今日の活動
本人参加の支援会議
子どもの支援計画を議論する中で、高学年児は目標やその手立てについて本人も懇談会に参加してもらい、なぜこの目標を設けているのか、どのようにして目標を達成しようとしているのか話し合う場を設けることが必要だと話しあいました。
高学年ともなれば、自分はどうなりたいのかを考え始める時期です、対人関係や学習など様々な困難を抱えている子どもたちも、自分は何者か考える時期です。自分は何のために通級指導や支援学級に在籍して学んでいるのか、何のために放デイに来ているのか薄々子どもらも考えてはいるのです。
子どもにこっそり聞いてみると、たいがいはネガティブな理由です。通常学級ではしんどいから、勉強がわからないから、みんなとうまく遊べないからと、できない理由をたくさん並べてくれます。けれども、通級指導を受けたり支援学級に在籍したり放デイに来たらどんなメリットがあるのかは、どの子も答えられないのです。せいぜい、気兼ねなく生活できるという答えでした。
半年に一回懇談会があって保護者とスタッフが自分の話をしているのは子どもらは知っています。それならば、高学年からは本人も交えて支援会議を持てばいいと思うのです。中学からは3者面談を行いますが、ほとんどは成績と生活態度の反省会のような形になっています。そうではなく、どうすればうまくいくのかを話し合う必要があります。そして、とても困難な状況になっても3者で協力して乗り越えていく会議のスタイルを小学生の時期から持つことはとても重要です。とても困難になってから本人を無理やりに引っ張り出すのではなく、穏やかな時期から一緒に話し合いを積み重ねていく支援会議を大事にしたいものです。それが、自分のことは自分で決めるアプローチになると思います。
正常性バイアス
Jさんの評価について、関係者間で意見が違うというスタッフの報告がありました。行動問題が多く服薬したほうがいいという意見と全く問題ないから服薬などやめたらいいという意見などです。
そもそも、長く様々な関係者と付き合っていると考えが同じことのほうが少ない感じがします。保護者の意見も学校の意見も事業所の意見も相談所の意見もすべてが同じであったことのほうが少ないくらいです。それくらい、子どもの評価は見ている環境によって違ってあたりまえだということを知っておくことが大事です。
環境がちがうのだから評価が同じであるわけがないという前提に立てば、相手の考えていることが客観的に見えてきます。Jさんの場合もそうなのでしょう、場面の切り替えや移動が少なければ穏やかに過ごせるし、切り替えが多ければ混乱しやすくなるということを、障害特性と数年間の経緯が把握できていれば、いろいろなJさんの姿を知ることができると思います。
関係者や保護者が自分の知らない混乱したJさんの状況を聞かされたとすれば、たとえ嘘のない事実であったにせよ、疑ったり気分を害してしまう場合もあるという想像力が支援者には必要になります。良いことは共有しやすいですが否定的なことは共有しにくいのです。正常性バイアスといって、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう心理は誰にもあるものです。関係者間連携とはこういう前提で取組むものですから、「自分のやり方が悪いのかもしれないので協力して欲しい」という理由で動画など客観的なものを用意して、結論は出さずに困っているところをみんなで知ることが重要です。その上で、「うまく生活できているところからはたくさん情報や意見が欲しい」と知恵を出し合う取組を丁寧に行うことが必要です。
トランジションカード
スケジュール指導ではトランジション・エリアとトランジション・カードが定番で使われますが、トランジション・カードについては誰が発案したのかよくわかりません。スケジュールを置いてある場所をトランジション・エリアと言い、トランジションカードは「スケジュールを確認しに行きなさい」と指示するためのカードです。
この移動カードのシステムは、指示待ち(プロンプト依存)を作ってしまう場合があります。I君がタイマーが終わったのでスタッフにタイマーを持ってきました。こちらとしては帰る用意をスケジュールに示しているので帰る用意をしてほしいのですが、I君にしてみれば「タイマーが鳴りました」と示しに来るだけで、次の活動とは結び付いていないのです。
仕方がないのでスタッフは毎回トランジション・カードを渡して、スケジュールを確認するように仕向けるわけです。これは、プロンプト依存を作っているのと同じです。人的介入を絵カードにしているだけで声をかけているのと同じなのです。なんのために声をかけてはいけないということがわからないと、こんな形で声かけより厄介で強固なプロンプト依存を作っているのです。
トランジション・カードはスケジュールに戻って次の行動を確認しましょうというものですが、やることがわかっていても「トランジション・カード待ち」をするASDの子どもがいます。しかも、このカード渡し行動はフェードアウトのアイデアが浮かびません。
結局、ピラミッドアプローチで説明されるように、次の行動を起こす一連の動作として、スケジュールボードの一番上のカードを「これからやります」場所に貼り付け、その内容が終了したらスケジュールボードのおしまいボックスに入れて、一番上のカードを「これからやります」場所に貼るというルーティンを覚えたほうがよいのです。
そして「これからやります」の内容が終わっているのにスケジュールボードに戻れないなら、「これからやります」カードを貼る場所を子どもの目につく場所に貼って、終わればそのカードを持たせてスケジュールボードのおしまいボックスに入れさせて次のカードを取って移動するほうが合理的ですし、正しいやり方に移行する時のフェードアウトが身体プロンプトのフェードアウトで済むので移行しやすいです。
ということで、今後すてっぷではプロンプト依存養成トランジション・カードを廃止し、自立型スケジュール計画を考えていきます。
指示待ち
H君が、ワークシステム(自立課題の行動支援システム)にとりくんでいました。内容はプットイン課題3つですから重度の子どもです。でも左から課題をとり、課題が終われば右のおしまい箱に上手になおしていきます。動画を撮影していたこともあり、H君は終了すると撮影者におわったよとモーションをかけてきます。
撮影者は「ワーク中には声をかけてはいけない」と思っているので、しばらく反応せず撮影を続けていたのですが、申し訳なくなって「グッジョブ」サインを送りました。H君はいつもどおりに「よくできたねー」の反応をしてほしいのに「親指立てても意味わからんし」とばかりにせっかく片づけたおしまい箱をけって課題をひっくり返して大人の反応を引く行動に出ました。
要するに、終わったら、大人はいつも頭をなでて褒めると共に次の行動を指示してくれていたので、その大人の行動と指示をひたすら待っていたというわけです。通じなかったら不適切な行動でとりあえず注意を引くというH君のこれまでの姿がでてしまいました。
表出コミュニケーションが弱いことと指示待ちと不適切な行動はトリプルセットなのです。でも、どうすればいいかというスタッフへの次の課題をH君は提示してくれています。がんばります。
節目だから進路を考えられる
土曜にG君が昼過ぎにやってきて「また、やってしまった」と朝から来られなかったことを反省していました。週末は自分へのご褒美に、平日我慢しているゲームを夜中までやることにしているそうです。そして、今度こそは朝から放デイに行くぞと決意するのですが、朝目覚めても「もうちょっと寝よ」と昼まで寝てしまうそうです。
6年生の2学期ともなれば、子どもは中学校の生活に思いを馳せてあれこれと情報を友達などから収集するものです。でも、不登校の子どもにはリアルに情報を得る機会もないし、節目の時期の雰囲気も感じることができません。親や周囲の大人は進路についてあれこれ相談したり、悩んだりしますが、進路について正面から考える機会を与えられていない子どもには、その内容も親の思いも十分には伝わりません。大人は配慮のつもりで学校の事を話すのを控える場合が少なくありませんが、それではますます子どもは情報が得られません。
進路選択という節目の時期は子どもにも親や関係者にも大変な時期ではありますが、成長の時期でもあります。親や関係者は新しいステップに進むための情報を子どもに示し、子どもはできれば実際に見て自分の進路を考える機会です。これは節目の時期だから出来ることで、いつでも出来ることではないです。当然、大人と子どもは知識量が違うので意見の食い違いもあるし、正しいとわかっていていても反発することもあります。けれども、それは双方にとって殻を破るときの痛みです。自分の選択を表明することは、自問自答を深めます。「またやってしまった」という彼の言葉に「次こそは」という可能性を感じながら、進路のことを考えさせられました。