すてっぷ・じゃんぷ日記

2023年5月の記事一覧

大きな数

「大きな数」という単元があります。一の位、十の位、百の位、千の位、一万の位…3年生では十万、百万、千万、一億まで。4年生では十億、百億 千億、一兆まで学習します。

こういった膨大な数は数量を想像しやすくするために人口等で導入し、学習に入っていきます。ただ数量はわかっても読み書きの苦手な子は文字と結びつきにくく、問題になった途端ぐちゃぐちゃになることも少なくありません。

じゃんぷに通う子の中にも位が苦手な子どもがいます。じゃんぷでは「位取りカード」を作って子ども達に渡し、「小さいに順にならべてごらん?」と渡しています。最初は一緒に文字を読んだり等手伝いながらですが、最終的に自分で並べれるように練習をします。

文字と読み方、そして数量と様々な情報を使いながら単位の勉強は進んでいきます。まずこの位の関係をわかってないといけません。まず文字と読み方、そして数量をこれで一致させ、子ども達が不安なく学校の学習に臨めるよう支援をしています。

「けった」って?

 すてっぷでの公園遊びでたびたび紹介している『けった』という遊び。筆者は乙訓で育ったので馴染みがあるのですが、全国的にはマイナーな呼び方のようです。簡単に調べると、鳥取で『けったん』、滋賀や京都で『けった』と呼ばれているとのこと。詳しい経緯をご存じの方はいらっしゃるでしょうか? いずれも、『缶蹴り』と同様の遊びと記載されていましたが、細かいルールは異なるようです。ここでは、筆者が子ども時代、または学童の指導員補助をしていたときの経験を元にした『けった』を紹介したいと思います。

 要は空き缶を使わない『缶蹴り』なのですが、空き缶の代わりにみんなで場所を1か所決めてシンボルにします。たいていは木や柱がシンボルになるので蹴るかわりにタッチすることにします。『缶蹴り』であれば最初に空き缶を蹴りますが、『けった』は鬼が目を閉じ数える間に他の人は隠れます。あとは『缶蹴り』と同じように、鬼は隠れている人を探し、見つけたらシンボルに戻って、「○○さん、けった」と言ってタッチします。逆に隠れている人は鬼の目を盗み、シンボルに「鬼さん、けった」とタッチ出来たら逃げる必要はなくなります。『缶蹴り』だとここでゲーム終了となる場合が多いですが、『けった』はこのまま続行。隠れている人がいなくなるまで続け、最後に「けった」された人だけでじゃんけんして次の鬼を決めます。

 この遊び、隠れる場所が四方にあるような公園がうってつけ。なかなかそんな公園はありませんが、先日訪れた公園はぴったりの場所でした。子どもからもリクエストが出て、久々に『けった』をすることに。「初めてする人」と聞かれ、Iくんは「はい」と手を挙げます。ルール説明をしてから、Iくん以外で鬼を決めてスタート。Iくんはしっかりと隠れていましたが、飛び出すタイミングはさすがに分かりません。鬼が近づいてきたのに我慢できず、飛び出します。ところが鬼はシンボルと隠れている子の間。当然鬼の方が先にシンボルに着いてタッチしました。一方で先輩たちはさすがです。鬼の位置をしっかりと確認しながら、自分の隠れている位置からシンボルまでの経路を吟味、間違いなくいけるというタイミングで飛び出し、見事タッチ! 次の鬼を決め、2回戦、3回戦と続けていきました。最後のゲームでは、Iくんも見事「おにさん、けった!」ができました! どちらが言い出したかは分かりませんが、Iくんは先輩たちと一緒に隠れて、先輩達と一緒に飛び出してきました。そして見事「けった」。教えた先輩たちも、学んだIくんもグッジョブです!

 一方でこの遊び、『缶蹴り』も同様ですが、鬼が空き缶やシンボルの周りを離れずにその場からずっと探していると、隠れている人はまったく面白くありません。また隠れる側も、あまりにも遠くに隠れると、鬼が面白くありません。実際、このときも子どもから指摘する声が上がりました。時間制限を作ったり、場所制限をしたりする?審判役が必要になるけれど。それとも鬼を複数にする?いや、鬼が有利になりすぎるか…。と個人のアイディアは貯めていますが、せっかくです。子どもと職員とでアイディアを出し合える機会を作れないかと思案中。またぜひ、みんなで『けった』を盛り上げたいと思います。

 

ほっとタイム

じゃんぷに18時以降に来る中学生たちは中間テストが終わったところです。中1の子ども達は初めての定期テストということで物凄く緊張もし、疲れたと思います。

Y先生と「少しお話をしながらほっと一息する時間も必要かな」と話し、普段は到着したら学習を始めるのですがテスト終わりは「ほっとタイム」ということで各々の話したいことをテーマに話す時間を作りました。

先日は中間テストが終わった子が校外学習で神戸に行ったらしく、「めっちゃ疲れたわー!」と話していました。その子が言うには神戸に到着してから「北野異人館」、「生田神社」、「東遊園地」、「メリケンパーク」、「南京町」を歩きで回ったそうです。昼食の時間が10分程度だったりと、その子にとってかなりタイトなスケジュールで疲れたようです。

こういった学校のことや普段の生活のこと、たまには愚痴を話しても良いでしょう。そんな時間を作ってから学習に取り組むのもよいかもしれません。

ちなみにたまたまですが筆者もつい最近神戸の南京町に行っていました。そこで食べた芋スイーツがとても美味しかったです。ただすぐにお腹が膨れてしまいました。昔はもっと食べれたはずなのですが、年は取りたくないものですね。

学習の土台

読み書き障害のある子ども達は学校の中の勉強の中で自分の苦手な部分に直面し、自己肯定感を失い学習に乗らないようになります。それが飛び出し等の形になって出てきます。(中には目に見えないようにする子どももいますが)

それは学校に入った時に起こります。今までの生活から一気に学習ベースの生活になるため、子ども達は環境の大きな変化に対応しながら学習をしていかないといけません。ここでどこまで子ども達に楽しい、おもしろいと思わせながら授業を進めることができるか、が大事です。1年生の担任が重要と言われる理由の一つですね。

さて、じゃんぷに通う子ども達の中には学習のベースが出来ていないまま進級し、目の前の勉強に困難を示す子ども達がいます。もちろん子ども達が悪いのではありません。

学習のベースが出来ていない子どもにどれだけ勉強しようと言ってもそれは辛い、しんどいことを押し付けられているだけとしか子どもは感じません。そういった子ども達にはその子が大好きな事やしたいことをしながらその中に勉強に繋がる要素を少し含ませ、学習のベースを少しずつ積み上げていく必要があります。たとえそれがその子が学習から逃げるために「〇〇したい」と言ったことでもしてあげる必要があると考えています。

今までずっと勉強がしたくなく、動物調べや怖い話調べ等をしてきた子どもが少しずつ勉強に向かうようになっています。動物調べや怖い話調べの中で文章読み練習やタイピングの練習を少しずつ入れていきました。そこで学習のベースをその子なりに作り、ようやく勉強への構えが出来たのでしょう。

先日は休憩中のゲームで「トーナメントをしたい」と言ってきました。しかもトーナメント表をホワイトボードに書く!と言って、友達と一緒にですが、みんなの前で表を書いてくれました。それまで友達の前で書くなんてことを絶対にしなかった子がみんなの前で文字を、表を書いているのです。子ども達がトーナメント表を見ながらワイワイしている様子を見ながら、こういったことも学習に繋がっているのだな、と実感できた瞬間でした。

読みの二重ルートモデル

先日の宇野彰先生の講演の中で「読みの二重ルートモデル」の話が出ました。筆者自身、それについてよく理解していない部分がありましたが、Y先生から「読み書きの苦手を克服する子どもたち(発行 文理閣 著 窪島務 滋賀大学キッズカレッジ)」を貸していただき、その中に詳しく記してあったためここに紹介します。あくまで2005年の著書であり、現在とはまた考え方が変わっている部分もあると思いますが大変参考になります。

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「読み」の現在の主要理論

大脳が文字を処理するメカニズムには、大きく視覚的処理から単語意味に向かうルート(語彙ルート)と文字と音韻との対応関係の規則によって処理するルート(音韻ルート)の2つがあります。通常は2つのルートを同時にバランスよく使用しています。
しかし、失語症や学習障害では語彙ルートに至る経路に障害があると音韻ルートに依存する処理が中心となり、音読はできるが意味がわからない、不規則文字が読めないことが生じます(語彙性読み書き障害)。音韻ルートが障害されると語彙ルートに依存する処理が行われ、意味はおおむね理解されても読み誤りが多くなります(音韻性読み書き障害)。意味の誤読が生じることもあります。背景に記憶関連の際害や処理の自動化の障書が想定されています。


トライアングルモデル(コンピュータモデル)
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トライアングルモデルは、コンピュータによる読み処理の計算モデルであり、その特徴からコネクショニストモデル、並列分散モデルともよばれています。このモデルは、二重ルートモデルのように系列的に機能を極在化したモジュールを仮定せず、文字、意味、音額の3つのユニットが並列的な関係を構成します。中間層で情報の処理が行われます。漢字の読みでも意味だけでなく、文字の読み知識が関与していることを証明しました。二重ルートモデルが、獲得性読み障書の病理モデルであるとすれば、トライアングルモデルは正常な読み学習モデルを基本とする構造から、その一部の障害をコンピュータでシミュレーションします。発達性読み書き障害のモデルとしては有効かもしれませんが、まだ多くの検討課題があるようです。とりわけ、発達主体の要因、書くことなどは要因として想定されていません。
二重ルートモデルはアナログ的モデルとしてまだ有効性を保っています。二重ルートモデルは、成人の脳障書がモデルとなり、病理的視点に立脚しています。トライアングルモデルは、正常成人の読み能力をモデルにしています。しかし、いずれにしても、「発達」の視点が弱く、「発達的ディスレクシア」という場合でも、成人モデルを子どもに当てはめただけという場合がしばしば見られます。