すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

「『田んぼの田』ならいいよ」

 すてっぷの小学生たちは公園遊びが大好き。特に鬼ごっこが好きという子が何人もいます。ただ、公園によっては広すぎて鬼ごっこをしても鬼がずっと捕まえられないままということがありますし、逆に狭い公園では面白みに欠けたり衝突の危険があったりということもあります。

 そんなときに職員が提案するのが『田んぼの田』。このブログでも何度か紹介していますが、4m四方ほどの田の字を書いて、鬼は線上だけを移動して追いかけ、逃げる人は逆に線を踏まないように移動するという、鬼ごっこの遊びの一種です。狭い公園でも遊ぶことができ、また人数が少なくてもOK。子どものリクエストで、子どもと職員との1対1で取り組んだこともあります。3分や5分と時間を決めてカウントすると、子どもも興奮して走り回り、結構ハードな運動になります。逃げるときは右回りにするなど方向を決めることで、逃げる人同士が衝突しないように気をつけて遊んでいます。

 先日、Gくん、Hくん、Iくんと職員とで公園に行ったときも、この『田んぼの田』に取り組みました。はじめに何をしたいか職員が3人に聞くと、GくんとHくんは鬼ごっこがしたいと言いました。ですがIくんは、「広いからイヤだ」と主張。確かにこの公園はとても広いです。職員がGくんとHくんに「どうする?」と聞くと、Gくんは「初めの鬼を増やそう」、Hくんは「エリアを区切ろう」と、それぞれアイディアを出しました。そのアイディアも大変良かったのですが、それでもIくんは納得しません。そこで職員が、「1回目は『田んぼの田』をしよう。そして2回目はエリアを区切った鬼ごっこにしよう」と提案。Iくんに「2回目は見学していいよ」と伝えました。するとIくんは納得し、『田んぼの田』に参加。Iくんを含めた3人はテンション高くスタートし、どんどんと白熱していきます。職員も負けじと参加し、最初に決めた5分があっという間に終わりました。熱気が冷めやらない中、職員がIくんに「二回目は見学でもいいけど、どうする?」と聞くと、Iくんは「やる」と宣言。最初は嫌がっていた鬼ごっこに参加することができました。

 Iくんも含め、すてっぷの小学生たちの多くは、友だちといっしょに遊ぶことを課題としてます。一見簡単そうなことに見えますが、友だちと折り合いをつけることは、理解力、交渉力、感情コントロールなど、さまざまな力が必要となります。今回はIくんの感情コントロールができやすいように、Iくんが楽しめそうだなという遊び=『田んぼの田』を職員から提案しました。よほど楽しかったのか、最後の自由遊びの時もHくんを誘って『田んぼの田』で遊んだIくん。次は自分から提案して交渉できるように支援したいと思います。

漢字の練習

じゃんぷで子ども達の冬休みの宿題を見ていく中で,漢字の宿題に苦手意識がある子どもがいました。その子自身は漢字が嫌いというわけではありませんが,「何回も書くのがなぁ…」と言っていました。冬休みの宿題で間違えた漢字をノートに練習する,という宿題でした。「嫌やなぁ」と言いつつもしっかりと集中してやり切っています。

以前から紹介している白石範考先生の著書には「練習させるのは三回以内」と書いていました。例えば「一つの漢字を十回書きなさい」「二十回書きなさい」と言われた時に「それは楽しそうだ!」と思う子どもは少ないでしょう。ただ漢字を覚えるためには書いて練習する必要があります。白石先生は「三回」がちょうど良い,と考えているようです。確かに回数より,子どもが「なんのために書いているのか」と意識する方が大切です。

一回目は手本を見ながらゆっくりと書く。ゆっくりと書くと「あれ,ここはどうなっているんだろう」と疑問に気づきやすいです。二回目は一回目に疑問に思ったことや間違えそうになったところを意識しながら書く。三回目は,手本を見ずに書きます。ここでもし間違えた時はもう一度書きます。

何をするのか,どう書くのかを意識しながら書くことが大切ですね。

(参考・引用 「新国語授業を変える漢字指導」 著 白石範考 文溪堂)

楽しみながら言葉遊び

 新年になり、すてっぷでは新しいボードゲームにいくつかチャレンジしています。そのうちの一つが「ワードスナイパー」です。このゲームはいたってシンプル。ひらがな1文字(2文字のときもありますが)から始まる言葉のうち、お題に合わせたものを思いつけたら、得点が入るというゲームです。

 同じようにひらがなから言葉を連想するというところは、「ワードバスケット」によく似ています。「ワードバスケット」はすてっぷでも以前から取り組んでいるゲームで、カードを使ってしりとりをしていくというものです。ひらがなの書かれたカードを手札にしてスタート。最初の1文字からしりとりになるように次々と言葉を言いながらカードを出していきます。そして手札が無くなったら勝ちと言うゲームです。言葉を連想する必要があるので、取り組むメンバーに合わせて、2文字OKや連想しやすいような絵つきのあいうえお表を用意するなどの工夫をしてきました。

 一方で、この「ワードスナイパー」は手札はありません。山札の表には「食べ物」や「赤いもの」といったさまざまなお題が書かれています。そしてゲームがスタートしたら、山札の一番上のカードを裏にします。するとそこにはひらがなが。あとは、その文字から始まる言葉で、お題に合わせた言葉を早い者勝ちで宣言。その人がひらがなのカードを取ります。おもしろいのは、そのカードに書かれている得点が、カードによって違うこと。言葉が思いつきやすいひらがなは得点が低く、言葉が出てきづらいひらがなは得点が高くなっています。そのため、単純な手数だけでは勝負が決まらず、難しい言葉を1つでもぱっと思いつけたら有利になることもあります。

 さっそく「ワードスナイパー」にチャレンジしたEくんとFくん。学校の勉強が苦手なEくんですが、このゲームだとどんなお題でもじっくりと考え、言葉を出してきます。「ふ」から始まる「歴史上の人物」では、なんと「藤原道長!」と回答。職員を驚かせました。一方のFくんはさまざまな言葉を知っていますが、じっくり考えるのは苦手。Eくんが考える間は、諦めてふらふらしてしまいます。しかしこのゲームがEくんにとってよかったのは、「ワードバスケット」とは違って、誰かが思いつかなかったら次のお題に変わるというところです。さらにひらがなの選択肢も増えます。なので、誰も思いつかず進まないということはなく、次々とゲームが展開していくので、Fくんも飽きずに最後まで続けられました。

 すてっぷではまだこのゲームをしていない子も、またチャレンジしていこうと思っています。そのときのメンバーに合わせた工夫をして、楽しみながら言葉遊びができるようにしていきます。

山登りのアイディア

 すてっぷで日常的に取り組んでいる外出活動の1つが西山登り。秋の観光シーズンの間はしばらく控えていましたが、12月中旬ごろから取り組みを再開しました。公園での集団遊びや自由遊びだと混乱してしまう子でも、山登りはスタートとゴールがはっきりしていて、しっかりと見通しを持って運動することができます。またその分、集団で行動することもよく分かり、さまざまな課題にチャレンジすることもできます。

 すてっぷでよく行く40分~60分ほどのルートは、それほどの高低差もなく、子どもたちにとっては適度な運動になります。ただそれでも、登りがしんどくて遅れる子や、逆に降りでブレーキがかけられず駆け出してしまう子もいます。集団が離れてしまったり、狭い道で追い抜きがあったりすると危ないので、山登りに行くときは職員の中で、子ども担当の他にも、先頭(ルートの確認と注意喚起)と最後尾(全体を見て指示を出す)の役割を確認しています。

 先日はすてっぷで「鉄塔」と呼んでいる目的地に向けて出発。澄んだ晴れ間の下、気持ちよく登ることができました。久しぶりに鉄塔から見る景色は、遠くまで見渡せます。テンションも高くなり、降りも元気に歩いて帰ってきました。いっしょに行った支援学校高等部生のDくんは久々の山登り。以前は集団から遅れがちだったDくんですが、この日は他の子どもたちのワクワク感が、Dくんを手伝ったのかもしれません。集団を意識し、見事ペースを合わせて最後まで歩けました。Dくん、素晴らしい!

 さて、この山登り、しばらく続けていこうと思っていますが、ルートを毎回変えるわけにもいきません。去年は子どもたちがモチベーション高く登れるように、折り返しでチキンラーメンを作って食べたり、2人で荷物を持ったりするなど、子どもたちに合わせた取り組みをしてきました。今年はどんなアイディアが出せるか、職員の工夫のしどころです。

宿題の進捗は…

さて,昨日からじゃんぷに子どもが来所しています。小学生の子ども達は冬休み中ということもあり,少し気持ちがフワフワした様子でした。

小学3年のC君に「宿題はどう?」と聞くと「出来てるよ」と答えてくれました。計画を立てることが苦手なC君でしたが,冬休みの宿題は学校の先生と一緒に計画を立てて取り組んだようです。

「ワークのこのページを〇日に取り組む」というようにそれぞれの宿題をいつ取り組むのかを学校で決め,終わったらどんな遊びがあるのか,をお家で決めて取り組んだようです。

長期休暇の宿題をその子に合わせ,一緒に計画を立てて子どもが自分の力で達成できるような配慮が大事だと感じた出来事でした。C君,幸先の良いスタートです!!

本年もよろしくお願いいたします。

謹んで新春の祝詞を申し上げます。昨年は格別なご高配を賜り厚く御礼申し上げます。本年もどうぞよろしくお願い致します。

ブログについては明日から今まで通りの記事を投稿しようと思っています。本日からすてっぷ,じゃんぷ共に子ども達が来所します。一段と寒さが厳しくなりましたが,元気な姿が見られることが楽しみです。

今年もお世話になりました。

平素より格別のご愛顧を賜り厚くお礼申し上げます。 本年は大変お世話になりました。 来年もすてっぷ,じゃんぷ職員一同,皆様にご満足頂けるサービスを心がける所存でございますので,より一層のご支援を賜りますよう,お願い申し上げます。

さて,先日子ども達と年末年始の予定について話をしている時に「先生,僕って4月から成長した?」と聞いてきた子どもがいました。「もちろん!年下の子の見本に率先してなってくれるし,苦手な勉強は教えてください,って言えるようになったし。学校の先生からもたくさん褒められたんでしょ?」と返すと,「うん!」と答えてくれました。

この子だけではありませんが,こういった節目の際にふと自分のことを振り返ることがあります。自分だけではどうだろう?と思い,身近な大人に聞くのでしょう。そういった時,うんと褒めてあげてください。できるだけ具体的に。そして子どもが「来年も頑張る!」と思えたら素敵ですね。

「来週のスケジュールは?」

 支援学校高等部のBくんは、すてっぷでパソコン学習や作業課題に毎回取り組んでいました。ただ、ときには気晴らしがしたいと、公園や散歩に出かけたいと職員に伝えてきました。そこで職員があくる日にお出かけを予定し、Bくんは機嫌よく公園へ出発。元気に体を動かして帰ってきました。ただ、その後でパソコン学習や作業課題に取り組んでいると、休憩時間が短くなってしまいました。するとBくんはイライラしだし、「どうしてパソコン学習や作業課題をしなくちゃいけないんだ」と職員に訴えました。

 職員としては、気晴らしに公園へ行ったのだから、いつものパソコン学習や作業課題をがんばってほしいと思い、帰ってからの課題を予定し、当日のスケジュールでも提示していました。しかしBくんにとっては、公園に行った分、休憩時間が少なくなるとは思っていなかったのでしょう。そして当日のスケジュールを確認し、そのスケジュール通りに取り組まないといけないと課題をがんばったものの、休憩時間が少なくなったことで、課題の押し付け感が生まれたのかもしれません。

 このままでは課題に前向きに取り組めなくなってしまうと、職員間で話し合いました。そして事前のスケジュール交渉に問題があったのではと考え、事前のスケジュール交渉が視覚的に捉えられるようなツールを作ることに。そして、週末に必ず来週のスケジュール交渉をする時間を作ることにしました。Bくんといっしょにツールを確認し、まずは学校から帰ってくる時間と、家に帰る時間を始めに貼ります。そしてBくんが取り組みたい課題を貼り、職員がBくんに取り組んでほしいと考えている課題もそこで提示して、交渉。翌週の利用当日、到着したら最初にそのツールを確認して、その日のスケジュールを自分で作るようにしました。そうすることでBくんの課題の押し付け感は消え、今では前向きに課題に取り組めるようになりました。

 Bくんは会話ができる分、言葉だけでのやりとりだと誤解してしまう分があります。そしてスケジュール通りに取り組まないといけないというまじめさ(=こだわり)が、自分自身のしんどさに繋がってしまう場合があります。そこで、事前にスケジュール交渉をするツールを提示することで、視覚的に意思疎通しやすい中で、今は交渉していい時間だということが分かって、Bくんは交渉に臨めるようになりました。そうすることで、課題に前向きに取り組めるようになるとともに、新しい課題にチャレンジする余裕も生まれました。今はお母さんの言葉もあり、エクセルが使えるようにコツコツと練習に取り組んでいます。がんばれ、Bくん!

「よろしくお願いします。」

じゃんぷでは子ども達に指示を出す時,「よろしくお願いします。」と伝えるようにしています。

子ども達は「〇〇しようね。」と言われるより「〇〇をしてほしいのです。よろしくお願いします。」と言われる方がなぜか動くことが多いです。

先日,じゃんぷのクリスマスパーティーをしていた時に子ども達にテーブル拭きや道具の準備をしていた時です。今までは「テーブルを拭いてください。」と言われても「え~!」と言っていた子ども達が「先生からのお願いです。テーブルを拭いてほしいです。よろしくお願いします。」と言うと「わかりました!」と言ってテキパキと動きました。さらに「次は何をしたらよろしいでしょうか!?」と聞いてきます。(なぜか片膝をついて)

いつも,どの場面でも通用するというわけではありません。ただなぜか上から言われるよりもお願いされる,と下手に言われるとなぜか「しょうがないな」という気持ちになるものです。ご家庭でも使えるかもしれませんね。「お願いです。宿題をしてほしいです。よろしくお願いします。」「それは嫌です。」と丁重にお断りされるかもしれませんが。笑

バスはいつ来る?

 冬の外出計画を立案し始めました。今回のお出かけでは、小学生は公共交通機関を使うことを目標の1つにしています。すてっぷから駅まではバスを使って行くのが便利です。さっそく事前学習として、先日最寄りのバス停まで行ってきました。小学生のみんなは時刻表がどこにあるか見つけ、帰ってからでも確認できるよう、時刻表の写真を撮ってきてきました。時刻表はインターネットで検索してダウンロードすることもできますが、実際にバス停まで行くことで、当日にバスに乗るときの見通しも持てるようになります。

 去年も公共交通機関を使って清水寺などの観光地までお出かけしましたが、ほとんどの子は3月に卒業。今年のメンバーの大半は、公共交通機関での外出は未経験です。中には、バスに乗ったことがないという子も。経験のある年長者のAくんも、バスに対しては苦手意識があります。「財布落としてしまってん」とぼやくAくん。ただ去年のバスでのお出かけでは失敗しておらず、その前のお出かけで財布を落としてしまった記憶が混ざってしまっているようです。実際は1dayパスポートを購入し、そのパスポートで京都市内のバスを乗りついで出かけていきました。去年も事前に調べ学習をし、購入するには「どこで?」「いくらするの?」と調べています。そうして財布は出さずに、カバンなどに留めた定期入れに購入したパスポートを入れて、落とさずに帰ってこれました。

 他にも便利なのがICOCAなどの交通系ICカード。こちらも同様に、定期入れなどに入れて支払うことで、落とす心配が減ります。すてっぷで公共交通機関を使ってのお出かけは、年に1回ほど。成功体験に繋がるよう支援方法を職員一同で考えています。パスポートやICカードなどのアイディアもその一つ。また外出計画案が纏まりましたら、本人や家族に提案したいと思います。

興味があるのは良いことです!

先日,相談事業所とのモニタリングで「A君が学校でもとっても生き生きしてるんです!」と話を聞きました。A君は学習に向かいはしますが,苦手な算数の問題等は避けようとする姿がありました。(最後までやり切りますが)

今年の夏ごろ,突然漢字に執着する様子が見られました。漢字の学習をしている時でもそうでないときも,「〇〇って漢字はあるの?」「習ってない漢字は入ってる?」と質問をするようになりました。

お家や学校でも同じことをしているらしく,大人の思いとしては「それよりも今の勉強をしてほしいなぁ…」となるところです。

ですがその気持ちを受け止めつつも今の学習に向かえるよう工夫をする,ということになり,家庭,学校,じゃんぷ全ての場所で同じように対応をすることになりました。

「文章問題の漢字を教えて!」と言われると「問題終わったらね」「今日の算数の終わったら珍しい漢字5個教えるよ」と,その興味を引き出しにしながら学習に取り組みました。

学校,家庭,じゃんぷと同じ対応をするとA君はどこでも学習に意欲的に取り組み,難しかった文章問題も少しずつ自分で取り組むようになっています。(文字に興味を持ってくれたので文章を読む機会が必然的に増え,読む力がついたこともあります。)

子どもが何かに興味を持つことは素晴らしいです。そのことをないがしろにせず,学習に関連付けたりして学習に向かうための引き出しにすることが大事です。

また,今回は関係機関が同じ理解をし,共に支援が出来た事も大きいと思います。子どものことを理解し,共に支援をする。大事だなぁ~~!!!

 

出来てるよ

先日じゃんぷに来ている6年生の子どもと歴史新聞づくり(学校の課題)をしていました。自分で計画を立てる 投稿日時 : 11/30で紹介した子どもです。

自分で文章をまとめることが苦手な子なので,理科や社会のノートまとめをじゃんぷでしています。社会の歴史新聞づくりが最後に残っていた課題でした。書くテーマを学校の先生に自分で確認し,「書くとこ決めてきたよ」と言ってくれました。自立的に取り組めるようになってきています。

さて,国語の習っている単元としてはそろそろ卒業文集に取り組むころだろう,と思い「卒業文集取り掛かってる?」と聞くと,「もう始めて下書きもう終わるよ」と教えてくれました。

なんと自分で「一緒に考えてください」とお願いし,学校の先生と文章化を整理しながら下書きを進めていたようです。自分の取り組みやすいやり方を見つけ,自分で援助を求めることが出来たことに成長を感じました。

「ティーバッティングでも役に立つ!」

 すてっぷでは公園に行ったら、集団遊びに取り組む時間を作っています。時にはボールを持って行き、ドッチボールやサッカー、野球などの球技をすることも。集団遊びで野球をするときは、2チームに分かれるほどの人数もいないので、打つ人と守る人に分かれるようにしていました。ただピッチャーが投げるようにすると、なかなか打てなかったり、ストライクも入らなかったりで、守備をしている人が退屈になることがよくありました。そこで、 二人で打ったホームラン(2022/9/14)で紹介したように、今はピッチャーをなくして、ティーバッティングで打つようにしています。そして打つ人、守る人に加え、キャッチャーをする人を作り、返球を受け取ってティーにボールをセットする役割を持たせました。そして、その3つを順番交代で回して集団遊びとして取り組んでいます。

 先日も、支援学校中高等部生のメンバーで、ティーバッティングで遊びました。はじめに打つ順番を決めて、打つ人の次の人がキャッチャーをして、残りの人で守備をするようにすることで、自分たちで意識して順番交代ができました。中学部生のYくんは、キャッチャー役に大張り切り。打つ人のためにボールをセットしたり、ティーの高さを変えてあげたりしています。自分が守備をしているときに、バッターの人にティーの高さが合っていないのにキャッチャーの人がなかなか気づかなかった時は、守備位置からティーまで走っていき、ティーの高さを変えてあげることもありました。

 さて次のバッターは中学部生のZくん。厚着で動きづらい中、バッティングに臨んだものの、打ち損じてティーを倒してしまいました。Zくんは上着を脱いで、ベンチに置きに離れます。すると守備をしていたYくんはティーまで走っていき、ティーを起こしてあげました。ところが、上着を脱いで戻ってきたZくんは、邪魔をしに来たと勘違い。そこで職員が間に入り、YくんからZくんにどうしてそうしたか説明する機会を作りました。Yくんは「倒れたのを立たせたんだよ」と説明でき、Zくんは「分かったけど、いいから。自分でするから」と答えることができました。

 Yくんは、人の役に立ちたいと日常の中から手伝えることを探してがんばっているところです。集団遊びの中で役割を作ることは普段から心がけていることですが、その積み重ねがあって、Yくんが自分を輝かせる場面にたくさんチャレンジすることができているのだと思います。

比例・反比例

比例・反比例は小6の算数で習い,中学,高校の数学科でもずっと使っていきます。

この単元では文章を読んで式に直し,「比例か」「反比例か」を答えることがあります。例としては

①180ページある本をxページ読んだ時,残りページ数をyとする。

②半径がxcmの円の周の長さをycmとする。円周率は3.14とする。

③90cmのリボンをx等分したときの1本分の長さをycmとする。

④面積が20cm²の長方形の縦の長さをxcm,横の長さをycmとする。

 

といった問題が出てきます。上記の4つを「y=」の式に直し,比例なのか反比例なのか,どちらでもないのか答えます。

「表にすると簡単だ」と思いつつ,以外とそう簡単ではありません。比例はどのような関係なのか,反比例はどのような関係なのかを把握しておかなければなりません。さらに上記の問題では既習事項が定着している前提の問題です。読みや想像が苦手な子どもにとっては難しい問題です。

こういった問題の時,まず比例と反比例がどのような関係なのかに立ち戻ることが必要です。この問題に迷っていた子どもに下のイラストを見せました。すると「あ~そうやったそうやった。だからこれは…」と問題を解き始めました。

文章が羅列してあると混乱もしやすくなります。そういう時こそ原点に返ることが大事なのかもしれません。

本文に関係ありませんが面白かったのでこちらも載せておきます。↓

(画像元 パグまんが めー語

 

「僕の数は何だろう?」

 相手の心理を読む要素のあるゲームは、なかなか難しいですが、だからこそ好きという人が多いのかもしれません。犯人は誰?(2022/6/24)で紹介した「犯人は踊る」も、隠れている相手の手札を読むことが、勝利につながります。ただし、ババ抜きしたり交換したりで、犯人カードがあっちにきたりこっちにきたりするので、心理を読むことが絶対条件というわけではありません。その点も「犯人は踊る」が好きな子が多い理由なのでしょう。詳しくは上記の記事をご覧ください。

 さて先日、「コヨーテ」というゲームに取り組みました。このゲームは逆に、自分の情報が分からないゲームです。どういうことかというと、ゲームの初めにある数が書かれたカードが一枚ずつ裏向きで配られるのですが、そのカードを裏向きのまま自分のおでこにつけます。つまり、自分のカードの数はわからないまま、ゲームが始まります。ではどのように推理するかというと、他の人から情報を読み解くしかありません。他の人は自分から見れば表向きにおでこに着けているのですから、その人の数が何なのかわかります。さらに、ゲームとしては、1人ずつ数を増やしながら、順番を回していきます。そして全部の合計数を超えてはいけない(正確には超えたことがばれてはいけない)という条件もあります。なので他の人の数の増やし方から、自分の数を推理することも可能ということです。

 先日取り組んだ時のことです。職員が3、Wくんが20、Xくんが4のカードでスタートしました。Wくんから数を言っていくことになり、Wくんはまず「5」と宣言しました。ところが次のXくんが「25」と宣言。職員の3、Xくんの4しか見えていないWくんからすると、Xくんが「25」と大きい数を言ったのは、自分の数が「20」だからではないかと推測できたのでしょう。案の定、Wくんは次の番で、自分の数と予想した20と、見えている職員の3、Xくんの4とを足して「27」と答え、それがまさしく合計の数。次にXくんが宣言した「28」が、アウトの数になってしまいました。終わった後で、Xくんとは「Xくんがいっきに20増やしたから、職員とXくんの数が見えているWくんは、自分の数が20だとわかったんじゃないかな」と振り返りました。

 自分の数が分からない中、相手の数と相手の宣言から、自分の数を推理するということもさることながら、相手の視点に立って、自分の発言が相手の思考にどういう影響を与えるのかを考えるということも、コミュニケーションのよいトレーニングになるかもしれません。ですが大事なのは、ゲームとして楽しめたかどうか。楽しい時間を過ごせた中で、何か一つ落とし込めそうなことを職員が見つけられたら、その点にしぼって、職員と振り返るようにして支援しています。

活躍できる場

(クイズを作って発表しよう 投稿日時 : 11/21)の続きです。

最近はあまりのあるわり算の宿題にも挑戦しています。ご褒美だった「どうぶつずかんカード」も「もういいかな」と言っており,自立の時間になると「行くわ」と言って宿題やじゃんぷでの学習に向かっています。

さて,じゃんぷで作った「どうぶつクイズ」を「印刷してください」とお願いすることがありました。「いいけど,どうした?」と聞くと「学校で生き物係やからクラスの出し物でこのクイズ出したいねん」と話してくれました。

一緒にクイズを作っている時,絶滅危惧種のアレコレを調べながら「そうなんや!すげぇ!」「これは知ってたわ,先生知らんやろ~(笑)」と生き生きとした表情で取り組んでいます。そういった自分の得意を活かせる場所が学校にも出来た事が本当によかったと思います。

「自分が活躍できる場」というのは子どもの自己肯定感にとってとても大切なものです。毎週のように「今日はクイズ作りできる!?」と明るい表情で聞いてくる姿が出てきて嬉しく思います。

 

下は一緒に作ったクイズです。みなさんも解いてみてください。

「iPad代えて」

 すてっぷでの休憩の楽しみの1つがiPad。支援学校の子も小学校の子も、多くの子が、休憩のときに時間を決めてiPadを楽しんでいます。動画を見て過ごす子もいれば、ゲームが好きな子もいます。そのためiPadには、職員が許可したゲームアプリをいくつか入れています。ゲームアプリの中には、前回の続きが同じ端末でしかできないものもあります。iPadを導入した初期は、前回の続きがしたい、でもどれかわからないということがありました。

 そこでiPadのカバーの色を端末ごとで固定するようにしました。どの端末か、子どもでも分かりやすいようにしています。そうすることで、子ども達もストレスなく、どの端末だから、どの続きをしようかと見通しを持てるようになりました。さらに「黒いタブレットください」といった属性の要求や、「他の子がしたい色のタブレットを使っているから終わるまで待とう」といった交渉も起きるようになってきました。中には子ども同士で「○時になったら交代」といった交渉をすることも。「友だちとの約束」(2022/2/7)で紹介した友だち同士での交渉も、こうした経緯があり、交渉の経験を積み重ねていきました。

 ただ、友だち同士の交渉が、必ずしもうまくいくとは限りません。交渉の意味自体が分からない子もいますし、交渉の意味が分かる子でも、交渉が成立するには職員の支援が必要ということも多いです。先日、黒のiPadが使いたいUくんも、考えを巡らせていました。そのとき黒のiPadで動画を見ていたVくんは、今までUくんが交渉してもうまく交換できたことはありませんでした。ただVくんは、他の色のiPadを使っていたこともあります。Uくんもそれを覚えていて、交渉の方法を工夫したら交換ができるんじゃないかと考えたのかもしれません。Uくんは別のiPadを借りて、そのiPadでVくんが見ている動画と全く同じ動画を検索して表示しました。そしてその画面を見せながら、Vくんに「代えて」と伝えたのです。するとVくんは、そのiPadを受け取って、黒のiPadを手放しました。Uくんの工夫は功を奏し、見事VくんとiPadを交換できたのでした。

 Uくんが工夫して交渉し、VくんとのiPadの交換がスムーズにいったことは、Uくんにとって何よりの成功体験になったと思います。放課後等デイサービスだからこそ起こった、子ども同士のコミュニケーションの機会。UくんにとってもVくんにとっても、コミュニケーションが育つ場面がいっぱいです。どんな日常にも起こるそのチャンスを、損ねないよう気を引き締めて支援していきます。

クリスマスが今年もやってくる♪

竹内まりやの「すてきなホリデイ」がCMで流れる季節となりました。

じゃんぷでは子ども達がクリスマスカードを書き,それを手作りの「アドベントカレンダー」としてクリスマスまで(正確にはじゃんぷクリスマスパーティー)の日数を数える,という取り組みをしています。

さて,なんてことのない遊びのように思えますがじゃんぷに来ている子ども達の中には「書くことが苦手な子ども」「自分で文を考えることが苦手な子ども」「日にち等の抽象的な数的概念を想像することが苦手な子ども」と様々です。

クリスマスカード作りの時,まず子ども達にアドベントカレンダーを見せ,「この中にみんなが書いたカードを入れ,一日ずつ開けて書いた紙をツリーの形になるように貼っていきます」と,子ども達が楽しみになるように,そしてどのようなものが出来上がるのか具体的に見せました。

そしてクリスマスカードの内容は「①ことしほしいプレゼント ②いままで もらって うれしかった プレゼント」とテーマを作り,見本の文章を書いています。また,「わからないとき,むずかしいとき は せんせい に そうだん しても よいです。」と難しい時にどうすればよいかを示しています。

今子ども達がじゃんぷに来所したときに「今日のカード」と発表をしています。それと同時に「あと何日って書いている?」と一緒に数えることもしています。

子ども達がゆったりとリラックスしつつ,実は学習になっている,という仕掛けをしています。アドベントカレンダーの側にはクリスマスツリーを置き,それでほっこりしている子どももいます。癒されるね~!

(写真はじゃんぷのではありません!ごめんなさい!)

おやつでもPECS

 支援学校高等部のSくんは、2週間ほど前から、机でおやつを食べることにチャレンジしています。Sくんは高等部生ですが、背丈が小さく、おやつのときはずっと座椅子を使っていました。ですが成長期と言うこともあってかこの半年で、ぐんと身体が大きくなりました。そこで、机でおやつを食べることにしたのです。

 飲み物もペットボトルからコップに変えてチャレンジ中。1年前まではトレーニング用のマグカップを使っていたことを思ったら、驚くほどの成長です。スプーンは以前から使うトレーニングをしていましたが、この1年は、自分の指で食べるもの(せんべいなど)をつまむトレーニングもしています。

 そんなSくんですが、食べる姿の成長もさることながら、おやつ時に行っているPECSトレーニングでも目覚ましい成長を見せてくれています。慣れているおやつ、飲み物なら絵カードの弁別もばっちりで、絵カードをしっかり見て要求したいものを確認してから、職員に手渡すことができています。「まって」カードをもらって椅子に座って待ち、ふたのあるミニゼリーをもらうと、ふたを開けてほしいと「てつだって」とカードで伝えることもできるようになりました。

 同じように、PECSトレーニングの成長が目覚ましいのが、小学部のTさん。Tさんは2語文(○○+ください)にチャレンジ中です。タイミングが合えば、SくんとTさんとで、同じ机に並んで座り、いっしょにおやつでPECSトレーニングをすることも。1年前の2人のおやつの様子を思い出してみると、考えられないくらいの成長を見せてくれている2人ですが、そんな成長した未来のことを思いえがいて、毎日コツコツとトレーニングを続けてきた日々の積み重ねの結果だと考えると、支援の重要さを実感します。

 

「出来ない」の悪循環

「僕は〇〇が苦手で出来ないんや~」という子どもの声をよく聞きます。しかし案外それは本人の思い込みだった,ということも少なくありません。

例えば先日「国語は苦手なんや…文章読めんし…」と話していた子どもが国語のテストで高得点を取ってきました。その子は本をよく読んでおり,興味のあることに関しての知識は大人を優に超える程の知識を持っています。それだけ本を読んで内容を理解することができるので漢字を書くことは難しいにしても読解問題は解くことが出来ます。実際じゃんぷで取り組んだ時も「嫌だ~苦手や~!」と言っていた割に始めると「…あれ,出来るわ」と本人も驚いた様子でした。

さて,「出来ない」と思い込むということは周りから「出来ない」と思われていた,ということです。「ゴーレム効果」というものがあります。それは「ある人物に対して周囲の期待が低い場合、その人物は周囲の期待通りにパフォーマンスが低下してしまう」という心理学効果です。例えば仕事の中で「〇〇さんはどうせできないから…」という空気を職場で作ってしまうとその通りにパフォーマンスが下がってしまい,どんどん仕事が出来なくなる,ということです。反対に「ピグマリオン効果」というものがありますが,これは学校現場でもよく使われている言葉なので知っている方も多いと思います。

子どもは大人のことを本当によく見ています。子どもがこういった悪循環に陥らないよう,子どものことを適切に理解,評価して支援をしなければならない,と改めて感じています。