今日の活動
合理的配慮のある授業
インクルーシブ教育を通常学級で行うには?専門家に聞いた実践例やヒントを紹介
先日の夜、合理的配慮について調べていたら興味深い記事を見つけました。Y先生と「合理的配慮のある授業ってなんだろう?」と雑談の中で話題になり、「読み書き障害のある子どもでも内容が『わかった!』と思える合理的配慮って何があるんだろうね~」と話していました。
筆者が教員時代、小中連携の研修で中学校の英語の授業を見たことがありました。その時、支援学級の子どもも交流授業で参加しており、支援級の担任の先生に支援してもらいつつも生き生きと授業に向き合っていたことを覚えています。事後検討の時に「事前に授業の内容を支援級の先生に伝えている。」「支援級で少し授業内容の練習をしている。」と教えてもらいました。その時には「あ、事前に連携して子どもに見通しを持たせることが大事なのか~」と感じていましたが…
Y先生と話している中でまだまだ自分の考えが浅かったことに気づきました。上にあげたのは「英語のスペシャリストである先生と、特別支援のスペシャリストである先生がそれぞれの分野を生かして連携した」ということです。
英語の先生はその授業で必ず押さえておかなければいけない「ポイント」を把握しています。それを支援級の先生に伝え、その子に合わせた練習をさせたのでしょう。そこがズレてしまえば、ただ子どもにしんどいことをさせることになってしまいます。授業の中での合理的配慮、ということでしたがじゃんぷでの学習支援にも通ずることだなと感じていました。
さて、記事の後半には「やさしいどうして?」という言葉もあります。これについてはまた後日記事にしようと思っています。
『はらぺこバハムート』
1月から導入したボードゲームで、子どもたちが特に気に入ったゲームの一つが『はらぺこバハムート』です。『はらぺこバハムート』はすてっぷに置いてあるボードゲームでは珍しく1対1で対戦するゲームです。
これまですてっぷに置いていたボードゲームは、3人以上で遊べるものがほとんどでした。3人以上で遊ぶことで、コミュニケーションの幅を広げていくことが狙いの一つだからです。そういう意味で言えば、『はらぺこバハムート』は1対1の対戦ゲームですので、コミュニケーションを取る目的は、そう多くありません。ですが、すてっぷでボードゲームに取り組む狙いの一つ、見えないものを想像する機会がたくさんあるのが、この『はらぺこバハムート』です。
『はらぺこバハムート』は、基本的にはカードを使った対戦ゲームです。カードに書いてある効果を使って、相手のライフポイントを減らし、相手を0にしたら勝ちと言うゲームです。『遊戯王』や『ポケモンカード』といったトレーディングカードゲームを例に挙げるとわかりやすいでしょうか。ただそれらと違って、『はらぺこバハムート』は16種類のカード1枚ずつしか使いません。面白いのは、対戦するお互いが手札はそれぞれ持つのですが、手札を増やすために引く山札、そして手札を使った後に置いておく捨て札が、一つずつで対戦相手と共有するというルールです。さらに山札がなくなっていて引けなくなったら、何があるかわかっている捨て札を良く切って山札にします。そのため、山札に何があるかわかってカードを使ったり、自分の手札と捨て札から相手の手札を推測して出すカードを変えたりという要素が生まれます。そこで、見えていないものを想像するという力が発揮されるのです。
『はらぺこバハムート』をよくリクエストするのが、小学生のTくん。Tくんは違う場所で『はらぺこバハムート』をしたことがあったそうで、すぐにすてっぷでもお気に入りのボードゲームになりました。初めて『はらぺこバハムート』をする友だちにも、丁寧に分かりやすいようにとルールを説明します。そして何のカードを使うか悩んでいる友だちに、「いいよ。待ってるよ」と穏やかに伝えていました。友だちが慣れてきたころには、休憩時間でもTくんや友だちが『はらぺこバハムート』をする姿も。カードの一覧リストとにらめっこしながら、相手の手札や山札に何のカードがあるかじっくりと考えています。見えないものを想像するということが苦手な子も少なくありませんが、でもおもしろいと思えるきっかけになってくれたらと思いながら、支援しています。
「うぅ~」
障害のある方の中には障害が重く、言葉のない方がいます。例えばタイトルにあげたように「うぅ~」と声を出すだけの方もいます。言葉がなく、会話でのコミュニケーションが難しいため、「何を考えているのかわからない。何も考えていないのではないだろうか。」と誤解されることもあります。
さて、なぜこのようなことを突然書いたかというとY先生から「東田直樹さん」について教えてもらいました。恥ずかしながらこの業界では有名な東田直樹さんの「自閉症の僕が飛び跳ねる理由」を読んだことがなく、つい先日Y先生に本を借りてようやく読みました。また、東田直樹さんと作家のデイヴィッド・ミッチェルさんのドキュメンタリー「君が僕の息子について教えてくれたこと」もようやく見ることが出来ました。
「自閉症の僕が跳びはねる理由」を読むと東田さんが自身の障害について考えていること、普段の生活について感じていることを丁寧な文章で書かれています。何よりも動画で見た東田さんがこのような文章を書くことに大変驚きました。
見えている姿と本人の考えていることは本当は違うのかもしれません。私たちは専門家なので、子ども達を適切にアセスメント・評価をしながら支援を考えていく必要がありますが、わかった風になっていたと思うことがあります。
子ども達は日々成長しています。筆者も子どもから学ぶことが毎日あります。私がこれまでの教員生活で担任した子ども達、また、すてっぷ、じゃんぷで見た子ども達を改めて見直す必要があるように感じました。
「楽しんでね!」
今年の冬は厳しい寒さが続いています。普段は外で元気に遊ぶ子どもたちも、公園に行ったかと思ったらあまりの寒さに予定を切り上げて帰ってくることもあるほどです。あと1か月ちょっとで4月。穏やかな気候の春を迎えたいと願うばかりです。
さて、新しい年度に向けて、見学・体験の問い合わせが増える時期。すてっぷでも何人かのお子さんが見学・体験に来られることになりました。お子さんの体験時は、その子に合わせたグルーピングが組める時間に来ていただけるようお願いしています。もし実際に利用されるとなった場合も、なるべくそのグルーピングができる曜日を提案しています。それはすてっぷが、集団での活動や生活を前提としている中で、子ども一人一人が楽しみながらも成功体験を積み上げてほしいと願っているからです。
先日は、小学生の子が体験に来るということで、小学生のグループで事前の打ち合わせをしました。小学生グループの一人、Sくんは去年すてっぷに来たばかりで、通い始めて1年ほど。したくないことでも調整して集団に参加しようとしたり、友だちへの声のかけ方を工夫したりと頑張っています。最近は友だちとの交渉も穏やかにできることが増えてきました。そんなSくんですが、体験生を迎えるとなって大張り切り。みんなで遊ぶ取り組みとして職員が「ストラックアウト」を提案すると、「じゃあ、ボールを渡す役をする!」と立候補。職員が最後に「体験生が来た時はどう遊ぶ?」とみんなに尋ねると、Sくんは「優しくする。楽しくなるようにする。」と答えました。
そういえばSくんが初めてすてっぷに来た体験のとき。同じ小学校でSくんのことをよく知っているお兄さんがすてっぷにいて、Sくんを迎えてくれました。お兄さんはSくんのことを「僕の親友!」と職員に紹介して緊張をほぐしてくれました。さて、迎える側になったSくん。お兄さんのように緊張をほぐしてあげることができるでしょうか? 目標の通り、優しくすることができるでしょうか? 体験の日が楽しみです。
注目するポイントを見極めて!
昨日の記事(左手は添えるだけ 2023/ 02/15)の続きです。今回は具体的な事例を紹介します。
2週間ほど前、自立学習をしていたRさんが「教えてください。」と質問して来ました。内容は算数の引き算の筆算です。繰り下がりの必要な問題とそうでない問題がバラバラに混ざっているプリントでした。Rさんが質問してきたのは「28-14」という問題で、プリントには十の位の「2」に斜線を引き、一の位の「8」に10をつけていました。それまでは繰り下がりの必要な問題だったので同じ処理をしたのでしょう。一の位だけで「18-4」の式になってしまい、「???」と混乱したようです。「一の位を見てみ、繰り下がりじゃなくてそのまま引けるでしょ。」と伝えると、「なんだそういうことか~」と理解した様子で自立学習に戻っていきました。
その1週間後、Rさんが同じ内容の宿題が出ていたようでまた「教えてください。」と質問をしに来ました。内容は同じです。繰り下がりが必要ない問題で繰り下がりの処理をし、混乱した様子でした。前回と同じように「一の位を見てみ、そのまま引けるでしょ~」と伝え、「あ、そうだった~」と理解して戻っていきました。
Y先生と相談し、Rさんが同じ内容の宿題を持ってきた時には「一の位を見て引けるか引けないか、そこだけに注目をさせよう。」と決めました。「一の位」をキーワードとし、そこには大人が注目をさせる。Rさんが「引ける?引けない?」を考えるようにします。子どもが何に困っているのか、どんな支援をしたら自分で出来るのかを整理し、支援をしていくことが大事ですね。