すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

「背」

前回の続きです。前回の記事はこちら→5月14日(日)宇野先生講演 発達性ディスレクシアの評価と支援 その2

前回漢字の形を子ども達に教える時、パーツを文章にし、視覚と聴覚からアプローチして(聴覚寄り)教える方法がある、と書きました。

さて、「背」を教える時にはどんな文章がいいでしょう?筆者は

「背中の 北には 月がある」

と、ありきたりな文章しか思いつきませんでした…

講演会では

「背中に 北斎の 月」

と、「入れ墨!?」と突っ込まれる文が出てきました。こういったシュールであったり面白い文章の方が子ども達は覚えやすいのですね。宇野先生からは

「背脂が乗っかった 北海道の 月見そば」

と考えた子どもがいたそうです。「気持ち悪いよね~」とウケたそうです。ただ教室の中でどっと笑いが起きる方が子ども達の印象にも残り、覚えやすいと思います。

こういった漢字の覚え方は実は本にもなっています。「漢字九九」と検索すれば出てくると思いますが、特別支援の漢字指導教材としてよく使われています。通常の授業の中では覚えることが難しくても、こういった方法で覚えることが出来る子がたくさんいます。通常学級の中の漢字が苦手な子どもにも試してみるとよいかもしれません。

5月14日(日)宇野先生講演 発達性ディスレクシアの評価と支援 その2

5月14日(日)、同法人が後援をしている「京都発達性ディスレクシア学習会」が主催する講演会に運営スタッフとして参加をしてきました。前回と同様、発達性ディスレクシア研究会の宇野 彰先生をお呼びし、「発達性ディスレクシアの評価と支援 その2」を講演していただきました。

その中で発達性ディスレクシアの子ども達の漢字指導にについての面白い指導方法があったのでここで紹介させていただきます。

例えば「湖」という漢字を教える時に、漢字を「さんずい(カタカナのシ)」「古」「月」に分け、それを使って文章にします。

例えば、「湖で シずかにすると 古い 月がみえる」

こういった文章で視覚と聴覚のどちらからの経路からも学べるようにしています。ただ講演の中で宇野先生からのデータでもありましたが視覚よりも聴覚の方が子ども達が覚えたという結果が多く、やはり聴覚法が効果があるなぁ、となったそうです。

さて、どんな文章でも子ども達が覚えるわけではありません。子ども達が覚えやすい文章と言うのがあります。それはどんな文でしょうか?次回、じゃんぷブログで紹介しようと思います。

次回は「背」という漢字を使って説明しようと思います。この方法で「背」を教える時にみなさんだったらどんな文章にしますか?一度考えてみてください。

 

ひらがなの曲線

ブログの更新が少し滞ってしまいました。子ども達は今日も元気にじゃんぷに通っています。筆者も五月病に負けずに頑張りますよ!

さて、今回も簡単な文字指導の紹介となります。以前からもここのブログで紹介している「新国語授業を変える「漢字指導」(白石範考/文溪堂/2019年)」からの引用です。

この中で白石先生はひらがな文字について以下のように書いています。

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日本語の文字は、独特の線によって構成されています。文字を美しく書くために練習するのであれば、その形を練習する必要があるのです。長い直線や画一的な円や曲線をいくらなぞっても、日本語の文字の曲線を書くための練習にはならないのです。

例えば「め」「ゆ」「つ」という三つの文字。いずれも右側に膨らんだ曲線がありますが、その形は同じではありません。

(一部省略)

線の形だけではありません。日本語の文字の中には、「とめ・はね・はらい」もあります。「い」「さ」「ふ」の文字にはいずれも「はね」がありますが、それぞれのはねの大きさや向きは違っています。

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上記のようにひらがなはそれぞれ独特の形を持っています。似ているところはありますが、やはり文字を書く練習をするのであればこれらの独特な線をかく練習をまず行う必要がありまs。

例えば「め」という字であれば、右上から左下に向かってかすかに膨らみをもたせながら下ろし、やや角をつけるように曲げた後、大きく膨らませるように書く、という「め」の独特な線の形を練習します。

ただ漫然と練習をさせるのではなく、なぞらせる前に「どの部分を意識しながらなぞるのか」を指導し、文字の練習をします。文字の特徴を意識しながら手本をなぞると、記憶の定着につながることがあります。

 

連休明け

GWが明けました。子ども達も今日から学校が始まります。リフレッシュをして元気に登校をしていると思います。

連休や長期休暇明けは子ども達はリズムを取り戻すことに集中します。発達障害のある子ども達は特にそこにエネルギーを使います。特にこのGWの期間は新年度が始まって1ヶ月ですぐに連休に入ります。4月は新しい環境が始まり、クラスや学習、場所によっては運動会の練習がすぐに始まったりと新しいことだらけで知らず知らずのうちに疲れていきます。

こういった連休明けにはよく「登校しぶり」等の問題が挙げられます。それももちろんケアをしなければなりませんが、「無理をして学校に行っている子ども」がいます。そういった子ども達は影に隠れていますが、学習姿勢等に表れることがあります。

じゃんぷに通う子ども達も今週はちょっと無理をして来るかもしれません。「しんどくなったら休憩してもいいよ」と伝えながら、学習を進めていきたいと思います。

「ちょっと待とうや」

先日のじゃんぷの休憩時間は「ぶたのしっぽ」をしました。低学年~高学年まで入り乱れてのゲームです。

そのグループは半年以上前に同じゲームをしているのですが、それぞれの発達段階の違いもあり、ルールも覚えている子、名前は覚えているけどルールを忘れた子、名前もルールも忘れた子、と様々です。ルールを覚えている子が率先してみんなに説明をしてくれてました。

ただその子は他の子どもが迷ったり悩んだりしている時についつい「早くしてよ」「長い」と言ってしまいます。本人に悪気は全くないのですが、乱暴な口調で言ってしまい時に言い合いになりそうな場面もあります。

その子は今年度4年生になりました。いつかのブログでも書いたかもしれませんが、4年生になった子には「チャレンジする学年だよ」と伝え続けています。その子には「高学年になったら低学年を引っ張っていきます。その口調や態度は通用しなくなります。」と伝えています。その子の乱暴な口調や態度は無意識なもので、なんの悪気もないので「なぜ直さなければいけないのか」と思っているでしょう。ただ、そのままだと損をすることが多くなってしまい、その子の良さより悪いところが目立ってしまうようになります。そういった理由も含めて伝えています。

休憩時間の時の話に戻りますが、ぶたのしっぽの最中、低学年の子がルールがまだあやふやで職員と一緒に確認しながらゲームをしようとしている時、別の子が「まだかな~」と漏らしたときに「ちょっと待とうや」と言ってくれました。上手に理由を説明できない様子でしたが、「待とう」と思い、それが言葉に出てきたことが大きな成長のように感じます。

「今って○○していい?」

 支援学校中学部のCくんは、毎日宿題に取り組んでいます。すてっぷでは活動を優先することを前提にですが、休憩などの空き時間で宿題に取り組む際はスペースを提供しています。Cくんはすてっぷで宿題を終わらせてすっきりしたいという気持ちがあり、自立課題(パソコンなど一人で取り組む課題)とスケジュールを入れ替えて先に宿題に取り組みたいなどの交渉を、自分から職員に伝えることもありました。

 先日は学校から帰ってきてすぐに中学部、高等部の友だちと公園に行く予定でした。ですが友だちの一人が制服から私服に着替えるため、Cくんは予定外の待ち時間が10分ほどできました。もしかしたら宿題をしたいと交渉に来るかもしれないと職員がCくんを見ると、Cくんはスケジュールを公園遊びにした後、ぐるぐると室内を歩き回っていました。おそらくCくんは、自分だけのスケジュールであれば交渉に来るところ、友だちを待つという自分では時間が分からない状況だと、何をすればいいのかわからず、気持ちも落ち着かずに歩き回っているのだと感じました。ただ、友だちが着替えるのを待つという状況はこれまでも何度もあったので、Cくんも待つ時間をある程度把握できているだろう、であれば交渉も自分からできるようになるのでは、と考えました。

 そこで職員はCくんに話しかけ、まず状況を整理しました。Cくんは「Dさん、○○くん、△△さんと行きます。」「公園に行くのを待っています。」と答えます。そして職員が「なんで待っているのでしょう?」と尋ねると、Cくんは少し考え、「Dさんが着替えているから?」

と答えました。そこで職員は「Dさんが着替えるときは10分くらい時間ができるから、職員に交渉してもいいよ。」と伝えました。そして「今日みたいな場合によってできる時があるかもしれません。自分がすることだけじゃなく、お友達がすることも考えて、何ができそうかを自分で考えたり行動してみたりするのは大事な力になるよ。」と話をしました。

 職員が話をした翌週、さっそく同じ状況がやってきました。Cくんは自分のスケジュールと活動全体の予定が書かれているホワイトボードを見てから、職員に「公園の出発まで宿題していいですか?」と自分から交渉できたのです! 職員はあえて「どうして?」と尋ました。するとCくんは「Dさんが着替えを持って、着替えに行ったから。」と答えました。職員はCくんが交渉できたことをほめ、「友だちの着替えが終わったら、宿題が途中でも切り替えてね」と約束して、Cくんを宿題をするスペースへ案内しました。そして職員が「Dさん準備できたみたいだよ。」と伝えると、約束通り、宿題を途中で切り上げて、公園へ出かける準備に向かうことができたのでした。

 現在では、公園へ行く前の時間だけでなく、他の友だちを待つような状況でも、自分や全体のスケジュールを見て、宿題をする時間を見つけたら職員に交渉することができるようになりました。自分のことなら予定が分かってスケジュール交渉できていたCくんでしたが、その力を友だちとの予定の中でも発揮できるようになったことは、社会性、コミュニケーションの課題があるCくんにとって大きな前進であったと思います。取り組み前の時間にも支援のタネがいっぱいありますね。

通常級での支援

昨年12月の文科省での調査で、発達障害の可能性がある小中学生は学級に8.8% とありました。現場での実感としてはもう少しいると感じているでしょう。

文部科学省初等中等教育局特別支援教育課 特別支援教育調査官の加藤典子先生のが調査結果について書いた寄稿を読みました。最後に大事なことが書いてあったのでこちらに引用させていただきます。

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通常の学級には、発達障害を含む障害があるだけではなく、教育上特別な支援を必要とする児童生徒が在籍していることを前提に、学級経営や授業づくりを行うことが必要であるとともに、学校全体として個々の児童生徒の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を、組織的かつ計画的に行うことが求められています。

また、令和4年3月に公表された「特別支援教育を担う教師の養成の在り方等に関する検討会議」報告において、「特別支援教育の考え方は、特別支援教育分野の専門性向上や進展のみならず、また、障害の有無にかかわらず、教育全体の質の向上に寄与するものである」と示されていることからも、特別支援教育を基盤とする校内支援体制の構築と充実は重要な意味をもっています。


全ての教職員が児童生徒に対する配慮等の必要性を共通理解するとともに、全ての児童生徒がお互いの特徴を認め合い、支え合う関係を築いていけるよう、児童生徒の多様性を踏まえた学校づくりや学級づくりを進めていくことが重要です。

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引用した部分に書いてある通り、通常学級の中にも特別な支援を必要としている子どもがいる、ということを前提に学級経営をしなければならない時代です。

しかし特別支援に力を入れている学校と、それが出来ない学校の二極化がされているように思えます。通常級では担任が出来なかった教諭や、講師をとりあえず支援級にあてがう学校が今でもあります。また、通常級の担任であっても支援が必要なことはわかりつつもどうしたらよいかわからないまま一年が進む、こともあります。(中には様々な理由をつけて個別支援をしたがらない教員もいますが…これは論外ですね。)

教室の中に特別支援が必要な子がいるのであれば全員にすればよいのです。必要のない子は必要ない、と自分で判断も出来るでしょう。いじめ等に繋がる、といった消極的な理由で特別支援を避けるのではなく、積極的に特別支援を用いる教員が増えてほしいと思います。

今までの学習が通用しない「分数」

特別支援教育士資格認定協会が発行している「LD/ADHD&ASD 2023年4月号」に分数について面白い記事がありました。分数の難しさについて2つのポイントを教えてくれています。

1つめの難しさは、分数はさまざまな点で整数とは異なる点にあります。小学校学習指導要領解説算数編(文部科学省 2017)で「小数が十進位取り記数法で表されているのに対して、分数は二つの数の関係で一つの数が表されており、構成する単位が分数によって異なることに着目する必要がある」と説明されているとおり、分数は整数・小数とは異なり、10進法が当てはまりません。たとえば、同分母同士の分数の大小判断では整数的な理解で解決することができますが、異分母の分数だと整数的な理解では対応できず、分数的な理解が必要となります。すなわち、整数は1つの数で1つの量をあらわすという明確な関係がありますが、分数では分子と分母という2つの数を使うことによって、初めて1つの量を示すことができる点に特徴があります。


2つめの難しさは、子どもたちが生活の中で理解している分数と算数で習う分数のズレにあります。子どもたちは就学前の年長児から1、2年生において、分数概念として、全体から部分に分割するインフォーマルな知識は獲得していることが知られています。たとえば兄姉には多めに、弟妹には少なめに分けるような、等分配ではない生活経験をとおして、「“半分にする”とか“等しく分ける(分配する)”という行動を獲得しています。


一方、学校で習う分数は、小数同様、1以下の端数(はしたの数)を扱う学習として位置づけられています。そのため、このインフォーマルな知識を算数でうまく活用できません。幼児は生活体験の中で、丸いケーキを3人で分けたときと4人で分けたときの1人分が多いのはどちらなのかをすでに知っているにもかかわらず、分数を学習した後に「1/3と1/4はどちらが大きいか」という問題に誤答してしまいます。

このように分数は今まで学習してきたことが通用しないことが多いです。そのため子ども達が混乱して勉強が嫌になったり、本質を理解しないまま学年が上がりつまづいてしまうこともあります。現在は分数パズルなどの視覚的に大きさがわかりやすい道具もあります。そういったものを活用して子ども達が混乱しないような授業をしていきたいですね。

トランプの神ゲー「たこやき」

「たこやき」について→ https://omocoro.jp/kiji/268690/

 じゃんぷの休憩時間に新しいゲームを取り入れました。「たこやき」という日本発祥の比較的新しいトランプゲームです。2人~3人でするゲームで、戦略性はなくほとんど運によって勝負が決まるゲームです。

簡単なルールについては上記のリンクの記事を見ていただきたいのですが、これがかなり子ども達にウケが良く、大盛り上がりをしました。

ただ順番を数えるといっても年齢や発達段階の違う子ども達です。毎回1から数える子もいれば大体の見当をつけて数字を数える子もいます。能力に差はあれど、それがゲームの結果に左右されずに楽しめる良いゲームでした。またいろんな曜日の子ども達と楽しんでみたいと思います。

 

当たったらホームラン!

 「ぼく、野球苦手やねんなぁ…。」とつぶやいたのは、小学生のBくん。Bくんは野球に限らず、苦手だと思っているものや遊びが多く、また拒否しやすい傾向があります。すてっぷに来た1年前くらいから、野球にも少しずつ取り組んできました。当時、職員がBくんに苦手な理由を聞くと、「ぼくは、投げることが下手やねん。」「グローブでボール も取れない。」「バットで打つこともできない。」といった否定的なイメージが。それがこの1年取り組んできた中で、少しずつ抵抗なく遊べるようになってきて、ティーバッティングも以前より打てるようになって喜ぶことが増えました。友だちから「キャッチボールしない?」と誘われても、「ぼくは、絶対しない!」と強く拒否していたBくんでしたが、最近では、誘われると「いいよー。」と返事してキャッチボールに向かう姿も見られます。

 先日も、友だちと一緒にティーバッティングをして遊んでいました。Bくんのバッティングも上達しましたが、他の友だちも上達していて、この日は友だちがホームランを連発。「ホームランやー。すごいなぁ。」と感心するBくん。それに続けてとバッティングにチャレンジしましたが、その日の調子はあまりよくなく、友だちほどボールを飛ばせませんでした。バッティング後、「ぼく、野球苦手やねんなぁ…。」と、久々のBくんのつぶやき。見るとBくんは肩をがっくり落としていました。

 そこで職員は一計することにしました。次のティーバッティングの取り組みの日。普段は公園やグラウンドなどの広く空いた場所で取り組みますが、その日は高架下のコンクリートの壁の前にティーを置きました。壁までの距離も、普段のホームランの距離の半分くらい。いつもと違うセッティングに子ども達には?が浮かびます。職員は「今日は壁に当たるとホームラン!」と説明すると、子ども達は狙え!ホームランと言わんばかりに次々とバッターボックスへ。Bくんも意気揚々とバッティングにのぞみ、1回目は3球中1球が見事壁に! 「ホームランだよね?やったー。」と喜ぶBくん。2回目では、なんと3回とも打ったボールが直接壁に当たって3連続ホームラン!「3回連続や!(ヤクルトスワローズの)村上選手みたいや!」とBくんは大喜びでした。

 普段のティーバッティングでは、やった!ホームラン!と言っても、小学生の遊びのことですので、プロ野球みたいにフェンスを越えたといった視覚的にわかりやすいものではありません。Bくんも、これはホームラン?と疑問に思うことが何度もあったでしょう。今回Bくんがホームランを打てた!と実感できたのは、「当たったらホームラン」という視覚的にわかりやすいルールにしたことが大きいと思います。いつもの遊びとは違うやり方やルールにチャレンジすることで、普段とは違う楽しみが生まれます。そこで成功体験を積めたり、感じた事を職員や友だちに伝えたりすることも、子どもの力になっていくのではないでしょうか。

そのうちじゃなくて今すぐがいいの♪

最近Tiktokで「新しい学校のリーダーズ」の「オトナブルー」が流行していますね。Tiktokを知っている子ども達からちょくちょく話を聞くこともあります。タイトルはその曲の歌詞ですが、本記事の内容とはほとんど関係ありません。すみません。

子どもが「〇〇をしたい!」と遊びやゲームを要求した時に「宿題をしてから」「やることをやってから」と約束することがあります。このブログで何度も書いている応用行動分析(ABA)の理論を基に、「してほしい行動」にアプローチし、それを行動した結果として「良いこと」がある=強化としているのです。

ただ子どもの発達段階によっては「~~をしてから」ということ自体が難しいことがあります。特にASDの傾向がある子どもは「0(出来ない)か100(出来る)」しか見えていません。「今できない」=「できない」となってしまうのです。つまり「そのうち」じゃなくて「今すぐ」がいいのです。そういった子にどれだけ「後から出来るよ」と伝えても良い強化には繋がらないこともあります。

そういった子にはまず「したいこと」を思い切りさせます。「したいこと」がひと段落ついた後、ほんの少しの量でいいので「してほしい行動」を提示します。この約束が子どもがパニックになる前に提示できることが一番良いですね。

基本的なセオリーは抑えつつ、子どもによって支援の形を変えることが特別支援には必要な視点だと考えています。ただ公教育ではそれが薄まってきているように思えます。これについてまたY先生と話したのでそれも後日ブログに書く予定です。

がんばりすぎに注意!

新年度になり、子ども達は張り切っています。特に普段「宿題はやりたくない~!」と話している子が今じゃんぷに来ると「宿題するわ!」と言って黙々と宿題と向き合っています。

ただ去年の4月も同じような姿を見ました。筆者は去年じゃんぷに来たばかりだったので、「話に聞いてたより全然勉強するやん」と思っていたのですが、ある日突然宿題から逃げるようになったのを今でも覚えています。つまり、新年度は新しい環境の先生に良いところを見せようと張り切っているようです。

それ自体はとても良いことです。きっかけがなんであれ、苦手なことに対して向き合って努力することは素晴らしいです。ただ恐らく多動なことも相まって「頑張る」のコントロールも難しいようです。

学習障害の子ども達は私たちが思っている以上に学習に対しての苦手感が強いです。「やっぱり限界だ~」と感じてプツンと力が切れ、さらに出来ない自分に対してのネガティブイメージもあり、自己肯定感が下がっていきます。

子ども達が頑張っていることを止めることは出来ません。努力認めつつ、「休憩してもいいんだよ」と伝え続けていこうと思っています。「いつでも休憩してOK」と最初に伝え、休憩する場所を決めてしんどくなったらそこに行っても良い、というルールを伝えています。がんばるのもOK、休憩するのもOK、とある程度枠組みを作った上でそれを伝え、それぞれ自分のペースを掴んでほしいと思っています。ホップ、ステップ、ジャンプ!

単位換算定規

じゃんぷの学習支援で使っている道具の中に「単位換算定規」があります。これは面積・長さ・液量・重さ・体積の各単位を方眼上に表記されています。中央には数字の1と0が書かれた帯が備えられ、左右にスライドできるようになっています。例えば「1」を「km」の位置で止めると、長さならば「1キロ=1000メートル=10万センチ」と読むことができ、液量ならば「1キロリットル=1000リットル=1万デシリットル」だと分かります。4年生の算数で出てくる「ヘクタール」や「アール」など、普段子ども達が日常で聞かないような単位も、すぐ平方メートルに換算できる便利な道具です。

単位の換算は学習が苦手な子どもにとっては難関となることが多いです。定型発達の子どもでもややこしくなり、間違うことが多くなる問題なのですが、「単位が変わると数字が変わる、でも量(距離)は同じ」というのがかなりややこしいです。それがいくつも出てき、その時その時で100=1になったり1000=1になったりと混乱することも少なくありません。

この道具はその複数ある単位換算を一目で見てわかるようになっています。同時処理が得意な子どもにとってはぴったりな道具だと言えます。継次処理型の子どもでも一つ一つの単位を説明し、自分で操作して量(距離)が同じとわかると覚えることが出来る子もいます。

少しずつこういった教材が増えてきています。この道具自体もそんなに高くはないのですが学校で配られる算数セットに入っているのは見た事がありません。このような道具をどんどん使って子どもが学習をしやすい環境が増えていくことを願っています。

高学年だから!

タイトルの通り、4年生になったB君が「高学年だから!」と言ってくれました。

今まで一緒に低学年の友達と同じ場所で勉強をすることがありましたが、低学年の友達は勉強が終わるとブランコをしたり遊びに入ることが多いです。そのたびに「え~ブランコやってるやんズルい~」と漏らすB君。調子の悪い時は「ブランコしたいしたいしたい~!」と駄々をこねることもありました。

今じゃんぷに通っている子どもには「新しい学年になったら〇〇なことが始まります。〇〇な力をつけていきます。」と話しています。この4月に4年生になる子ども達には「高学年になります、4年生は難しいことにも挑戦してみようとする気持ちを育てていきます。低学年のリードをすることも増えていきます。初めてのことや難しいことに多く出会う学年です。」と伝えています。先日B君は今まで通り「ブランコしたいしたい~!」となりましたが、低学年の友達にまず順番を譲り、その子が自分よりも長い時間遊べるように自分の時間を少し減らす、と話してきました。理由を聞くと「高学年だからね!」と答えてくれました。

話をしっかり覚えており、それの通りに頑張ろうとしているようです。さすが高学年!かっこいい!

デジタル教科書 国語嫌いの味方

先日の朝日新聞の記事をY先生に見せてもらいました。以下が一部抜粋です。新聞を見ながら打ち込んでいるのでかなり省略します。ご了承ください。

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熊本・山江村立山江中学校 大瀬順子先生

「国語の教科書なんだからデジタルより紙でしょ」大瀬順子先生は、依然そう思っていた。だが、デジタル端末が「1人1台」となり、2021年度からは国語の学習者用デジタル教科書を使っている。今は「国語嫌いの子から嫌なイメージを払拭してくれる道具だ」と実感している。

文部科学省の昨年の調査では、公立小中学校の通常学級の児童生徒の3,5%が「『読む』または『書く』に著しい困難を示す」とされた。つまり40人学級に1,4人程度。しかし現場の実態としてはもっと多く、近年は増えていると感じている。「読み書きが苦手なため中学入学段階で国語嫌いで授業に集中できない生徒が一定数いるんです。」

中1国語『不便益」の授業では「便利のよい面」「便利の悪い面」「不便のよい面」「不便の悪い面」の4分割に整理し、授業を進めていく。これをデジタル端末上で行い、読み書きが苦手な児童生徒も取り組めるようにした。「紙の教科書だと、読んで見つけて、抜き出してという一連の作業が嫌で、作業をしない子が必ず出ます。思考以前に拒否してしまう。」と大瀬先生。そうした子も簡単に教科書の文章を切り貼りでき、何度も修正できて負担感がないため「生き生きとした表情になる」という

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今、全国的に「1人1台」の端末が学校から支給されています。読み書きの苦手な子ども達が自分の弱点を補いながら、学習を受けることができるようにタブレット等もツールがあります。実際にデジタル端末の先行導入をしていた学校で勤めていた筆者からすると、子ども達の考えや意見を全員のタブレットに送って共有できたり、植物の成長や観察を写真に残してそれを記録していくことが出来る等、授業する側としてもやるやすい部分がありました。(植物の観察を絵に描くのは根、くき、葉に注目する、発芽後の子葉の特徴を捉える等の目的がありますが、それもリアルな写真の方が子ども達にとってもわかりやすいでしょう。何よりもどうしても絵の上手さを気にする子どもも出てくるため、本来の授業の目的から外れてしまうことが多々あります。)

子ども達が自分にあった方法で学習に取り組むことが一番大事です。まだこういった新しいことに抵抗のある教員もいるようですが、時代と共に淘汰されていくでしょう。ICTを使った授業はこれからも発展していきます。子ども達が自分にあった方法を見つけ、それぞれのスタイルで学習に臨んでいけるようになってほしいですね。

新レギュレーション発表!

新年度になり、じゃんぷの放デイのシステムも一新しました。

子ども達が勉強した後に筆箱やノートを机の上に置きっぱなしにしてしまったり、他の子の物と混ざってしまうことがありました。なので片付ける場所として使っていたカゴの使い方を一新し、そのカゴに必要な物を入れ、それを持って移動したらよい、というルールを作りました。

ただじゃんぷに通う子ども達にとって突然新しい決まりやルールが増えると混乱することがあります。なので下記の画像のようにじゃんぷに到着したら必ず読むように「読んだ人は進めます」というホワイトボードを書き、子ども達が必ず新しいルールを読んでから次のことに進めるようにしました。

子どもによってはすぐに理解できるわけではないのでその後に職員が手伝うことはもちろんありますが、一度子どもの目に入ることが大切です。新しいルールを作ったらそれを一つ一つ説明するのではなくまず全員に周知する、そしてその後の定着は子どもによって支援するようにしています。環境がガラリと変わる時は子ども達は混乱しやすいです。できるだけその負担を減らしてあげることが必要ですね。

新しい仲間

 出会いの季節と言えば春。ですが、まだ肌寒かった2月に、すてっぷへ新しい仲間がやってきました。小学生のAくんは活発な子で、年上の友だちにも物怖じせず、元気に話しかけます。声が大きくなりがちで、職員が声のレベルを提示することで、小さな声で話せるように練習をしています。

 もう一つ職員が気になったのは、友だちへの誘い掛けの言葉。「○○くんはこっち、△△くんはあっちをして」と、誘うというよりも、なかば指示のような声掛けになってしまいます。年上の友だちにも同じように声をかけてしまい、「なんで決められな、あかんねん」と反発の声が返ってきます。そこで職員から、「~しよう?」や「~はどう?」といった、相手が受け入れやすい誘いの言葉に言い換えられるように練習してきました。

 先日は年上の友だちたちといっしょにボードゲームで遊びました。人数が多かったので2グループに分かれることに。Aくんははじめ違うグループだったのですが、他方がしていた『スライドクエスト』というゲームに興味を持ちました。『スライドクエスト』は箱の四方にレバーがあり、そのレバーを動かすことで箱の中のステージを傾け、駒をゴールへ動かしていくというゲームです。レバーは4つですから、当然一人ではできません。2~4人が協力してレバーを動かすのです。

 「『スライドクエスト』したい!」と伝えたAくん。グループみんなもしたいとなり、他方のグループと交代して『スライドクエスト』をすることになりました。早速Aくんは「○○くんはそっち、△△くんはこっちのレバーね。僕は2つする!」と宣言します。そこで職員が「他の子が2つしたかったらどうする?」と聞くと、Aくんは「あっ、そうか! どうする?」と自分から2人に聞くことができました。Aくんすごい!と内心驚きの職員。日々の成長が現れた場面でしたが、Aくんがやりたい!と思える遊びだったからこそ、発揮できたのだとも思います。毎日の取り組みが面白いと思えるよう工夫して、支援の機会を作っていきたいと思います。

お出かけの計画

じゃんぷに通う中学生の中に、お出かけをするのが好きな子どもがいます。先日は友達と淀川河川公園にある「さくらであい館」に自転車で行ったそうです。

その子は読み書き計算にかなり強い苦手意識があります。計算機を使うこと等はルール違反と思っているのか使おうとはしませんが、本来は使うべきでしょう。なので学習の中ではなく、本人の興味のあることの中で使うことにしました。

知的好奇心の強い子なので、いろんな場所に行きたいと思っています。歴史に興味があるので本来は海外にも行きたいそうですが、現実的に行ける場所に絞って、「ここに電車で行くとしたら往復いくら必要かなぁ」というと、計算機を使います。それで計画を立てる練習もしつつ、学習に計算機を使うハードルを下げたい、と考えています。

次は8月にある山科のお祭りに行きたいそうです。山科は乙訓からだと電車を使わないといけないので、また練習をする良い機会になりそうです。

春!

子ども達から「桜見た~」という話をよく聞きます。筆者も先日京都伏見で行われている「桜まつり」を見てきました。

興味がない子もいるかな~と思いつつ桜の話をしますが、意外とみんな反応をしてきます。「僕も花見行ったで~!」「いいなぁ~けど花粉症やから~」とそれぞれの反応を見せてくれます。

じゃんぷで通う子ども達は学習に苦手感を持っています。ただ「詩は好き」「〇〇には興味あるよ!」と子ども達には好きなことがそれぞれあります。桜はみんな好きなようです。国語の教科書には最初大体詩が載っており、合わせて詩を書くことを国語の最初の授業にすることもあり、それが楽しみな子もいるようです。

こういった季節感を味わったりすることも大切です。駅から通所する子ども達は西向日駅の桜並木を見ながら「春だな~」と話しています。こういったほんわかした時間も必要ですね。

今年度もよろしくお願い致します。

R5年度が始まりました。今年度もどうぞよろしくお願い致します。

すてっぷでは4月1日の土曜日に子ども達が来ており、じゃんぷでは明日から子ども達が通所してきます。新しい学年になった子ども達はどんな表情を見せてくれるのでしょうか。春休みの宿題を終わらせて一息ついている子もいるでしょう。宿題が中々進まず、「手伝って~」と助けを求める子もいるかもしれません。中には春休みの宿題がそもそもなく、「〇〇行ってきたよ~」という話をしてくれる子もいるでしょう。まずは何よりも元気な姿を見せてくれることを願っています。

環境がガラリと変わります。それで少し不安定になってしまう子どももいるかもしれません。それは仕方のないことです。私たちはいつもと変わらず、子ども達を受け入れようと考えています。変わった環境の中で頑張っている子ども達を褒めつつ適切な支援をしていきたいと思います。改めて今年度もどうぞよろしくお願い致します。