すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

待つことで見えてくること

 好きなことをしている時間というのは格別のものです。大人になると、なかなか好きなことに没頭できる時間はありません。何かしら他のことをしなければいけない時間がやってきます。そんなときは時計を見たり、タイマーをかけたり、アラームをセットしたりと自分なりの方法を大人の多くは見つけています。子どもたちはまだ見つけている最中。自分で見つけられる子もいれば、大人の支援があって見つける子もいます。

 高等部のW君は、DVD鑑賞が大好き。DVDエリアを使っていた友だちが先に帰ると、DVDカードを職員に渡して、DVDエリアに行きたいことを伝えてきます。W君の最近のお気に入りは「風立ちぬ」。以前は「紅の豚」が好きだったりと、無類のプロペラ飛行機好きのようです。ほかにも室外機のファンをずっと眺めたり、停まっている車の下をのぞき込んでシャフトを見ようとしたりします。皆さんの周りにもそんな子がおられるのではないでしょうか。じっと回るものを眺めている様は、まるで工学博士か修理工場の大ベテランのよう。いったい回るものの何が、彼らを引き付けるのでしょうか。

 さて、好きなことをしているとあっという間に時間は過ぎるもの。DVDを見ていたW君も帰る時間になりました。まだ時計やアラームの意味が分からないW君。職員が彼とモニターの間に手を入れて、「終わります」のサインを出しました。するとW君は、自分の手をモニターの電源の上に置きながら、まだDVDを見続けています。一見すると「止めないで」と言っているようです。どうしようかと職員が逡巡していると、あることに気づきました。W君は手で電源を覆っているのではなく、電源ボタンの上に人差し指を置いているのです。まるで「自分で止めるよ」と言っているかのよう。本当にそんなことを思っているのかはW君にしかわからないことですが、職員は待ってみることにしました。すると、2分ほどでW君は自分で電源を切ったのです。すかさず職員は「自分で電源切れてえらいね」と大いに褒めました。そのままW君は自分でスケジュールに戻り、トイレに行って帰る準備を始められました。

 W君のように、タイマーやアラームの意味が分からない子どもには、職員が1対1でつき、切り替えも大人主導でしてしまいがちです。実際W君も、放っておいては切り替え出来ない場面がまだまだ多くあります。しかし、W君も知らず知らずのうちに、自分なりの方法を見つけているかもしれません。今回で言うと職員にきっかけはもらっていますが、その後、自分で切り替えることが出来ました。「待つ」ということも、成長の機会を保障する方法の1つになりますね。

文章問題

先日じゃんぷに来ているV君が「文章題苦手や…」とつぶやきました。

V君だけでなく,他にも算数,数学の文章問題に対して苦手意識のある子どもは多いです。そういった子どもには一般的に図に表したり等,視覚的にわかるような支援をします。

ではなぜ文章問題が苦手な子どもが多いのでしょうか。文章題を解くにはいくつかの処理が必要になります。

・文章を読む(変換過程)

・書かれていることをイメージする(統合過程)

・出てきた数字をどんな順番で計算しようか計画する(プランニング過程)

・計算を実行する(実行過程)

 

大きく分けて上記4つの過程に分けることができます。これらを処理していくためには様々な力が必要となります。数の理解とイメージが出来,計算が出来る子どもでも文章が読むことが苦手で解けない…文章は正しく読めても数字の処理が苦手で式が作れない等つまづくポイントは子どもによって様々です。

子どもがどのポイントでつまづいているのかがわからないままでは漠然とした支援になり,一般的には有効とされていてもその子にとっては意味のない支援,ということがあります。

じゃんぷでは子どものどこにポイントがあるのかを見極め,それに対して有効な支援をすることを心掛けています。

(参考・引用 「子どものつまづきからわかる算数の教え方」 監修:平岩 幹男 著:澳塩 渚 合同出版 2021)

1つずつ,時間を区切って

じゃんぷに来ているU君が頑張って宿題に取り組んでいます。

やる気はきっちりあるのですが,どこか宿題中ボーッとしてしまい,終盤「あわわわわ」と急いで宿題をすることがありました。

書くことへの苦手さや,計算等の処理に意識を集中するので,時間にまで意識が向かないようです。そこに力を使っているのでボーッとしてしまうのでしょう。

そこでタイムタイマーを使い,視覚的に時間を意識させるような支援をしてみました。また,彼は「宿題は時間が物凄くかかる」と思い込んでいるところもあります。1つの宿題が終わった時に「5分で終わらせることが出来たね!すごいやん!」と「これだけの時間で終わらせることが出来た。」という経験を具体的に伝えるようにしました。

まだ始めたばかりですが,少しずつ経験が積み上がっているように思えます。普段は帰る直前まで国語算数の宿題を取り組み,「まだ音読がある!」と慌てていました。しかし先日,算数の宿題を帰る5分前に終わらせ,「あと音読かな?」と聞くと「それはもう終わってるよ!宿題終わり!」とすっきりした表情で教えてくれました。U君,よかったね!

ゲームのハンデ

 すてっぷの小学生メンバーの休憩時間のブームは、昨年はiPadが中心でしたが、今年はWiiUでの大乱闘スマッシュブラザーズ(略称「スマブラ」)のようです。「スマブラ」は、子どもたちの好きなキャラクターがたくさん登場するサバイバル格闘ゲームです。みんな得意なキャラクターを使って、「やった!」「やられた!」と大盛り上がり。

 何年か前も小学生メンバーで「スマブラ」がはやった時期がありました。しかし今年のメンバーほど盛り上がっていたことはありません。「スマブラ」は対戦ゲームですので当然勝ち負けがあります。もともと負けることが苦手な子が多い中、負けが続くと「やめる」と遊ぶ人数がどんどん減っていくということも多々ありました。そう考えると今の小学生メンバーたちが、負けても「もう1回」と最後まで仲良く遊べているのは、絶妙なバランスで成り立っているのかもしれません。

 そんな中でも、トラブルがあったり、職員が気になるようなことがあったりします。実は思いやり(2022/5/3)のJ君が落ち込んだきっかけのゲームが、この「スマブラ」でした。その後G君が落ち込んでいるJ君に思いやりを見せてくれ、J君が元気を取り戻したのは紹介した通りですが、他の子が帰った後G君とJ君が2人で「スマブラ」をすることに。これはチャンス!と、「スマブラ」のゲーム内で設定できるハンデを職員から紹介しました。トラブルがあったJ君へのフォローもありますが、「スマブラ」の上手なG君がゲームの集団には入らないことが気になっていて、タイミングを見てハンデを紹介しようと思っていたのです。

 負けるのが嫌な子どもたちですが、ハンデをつけることも嫌がることが多いです。平等を好むのか、ハンデがついているところで勝ってもうれしくないのか…。そんなときは職員が遊びに加わり、バランスを取ろうとしますが、子どもたちも敏感です。少しでも手抜きに映れば、「わざと負けないで!」と怒り、やる気をなくします。それに比べると、事前にハンデを提示して、お互いに納得したうえでスタートした方が、穏やかに終えられることが多いです。それも数字で示すことのできるハンデの方が、より受け入れてもらえやすいです。

 J君もはじめは「スマブラ」のハンデに、「えー」と言っていましたが、G君がすっと「いいよー」と言ってくれたので、すんなりハンデを受け入れて遊びました。終わった後で聞いてみるとJ君は、「ハンデがあったから、勝ったり負けたりしたー」と少し前向きに捉えてくれていました。

 さて今後、子どもたちはハンデを取り入れて遊べるでしょうか。せっかく子どもたちで楽しく遊べている休憩時間ですので、職員からは無理強いせず、子どもたちどうしで成長しあえる機会を保障していきたいと思います。

みんなが楽しめるように!

最近じゃんぷの休憩時間はジェンガや坊主めくりが盛り上がっています。

ジェンガの経験がないP君は「僕はいいよ,違う遊びやってるね。」と言っておもちゃで遊んでいます。しかしすぐ近くで「おおーー!!」「崩れるなー!!」と盛り上がる声が聴こえ,気になるようです。P君が寄って来て「僕もやっていい?」と聞いてきました。

P君の順番が回ってきました。ジェンガを引き抜こうとしますが崩れることが怖いようです。慎重に引き抜こうとするのですが「怖いよー!」と言って中々進むことが出来ません。すると一緒に遊んでいたQ君が「大丈夫!」と言ってジェンガを支えようと手を添えました。

それで安心出来たのか、P君はジェンガを引き抜くことが出来ました。P君もQ君も一緒に遊ぶ姿はあまり見ることはありません。Q君はP君にジェンガを楽しんでほしかったようです。本来はルール違反ですが,それよりもみんなが楽しめる方を優先したのです。

その出来事からおやつの時間にP君とQ君が楽しくお話をしたりする姿が見られるようになりました。子ども一人一人に様々な配慮があります。それを子ども自身が考えた事に感動をしました。

「トーストはおやつに入りますか?」

「先生、おやつにバナナは入りますか?」遠足を思い出させる文言と言えば、これではないでしょうか。みなさんも一度は聞いたことがあると思います。時期的にも「遠足に行ってきたよ!」という子どもたちが多いですが、実際に先生に聞いた人は何人くらいいたでしょう。もし聞かれたら、皆さんならどう答えますか? バナナはおやつ? デザート? 筆者は、チョコバナナならおやつ、バナナ単品ならデザート。加工するかしないかがボーダーラインだと考えているのですが…。う~ん…、難しい問題ですね。 

逆に子どもに聞いてみると、どんな答えが返ってくるでしょうか。子どもの中には、大人の悩みなんて一刀両断。「バナナはおやつやろ」と言い切る子もいます。そして、その考えをなかなか変えられない子どもが少なくありません。小学生のN君も、決められたルールを守ることができる一方で、後から変更になったこと、自分の中でこうだと思っていること対しては融通が利きにくい傾向があります。そんなN君がB君のおやつをみてびっくり。

「B君、おやつの時間にトースト食べているけど、あれはおやつではないんじゃないの?」

と職員に尋ねました。N君にとって、トーストはおやつではなくごはんであるものだったのです。B君は食べられるものが少ない中で、トーストが好物なので、おやつにトーストを食べています。そんな理由はあるのですが、職員はシンプルに答えました。

「すてっぷでは、トーストもおやつに入るよ。N君も今日はトーストにする?」

すると、N君は「そうなんや!どうしようかな…また今度で。」と言って、普段よく食べるお菓子を要求しました。数日後、N君が職員のそばに駆け寄り不安そうに尋ねてきました。

「おやつでトーストって食べられる?」

職員は、「もちろん食べられるよ。今日食べる?」と聞くと、N君は「うん。食べる。」と答えました。N君は食べた後、「おいしかった。また食べたい。」と笑顔で言っていました。

一度は職員におやつでトーストを食べていいことを聞いたものの、もう一度不安そうな顔で確認してきたN君。きっと心の中で、「トーストはおやつじゃない気がする。」という気持ちと「トースト食べてみたいな。」という気持ちがせめぎ合っていたのだと思います。「おやつで初めてトーストを食べた。」という小さなことですが、融通を効かせることで「できないと思っていたことができる。」という体験ができたことがよかったと感じた出来事でした。

さて、バナナはおやつなのかデザートなのか。N君に聞いたらどんな答えが返ってくるでしょうか。「おやつやろ」「デザートやろ」と言い切るのか。それとも違う答えを出すのか。融通を効かせるチャレンジは、まだまだいっぱい作れそうです。

持ち物に表れる子どもの困り

じゃんぷでの個別学習の時間,O君は「あ,消しゴムない!カバンの中に落っこちてるかも!」「定規も落ちてたかもしらん!」「鉛筆全然削れてない!先生削ってきていい?」等々...次々と忘れ物や落とし物に気づいては,あたふたと確認をしに行くことがあります。

O君に限ったことではありませんが,持ち物から子どもの様子を読み取れることがあります。当然持ち物を忘れたりすることはたまにありますが,子どもがそこに注目できない程,気持ちが不安定になっていることがあります。

忘れ物だけではなく,普段整っている筆箱の中身がグチャグチャになっている等持ち物の状況から子どもの状況を読み,支援の仕方を整理することがあります。様々な情報から子どもの状況を読み取ることが出来ます。

 

「場所」を示す

じゃんぷではスケジュールを示す時に活動場所を表す記号を使っています。

じゃんぷではそれぞれのエリアに「ふくろう」「うさぎ」「かめ」等,子どもに馴染みのある動物の名前をつけています。

それに合ったマークをスケジュールカードにも示し,「どこで学習・活動をするのか」を子どもが見て分かるようにしています。子ども達が自分で見て,移動が出来ることも大切にしています。もちろん程度の差はありますが,定着している子どもの真似をして同じようにスケジュールを見る低学年の子どももいます。

文字を読むことが苦手な子どもでも,マークを見てどこに行けばよいかわかります。どのような子どもでも自立的に動けるような支援をしています。

情報を整理して文を書こう!

じゃんぷに通っている子ども達の中に,「感想文って苦手やなぁ。」とつぶやく子が多数います。

読み書きを苦手としている子ども達は本を読む習慣が少なくなり,必然的に「文章」に触れる機会が少なくなります。「アニメは好きだけど漫画は読まない。」という子も中にはいます。

学校では校外学習等行事の後に感想を書く機会がありますが,そういった子ども達にとって憂鬱な時間になるようです。子ども達の意見をまとめていくと「何を書いたらいいかわからない。」「どうやって書いたらいいかわからない。」「文を書き始められない」等々…

じゃんぷでは子ども達と行事の感想を聞きながらマインドマップで表したり,時系列ごとに並べ,情報を整理しています。そして書くことが苦手な子の場合は状況に応じて,文を一緒に書いたりなぞりにしたりタイピングにしたりと様々な方法を使っています。

情報を整理することで「あ,わかった!書けるわ,先生見てて!」と言ってくれた子もいます。子どもは道筋を示すことで出来るようになることがあります。

子どものつぶやき

じゃんぷに来ている中学生のM君が「テスト嫌やなぁ…勉強嫌やなぁ…」とつぶやいていました。

M君は中学1年生で,今回が初めての定期テストです。一見「勉強するのが嫌」という風に聞こえますが,職員は「不安があるのかな。」という見方をしました。

個別指導の時間,学習の前に一緒にテスト範囲を確認し,その中身を確認しました。するとM君は安心したからか学習に集中して取り組むことが出来ました。(一緒に考えよう! : 05/18)でも書きましたが,子ども達は日常生活の中で不安を抱えていることが多いです。そういった不安を子ども達の小さなつぶやきから拾い,少しでも解消できるような支援をしていくよう心掛けています。