、しんどいはずなのです。こちらとしても最初は一日に一回、長くても5分程度集中して学習に取り組むことが出来ればそれで充分だと思っていました。それは今でも変わっていないです。
そんな子が30分以上、個別の時間をはみ出しても「今日作ったお話の読み練習は絶対今日中にする!遊びは後回しでいいから自由時間(本来は自立学習の時間)にしたい!」と言ってきます。それだけ彼にとって重要なことなのでしょう。また、「学習をした」という実感にも繋がっているようです。「読むだけなら」と言っていましたが、それがよかったのでしょう。
学習障害のある子にとって、さらにそれが重たい子にとって教科書の学習はしんどいことだらけです。だからまずは「その子の興味のあること(好きな事)を題材にする。」「無理なことはさせない。」「パターン化する。」とよく言われていますがそれがまさに効果的だったと言えるでしょう。学校でも活躍の場が出来、ノートも少しずつですが書くようになってきているみたいです。「書くこと」も苦手ですが自分が「出来るな」と思った範囲で書いているようですね。
支援が必要な子にはいろいろと支援をしたくなりますが、まずは出来ることを取り組み、その子の自信に繋がることが何よりも大事です。
↓学習障害の子どもへの支援がわかりやすくまとめられた動画です。興味があればぜひご覧ください。
侍ジャパン!
侍ジャパン世界一おめでとう!!
じゃんぷに通う子どもの中にもWBCの話題で持ち切りのZ君がいます。大人顔負けの知識で驚くことも多いです。
さて、ここで問題なのがZ君はプロ野球に興味があっても他の子が興味のない時です。Z君はとにかく熱がすごく、一方的な会話になってしまう傾向も多いため、令和ロマンのコントのように「ちょっと喋りすぎか~」と気づくことはありません。「僕の話を聞いてくれ!」と言わんばかりです。
みんながみんなZ君ほどWBCに興味があるわけではないので、「し~ん」となります。なのでZ君には「WBCの話がしたいのはわかるけど、まずは他の子に家で見てるかどうかを聞いてごらん。それで見てたら「あのシーン見た?」って聞いてOK。見てなかったら「〇〇って知ってる?僕好きやねん」で止めとき。その時は勉強終わってから先生がいくらでもWBCの話付き合うわ」と伝えました。Z君に「自分の話が出来る時間が作れる」ことを前提に、自分の好きなことを話す時、相手にそれが興味がない時どうすればよいのかを伝えました。先日はその興味のない子も「お家の人が見てるわ。お母さんもお父さんも必死になって見てるよ。」と面白い話をしてくれ、その子が話に乗ったことがZ君も嬉しかったようです。
自分の好きなことについて話したいという気持ちはよくわかります。誰もがそのような気持ちを持っているでしょう。それを尊重しつつ、円滑にコミュニケーションが出来るような支援がこういう場合必要なのでしょう。
学習障害のサポート
~以下一部抜粋~
学習障害のサポート
ゆうきさん本人も、学習障害があって支援が必要だ。3年生の段階でカタカナが書けず、日常で使う簡単な単語もうろ覚えだった。机の前に、座ることはできる。一回も宿題を提出したことがないのに、学校では「いい子」という評価だった。同じクラスに、かなり暴力的な子がいて、先生は、その子にかかりきりだったそうだ。
鈴木さんが学校に相談しても、「困っていないので、支援は必要ない」と言われた。行政の施設は、学校経由でないと利用できない。鈴木さんは、独自に福祉施設に依頼し、保護者の了解を得て検査を受け、学校に「こういう傾向がある」と知らせた。みんなと同じ量の宿題はできないので、減らしてもらうためだ。
ついに学校は動き、学習障害の専門員を頼み、ゆうきさんの授業の様子を観察した。それから宿題を減らしてもらえたものの、一時だけでまた通常の量に戻った。
居場所では、スタッフがマンツーマンでゆうきさんに付き、一緒に学校の宿題に取り組む。ゆうきさん本人も変わり始め、「やらなきゃいけない」という気持ちになった。2時間かかっても、宿題をやり遂げようとする、その気持ちを優先しているという。
鈴木さんは、保護者と学校に「支援学級に入るのも、ゆうきさんにとっていいのではないか」と伝えた。本人は「今の友達との関係がいいから、入りたくない」と答えた。子ども自身が決めることが一番重要だが、それまでに周りの大人がその子のためにどんな話し合いをして、どんな選択肢を用意できたかという過程も大切にしている。
居場所が利用できるのは、小学6年生まで。これから、居場所を卒業後の「アフターケア」事業が、行政の予算に盛り込まれる予定だ。ゆうきさんが中学校に行っても、ときどきは居場所に来たいと話している。鈴木さんは、ゆうきさんが進む中学校と、入学前に個別に相談する約束も取り付けている。
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本文中にあるように、実は学習に困っていても本人が真面目で授業にも熱心に取り組んでいるが故に見逃されてしまうケースは少なくありません。さすがに「困っていないので支援は必要ない」とまではいかないでしょうが、なぜかテストの点数が取れず、担任もどのようにしたらよいかわからないままになっている、というのは今でもあるのではないでしょうか。なんとなく「学習に困難があるのだろうな」とは感じつつも具体的な支援にまで手が回らず、放課後に少し教える時間を作ったりモジュールの時間を使ってわからないところを教える、といったことで精いっぱいだと思います。
最近は学校でもコグトレをクラス全体で取り組んだり等、医療のノウハウが学校現場でも使わられることが増えてきました。しかし担任、もしくは学年団で出来る支援は限られているのかもしれません。通級は週に一回です。学習障害の専門知識を持った学習支援員を設置したり、SSWとの密な連携などがまだまだ必要なのかもしれません。「どこにそんな予算が!」と言われそうですが。