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みんなちがってみんないい

「障がい」

熊谷俊人(千葉市長)について昨日コメントしました。支援学校の子どもが水遊びを自粛しても、台風で止まっている電力や水道は復旧しない。意味のない自粛の呼びかけは控えてほしいというものでした。この考えと同じようなツイートが4年前にもありました。


熊谷俊人(千葉市長)
▼「障害者」とは「社会の障害」でも「身体に障害を持つ者」でも無く、「社会との関わりの中で障害に直面している者」という意味であり、私たちはその障害を一つひとつ解消していくことが求められている、と理解しています 。
▼その考えから、私は「障害」を「障がい」と置き換えることには反対です。「障害」という言葉が引っかかるからこそ、それを社会的に解消しなければならないわけで、表現をソフトにすることは決してバリアフリー社会の実現に資するものではありません。2015年5月20日
▼表記を変えるべきとよく言われて、それに対応する時間を本来の障害者行政に割きたいので、表現を変えても意味が無いと申し上げただけです。2015年5月25日

2011年に提出された障害者基本法改正案に「障がい」を盛り込むために、かつての鳩山由紀夫内閣が設けた「障がい者制度改革推進本部」は、差別解消のために表記を「障がい者」とすることを議論しましたが、有識者らからは「『障害』が広く普及している」などの意見が出され、合意には至らず、改正案には盛り込まれませんでした。しかし、この流れからあちこちの自治体で「障がい」表記が増えました。

この流れに一石を投じたのが、先述した熊谷市長のツイートなのです。ポリティカルコレクトネス( political correctness)とは、政治的・社会的に公正・公平・中立的で、なおかつ差別・偏見が含まれていない言葉や用語をさします。看護婦ではなく看護師、保母ではなく保育士、スチュワーデスではなくキャビンアテンダント等です。障害ではなく「障がい」表記の流れもポリコレ運動の一つと言えます。

市長の意見は、今回の自粛発言と同じく、その議論に差別・偏見をなくす効果があるのか?というものでした。ポリコレがどうこうと言う前に、政府として決着を得た話に、ふたたび市役所が時間と税金をかけて「害」か「がい」かと議論していること自体に役所の仕事として意味があるのかと疑問を投げかけています。

 

 

自粛はご遠慮下さい

熊谷俊人(千葉市長)が以下のツイートをしました。
『養護学校の生徒が水遊びしていることについて「災害の中、不謹慎」との苦情が入りました(その方は停電は発生していない地域にお住い)。 確かに千葉市内を始め、県内が停電・断水な中、不謹慎と思う方もいるかもしれませんが、自粛しても意味がありません。心を寄せて頂いた上で、自粛はご遠慮下さい。13:40 - 2019年9月11日』

風台風の影響を受けて、千葉県は未だに電力や水道が復旧していない地域が少なくありません。みんなで助け合おうという声掛けは大事ですが、災害時の被害が大きければ大きいほど、「みんな」を強調するあまり全体主義の危うさを感じさせる発信が時折見受けられるのも事実です。ただ、正面からその発言を批判するのは「返り討ち」に合う恐怖感があり足踏みをしてしまうのも本音です。市長の勇気ある発言に対して多くの人が共感を寄せました。災害時は社会的弱者への偏見が顕在化します。だからこそ、「みんな」で非常事態の言動には危機管理の観点からも敏感になる必要があります。

敬老の日

今日は、敬老の日。 毎年9月15日を敬老の日としていたものを、2003年(平成15年)から9月の第3月曜日にしました。兵庫県多可郡野間谷村の村長と助役が、お年寄りを大切にし、昔から伝わる知恵を借りて村作りをしようと、昭和22年(1947年)「としよりの日」が決められました。農作業も一段落して敬老会を開くには丁度よい日取りだったようです。これが全国的に広まって、「としより」という言葉の響きが良くないということで、「老人の日」となり、昭和39年(1964年)国民の休日として「敬老の日」が制定されました。

高齢者とは、日本の統計調査では65歳以上と定めています。家族に高齢者がいる世帯は全世帯の4割を超え、その中で高齢者の一人暮らしと夫婦のみの世帯をあわせた数が半分です。病気やけがをしている高齢者は半数、生活に支障をきたすほどの重症の人は2割程です。高齢者の世帯支出は、勤労世帯で月36万、無職世帯は26万ほどが平均支出です。全世代世帯の平均支出月額は29万ですから、若年世帯と同じくらいから経済的に余裕がある範囲に入リます。

65歳から74歳までの人を「前期高齢者」といいます。前期高齢者は、64歳までと変わらず国民健康保険や被用者保険の給付を受けることができます。高年齢者雇用安定法で、本人が希望すれば65歳まで働けるようになったため、定年後も同じ職場で働き続ける人が増えています。これからはさらに現役で活躍する高齢者が増えていきます。また労働人口が減る一方で、前期高齢者に含まれる65歳から69歳までの男性の約半数が働いています。

定年後も自分の居場所を見つけ、自立した生活を送ることが大切だと言われますが、大きなお世話です。高齢者ですらない宙ぶらりんの60歳以降はそう思っています。もう少しで、ゴールだと走り続けてきたら、勝手にゴールテープを後ろに移動された感が強いのです。だったら走る(就労する)前からそう説明してほしいと思ったのは筆者だけでしょうか。昭和30年代生まれの方は、60歳で定年だと言われつつ安い賃金で65歳まで雇用されることになり、寿命が延びているのだからその後も働いて当然だと言われるのは、どうもすっきりしないという人は少なくありません。

文明の進化とともに寿命が伸びることは周知のことです。年金掛け金が収入の2割で、年金月額が生涯平均賃金の5割を支払える釣り合いの取れる答え(年数)はひとつしかありません。「(平均寿命-20)÷1.4=掛け金年数」「掛け金年数+20=支給開始時期」という小学生の算数です。最初からわかっているのこの単純な関係が説明され、「平均寿命が延びたら、掛け金期間と年金支給開始時期がのびる」「年金は長生き保険」とさえ学んでいればこんなに違和感(損した感)はなかったと思います。

国民の8人に1人が後期高齢者といわれています。そして75歳の誕生日から後期高齢者医療制度への加入が義務付けられました。75歳を過ぎると入院や長期療養が多くなり、後期高齢者の約4分の1が要介護認定を受けています。また80歳以上の約8割が経済的な不安を感じず暮らしていて、後期高齢者の半数以上が趣味やレジャーを楽しんでいるそうですが、この人たちは2004年の厚生年金保険料の引き上げ開始前に定年を迎えた方たちです。前と後ではえらい違いだと思うのは筆者だけでしょうか。敬老の日に、敬老されてるのかなぁ。高齢者ではないしなぁ。なんだかなぁという複雑な思いで一日が過ぎていきました。

自立課題

個別課題と自立課題は良く混同されて使いますが、意味が違います。個別課題と示すときは、その名の通り、子ども一人一人の課題に合わせて個別に大人に教えてもらう学習形態や内容をさしています。初めて取り組む課題や十分に身についていない課題は「個別課題」として、大人が個別に指導をします。そして、ある程度できるようになった課題は「自立課題」として、子どもが一人でできるように進んでいきます。つまり、「個別課題」→「自立課題」という図式です。確かに指導上はこうした流れをとることも多いので間違いではないのですが、コミュニケーション学習の「自立課題」はあり得ないし、集団場面で使うスキルをマンツーマンで教えてもらうことも「個別課題」にはあります。「自立課題」という言葉は「個別課題」とは全く関係なく、自閉症支援として日本に輸入された重要なキーワードなのです。

自閉症の方をはじめとする音声モードの情報処理の弱い人に、音声モードで学習や作業、生活をさせていては、何歳になっても分からないことが多すぎて、依存的になったり拒否的になったりして、結果として自立しようとする芽を摘んでいるのではないかというTEACCHの考え方が1970年頃から世界に広がりはじめました。「構造化」した環境で「自立課題」を取組むことで、ASDの方に「自分でできる」という自信と自尊心を育てることができたという実践が各地で報告され検証されました。「構造化」や「自立課題」と言う言葉は、ASDの方の自信と自尊心のキーワードとなる言葉です。そして2000年代以降もう一つの柱として、「自発のコミュニケーションスキル」が重要と言われています。これも視覚モードを使って自分で伝えるPECSを代表とするので「自分でできる」という目標は同じです。

昨日のブログでも紹介しましたが、強い指示待ちは、ASDの受動タイプの方や、高学年で行動が落ち着いてきた方に時々見受けられます。いつもの日常の生活行動なのに、強く指示して促さないと動けない緊張病(カタトニア)として医学書に紹介される症状です。原因がはっきりわかったわけではないですが、この予防策として、視覚情報モードで自立的に生活していれば、日常の生活行動に促しをかけることも減るので、予防には有効ではないかと考えられます。ただ、だからと言ってしつこく声をかけるとみんなカタトニアになるわけではありません。このことについては別に詳しく述べる機会を作ろうと思います。

指示待ちの原因

指示待ちの強い人は、行動する前に「どうしよう、どうしたらいいんだろう」と悩むので、いつまでも行動に移せません。それは自分の考えに自信がないので迷いが生じてしまうからです。自信がない原因は、自発的に行動した結果、成功体験が著しく少ないせいか、失敗体験が著しく多いせいだと考えられています。

周りの人の気持ちや状況に無関心が指示待ち人間になっている原因とも考えられます。いわゆる空気が読めない人です。空気が読める人は、周りの人の気持ちやその場の状況から自分は何をしたらいいのか、どうすることが正解なのか答えを導き出せます。しかし指示待ちの人は、例え周りの人が忙しそうに仕事をしていても、気づいていないので援助する行動がとれません。

ややこしいのは、指示があるまで「何か手伝うことはありますか?」「他にできる事はありますか」と自分から聞きに行かず余計な仕事を増やしたくないという人です。このタイプの指示待ちは合理主義で損得勘定でわざと指示を待つような態度を取ります。指示があれば文句も言わずに任せられた業務に手をつけますが、それまではわれ関せずな態度を取ります。目的をもって行動しないという意思を持っているものは指示待ちとは言いません。

マニュアルに沿って行動することは得意でも、ちょっとしたトラブルで冷静さを失ってしまい、臨機応変な対応を苦手とするタイプの指示待ち人間もいます。社会人経験の浅い若者、バイトなどで働いた経験がない人に多いです。また、今まで誰かに言われる通りに生きてきた人に多いかもしれません。親や教師の言うことを聞いていれば失敗しなかった環境から、自分で考えて行動しなければならない環境に変わったのに、切り替えられずに対応できないのです。

責任を背負いたくない人は、自分が思いついて行動したことで失敗した場合、何らかの責任を負わなければならないという状況に恐怖感すら感じます。「もしもうまくいかなかったらどうしよう、嫌われたり怒られたらどうしよう」と責任を負うことに不安を感じてしまうのです。失敗の体験から、自分で考えて行動するよりも指示を待つほうがリスクが少ないと思っているのです。

指示待ちになるのは、結局、自分のやりたい事がはっきりしていないという事です。自分のやりたい事、これを実現するために仕事や生活があります。大事なことは自分のやるべきことを自分の判断で小さなことから実現して自信を積み上げることです。そして、「報連相」と指示待ちは異質のもので、他者にイライラや怒りを誘発させるような精神的負担を負わせるのは「報連相」ではないことに早く気付くことです。

ただ、空気が読めない人のためには、明日から空気が読めるようにはならないので、もう少し配慮が必要です。なんでもかんでも人に判断してもらう指示待ちはNGだけど、どのレベルなら自分で判断すべき仕事なのか、どのレベルなら相談した方がいい仕事なのかを質問するのは、有意義な「報連相」行動だと、みんなで確認しておくことは大事です。「そのレベルは自分で判断します」「その先は相談します」という明確なガイドラインがないと、自己判断と相談のボーダーラインはグレーゾーンのことが多いので、指示待ちだった人は混乱してしまいます。指示待ち行動は、その人の責任にしても解決はしないので、関係者全員が指示待ちの人の支援にあたることが重要です。

電話対応

電話はどの職業にとっても大切な連絡ツールです。少しの工夫で、電話対応力はより磨かれます。電話応対では、顔を合わせて話ができる対面と違って、声だけで相手に気持ちを伝えなければいけません。電話の印象は、【声の表情と抑揚の付け方】で変わります。まず声の基本は、【姿勢を良く】です。何かにもたれ掛る姿勢や、猫背だといい声が出ず相手にもいい印象を残すことが出来ません。次は、【深呼吸をする】です。電話を受ける時も掛ける時も、しっかりと深呼吸して、しっかりとお腹から声を出すように意識します。最後は、【声の表情を変える】です。笑顔で「あー」と声を伸ばした時は、声の明るさや伸びが全然違うのです。顔の表情が、声の表情として、相手にも伝わります。つまり、基本的な電話対応は笑顔で明るく。クレーム対応やトラブルの際は、神妙な表情で少し声色を落とす。表情を変えることで声の表情も変わり、より誠意が相手に伝わりやすくなります。」

次に必要なことは「相手の最も伝えたい情報は何か」「相手が最も知りたい情報は何か」を即座にキャッチし、適切な返答をするということです。電話の相手は、必ず目的をもっています。その為、無駄な会話を避け、必要な情報を的確に聴きだす必要があります。【1.電話の目的の把握】【2.目的に沿った質問をし情報を引き出す】【3.内容に対する的確な返答をする】という3ステップを抑えれば、電話対応は劇的にスマートになります。

相手からクレームの電話を受けることもあります。相手は感情的になっているケースが多いです。その為、言葉使いや相槌一つとっても、細心の注意を払っていく必要があります。相手がお話をされている時には、最後まで相手の言葉を聴くことが基本です。そして、言葉と言葉の合間に、短く「はい」と相槌を入れることが大事です。ここでは、「きちんと自分の話を聴いて理解してくれている」と相手に感じてもらうことが何より重要です。相手の言葉に被せて相槌を打ったり、毎回「申し訳ありません」「すみません」など謝り続けることは、逆効果となります。「きちんと私の話を聴いてくれているのか?」「謝れば済む話をしているのではないのだが」と、相手に不快感を与えてしまうこととなり、誠意が伝わりにくくなります。

また、【クッション言葉】も大切です。例えば「恐れ入りますが」「お差し支えなければ」「ご面倒をおかけ致しますが」など会話のクッションとなる言葉です。このクッション言葉を適度に挟んで会話を続けると、相手の気持ちが和らぎ、相手の伝えたいことを正確に把握できるようになります。

 

放課後デイ事業所が540万円不正請求

放デイの総量規制のことを書いていたら同じ日に京都市放デイの不正請求事件が京都新聞に報道されていました。以下記事掲載します。

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放課後デイ事業所が540万円不正請求 受け入れ停止処分、京都

 京都市は10日、伏見区醍醐で障害児が通う放課後等デイサービス事業所を運営する一般社団法人「ガジュマル」(同区醍醐)が人員基準に違反し、個別支援計画の未作成の状態で給付費など計約540万円を不正請求していたとして、11日から6カ月間の新規利用者受け入れ停止の行政処分を行ったと発表した。
 市によると、同法人の施設「放課後デイサービス ガジュマル」で、配置義務がある現場統括役「児童発達支援管理責任者」が不在となった2018年8~11月、代わりの人員を置かず、8月分について必要な減算をせずに給付費を請求。17年8月~18年10月には、延べ217人分の個別支援計画に関して、内容や作成手順に不備があった場合の減算をせず、給付費を請求したという。
 ほかにも欠席時対応の加算などを合わせると、不正請求による受取総額は約540万円に上り、市は同法人に40%の加算金と合計で約760万円を返還請求した。不正行為には改善勧告を出し、1カ月以内で報告を求めた。
 市の監査に対し、同法人は「忙しくて対応を怠ったり、制度への理解が不十分だったりした」と述べているという。
【2019年09月10日 20時04分】
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要するに、放デイも必要な資格のある人をおくことで、サービスの質が維持できるとして、その条件を満たせばサービス単価を上げることができる仕組みなのですが、資格者がやめているのに単価を変更しないで不正請求したなどで、3年で540万不正に受け取ったというものです。放デイは1事業所当たり年間平均2千万から3千万の受給があるので1年で約1割程度の請求が不正だったということです。「忙しくて対応を怠ったり、制度への理解が不十分だったりした」とは事業者側の弁ですが、プロとして許される言葉ではないです。こうした不正がたびたび起こるのはほとんどの利用者が1割負担で、あとは税金で賄われるので事業者の罪の意識が薄れてしまうのかもしれません。これは、介護の世界でも医療の世界でも同じことが言えます。病院の不正レセプトも記事にすらならないほど後を絶ちません。そもそも、請求ルールが複雑と言う問題もあります。今やAIの時代です。労務管理システムと請求システムを連動させればこんな不正はできなくなります。あけても暮れても性善説に立ってあれこれ非難しているよりも、簡単に不正できないシステムを公的請求ラインで確立する方がよっぽど早いと思うのは私だけでしょうか。それが進まないのも不正受給されたお金が税金だからでしょうか?

京都市放デイ総量規制

京都市は、事業所数が急増している放課後等デイサービスについて、地域ごとの事業所の必要数を算出し、上回る場合は他地域への参入を促す「総量規制」を今年中に導入するそうです。京都市内の事業所数は2012年4月の9カ所から昨年9月に145カ所へと急増。伏見区や山科区などが多い一方、南区と東山区はいずれも3カ所と地域的な偏りが課題となっています。(5/30京都新聞)

京都市は今後、地域ごとの見込み利用者数と必要な事業所数を算出します。総量規制の導入後は、サービス供給が過剰な地域で開設を希望する事業所には別の地域で開くよう促し、市の要請に応じない場合に開設を認めるかどうかはガイドラインを決めていくそうです。

総量規制は昨年4月の改正児童福祉法の施行で可能となりました。浜松市は今年5月から本格実施しており、市が定めた上限数以上の開設を認めていません。また、山科区の事業所で給付金を不正受給していた事件を受け、本年度から放課後デイの指導、監査を担う京都市は部署を2人増員したそうです。

ただ、京都市の場合は利用者のニーズ量を調べてから事業所数を決めるものですが、乙訓の場合は利用量を最初から原則週3回と決めており、これは利用者の権利侵害に当たる可能性があります。もちろん、利用実績から予算を割り出すのはどの行政にも必要なことです。しかし、行政や事業者同士で総量を一律規制するのは新規参入を意図的に抑止することにつながる恐れがあり結果利用者の権利制限につながる可能性があり、検討を要します。

台風一過:風台風15号

台風15号は千葉市付近に上陸したあと茨城沖の海上に抜けました。台風一過の置き土産として15号が運んできた南の暑い風で東京都心で最高気温が36度、静岡、名古屋では37度、大阪、福岡でも35度の猛暑日が予想されます。この猛暑日は明日(10日)も続くそうです。

15号の猛烈な風は、一時千葉市内で最大瞬間風速が57.5メートルを観測しました。時速にすると207キロという新幹線並みで、観測史上1位を更新しました。それでも、強烈な台風が首都圏を直撃した割には、昨年の9/4に上陸した21号で関空が機能不全に陥るような風台風の大きな被害はなかったそうです。置き土産の猛暑で、9日夜も30度前後の熱帯夜が予想されます。湿度も高く、こまめ水分を取って熱中症には十分気を付けるよう気象庁は呼び掛けています。

障害児通所受給者証について

放課後等デイサービスを利用するには、「障害児通所受給者証」が必要になります。療育手帳を持ってないと、放デイには行けないと誤解されている方がいますが、発達に課題があるお子さんであれば、市町村の自治体に申請すると受給者証を発行してもらうことができ、放デイサービスが利用できます。

受給者証とは、福祉サービス等を利用するために発行される証明書です。市町村などの自治体に申請することにより、交付されます。受給者証には、児童の名前や住所の他、放課後デイサービスなどを利用できる日数(支給量)や、月額の利用料の上限額(上限負担額)が記載されています。1人の児童が複数の施設を利用できるため、利用している放課後デイサービスの名前や利用日数なども載っています。

受給者証は「福祉サービス」を受けるためのものと「医療」を受けるためのものがあります。
障害福祉サービス受給者証・地域生活支援事業受給者証・障害児通所受給者証・障害児施設受給者証
障害者医療費受給者証・自立支援医療(精神通院医療)受給者証・特定疾患医療受給者証 などです。

放課後等デイサービスを利用するには、上記の「障害児通所受給者証」を交付してもらう必要があります。
前回(7/17特別児童扶養手当)でも掲載しましたが「障害者手帳」や「療育手帳」は、障害の名前や状態、程度を証明するために都道府県から発行される証明書です。一方、「受給者証」は福祉サービスを利用するために、市町村から発行される証明書です。障がいの診断がなくても、医師の意見書などがあれば発行してもらうことができます。不登校などの場合も、お子さんの健康状態や精神状態を伝えて審査を受けると取得可能です。一度、お住まいの自治体の窓口で相談してみてください。

受給者証の申請は、下記のような流れで行います。
1. 自治体の窓口で手続き相談をする
子育て総合支援センターや区役所の保健福祉課などで、放課後デイサービスのサービス内容や計画の説明を聞き、申請手続き(申請書記入・聞き取りなど)をします。
2. 利用計画書を作成する
この利用計画書は「相談支援専門員に依頼して作成してもらうパターン」と「保護者が作成するパターン(セルフプラン)」の2種類があります。
相談支援員に計画書を作成してもらう場合、子どもの特性に合わせた専門的な意見がもらえたり、長期にわたって相談できるというメリットがあります。一方、相談支援員とのやりとりが入るため、手続きなどで時間がかかるというデメリットがあります。セルフプランの場合、手続きがスムーズに進むというのがメリットです。ただ、利用日数が多く取れないなどのデメリットが生じることもあります。自治体によっては「相談支援員がついていないと月●日以上利用できない」というようなところもあります。(乙訓近辺での自治体では聞きません)
3. 利用計画書の提出
上記の計画書を、子育て総合支援センターや区役所の保健福祉課に提出します。
4. 審査>受給者証の交付
1.の申請書と2.の計画書をもとに審査が行われ、受給が決定します。
その後、保護者に受給者証が郵送されます。自治体によって異なりますが、通常は申請してから2~3週間くらいで受給者証が交付されます。
受給者証は、基本1年毎に更新の手続きをします。更新の際は改めて診断を受ける必要はありません。

【以下は他の自治体のものですが、どこも同じような書式です】

日中一次支援事業

日中一次支援事業の特徴は、放課後等デイサービスと比較するとわかりやすいです。放課後等デイサービスは、その役割機能を特定されているのですが、日中一次支援事業は、放課後等デイサービスのような役割機能の制限がつけられていないという特徴があります。放課後等デイサービスが始まる前でも、障害のある児童生徒が活動する場として保護者の就労支援やレスパイトのために、地域のニーズと事業者が提供可能なサービスの折り合いをうまくつけていくサービスとして日中一次支援事業は利用されました。この日中一時支援は今でも利用されますが、児童の場合は、結局放デイの支援量が足りない分を日中一次支援で補完するという目的になってしまいます。

放課後等デイサービスは、基本的には以下のような視点でサービスを提供するよう、ガイドラインが設定されています。
1) 自立支援と日常生活の充実のための活動
2) 創作的活動・作業活動
3) 地域交流の機会の提供
4) 余暇の提供
上記のような役割の中で、提供するサービスや各施設の特徴という視点から分類すると、大きくは次の3つのタイプがあります。どのようなタイプのサービスを提供するかは、サービスを提供する事業者によって異なります。
A) 学童保育にあたるようなサービスを提供するタイプ
B) 専門的な療育サービスを提供するタイプ
C) 習いごとのような感覚で利用できるタイプ
すてっぷは、概ねAとBの混合タイプです。

そもそも、日中一次支援事業は、障害のある方の保護者を中心としたご家族の方が、必要な休息が得られることを目的に、障害のある方の日中の活動の場を一時的に提供するサービスです。この背景としては、家族に必要な休息が得られない場合、家族の過負担によるさまざまな問題が発生する可能性があるからです。例えば成人しても日常サービスが休みの時は仕事のある家族も休息が必要です。そこで休日の日中等、家族の介護を任せてゆっくり休息や余暇が楽しめるように、あわせて障害のある方が休日を有意義に過ごせるように設定されたのがこのサービスやショートステイ事業です。ですから、サービスの内容は一律に定められているわけではなく、地域ごとの実態やニーズに合わせて設計されています。利用される場合にはその点も踏まえて、どのようなサービスが提供されているのかなど、きちんと確認することが重要になると言えるでしょう。そして、各事業者を統括する行政や自立支援協議会は、放デイに一律的な量的規制を加えると、結局はこのサービスに食い込んでしまい、本来のサービス目的による地域ニーズ開拓の障壁になってしまうことを考えてほしいと思います。

子どもからのDV

感情の問題や怒りのコントロールについてこれまで述べてきました。多くの読者の方は、これを自分の行動に当てはめて読まれていたかも知れません。この怒りのメカニズムは子どもの理解に役立て欲しいと思います。例えば、DV(家庭内暴力)です。発達凸凹の家族なら子どもが家で暴れたり、お互いを罵ったりして修羅場と化すことは少なくありません。子どもが暴言や暴力を暴発させた時は、子どもは怒りを暴力で発散したかったのではなく、コントロールできなくなった怒りを親に止めて欲しいのだと理解することが大事です。外でおとなしくて家族にだけ暴力を振るう子どもは暴力が悪いことだとわかっています。だから本当は暴力を振るいたくない。でもやってしまうことによる罪悪感に苦しんでいます。

暴力や破壊をいくら繰り返しても何かモヤモヤした感じが残ってスッキリしないのは、罪悪感から自己嫌悪に陥ってしまうからです。子どもの暴力をやめさせるために親がすべきことは、何をされても我慢して受け止めることではありません。暴力を振るう子どもが自分の感情をコントロールできずに苦しんでいることを理解しながら、コントロールできるようにサポートしていくことなのです。まずは、子どもが暴力行為をしてきたら、親が感じた気持ちを正直に伝えることです。

「痛い」「嫌」「悲しい」「つらい」といった暴力行為を受けることで感じたことを子どもに言うようにします。感情を伝えるのです。暴力を受けることで親が感じる痛みを子どもの心に届かせるイメージで、できる限り詳しく伝えてください。怒りを怒りで返すのは簡単です。怒り以外の表現があることを伝えることが重要なのです。

「暴力を振るう人間は最低だからやめなさい」などの常識論は逆効果になります。大声を出したときに「近所迷惑になるからやめなさい!」、物を壊したときに「もったいない!」といった理屈で説き伏せようとする対応は子どもの感情を逆撫でして余計に怒りを助長します。

子どもが家で暴れることにはそもそもの原因があります。しかし、親も子どももその原因から目を逸らしている状態であるため、親からして子どもがなぜこんなに暴れるのかわからないし、子どもからしても自分がなぜ暴れてしまうほどイライラするのかわからない状態になっています。そして、お互いがよくわからないまま表面化している暴力暴言だけに焦点をあてると解決できません。そこに至るまでの、親に悪気はないですが子どもにしてみれば不適切な接し方があり、子どもはそれに対する不適切な感情の抑圧、我慢があります。

カウンセラーや専門家など他者の力も借りて、少しずつ、目を逸らしてきた本当の問題に気付き、働きかけをしていくことによって解決することは可能です。暴力を周囲から受容されて育った子どもは自分の感情をうまくコントロールできず、人に表現することが難しい人になりやすいです。結果、自己中心的な考えに支配されることでストレスを抱えやすくなるため、依存症や対人恐怖症といった心の悩みを抱えてしまいます。

子どもの暴力がエスカレートしてきたり、怒っても聞かない、逆により暴力が過剰になるかもしれないと思うと恐くて何もいえなくなる気持ちはわかります。「もう無理だ」と投げ出したくなるときもあると思います。感情をコントロールできず苦しんでいると理解すれば冷静に向き合うことは可能です。そして、一人で悩まないで他人の力も借りましょう。他人に相談しても、最後は親子でしか解決できない問題だという腹さえくくれれば、他人への相談は少し楽になるはずです。

自分の気持ちや感情の認知

ASDなどの発達障害の人が、相手の気持ちや感情を理解することができない特徴はよく知られていますが、中には自分の気持ちや感情を認知することが難しい場合もあります。子どもに学校の様子を聞いても「特に」「別に」といった返事しか返してくれなかったりするのは思春期の場合は面倒くさいからですが、ASDの人たちの場合は自分の思った気持ちや感情を理解することができないためかも知れません。自分の気持ちや感情が理解できない場合には、読書感想文などの宿題が出た際にも自分の感想が無いので感想文を書くことができなかったり、書いてもあらすじだけになってしまうということはよくあります。

発達障害の子も感情が全く理解できないわけではなく、なんとなく理解したりぼんやりと感じていることはあるにですが、感情がぼんやりとわかっても、自分が「怒っている」のか、「不安」なのか、「悲しい」のか、「怖い」のか、「悔しい」のかの違いがわからず、ただ単に不快な気持ちとなって溜まってしまうと、いろいろな問題に発展する可能性があります。

自分の感情を自覚するのが難しい状況は、感情は有るがそれがどのような状況なのかを自分で理解することができないのです。ストレスを感じても気がつかなかったり、気づくまでに時間がかかってしまう為、ストレスなどが原因で発生する様々な心身症を発症しやすかったり、心身症になった際にも治るまで時間がかかってしまいます。発達障害の子どもが自分の気持ちや感情を理解するのが難しいのには、自分の行動として「楽しい」「怒る」「悲しい」などは有っても、それぞれ別の感情であったり、意味を持った気持ちだということを認識しておらず、基本的な喜怒哀楽を理解していないということも有ります。感覚が鈍感だと、外部から受けた情報を感じるのが鈍くなってしまうため、結果として感情の理解などにも影響が出るのだと言いう人もいます。

自分の気持ちや感情は、対人関係やコミュニケーションなどの社会経験から学ぶことも多いです。発達障害の子どもはコミュニケーションを初めとした様々な社会経験が少ないため、自分の気持ちや感情を意識する機会が少ないことも考えられます。不安や怒りなどの負の感情をモヤモヤと感じていても、当初は本人も気がつかなかったりあまり気にしないこともあります。しかし、何かのタイミングで自分の感情に気がつくと急に癇癪(かんしゃく)を起こしたように怒り出したり、溜まってしまった気持ちを受け止めきれずにパニックになることもあります。これらの場合は原因となった事が発生した後に自分の感情に気づくため、今現在ではない事に対して怒ったり、場合によってはフラッシュバックを引き起こします。フラッシュバックについては前回(8/23)に書きました。

発達障害の人は相手の気持ちを感じ取ることや、相手の思っている状況を理解することが苦手です。これは相手のとの会話の内容や、表情、仕草などから相手の気持ちを理解することが難しい場合と、自分の感情がわからないため相手の気持ちに共感することができないということが考えられます。悲しい気持ちを共感しなければならない場面でも、自分の悲しい気持ちがわからずに、状況にそぐわない言葉や仕草をしてしまいトラブルにつながってしまう事もあります。自分の感情や気持ちを感じ取ることができないと、相手や状況の共感を得ることが難しく、場にあった会話や表情などの行動をとることができなくなります。自分の気持ちや感想を聞かれた場合にも、『わからない』『特にない』といった答えになってしまい、会話が続かなくなってしまいます。本人は自分の感情が理解できないことから真面目に、『わからない』『特にない』と答えていても、周囲からはふざけているととられてしまう事もあります。

感情を感じることが難しいため、苦しい時や辛い場面でも無表情や笑顔を浮かべていたり、逆に楽しい場面でも真面目な顔やしかめっ面をしてしまうこともあります。気持ちと表情が一致しないと円滑なコミュニケーションをとるのが難しくなったり、本人の調子が悪いときでも周囲の人が気づいてあげることができなくなる場合もあります。自分の気持ちが自覚できないために、不安や苦しみなどの感情が分からず心身が悲鳴を上げていてもキャッチできないことがあります。本来ならば休息すべき部分でも休むことをしないため、結果として疲労などから体を壊してしまうこともあります。また、体を壊すだけでなく、各種心身症(ストレスなどから体に影響が現れる病気)や、二次障害としてうつ病など精神面の病気につながることもあります。なお、感覚鈍磨(感覚の受け取りが極度に鈍い状態)の特徴を持っていると、体の痛みや疲れ、暑さや寒さなどの感覚を正確に受け取ることができないため、より注意が必要です。

自分の気持ちや感情がわからない子には、周囲の人がその子の気持ちを代弁し、一緒に確認して感情認知の機会を作ります。例えば、怒っている時には「~で怒っているんだね」、楽しい時には「~は楽しいね」など話しかけて、子どもに気持ちや感情を意識できるように促します。大人と一緒にそのときの気持ちを確認することで、徐々に自分の気持ちや感情の存在に気づいていきます。ロールプレイで様々な場面を設定し、「こんな場合にどう思うか?」と、子どもと学習する方法もあります。自分の気持ちや感情を意識して表出し、周囲の人も原因の是非はともかく、感情に気づいてもらえるようになれば、ストレスでのイライラやパニックなどを起こす事はとても少なくなります。

始業式と子どもの自殺

不登校や引きこもりなどの情報交換や交流などを目的とした『不登校新聞』の石井志昴編集長は、子どもたちのギリギリの状況を「宿題ができていない、体調不良などは赤信号。1学期に不登校ぎみだったら、最後のSOSだと思ってください」と言います。自殺の原因や理由はさまざまだが18歳以下の自殺者数は年間約300人~400人のあいだでほぼ横ばいです。対策するものの減らないといいます。「いじめはどこの学校でも起きています。早期発見、早期予防が肝心です。しかし、今でも学校は、いじめを認識したがらない。教育現場はいじめがあればしっかり認め、いじめへの感度を高めるための努力をしていく必要があります(文科省担当者)」と教育現場の鈍感さに注文をつけます。

「男子は暴力系、女子はコミュニケーション系のいじめ。しかし大人からそれは見えません。子どもたちは隠します。いじめられている子も、苦しさを見せません」(石井編集長)。生徒たちの状況をいじめと先生が認識していない場合もあります。当該の生徒はいじめられて嫌な思いをしているかもしれませんが、大人はそれに気づけない。ふざけているだけなどと、いじめにカウントしないこともあるのです。新学期を迎えすでに東京で中学生の飛び降りと首吊り自殺事件が報道されました。「学校は命をかけてまで行くところじゃない」という石井編集長の言葉をかみしめたいです。みんな違ってみんないいのですから。

 

自分の内面と向き合えばプラス感情は生成される

ずっと周りへの不満をぼやき続けたり、自分は不幸だとか、ツイてないなという感情を吐き散らしているのは、無駄だなぁと思いつつも、手放せないことが多いです。エイブラハムの感情の22段階を示してみました。上の方の感情でいることが常態になると、瞬間的に嫌な気分があっても戻しやすくなります。マイナス感情を否定したり、蓋をしたりするのではなく、「許せん!」って思ってるなと感じて、この表を想起すると気分を変えやすいのです。マイナス感情を外して、自分が喜ぶことを考え、ワクワクすることに時間を割くモードに入りやすいのです。

言葉も大事です。嫌な言葉を吐いている自分に敏感になって、「ありがとう!」「嬉しい!」を多用します。好きなことに没頭すること、ワクワクに従い、心地よくをいつも選んでいくとトップ感情に近づいていきます。つまり、上に行くほど自分の内側に向きあっていて、下に行くほど、自分の外側に意識があることがわかります。

 

怒りのピークは6秒間

さて今回は怒りの予防策と持続可能性について考えます。怒りのコントロールは、アンガーマネジメントの名前で知られています。その名の通り「怒りと上手に付き合う」方法。自分や他人の怒りに振り回されず、怒りを上手にコントロールすることで快適な生活を手に入れようという方法です。怒らないことを目指す精神修行ではありません。知識と技術を使って「怒り」を取り扱う技術のことです。根拠やデータは不明ですが、人は怒りを上手にコントロールできると、年収が約2倍になり、平均寿命が7年長くなるという話もあるそうです。

怒りと上手に付き合うには、なぜその感情が生まれるのか、その原因を知ることも大切です。
・怒りというのは、何らかの要望を表現するための表現方法の一つであり、それによって何か物事を動かそうとします。ベストセラー「嫌われる勇気」の中では「人は怒りを捏造する」項で、「怒りとは出し入れ可能な道具であり、この母親は怒りを抑えきれずに怒鳴っているのではなく、ただ大声で娘を威圧するため、それによって自分の主張を押し通すために怒りの感情を使っているのです。」とあり、怒りは道具として使われるわけです。
・「怒り」は「二次感情」だと言われています。つまり、最初に「苛立ち」「恐怖」「不安」「恐れ」「寂しさ」といった一次感情が存在し、それが怒りという表現として噴出しているわけです。怒りの裏側には「わかってもらいたい」一次感情が隠れているということです。
・人間は怒りに対して怒りで反応し伝染します。怒りを内面に鬱積させている人と接していて胸がザワザワします。怒りを抱えている人は、周囲の人の潜在的な怒りも目覚めさせてしまいます。また、身近な人に対してはより強くなってしまう性質もあります。

アンガーマネジメントでは、衝動・思考・行動という観点から「怒り」にアプローチします。 第1は、6秒我慢することです。怒りのピークは6秒間だといいます。そのため、この6秒間怒りを抑えることができれば、怒りに任せた衝動的な行動を抑えることができます。前回、怒りの感情は抑えないほうが良いと書きましたが、これは一人になった部屋で感情は抑えなくてよいと説明しています。関連させて言うと、この絶頂期の6秒間を乗り切って一人になる判断をすればいいというわけです。

第2は、不要な『べき』は捨てることです。怒りは、自分が信じている「こうあるべき」という価値観が破られた時に生まれます。自分にはどんな「こうすべき」「こうあるべき」が存在しているかを知っておくとが役に立ちます。自分はどんなポイントに反応しやすいのか、自分はどこまでならOKで、どこからがNGなのか、境界線を理解しておくことも役に立ちます。イライラしてしまう場面があったら、自分の中の境界線を洗い出してみましょう。例えば、約束時間に関して5分前には絶対に来る「べき」か、5分以内の遅刻なら許せるか、 連絡があればば30分遅刻しても許せるか、など人によって様々な基準があります。自分の中に『~すべき』が多く、強いほど、怒りが生まれやすいので、不要な『べき』は捨て、「まぁ、いいかぁ」という許容範囲を広げていくのです。許容範囲が広がると、怒りやイライラは軽減します。 どうしても譲れない『べき』は、適切な表現で相手に伝えれば良いのです。いきなり怒って伝えては、今度は相手が「こんな事で怒る『べき』じゃない」という相手の『べき』を呼び出して修羅場になってしまいます。

第3は、自分の怒りによって変えられることと、変えられないことがあることを理解しておくことも大切です。例えば、「せっかくの休みなのになんで今日に限って雨なの」とイライラしても天気は変えることができません。どうにもならないことに対してイライラしたり、思い悩んだりすることは、不要なストレスを抱え込むだけです。自分にコントロール不可能なことは「まぁしょうがないよね」と割り切って自分ができることに集中すればよいのです。意外と理解されていないのは人の価値観は変えられないということです。別の人間なのですから、ほとんど自然現象と同じだと割り切っていた方がよいのです。ただし、行動は変えることができます。これは応用行動分析の掲示板に述べています。人は自分の利益で動くのです。嫌な事(被怒り行動)でも動かせますが、これはこちらが怒り続ける必要があり持続可能とは言い難いものです。

怒りのピークは6秒間。『べき』のストライクゾーンを広げる。人の価値観は自然現象(雨が降るように風が吹くように)と同じものと考える。これなら様々な場所で応用でき持続可能な方略とできるかもしれません。

怒りのコントロールには運動を

怒りを鎮めるにはには運動が即効薬です。運動不足は怒りを誘発しやすくなります。怒りの感情が生じたときは、身体を使った運動をしましょう。スピードウォーキングが最近流行しています。スピードウォーキングとは、早足散歩です。運動系と呼吸系を合わせたエクササイズです。運動するとエンドルフィンが生成されます。いわゆるランナーズハイです。エンドルフィンはゆったりした気持ちよさを誘い幸せ感を高めます。呼吸するとセロトニンが分泌されます。セロトニンは穏やかな気持ちを作ります。うつ病はセロトニンの不足が原因の一つです。ネガティブ感情を理屈抜きで解消する効果的なエクササイズですので、ぜひ取り入れてみてください。自宅の近くの公園まで早足散歩する、コンビニまで早足散歩する、いろいろなところで活用できると思います。明日は怒りのコントロールの方略を考えます。

怒りのコントロール2

怒りのコントロールのNGの一番は、怒りをぶつけて怒鳴り散らすことです。怒りを爆発させたり、怒りで自らの要求を押し通したりする様子を子どもが見れば、「ああやって怒鳴り散らせば、すっきりするし、人を動かすこともできるんだ」と学習してしまいます。また、怒りをぶつけた相手は応戦するかスルーするかのどちらかです。つまり、解決はしません。解決は冷静な合意の中にしかないからです。NG2番目はその場しのぎです。その場で問題を解決しようとすることです。怒りを感じたとき、私たちは思った以上に頭が働きません。人によっては、相手の言ったことが聞こえなくなったり、論理的な思考ができません。そんなときに問題を解決しようとしても、逆効果です。親がイライラする様子をみた子どもは萎縮するだけでなく、イライラしたときに、より弱い相手にイライラを発散させる事を学ぶのです。その場だけで解決するのは限界とリスクを伴う可能性があります。NGの3番目は、「怒りを抑え、我慢しよう」と思うことです。ところが、抑圧した怒りほど、他人からは恐ろしく見えるものです。忍耐にはいつか限界がきます。忍耐、我慢だけではひずみが生じるのです。

コントロールの第一は、とにかくその場を離れて感情の爆発を避けることです。子どもに怒りの爆発の火の粉を浴びせないことが大切です。一刻も早くその場から立ち去ることが大事です。ひとりになれる場所へ行くのです。「逃げている」とか「相手を取り残している」と考える方は、怒りを爆発させた結果と比べたらまだましな選択と考えるのです。ひとりになれる場所では、思いきり怒りを感じましょう。「もーー!なんで忙しい時に!何回同じことを!」と十分に怒りを感じましょう。「これくらいでイライラしてはいけない」等と感情に蓋をせずあるがままにします。いったん怒りを感じきれば、対人関係でのしこりや、怒りを抑えすぎたことで出るストレス症状の予防にもつながります。

十分に怒りを感じきると、やがて怒りはおさまっていきます。「どうすれば、あんなことにならないか」という再発予防を支援者や関係者と話し合います。犯人探しをするような後ろ向きな考えではなく、前向きに計画を立てます。怒りの問題を抱えている人の中には、「蒸し返したくない」と振り返りを避ける人もいますが、どうすれば同じことを繰り返さないか対策を立てておくことが、イライラの一番の予防です。それでは、どうやって再発予防計画を立て持続さればいいのか、次回は考えていきたいと思います。

怒りのコントロール

発達障害の方で、家の中で怒りを抱えているという人は意外と多くいます。今回は、家庭内での「怒りの爆発」を考えます。些細なことでも怒ってしまうという悩みは、ADHD(注意欠陥・多動性障害)の人には、非常に多いです。中でも、子どもについ言い過ぎてしまうとか、パートナーに感情を爆発させてしまうといった家族に対する怒りの問題は少なくありません。おそらく、近所の人や仕事上の付き合いのように、短時間我慢すればなんとかなる関係ならば問題にならないのですが、家族のように長期間一緒にいる関係では、取り繕いにくく、コントロールできない自分が出てしまうからです。

「怒り」の問題は、ADHDの症状のひとつである「衝動性」にかかわるものです。具体的な行動としては、・思ったことをすぐに言動にうつす・人の会話を遮って自分の話をしてしまう・相手が別のことに集中しているのに遮って自分の要求をしてしまう・衝動買いをしてしまう等、があります。やりたいことを用意周到に計画して実現するという場合には、エネルギーはなだらかに上昇します。しかし、ぱっ、と思いついて行動するADHDの場合には、エネルギー放出は爆発的です。感情の動きもまた同じです。瞬間湯沸かし器のように、怒りが一瞬で上がって爆発する方も少なくありません。このような怒りの問題を持っていると、まず人間関係が破綻しやすいです。怒りの問題を抱えている人は、その場では自分の主張を通すことができるかもしれませんが、長期的にみれば、冷遇されている人が多いです。誰だって、イライラした人、キレる人のそばにいたいと思わないからです。

さらに、問題となるのは、怒りの爆発を繰り返すことで、自己嫌悪に陥って、自暴自棄になっていくことです。多くの人は「自分自身を直視すること」が苦手です。自分のことを考える事は同時に感情のコントロールを必要とします。冷静になって自分を直視しようと口では簡単にいえますが、それができれば苦労はないのです。冷静が維持できなければ、考えれば考えるほど感情の渦に巻き込まれ、途方もなく消耗していくのです。人はこうした自分から目をそらすために、ウソをついたり、理屈を並べてごまかしたり、派手な突拍子もない行動で気を引いたりします。暴言も暴力も、感情がコントロールできない結果の行動といえます。ではどうすればいいかを明日から考えていきます。

障害告知のタイミング

当事業所では子どもへの障害の告知は必要だと考えています。ただ、発達障害のことを本人にどう伝えるかは、子どもの年齢や障害の特性によって大きく変わるため、一概に言えません。でも、決して隠すものではありません。特に発達障害は目には見えませんから子どもの理解がまちまちになります。だからこそ正確に伝える必要があります。

先日、子ども達だけで話していました。「俺はADHDやから失敗しても仕方がない」と言うA君を、「それはちゃうやろ。努力は必要やろ」とB君が諭します。「俺も障害があるからここにきている」。C君が「え?B君も障害あるの?」と言うと、「ここに来ている子はみんな障害があるよ、君も障害があるよ」とB君。C君「え?俺障害あるの?」A・B君「当たり前やん」

このように、会話の出来る子どもは、子ども同士で憶測も含めて話していますし、インターネットでも簡単に検索できます。親や関係者がいくら最適期をと、善意から「今は伝えない」という選択をしていても、関係機関を利用する限り知らないままで過ごすことはありません。そういう意味では通級指導教室や放デイなどの特別支援関係機関を利用するときが告知のスタートラインかもしれません。

障害告知の時期は自己客観視ができる7歳以降にという専門家もいますが、自己客観視や自己フィードバックが難しいのが発達障害の特徴であることも少なくありません。客観視の力ができるまで待っていると思春期に入ってしまう人もいるので一律に年齢ではいえません。小さな時期から、みんなちがうのが当たり前で、全て一緒である必要はないこと。助けを求めるのは良いこと。支援者と一緒に工夫することが大事だと伝えていく必要があります。ただ、受け止め方がダイレクトな子どもも少なくないので、ゆたぽん君のように「学校がいやならいかんでええ」という結論を持つ場合もあるかもしれません。論理の飛躍が生じてしまうのは、困ったことを抱えながらも支援された実体験がない子どもに多いように感じます。

逆に、告知をしてはいけないタイミングというのはあります。それは、子どもが失敗した時です。こうした状況で、例えば「そんな失敗をするのをADHDっていうのよ!」といったふうに、失敗と紐付けて障害を告知することは避けなければなりません。こう言われると、子どもは自身の発達障害を悪いもの、なくすべきものと受け取ってしまいます。障害をなくすことはできないので、お子さんは自分の中にずっと悪いものがあると思って生きていくことになりかねません。 

先のA君の発言「失敗しても仕方ない」はやや学習無力感も伴っているようです。眼鏡をかけたときの、「なんだ、みんなはこんなに良く見えていたのか」「これを近視(遠視・乱視)と言うのか」「だったら眼鏡を利用しよう」とするのと同じようなタイミングが発達障害の告知には重要です。子どもの気持ちが前向きになっているときに告知を行うと、本人も受け入れやすいと思います。

簡単なICFの説明

ICFとは、「International Classification of Functioning, Disability and Health」の略称で、日本語では「国際生活機能分類」といいます。ICFは、元々WHO(世界保健機関)で1980年に制定された「ICIDH(国際障害分類)」の改訂版で、人間の「生活機能」と「障害」に関する状況を把握することを目的とした分類です。これまでのICIDH(国際障害分類)は、身体機能の障害や生活機能(ADL・IADL)の障害、社会的不利を分類するという障害重視の考え方であったのに対し、ICFは環境因子や個人因子等の背景因子の視点を加えて、障害があっても「こうすれば出来る」というように生活すること・生きることの全体像を捉え、プラスの視点を持つように広い視点から総合的に理解することを目指しています。

意味わかりましたか?私は最初この文を読んだとき、とても日本語とは思えませんでした。専門家というのは日本語をかくも外国語のような言葉に変えてしまう人たちだと恨んだものです。簡単に言えばどうなるのでしょうか。

これまで障害者と言えば「できない人」という見方ばっかりしているから、あれができない、これができないとなり、「普通になるために」もっとがんばらなあかんという考え方に本人もなってしまうので、もっと前向きな考え方としてICFがでてきたのです。つまり、できることに着目して、できないことは環境や支援でカバーすればいい。できないのに普通にできるようになる努力は必要はない。支援者と一緒に工夫してそこそこできたらそれで良しとする、ということです。

これがICFの考え方です。視力が悪いのに眼鏡もなしに見る努力。聴力が悪いのに補聴器せずに音を聞く努力。歩けないのに車いすも使わず移動する努力。計算できないのに計算機も使わず計算練習する努力。書けないのにPC入力使わずに文字を書く努力。読めないのに音声教科書を使わずに読もうとする努力。こういう努力は、さっぱり成果が出ないから意味がないのです。本人のプライドが育たないばかりか学習無力感を与えて人の言いなりになる人生を用意しているに等しいからやめます。そして、眼鏡最高!補聴器最高!電動車いす最高!電卓最高!PC入力上等!デイジー教科書待ってました!どんどん使いましょう、というのがICFの障害観です。

厚生省や文科省、福祉課や教育委員会がこんなふうに言ってくれたら、子どもたちに、「こんな苦労も、かけまいに」と寅さん(昭和の人しかわからない?)に唄いそうになります。始業式を迎え、一つでも多くの学校が、「そうは言っても、文字くらいかけないと」「ひっ算くらいはできないと」と言うのをやめて、苦手な事ばかり子どもにさせないで、いいところを応援してくれることを切に願います。

子どもユーチューバー

今や小学生の「将来なりたい職業ランキング」にもランクインするというYouTuber(ユーチューバー)。子どもたちにYouTubeが浸透しているということですが、どんな番組を見ているのかご存じですか。378名の小学生に実施したという「好きなユーチューバー」アンケートで2位と圧倒的な差をつけたのは、日本のトップユーチューバー、HIKAKINさんです。大人にも知名度は高いですが、子どもから絶大な人気を誇ります。アンケートでも「ユーチューバーのどこに面白さを感じているのか」という質問には、「リアクション・表情:44票 話す内容・話し方:17票 つっこみ:10票」という回答でした。要するに中身よりも人物重視ということでしょうか。それとも単なるパフォーマンスの面白さでしょうか。私たちが子どものころにはYouTubeなんてものはありませんでしたが、今の小学生たちには「YouTubeを観る」ということは、日常のひとコマなのでしょう。知らない人や知らないチャンネルも多いかと思いますが、だからこそ大人も観てみると意外と面白い発見があるかもしれません。

来週から始業式、youtube三昧の子どももようやく「一息つける?」節目ですから、うまく切り替えていけるように大人のサポートが必要です。始業式と言えば、不登校小学生youtuber「ゆたぽん」さんがメッセージを出していました。

https://www.youtube.com/watch?v=GembS1OhJsE

「夏休みが明けても死にたくなるくらいなら学校なんか行かなくていい!」それはそのとおりだけど、うーん。大人は悩んでしまいます。確かにゆたぽんさんの動画を見て「宿題も当番も当たり前だと思っていたけれど、ゆたぽん見ていると、自分はかなりがんばって生きているんだと認識できて良かった」という逆説的な感想も少なくないそうです。また、ゆたぽんさんとその保護者に対するネット叩きを見ていると、気に入らないものは何でもディスるというネット社会に嫌気がさします。

ちなみにyoutuberの収入は再生回数×約0.1円だそうです。ゆたぽんさんの「不登校は不幸じゃない!」の動画は200万回以上視聴されましたから、この動画1本で20万円以上の収入が見込まれます。(収入を得ているかどうかは知りません。)ネットで叩かれれば叩かれるほど視聴数が上がっていくのは、N国の党首の動画とよく似ています。ただ、そんなセンセーショナルなテーマでなくても、おもちゃの遊び方を、子どもの顔出しなしで演出する2017年度の年収が約2,200万円の70cleamさんの

https://www.youtube.com/user/70cleam

動画なんかは親のアイデアとはいえ、目の付け所のセンスになるほどなぁと思わされます。みなさんはどう思われますか。

フラッシュバック

フラッシュバック (flashback) とは、強いトラウマ体験(心的外傷)を受けた場合に、後になってその記憶が、突然、そして非常に鮮明に思い出されたり、同様に夢に見たりする現象です。突然怖い目にあった時の心的外傷後ストレス障害(PTSD)や急性ストレス障害の特徴的な症状のうちの1つです。これは単に嫌な事を思い出すというレベルの現象ではなく治療の対象といわれています。

フラッシュバックという用語は過去に起こった事で、その記憶が無意識に思い出されて、それが現実に起こっているかのような感覚が非常に激しいときに特に使われます。フラッシュバックが起きた場合には、必ずしも映像や音が存在する記憶とは限らず、「恐怖」などといった感情や味覚、痛覚など、感覚の衝撃として発生することもあります。

フラッシュバックは、幼児期に経験した外傷体験を言語的に認識する能力を持たないまま記憶し、それでもなお忘れられない場合にも起こります。この、体験を取り込むことに失敗する現象のことを解離といいます。この記憶はまともに意識に上らないため、時間が経っても薄れません。また、フラッシュバック性の記憶はその鮮明さにも関わらず言葉で表現することが困難です。さらに時間とともに原記憶よりも鮮明さは増す傾向が強いのです。

幼年期のトラウマの体験者は、これらの感情の記憶を意識化しないまま持っている可能性もあり、そしてフラッシュバックにおいてそれらを再経験する可能性があります。ASDの方達の中にも対人関係理解の混乱時の苦痛の思い出が、その後フラッシュバックを引き起こす原因になることがあります。このフラッシュバックの治療は、行動療法の脱感作療法や認知行動療法がありますがいずれも言葉理解や表出が必要なので、言語表出レベルが低い方には大変難しいです。当時の恐怖のきっかけになるようなことを避ける予防策を取りながら、EMDRなどの新しい脱感作療法を行うことが必要と言われています。

フラッシュバックは、現在の本人の関係者が努力をしていないからでも、楽しいことが少ないから生じるものでもありません。何かのきっかけで電子レンジで解凍されるように生じる精神医学的な現象として捉える必要があります。被虐待の経験者に多いことからもわかるように、ASDへの特性を無視した対応は、虐待と同じPTSDの原因になる可能性があることを理解することが彼らのフラッシュバックを予防していくことにつながると思います。

サービス支給量

支給量とは、福祉サービスを利用できる日数や時間数のことです。児童デイサービスの場合、「支給量」とは、ひと月に利用することができる日数です。支給量については、子どもの特徴や保護者のニーズ等に合わせて、自治体が決定します。この上限基準は厚労省が決めます。ところが、自治体によってこの基準が異なることがあります。事業所が少ないとかいろいろ理由はあるでしょうが法の下の平等、つまり人権の問題があります。

 相談支援を利用されている方の支給量については、相談支援事業者が自治体に提出した「サービス等利用計画案」に基づいて、支給量が決定されます。上限を超えた支給量を受ける場合は、相談支援事業所が自治体と保護者の間に入り、支給量変更の申請を行います。障がいの状況や家族の状況等によって上限を超えた支給量を受けることが必要と認められると、上限を超えた支給量を受けることが可能になります。

 自治体とは市町のことですが、大抵は保健所管轄範囲、乙訓なら向日市長岡京市大山崎町で基準を申し合わせているので同じ基準です。ただ、障害の種類も程度も多様、家庭事情も多様なものに基準を設けても意味がないのです。この基準はあくまでも公的な財政上の予算を明確にするために利用者数で割り算した数値です。

この数値の中には多様な事情は入っていません。たったそれだけのものなのに、この数値に意味を付け足す相談支援者がいます。親が楽をしてしまう。子どもが普通に育たない。親が働いているなら足りないところは学童保育を利用すればいい。こんな乱暴な話はありません。そんな考えで相談事業料や給料を、税金からもらっているのです。

平成の福祉の基礎構造改革の最も重要な点は障害者とその家族に措置や施すという考えは間違いで、サービス側と対等平等だから契約に変えたということです。今、NHKの連ドラは保育所制度が始まった昭和の中頃、家で子育てするのが当たり前という行政窓口の意見に母親が苦悩するところを描いています。同じことばが令和の障害者の親に向けられているのです。こうした化石のような話が未だにあることは残念ですが、契約制度はこうしたサービス事業者を変えられるようになったことです。利用について疑問を持たれたら是非事業者を変えてご相談になることをお勧めします。

 

職業準備性ピラミッド

職業準備性ピラミッドとは、下図の通り、働く為に必要な項目がピラミッド型に配置されているものです。

就職活動をする際に、その職業でのスキルの内容、つまりパソコンができるとか計算ができるとか、設計図が読める等仕事の内容が注目されがちです。このピラミッドで言う一番上の「職業適性」の部分です。

しかし、職業適性は障害があろうがなかろうが、一番大事なことではありません。「自分探し」は大事ですが、それは職業適性だけを探すものではありません。実は、このピラミッドの土台、「健康管理・障害の理解」であったり、「日常生活管理・基本的な生活のリズム」がしっかりしていなければ、働く事だけでなく、就職活動もできません。まずはしっかりした土台があって、長く、活き活きと働ける基礎的な力が必要だと言うことです。

土台の中でも大切なのが、その土台に書かれている「~~管理」という「管理」という言葉です。例えば最下段の「健康管理・障害の理解」ですが、人は心と体が健康な時ばかりではありません。特に凸凹の能力特性を持つ方は、就業での対人ストレス等も加わり不調になることも少なくありません。不調であっても自分なりの対処方法を持ち、キーパーソンに相談をしながら働けることが大事だと思います。そのうえで、自分で心身の健康をどのように管理して長くその職場に貢献できるかを考え、安定した就労が持続できるように工夫することが大切です。

「仕事内容は会社で教えられるが、働く基礎である社会性や自己管理を会社で教えることは難しい」と少なくない経営者が言われます。もちろん、できることやできないことには人によって様々ですから、苦手なことは支援を要請したり、強みを活かしながら弱みをカバーすることはできます。ここで言いたいのは、ピラミッドの基礎部分は家庭や学校・地域生活で子ども時代から長い時間をかけて身につけて行くもので、短期間で身につくものではないということです。さらに、その基礎の基礎、働く意欲は遊びや好きなことを続ける経験や、失敗してもあきらめず励まされ支援され立ち直る経験の蓄積から育つものだと思うのです。

 

 

 

DNAスイッチが運命を変える

NHKスペシャルでDNAスイッチをON、OFF することでその人の体質や能力を変化させることが可能となってきていることが放送されていました。生活習慣病の代表「糖尿病」や「がん」の発症に関わるDNAスイッチの情報なども解明されつつあります。また、今後はDNAスイッチを自在にコントロールすることが実現するかもしれないと言われています。

番組では、340日間宇宙ステーションにいた人のDNAスイッチを調べると、宇宙での極限状態に耐えられるように様々なDNAスイッチが変化していたとのことを取り上げていました。人間は環境によって自動的にDNAレベルで環境に適応する体に変化するというのです。また、病気の耐性に対しては、現在いくつかのガンについて薬でDNAスイッチを”耐性有り”に切り替えることが可能になりつつあり、臨床試験を行っています。

音楽能力では、いろいろな音楽を聞き続けるとDNAスイッチが入り、音色など聞き分けられる能力が向上することが解明されつつあるそうです。ということは自分の能力を向上させるには向上させたい能力に関係することを継続的に続けると向上する可能性を示唆しているのです。ちなみに人間のDNAスイッチは2%程度しか使われていないのですから、人間はまだまだ使っていない能力があるということです。

今まで精子のDNAスイッチはリセットされた状態だと考えられていたのですが、最新の研究では親のDNAスイッチの状態を引き継ぐことがわかりました。マウスを使った研究で、肥満に関するDNAスイッチを調べた結果、肥満だったマウスの子どもと孫は少量のエサでも肥満になったそうです。つまり肥満に関するDNAスイッチが子ども、孫と引き継がれ、太りやすい体質になっていることわかったそうです。そこで、太った人がトレーニングして一時的に痩せたときに肥満に関するDNAスイッチをOFFにし、子供へ肥満に関するDNAスイッチを遺伝させない取り組みも始まっています。ただ、卵子の場合は、妊娠中にダイエット等するとDNAスイッチに悪影響があるそうです。

これまで、遺伝には逆らえない、子々孫々と祖先からの遺伝は運命として引き受けるしかないという考えがありましたが、これは人間の努力や環境の影響を含めて子孫が引き受けると、訂正する必要があります。そして、人は努力する環境にあって、適切な行動をすれば自らの才能のスイッチや病気から身を守るDNAスイッチが入るという科学的根拠があることを私たちは知る必要があります。

お客様相談センター

朝、事業所のPCスイッチを入れるとLAN回線が不通。電話も不通。ONU(光回線終端装置)のエラーかと再起動させても回復しないので、もしや断線?と光ケーブルをたどると、コネクターの根元で断線していました。光ケーブルの終端処理をした接続は専用器具が必要で素人に修理はできません。ONUより外側は通信業者しか修理できないと法律にあるそうで、なんか既得権限をうっすら感じますが、その関係で工具すら販売していないので仕方がありません。

しかたがないので、お客様相談室へ電話。案の定、待たされること1時間。「ただいま大変ご相談が込み合っており・・・。」「込み合ってないお客様相談室ってあるんかーい」と自動アナウンスに突っ込み入れながら待ちました。修理は明日とのこと。すてっぷは通信手段が絶たれても子どもがyoutubeにつながらないと不満を言うくらいで、個人携帯でなんとかなります。でも、最近はネットをフルに使っている大型事業所もあります。例えば毎日の日誌はすべてメール転送、希望日申し込みもネットサービス、お迎え時間も配車も職員動静シフトもネット連絡で運営しているのです。そんなところは臨時対応が超大変です。お客様相談室につながるまで電話をかけ続け、うまくつながっても修理は後日です。事務方の悲鳴が聞こえてきそうです。

善意に判断すれば、どこも人手不足なのですぐには電話に出られない、すぐには対応できないとも考えられます。でも、ネット販売なんかの電話って大抵すぐにつながります。時は金なり。それだけ人員を割いている証拠です。儲けにならないトラブルやクレーム部門は人手を減らすということでしょう。ただ、通信業者は法改正で雨後の筍のように参入してきています。これまでの電気通信法の既得権限の上にあぐらをかいていた事業者も競争に取り込まれます。顧客のアフターサービスに不満を持たせるとすぐに客は奪われます。そう思いながら、新たな通信業者の検索をしようとしたら、あーネットが切れているのでした。トホホ。

 

同窓会プランナー

この季節、実家に帰る方も多いので同窓会に参加される方も少なくないようです。最も企画が多いのは高校卒業時の同窓会のようですが、公立高校の1学年は平均的には200人程ですが、一昔前の1学年は500人程でした。ここに目をつけたのが同窓会プランナー会社です。同窓会の参加率は幹事の数にもよりますが、20名ほどの幹事がいれば3割は参加するそうです。これをホテルやレストランで1万円程の会費で同窓会SNSの設定から会場選び参加状送り、同窓会内容のプランニングまで4か月かけて全部込々でやってくれる会社がでてきました。会費1万ほどで儲かるのか?と思いますが、宣伝としての企業スポンサーを同窓会毎につけてこの企業からの宣伝費も入って来るので十分成り立つそうです。

簡単に言えば同窓会幹事代行屋さんなのですが、ここに独自の会員だけのSNSを組み合わせることによってスポンサーをつけられることに着目したところが秀逸なのです。同窓会幹事と言えどもほとんどの方が仕事を持ち、年々仕事が忙しくなるのが普通です。知り合いだけならまだしも、大コミュニティーの格式ばったお世話は年齢が増せば増すほど面倒になってきます。しかも代行料は参加費にわずかにつけるだけで済むのならお願いしようと思う方は多いと思います。

こんな仕事を思いついた人。大学時代はイベント屋さん、いわゆるパリピの仕掛け屋さんです。それを生業にしてしまったのです。成功のアイデアは自分の強みから生み出すものという法則を地で行っている方たちなのです。強みを生かすことは社会のあちこちに転がっているものなんだと感心してしまいます。

高校野球

京都代表の立命館高校は2回戦で惜敗しました。でも京アニ「響け!ユーフォニアム」応援歌が演奏できて良かったです。

今も甲子園では灼熱の中激闘が繰り広げられていますが、文字通り灼熱の中の試合も何とかしてほしいですが、投手の肩の酷使は早く解決してあげて欲しいものです。一部の大人の利益のために、高校球児の才能を断ち切ってしまう可能性のある大会制度をいつまでも続けるのでしょう。殺人的な酷暑だとニュースでは警告しながら、同じチャンネルで甲子園を放映するテレビ局の葛藤は全く見えません。

大会前の高野連の発表では、投球数について、一定期間での総投球数に制限をかけるとの方向性を「これから議論する」そうです。なんで大会までに結論を出さないのかと本当にじれったいですが、とにかく一定の制限は来春からは、やっとできそうです。しかし、まだ酷暑下でのゲーム回避の問題は解決していません。甲子園のドーム化検討も一時はあったのですが、結局は甲子園球場の伝統と金銭の問題が入り混じって実現せずでした。みなさんはどうお考えでしょうか?

 

新型出生前診断

妊婦の血液を元に、ダウン症など赤ちゃんの染色体に変化があるか調べる新型出生前診断(NIPT)について、厚生労働省が国内の実態調査を始めます。2013年医学会などの5団体が施設認定に厳しい条件を付けることで了承し、臨床研究が始まり、これまでに約6万5千件が実施されました。しかし、認定を受けずに検査する民間クリニックもあるので正確な件数や実態は掌握できず、妊婦へのカウンセリング不足などが問題になっています。

厚労省は各地の衛生検査所を調査し、認定外の施設を含めた検査の件数を調べることにしています。また、実際にカウンセリングの状況や検査費用なども調査します。調査結果は今年中に検討会で報告して、検査する施設の要件などの今後の医療施策に生かされるといいます。

2011年に米国で始まった新型出生前診断は、採血だけですみ、しかも感度が約99%と高く、検査が受けられる時期も長いのが特徴です。妊婦の血液にわずかに含まれる胎児由来のDNAを分析します。採血だけでできるので、専門知識が十分にない医療機関でも検査できる反面、十分な遺伝カウンセリングなどが伴わないと混乱が生じるとして、遺伝に詳しい常勤医がいるなどの条件を満たす医療機関を認定し、臨床研究として実施してきました。対象を原則として35歳以上の妊婦に限り、調べる疾患も13トリソミーや18トリソミー、21トリソミー(ダウン症)の染色体異常に限定しました。

この日本産科婦人科学会の指針では法的拘束力が無く、現状では無認可施設で十分なカウンセリング無しに検査が行われるなどの問題が起きているといいます。今後は、医療機関に加えて検査会社も登録制にするなど、法的にも抜け道のない実施体制作りが必要だということで今回の厚労省の発表になりました。テクノロジーの進化を止めることはできません。大事なことは人権尊重のモラルに基づいた法制化と、社会の寛容さではないかという議論が進められています。

就労メニューとワークシステム

前回「すてっぷ日記」で就労メニューについてとりあげました。学童期の自立課題のワークシステムから積み上げていくものだという説明をしました。「一人で作業に取り組むなんてとてもとても」と思われるかもしれませんが、私たちはプットイン課題が自立的にできるなら何かの仕事が将来開発できると考えています。

プットイン課題とは、物を穴に入れる課題です。大きな入れ物に入れる素材の大きさに合わせた穴をあけて、右利きなら右からとって左の穴に入れるワークシステムです。ただ穴に入れるだけですが始めと終わりがはっきりしています。右のモノ(例えば小さなボール)がなくなったら作業終了です。この理解と動作ができれば、様々なものに発展していきます。量も多くできますし形も変えられます。色も変えられます。例えば三角の黄色の材料と四角の黒の材料を、空箱に三角の穴で黄色で囲った縁取りと、四角の穴で黒で囲った縁取りにします。最初は色は分からなくても同じ形の穴にしか入らないのでモノを選別する作業になります。やがて色に気が付けば、穴の形は変えずに色で選別するようになります。

このようにして14歳くらいまで様々に取り組んでいけば、何らかの選別作業を小一時間続けられるようになります。もちろん気が散りやすい方は、1分からはじめればいいし、5分課題に休憩つけてインターバルで10回やれば50分の作業になります。誰からも介入されずに自立して作業することが誇りになります。課題を終えてご苦労様と声を掛けられて達成感のない人はいません。就労メニューとそれに結び付くワークシステムについてご希望の方はスタッフまでご相談ください。

 

響け!ユーフォニアム

叶えたい事が 溢れてるから 立ち止まってる 暇なんてないよね 胸に秘めたあこがれを フルボリュームで届けよう 行こう…クレッシェンドの向こうへ つまずいてもいい はみだしてもいい 君の音色を 僕たちは待っている 響け! 生まれたての夢つめ込んで 大きな空へ いま旅立とう 拓け! 笑顔を味方につけて 離さない 諦めたくない 限界さえも 跳ね返す勇気で DREAM SOLISTER....

歌詞は、京アニ製作アニメ「響け!ユーフォニアム」の主題歌「DREAM SOLISTER」。

立命館宇治は、夏の高校野球京都府代表校です。同校の地元・宇治市に本社を置く京アニの第1スタジオ放火殺人事件を受け、同校ブラスバンド部はエールの意味も込めて「響け!ユーフォニアム」の主題歌「DREAM SOLISTER」を応援歌に決定しました。ただ、コンクールと初戦の日程が重なり、演奏には初戦突破が条件となっていました。立命館宇治(京都)は、1点を守りきり、春夏通じて甲子園初勝利。2回戦では京アニ作品「響け!ユーフォニアム」の主題歌を応援歌として演奏する予定です。

…離さない 諦めたくない 限界さえも 跳ね返す勇気で DREAM SOLISTER ひとつ ふたつと増えてゆく おいでよ ここまでおいで 楽しまなくちゃ まだまだフォルテシモ DREAM SOLISTER La La La La La 君の声 聴かせて欲しい La La La La La 終わらない音楽は 続いてゆく…

頑張れ京アニ!

帰省対策

お盆が近づきました。お盆にはいつも会えない、おじいちゃん・おばあちゃんに会いに田舎に帰省される方も多いと思います。ただ、帰省は発達に凸凹のある子どもたちにとってストレスフルな行事となる子もいます。移動に時間がかかり、体力を消耗する。いつも会わない人に何人も会う。いつもと違う環境での寝泊まり、飲食。団体行動を強制される行事(法事・お墓参り・おでかけなど)等「いつもと違う状況」では不安が高まりやすくなります。その結果、いつもできていることもできなくなってしまうかもしれません。

そんな時に、おじいちゃんやおばあちゃん、親戚から「〇年生なのにこんなこともできてないの」と怒られたり、マイナスな言葉をかけられたりする場合があるかもしれません。最終的には「しつけをちゃんとしてるの」と親もつらい思いをすることがあるかもしれません。まだまだ、「子どもができていないことは親のしつけが悪い」「できないことは叱って教えるものだ」というしつけの文化が根強く発達障害に適した子育ては理解されていません。

本来は、おじいちゃん・おばあちゃん、親戚に事情を話して理解してもらうのが子どもにとっては一番ベストですが、少なくとも保護者が相談しやすいキーパーソンを一人決めて事前に相談すればどうでしょうか。帰省する前に「叱ることで自信がなくなってしまう」「褒めることに力を入れたら素直になってきた」と伝えるのです。

帰省先は基本的に子どもにとってストレスになる場合が多いです。生活のリズムが崩れないように調整し、いつも以上に、当たり前にできていることに目を向けて、細かく褒めることが大切です。そうすると子どもの調子がいい状態が作りやすく、自分から良い行動をとろうとし怒られる場面が減るかもしれません。

一方で、実家の祖父母が穏やかで包容力のある方なら実家が大好きになる子どもも少なくありません。そういうケースでは、家庭でうまく取り組めなかった朝型の生活リズムへの修正や、静かなゆったりした田舎の環境で好きな活動をたくさんさせて、思う存分リフレッシュさせましょう。子どもの調子が自宅より良いなら実家に始業式前まで預かってもらうのも悪いことではありません。子どもが多様な人と穏やかに関わるのはとてもいいことです。リスクは早めに察知して対策を考え、メリットは積極的に生かして夏の後半を乗り切りましょう。

キャンプ

今夏は、経費削減でキャンプに出掛ける人が多いそうです。家族だけでなく空前のキャンプブームだそうです。『オートキャンプ白書』によると、2012年に720万人だった利用者は、2018年には850万人に増加し、6年連続して増えているそうです。野外キャンプを推進する団体が行った小学生対象の調査で「キャンプで一番楽しみにしていることは?」、1位は温泉。自由記述の「一番やりたいことは?」で最も多かったのは「ぼーっとしたい」でした。小学生が、中年サラリーマンのような回答で、みんなどんなキャンプだったのか、ちょっと気になります。

キャンプといえば、楽しくバーベキューをして、焚火の前で飲み食いしながらのおしゃべりが楽しいのですが、労せずその時間が待っているわけではありません。到着したら、まずはテント設営を家族全員で行い、タープ(日よけ雨よけ)を張り、子どもらと水汲み小枝集め、包丁を持つ子と、荷物やシュラフ(寝袋)のテント内整理の子に分かれるといった日常よりもすべき仕事、果たすべき役目がたくさんあります。これらを覚えさせ習得させるまで、ある程度時間がかかります。手伝っては虫を追いかけ、水を汲んでは川に石投げする子どもに、「大人ばっかり働いてるし、手伝わんならキャンプに連れてこんよ!」と叫んでいたりします。叱られた子は「もう、キャンプなんか嫌やし」とすね始めます。でも、うまく火が起こせたら「すごい!ありがとう!」と褒められ、水を運べば感謝されと、仕事を達成すれば何回でも褒められる環境なので子どもたちはまんざらでもありません。テントが設営された瞬間。タープが張れた瞬間。焚火に火が回り始めたとき。自分が切った具材の入った食事が出来上がったとき。子どもも大人も大きな達成感に包まれます。

たかが年に1、2回のキャンプかもしれませんが、子どもは野外活動で何かを獲得すると思います。最初は仕事の中身がわからなくてもめたりするけれど、最終的には自分から仕事を見つけて取り組みます。すべてが「内発的な動機づけ」です。内発的動機づけは、賞罰など外からの強制力に依存しない自発行動です。子どもが大好きな焚火。木を運んで、自分でくべて、乾燥しているものがよく燃えることを知って仲間に伝えていきます。何かを買ってあげるからというような「外発的動機づけ」で木を運んでいないから発見し伝えようとするのです。森の中の遊びなど、さまざまなところに自由があり、子どもは、自由を獲得してこそ、成長があります。

遊びに夢中になって雨に降られてびしょぬれになれば、次回は「風が出てきたら雨が降る」などと風や空の様子を感じながら遊ぶようになります。夕立がくれば、テーブルやいすをたたんでビニールシートをかける等、応急作業を家族や仲間と協力して迅速に行なえるようになります。昼食の枯れ枝を集めに行けば、たくさんある所見つけ夕食分もついでに拾う等、すべての体験が自分で考え判断する力や段取りする力につながります。ただし、最初からテントやコテージがあり道具もすべて整備された今流行の「グランピング」はここでいうキャンプではありません。不便さがあってこそ大事な宝物が獲得できるのです。それから、子どもが大きくなったら家族キャンプには誘いにくくなります。思春期は親は大抵うざい存在です。また友達同士で何かを成し遂げる価値を感じる時期です。家族でキャンプ、知り合い家族と合同キャンプは小さなうちの期間限定の値打ちがあると言えるかもしれません。

検査の読み方

検査を見る人は、まず全検査IQ(WISC)とか総合尺度(KABC)が100よりどれくらい離れているかを見ようとします。心理検査の多くは100を平均にとって偏差値で得点を表現します。受験で使う偏差値の平均は50です。50から多いほど難関校の合格レベルになっていきます。しかし、検査は受検ではありませんので、100より多い数字だから良いという事ではありません。この数値は10以上ある検査の平均値に過ぎないからです。発達障害の子どものように能力に激しい凸凹がある人の平均値はほとんど意味がないのです。

学力で考えてみましょう。国語が10点で数学が90点ならこの人の平均点は50点です。クラスの平均点はどちらも50点だとします。ではこの人の全体的な学力は50点でクラスの平均学力なのでしょうか?そういうより、国語が超苦手で数学がめっぽう強いといった方がこの人の実態を表します。学力対策も平均50点の国数の対策をするより数学はおいといて国語の対策を集中的にとるのが当たり前です。

検査の結果も同じことです。KABCでいう同時(見て処理)尺度が115で、継次(聞いて処理)尺度85で他の2尺度が100なら、平均値の認知尺度は100です。この100を見て認知の力は標準と見てはいけないのです。言葉で理解する力は平均より低く、理解の早い図や絵も用いて説明した方がよいということになります。IQ(全検査IQや認知総合尺度)だけみても凸凹発達の人には意味がないというのはこうした理由からです。

一般にIQが安定するのは9歳以降と言われ、心理検査は3年生以降でないと大きく変化することがあります。また、IQと学力も必ずしも一致しません。研究によると4割程度しか一致しないのです。つまり、教え方や環境、本人の素質でIQは伸びるという事です。ただし、その人に適した教え方をやめるとIQが元に戻るという研究もあるので、いかに環境が重要かわかります。

検査の細かなことは、検査をした方が丁寧に説明をしてくれます。しかし、大事なことは、大枠を理解することです。大枠とは平均点でしかないIQではありません。大枠とは凸凹のプロフィールが何を意味するか理解し、凸凹のプロフィールつまり得意な事や苦手なことを組みあわせた支援のイメージのことです。

K-ABCⅡ

WISC-Ⅳは、ウェクスラーという米国の心理学者が1949年に開発し改訂が繰り返されている知能検査の1つです。ウェクスラー式知能検査は世界でも広く使われている知能検査で、受ける人の年齢に合わせて、幼児用…WPPSI、児童用…WISC、成人用…WAISの3つがあります。ここでは対象年齢が学童期のWISCについて紹介します。定期的に改定されており、現在は第4版となるWISC-Ⅳが最新となっています。15の下位検査(基本検査:10、補助検査:5)で構成されており、10の基本検査を実施することで、5つの合成得点(全検査IQ、4つの指標得点)が算出されます。それらの合成得点から、子どもの知的発達の状況をさまざま方向から把握できます。4つの指標得点とは言語理解指標、知覚推理指標、ワーキングメモリー指標、処理速度指標の4つで、それぞれの指標が出るため、得意なこと、不得意なことの判断に役立ちます。

特に情報をどのように入力し、どのように表現するのが向いているかという判断は、勉強法を考えていく上で役立ちます。例えば、知覚推理が弱い子どもには、絵や図で伝えるより言葉にして論理的に伝えたほうが理解しやすいなど、対策を考えることができます。標準化された検査は、検査項目で3ポイント、指標ポイントで15点が「有意な差」(明らかに違いがある)ですから、個人の凸凹を判断するときにはこの開きを見ていきます。

本事業所で採用している検査の一つは、K-ABCⅡです。アメリカの心理学者カウフマン夫妻により(1983)作成されました。カウフマン夫妻はウェクスラー博士のもとでWISCの改訂に協力してきました。妻のナディーン・カウフマンは学習障害をはじめとする発達障害が専門です。夫妻はWISCの課題をKABCで解決しようとしました。子どもの知的能力を、認知処理過程(認知)と知識・技能の習得度(学力)の両面から評価し、得意な方法を見つけ、それを子どもの指導に活かすことを検査の目的としたのです。

K-ABCⅡはカウフマンモデルとCHCモデルという2つの理論モデルに立脚し最新の理論を取り入れたこと、認知処理を、継次(言語的)処理と同時(視覚的)処理だけでなく、学習能力、計画能力の4つの能力から測定していること、が特徴といえます。WISC-Ⅳとの違いは以下の表のとおりです。

WISC-Ⅳには基礎学力を図る検査項目はありません。WISCは医療用として用いられてきた背景があるからです。K-ABCⅡには、習得尺度という基礎学力を図るための尺度があります。これにより、学習がどれだけ定着しているかを知ることができます。K-ABCⅡの検査は、教育を意識して作られているため、WISC-Ⅳよりも学習と結び付けて考えやすい特徴があることも本事業所が採用している理由です。学校や病院ではWISCがほとんど利用されます。KABCは2回に分ける必要があり時間がかかるということが大きな理由だと思います。次回はK-ABCⅡで検査の読み方について考えます。

 

標準化された検査

検査は公的な機関や病院、教育機関などさまざまな場所で活用されます。発達障害の診断では、様々な施設で心理検査を受けることになります。専門家のいる病院やクリニック・発達障害者支援センター・児童相談所・保健センターなどです。また、診断以外でも発達障害の子どもの特徴や性格を細かく知って支援や教育の方針を明確にするために活用されます。そのため学校や放課後等デイサービスなどでも使用されます。逆に、心理検査の報告にあまり関心のない施設があったり職員がいたとすれば、そこは特性に応じた細かな支援については関心がないところかもしれません。

心理検査は子どもの一部分の情報ですから検査の様々な数値が子どもの実態の全てを表すものではありません。数値は低いのに努力した結果、進学校に入学している高校生もいますし、高い数値なのに怠学の結果、進学する学校の選択肢が少ない中学生もいます。心理検査の結果だけで、その人の人生はわからないのです。しかし、心理検査で能力の凸凹があることを知っていれば、子どもに向いた学習の仕方や生活の仕方をあらかじめ考えることができます。何かにつまずいた時も原因が把握しやすくなりますから、傷口が広がらないうちに早く対応できます。子どもに持ち続けてほしいものは高い能力ではありません。自分は失敗しても立ち直れる、その方法は必ず見つけることができるという気持ちが育ってほしいのです。そのためには、失敗しても支援によってリカバリーできた経験や、失敗を予測して別の方法で到達する経験をたくさん積んでほしいのです。そうすれば自分を信じることができるし、支援を信じることができるはずです。

心理検査の流れは、行動の観察・問診として、実際の検査を実施する前に、子どものおおまかな特徴、生育歴や生活環境を把握します。また、本人や両親の困り感、関係者の意見や周囲の環境面についても把握します。そして、報告がどの場所で誰に活用されるのかを判断して検査の種類を選択します。心理検査は1種類のみを実施するのではなく、複数の発達、知能、特性検査を組み合わせて行うことがほとんどです。

検査の種類はいろいろありますが、京都で多用されるのは「新版K式発達検査」です。本来この検査は乳幼児向けの適当な検査がなくて京都児童院(今の児童福祉センター)で開発されたもので、今は成人まで測れます。しかし、標準化(統計的に妥当性があるように作る)されていないのと、子どもの能力を運動・認知・言語の3つに分類され、新しい知能分類(CHC理論)に基づいていないので、何を測定しているのか分かりにくく説明がしにくいのです。それでも、ベテランの検査者にとっては子どもの苦手が推測しやすいということで関西ではよく使われています。

保護者にとってはこの3つの数値を示されても、見る力や言葉の力が進んでいるか遅れているかしかわからず、「一緒に生活したらわかる」程度の数値です。しかし、この検査者の中には「数値が独り歩きするから」と数値を当事者に示さない人がいるそうです。前回も述べましたが、常識で考えれば、検査結果の数値を隠す人の報告を信用できるはずがありません。そんなに自分が行う検査にも説明にも自信がないのならやらなければいいのです。そんな検査に付き合う子どもこそ迷惑です。

K式検査は2001年に改訂されたきり20年近く改訂されていません。知能検査は、10年で陳腐化します。文明の進化と共に子どもの知能全般が伸びるからです。今度予定されている改訂は2020年だそうです。これは標準化された検査になるそうですが、知能の分類は変えないそうです。明日は他の検査について掲載します。

インフォームドコンセント

心理検査の目的を一言で表すとすると、「子どもの障害の程度を把握し、1人ひとりに合った支援を行うため」です。発達障害の中には、自閉症スペクトラム(ASD)、注意欠陥多動症(ADHD)、学習障害(LD)などさまざまな障害があります。しかし、以前のようにアスペルガー症候群や非定型自閉症といった細かい分類をすることは少なくなっています。それは、発達障害では、障害の重なりがあり明確に分けられず、発達の凹凸は子どもそれぞれで異なり、それに伴って障害の特徴も細かく違っているからです。(日本の場合、障害の診断は医師しかできません。)

発達の度合いや知能の程度、各能力の特徴まで検査をすることで、発達障害の子どもの特性をしっかりと把握することができます。同じ障害の診断だとしても、検査の結果により見られる凹凸は一人一人違います。その結果をもとに、どの能力を活かしていくか、どのような支援が必要かを、子どもの特徴に合わせて考えることができます。

心理検査は、当事者か保護者の依頼がなければできません。もちろん、学校や施設は心理検査を行うことで正確な支援内容を考られることなどを保護者に説明して検査を勧めるのは良いことです。しかし、何故検査が必要なのか十分に説明しないまま、「障害の疑い=検査=診断=配慮の理由」という流れ作業のように扱ってしまうと、保護者は検査を子どものふるい分けに感じてしまい、たとえ検査を受けても、障害の証明書を突き付けられたような嫌な気持ちになることがあります。検査を勧めることは、その結果報告に基づいて、現場は全力で支援する約束をしたということです。「勉強ができなかったのは障害の結果」「不適切な行動は障害の結果」と子どもの責任にしないという約束です。

また、一部の地域では検査をしているのに検査結果の報告書を保護者にも当事者にも渡さない検査者がいるそうです。例えば、病院で検査を受けて、医師が病気のあれこれを言うだけで検査結果が当事者に示されなければ、何がどの程度悪い病気なのか患者にはよく分からないまま治療が進めらるのと同じです。今日、十分な情報を得た(伝えられた)上での合意(インフォームドコンセント)は医療に限られたことではありません。報告書がないのも問題ですが、報告書があるのに手渡されないなどという事がまかり通っている地域があるとは、開いた口がふさがりません。おそらく、報告内容に責任を取りたくない言質を文字で残したくないという検査者や組織の保身のためでしょうが、検査に携わる者として許されることではありません。医療も何もかも人が判断して行うことで100%はあり得ません。だからこそ、説明と合意が必要なのです。合意のための説明には文書があって当たり前ですし、当事者が写しを持ち帰るのも常識です。報告書を渡さないのがいかに非常識かということです。リスクを取らない検査者の言うことは信じられないと思います。

心理検査を依頼するときは、何のために検査をするのか、結果が出たら子どもにとってどんなメリットやデメリットがあるのかきちんと説明をしてくれる人かどうか判断して依頼しましょう。次回は、検査の実際について掲載します。

カリスマティックアダルト

「カリスマティックアダルト」という言葉は、ハーバード大学のロバート・ブルックス教授が、「ありのままの自分を受容し、課題をきちんと指摘してくれるカルスマティックアダルトとのかかわりが、人の人生を大きく変える」と示し、発達障害の子どもらの成長に欠かせない存在としてこの言葉は引用されています。辞書には、『よき理解者あるいは本人を常に無条件で受け入れてくれ、また本人が全幅の信頼を寄せている成人のことを「カリスマティック・アダルト(Charismatic adult)という。本人を心から信頼してくれるよき理解者こそが、その子どもの秘められた才能を引きおこす最も重要なキー・パーソンとなる』とあります。

カリスマティックアダルトと呼ばれる大人は、子どもには、多元的(色々)な知能があること、人間社会には、多様性が必要であることを知っています。そして、子どもにおける「正常」というのは神話のような作り事で、だれにもその子の能力を予測することなどできないと信じています。

子どものカリスマティックアダルトは、同性の家族が理想的ですが、他人でも構いません。おじいちゃんやおばあちゃん、学校の先生や近所の人、たまたま知り合った趣味の人。それは、子どもがなりたいと憧れる大人だから、カリスマティックアダルトになろうとしてなれるものではありません。それは、子どもが決めるのです。このことを勘違いしている大人は多いです。できる人が「カリスマ」ではないのです。「しっかり」している大人が良いわけでもありません。弱点があったり苦手があったりするから子どもが選ばないわけでもありません。ずばぬけて得意な分野があるというのはきっかけにはなりますが、あとは子どもが見抜くのです。

以下のことは十分条件ではないけれども必要条件かもしれません。それは、相手に共感することができる人。子どもにレッテルを貼らない人。子どもが自分の弱点を才能にする手助けができる人。「何が欠けているか」ではなく、今ある自分の素質をベースにした自分らしさを育てる手伝いをする人。大丈夫という感覚を与える人。子どもの怒りを沈めるために冷静な無関心を用いる人。子どもをぞんざいに扱ったり見下さない人。子どもの目線に立つことができる人。その子が内に秘めている価値を見いだすことができる人。子どもがうまくいかないとき、自分ならどう違ったやり方ができるか考えられる人。子どもから自分の評価を求め、真剣に話を聞くことができる人。


子どもたちは、自分はここに居場所があり、自分に選択権があり、自立していると感じ、つまり「自分はできる」と感じることを大切にしてくれると信じる人を、カリスマティックアダルトと決めるのです。

不登校ユーチューバー

「不登校は不幸じゃない」と“不登校ユーチューバー”として「ゆたぼん」(10歳)が注目を集めました。
https://binged.it/2OtmXOL
不登校児は年々増加しており、調査によると「少子化にもかかわらず、不登校の児童生徒数の割合はこの20年で1.5倍に増え、過去最多になっている」そうです。ゆたぼんは不登校になった理由として「周りの子たちがロボットに見えたから」などと説明していて、ゆたぼんを後押しする著名人も多数登場した。脳科学者の茂木健一郎氏はゆたぼんと対談し、「学校に行かなくても学ぶことは無限にできる。学校で身につく社会性がすべてではない。応援しています」とコメントします。ほかにも「勉強が嫌いならしなくてもいい。掛け算は計算機があるんだから、できるようになる必要はない」と発言する人もいます。世の中では“不登校でも構わない”という主張が結構あるようです。

しかし、文部科学省の「不登校経験者への追跡調査」によると、「行かなくてよかった」と肯定的評価をしているのは約1割で、約4割が「行けばよかった」と後悔しているのも事実です。不登校でもいいという世論はあるけど、所詮、他人の子どもだからではないでしょうか。自分の子が不登校になったらどうされるのでしょうと思います。不登校当事者と無関係な人が学校に行かなくていいと安易に語っているような気がします。

なんとなく面倒で学校に行かなくなった人の中には、家ではゲームしたり、まったり自由に過ごし、浪人して大学に入ることができたのですが、学力が伴わないのと締め切りも守れないので、先輩や同期の友人に助けられながら卒業したそうです。そして、不登校のときは一人でも平気だと思っていたけど、人間関係が重要だということを初めて学んだと言います。

他には、学生時代の友人はゼロで、ネットを通じた知り合いが数人いる程度で、結婚式に呼ばれることもないし、人付き合いの仕方がわからないから、彼女ともつき合ったこともないそうです。体育祭や修学旅行など学校生活の思い出もなにので、ドラマやマンガでそういうシーンを見ると羨ましくて胸が締めつけられるそうです。そして今、将来の孤独死を恐れながら暮らしている方もいます。

小学校や中学校は、子どもたちが基礎学力や社会性を身につける発達期なので、行かなくていいという根拠がありません。おそらく、行かなくてよいという発言には、様々な子どもに合わせられない今の学校への批判が含まれているのでしょうが、そういう発言は改革に後ろ向きな学校を免罪するだけで、学校が子どもをふるい分けする仕組みを強化するだけです。大人になって何をやるにしても、柔軟な発想を生み出すためのベースは基礎学力と多様な対人経験だと思います。高校生や大学生なのであれば、本人の選択に任せていいと思います。本人が無駄だと思う時間を浪費するより、学びたい知識や実用的な技術を身につけた方がよいと思うからです。

京アニ

7月18日に京都府京都市伏見区京アニで発生した放火・殺人事件は、京都アニメーション第1スタジオに男が侵入してガソリンを撒いて放火したことにより、京都アニメーションの関係者に多数の死傷者が発生しました。死者は35人に上り、警察庁によれば「放火事件としては平成期以降最多の死者数」となった痛ましい無差別殺人事件です。現在も世界中から京アニを支援する取り組みが続きクラウドファンディングはすでに2億円を超えています。筆者が京アニを知ったのは、2009年「けいおん!」ですが、たまたま知り合いの子どもが素敵なアニメだからと紹介してもらったのがきっかけです。アニメ「けいおん!」シリーズのロケ参考地となった滋賀県豊郷町では、同町の伊藤定勉町長が公式サイトに声明を発表し、豊郷町観光協会は同シリーズの校舎のモデルとなった豊郷小学校旧校舎群に献花台を設置しました。2016年には初めてのアニメ映画だけの製作「聲の形」が上映されましたが、これは聴覚障害者の学園生活を描いた同名の漫画を映画化したもので、素敵な映画です。「聲の形」の舞台モデルとなった大垣市でも事故翌日には市内2箇所に募金箱を設置したそうです。また、高校ブラスバンドのアニメ「響け!ユーフォニアム」シリーズの舞台となった宇治市では事故の翌日、宇治市観光センターに募金箱を設置しました。この事業所の子どもたちも影響を受け毎日のようにアニメ画を描いている子がいます。京アニは私たち、子どもたち、世界に素敵なアニメを送り続けています。がんばれ京アニ!

思春期2


さて前回は、思春期の子どもを育てる保護者の方が感じやすいであろう悩みの背景に、「今までのわが子とちがう」という点を述べました。また母親の場合、異性である息子の成長に戸惑い、対応の仕方に迷いが生じて、叱ってばかりになったり、はれ物に触るように対応したりなど、コミュニケーションがうまく取れなくなる人も少なくないということを書きました。今回は、どう対応すればよいかを考えていきましょう。

まずは視覚的構造化です。「勉強するゾーンと趣味のゾーンを分ける」「忘れ物しないよう置き場所を決めておく」など、環境を整えることで、子どもにとって刺激が少なくなったり、行動の切り替えがスムーズになります。そのため、大人の介入が減りストレスや衝動的な言動を減らすことができます。起床についても修羅場となる場合が少なくないですが、基本は起きて朝の家庭での活動(食器ならべ、掃除など)があることや起床習慣しかありません。これは前回述べた(7/13)睡眠障害のところもお読みください。

自立心が芽生えはじめた子どもに対しては、大人が指示する方法でのコミュニケーションは難しくなってきます。自立心の芽生えはじめた子どもにとって思春期は、自分の主張や考え方を表出して意思を示す事。自分の主張や考えを他者と調整して考える事。解決にむけて妥協する事。の力をつけていく時期にあたります。意思を示した子どもに対して、「考える」支援をすることで、解決に導いていくことが求められます。この時に「気持ちを尊重して聴く」ことが、子どもが自分で自分の考えを整理し動き出す支援になります。

聴く時は、すぐに否定せず「そう」「うん」などの言葉で気持ちをいったん認める。子どもの気持ちを代弁する。どうする?どうすればいい?など、考えをたずねることが重要です。気持ちを認め、代弁することで、コミュニケーションができる関係性をつくり、反発・拒否だけで終わらず、どうすればいいのかを自分で考えられる時間をつくります。

食事時間なのにゲームがやめられない場合
大人「ごはんだよ」子ども「分かってる」大人「そう。今いいところなの?」大人「…うん」大人「一応決着つくのに何分くらいかかりそう?」(時間をおいてから)大人「〇分たったよ。一応の決着ついた?」。「今いいところなの?」と子どもの気持ちをいったん認めたうえで、何分くらいかかりそうかたずね、自分で考えさせるのがポイントです。

思春期の子どもは、小さいころと同じようにほめられると子ども扱いされたような気持ちになることもあります。子どもの心の発達に合わせたほめ方が必要になります。ほめられることで適切な行動が増え、親子のコミュニケーションも向上します。ポイントは、できないことではなく、できていることに着目し、結果ではなく努力(プロセス)に着目し、感謝や敬意を伝え、さらりとほめることです。例えば、寝転がってお菓子をたべながら宿題をしている状況なら、「机に座ってやりなさい!」と言えば、「うるさいんじゃ」となりますが、できていることに着目すれば「お、やってるな!」となり、子どもも悪い気にはなりません。

買い物でも、「忙しくて手が離せなかったから、買い物に行ってくれてほんとに助かった。ありがとう」とほめるほうが「えらいえらい」よりはるかに感謝が伝わります。「えらーい」「すごーい」と言われると、馬鹿にされたような気持ちになることもあります。さりげなく敬意を伝えることが大事です。

また、聴きたいことがあるときは、最初から聴き出そうとするのではなく、子どもが興味のある・話したいと思っている内容をまず聴くことが大切です。大人にとって都合のいい話ばかりをさせたがると、大人と話すことに意義を感じられなくなってしまいます。

ゲームやテレビ、勉強の時間など、大人と子どもで目標となる行動を話し合って決め紙に書きます。約束が守れたら印をつけ、記録します。ポイントがたまったら決めておいたものや好きな活動を交換できるシステムです。約束しておくことで、行動を促す際にスムーズになります。保護者が一方的に押し付けるのではなく、子どもの気持ちを受け止め、意見を聴いてからつくり、ハードルは高くせず、やればできるけれど、「継続・定着」が難しい行動を目標にしましょう。評価のポイントを明確・具体的にして、できなかったときのリカバリー策(例えば、同等の時間を必要とする家事や作業)も予め話し合って設けましょう。行動契約のメリットは、自己コントロールが育ち、自分の頑張りや努力が表なので目で見て分かりますし、将来就労したときに給料と労働の仕組みを体感でき理解しやすくなります。

このほかに異性のことや第二次性徴のこともありますがこれはまた別の機会とします。大事なことは大人が子どもの心の成長と発達障害ならその特性に合わせた対応に変えていくことです。特に敬意を払うこと、予告や契約は重要です。子どもに敬意を払うなんてとか、身近な子どもに契約なんてよそよそしいとか思う方が少なくないのですが、約束は人間生活のあらゆることに大事なことです。また、約束が守れなかった時の謝罪を含めたリカバリー方法も絶対に必要なものです。それはお互いを尊重するからできることなのです。

他者感情をうまく読みとれないから、敬意をこめて丁寧に(しつこくではありません!)理由を話すのです。もともと整理や順序が苦手だからこそ構造化(目に見える)した環境でむかつく大人から介入されなくても一人でできるように自立させ、字句通りに0か100かで考える人だからこそ契約文書でのトレーニングが有効となるのかもしれません。

思春期1

思春期は、子どもから大人への変化期間で、男の子の場合は11~18歳頃です。とはいっても、6年になった途端に思春期が訪れるわけではありません。前思春期は小5から始まっていますし、個人差も大きいので、急に変わったと親が驚くことは少なくありません。体の変化から始まり、精神面にも、社会で担う役割にも変化が訪れます。発達障害のある子どもにとっては、この変化が怖く感じられることもあり、混乱から困った行動につながってしまう場合もあります。

思春期の混乱によって出てきた困った行動には、男女の違いも含まれます。母親にとっては、どのように関わったらいいか迷うこともあります。体の成長への対応、勉強や交友関係、ゲームとの関わりなど、さまざまな事があります。

心の変化としては、自意識の芽生え、恋愛感情を覚えること、イライラや不安を覚えやすくなるという点です。社会的な役割に変化が出てくることで「一人の人間」という自意識が芽生えます。また、第二次性徴による体の変化に伴い「異性」「同性」という概念をより意識することで恋愛感情が生まれます。このような変化を受け、子どもの心は複雑になっていきます。心が複雑になることで、自分の中では扱いきれないテーマや感情を抱えるようになることも増え、精神が不安定になったり、イライラを覚えたりするのです。

発達障害がある子どもの場合、このような変化に相手の感情が読みにくいTPOにかまわず字句通りに行動するなどの認知特性が加わることで、極端な感情を持ったり、行動に移してしまうことがあるかもしれません。自分の内外における変化の複雑性に耐え切れず、不安定になっている点が思春期の特徴です。ライフステージが上がるごとに、社会から与えられる役割はより複雑になります。例えば、以前なら許されていたわがままも「もう大きいんだから我慢しなさい」と、とがめられたり、他人や女性との距離感を調節する必要が出てきたりします。

思春期は、自立心の芽生えから自己主張が強くなり、大人の指示に対して反発することが目立ちはじめます。思春期の男の子を育てる保護者には「人間関係、家庭内での暴言・態度、ゲーム・ネットへの依存」などの悩みが多くあります。

心と体の成熟スピードのアンバランスさから困難を感じている場合もあります。体は大きく成長しているのに心は幼い場合や、体の成長に対して心がませている場合もあります。男女差だけでなく、子どもに起きているトラブルの背景に何があるのかを見極め、無理をさせすぎないよう留意しながら年齢相応な行動ができるよう、対応していく必要があります。次回は対応について考えます。

消去と強化を組み合わせる

おさらいです。人は起こした行動に対する結果が望ましいものだと、以降もその行動を繰り返しやすくなります。この望ましい結果(ごほうび)を与えてその行動を増やすことを「強化」と言い結果のことを「強化子」と言います。お菓子や、おもちゃ、褒め言葉など本人が喜ぶものはどのようなものでも強化子になります。

人は行動のあとにごほうびとなる出来事が得られないと、その行動が減少していきます。これが「負の弱化」=「消去」です。罰には積極的罰と消極的罰があり、ごほうび(快)を取り去るのが消極的罰です。ここまでが前回の掲載でした。でもそんなに上手くいかない現実の問題にどう対応するのかと言うのが今回のお題です。

ABAを心得ている現場では、原則は罰の手続きだけを用いることはありません。罰を与える人がいない時に不適切行動が増えたり、他の不適切行動が増える可能性があるからです。このようなときは、環境調整(強化子のない場所)などによって対応していくほうがよいと言われています。消極的罰を用いるのは、子どもが幼く、困った行動が起きてから期間がたっていない場合などに限ったほうがいいと思います。

不適切行動に対応するには、問題行動を減らしつつ、望ましい行動を増やすことが重要です。つまり、消去と強化の両方を使うのです。消去は、「求めているものを与えない、もしくは与えられない」という状況を作ることですので、例えば、欲しい物があって泣き叫んでも毅然と無視し「欲しいものが手に入る」という強化子をなくします。これまでの「泣く」→「欲しいものが手に入る」→「泣く」という負の循環を断ち切ります。消去を行う時は、一時的にその行動が悪化する「消去バースト」(泣く強さが強くなる、暴れるようになるなど)が発生します。これも大人が反応せずにいるといずれ消去バーストは収まります。他者の迷惑にならない場所に連れて行き、泣きやむで待ちます。

時間がかかる場合もありますが、要求に反応してしまうと、逆効果なので一貫した態度で対応します。消去バーストが起きた時に完全に無視し続けることができないと、その困った行動を強化してしまうことがあるからです。例えば、要求が叶わず大泣きしても無視しているとします。そこで、物を倒したり傷つけるなどして無視し続けることが難しくなり対応してしまうと、より派手で影響が大きい行動をすれば大人に無視されないと学びます。そうすると、次回以降は最初から影響が大きい行動をするようになります。それが予測できるなら「要求の起こる場所に行かない」「別の場所で過ごす」などの環境調整で対応するほうが無理なく困った行動を防ぐことができます。

不適切行動を減らすと同時に、望ましい行動ができた時に褒めたり、ごほうびを与えることで強化を行います。強化には、様々な方法がありますが、今回は「別の適切な行動を強化する」という方法を例にあげます。「泣かずに○回行動できたら要求を叶える」というルールを設定し、事前に子どもと契約します。このルールを子どもにわかりやすく伝えるために、ノートやメモ帳を使って、適切な行動が終わるたびにシールが貯まる仕組みを作りましょう。このように、ポイントが貯まることでほうびがもらえる仕組みのことを「トークンシステム」と言います。トークンが一定数たまったら、要求が叶うご褒美(強化子)を用意し、実際にルールを守って行動ができたときには褒めてあげながらシールを貼り、揃った時はごほうびをあげます。このトークンの数は子どもと交渉しないほうがいいです。交渉するとトークンが減ると言う行動が強化されてしまうからです。何をトークンにするか、多い少ない増やす減らすは現場のセンスが問われます。一気に核心に迫らず、成功しやすいものから徐々に取り組むことがセンスを磨く初心者にはおすすめです。

子どもの特性はひとりひとり異なること、また問題行動の種類や状況は様々であるため、対応の方法は全て異なりますが、これらの手法により、どのような原因があるのか、どう行動を起こすべきなのかが具体的になります。不適切行動には、大声を出し合ったり嫌味の言い合いをしたりと子どもと同じレベルで力比べのような対応をするくらいなら、その膨大なエネルギーを無視とアイデアと褒め抜く根気に使っても損はないと思います。そう周囲の人たちにも最初から言って回ればどうでしょう。そして、少しでもうまく行った時は同じく周囲の人に喜んでみせるのです。笑顔を否定する行動は倫理に反するので弱化され減って行きます。あなたを直接否定する声は減って行くはずです。そして、よかったねと言ってくれたらありがとうと感謝して励まし行動を強化するのです。消去と強化を組み合わせると言うのが今回の提案でした。ご意見、ご質問お待ちしています。

強化と行動

ある行動を行い、望ましい結果が伴えば、その行動の頻度は高まります。例えば、『(A)夕食後→(B)宿題をする→(C)母親に褒められる』と『(B)宿題をする』という行動が増えます。これを“強化”と言い、その際の望ましい(C)結果を“強化子(きょうかし)”や“好子(こうし)”と呼びます。

この強化は応用行動分析(ABA)の基本であり、とても大切です。強化子というのは嬉しいものであるとは限りません。直前の行動を維持し、強める結果のことです。ドアノブを回すとドアが開きますが、この『ドアが開く』という結果は『ドアノブを回す』という行動の強化子となっています。ドアが開いてもそう嬉しいわけではないですが、ドアが開くという結果がドアノブを回すという行動を維持します。

基本的には望ましい結果、嬉しい結果が強化子となることが多く、その内容は人それぞれです。保護者や先生の賞賛、お菓子、おこづかい、ゲームができる、遊びに行ける、微笑みかけられる、休憩時間が伸びるなど、その子どもが喜ぶものは基本的に強化子として考えることができます。やりがいや達成感を感じるということも同様です。ある行動を増やしたければ、その行動の直後に強化子を与えることで、その行動が強化され頻度が高まります。不適切行動も同様であり、不適切行動の頻度が高く維持しているようであれば、その行動はその子にとって望ましい結果によって強化されていると考えます。

計画を立てる際によく見られる誤りは、お菓子などの特定のものを強化子と決めつけることです。お菓子が好きな子どもならお菓子が強化子になり、お菓子をそれほど好きでない子どもならお菓子は強化子にはなりません。また、お腹がいっぱいの時はお菓子を別に欲しくないので強化子にはならず、その時の状態によっても強化子は変わってきます。

次に、ある行動を行い、望ましくない結果が伴えば、その行動の頻度は減少します(ご飯中におしゃべりをして母親に怒られる、など)。これを“弱化”または“罰”と言います。その際の望ましくない結果を“嫌子(けんし)”または“罰子”といいます。この嫌子も人それぞれです。叱られる、叩かれる、空腹、喉の渇き、極度の暑さ寒さ、周囲からの批判などです。

弱化にも2つの条件があり、ある行動を行って嫌子の結果となる正の弱化と、ある行動を行って強化子がなくなる負の弱化があります。後者の代表的なものはタイムアウトで、望ましくない行動を子どもが示したら、子どもを強化子から遠ざけるという手続きです。ゲームを取り上げられる、減点されるのも強化子から遠ざける負の弱化です。

この強化と弱化、そして4つの条件によって、行動が増えたり、減ったりすることの多くを説明することができ、行動を修正したり形成したりすることが可能となります。

<正の強化>
 1. 行動を起こすと
 2. 強化子(好きな事)が得られ
 3. その結果、その行動が増える
<負の強化>
 1. 行動を起こすと
 2. 嫌子(嫌な亊)がなくなり
 3. その結果、その行動が増える

<正の弱化>
 1. 行動を起こすと
 2. 嫌子が得られ
 3. その結果、その行動が減る
<負の弱化>
 1. 行動を起こすと
 2. 強化子がなくなり
 3. その結果、その行動が減る

結果が好きな事か嫌な事が消えるならその行動は増え(強化)、結果が嫌な事か好きな事が消えるならその行動は減る(弱化)ということです。そして、行動の形態や種類に関係なく、この強化の原理は人の行動なら何にでも適用されるということです。良い行動であっても、悪い行動であっても、日常的な行動であっても、奇異な行動であっても、同様です。子どもに不適切行動が見られるならば、その行動により子どもにとって何か望ましい結果が得られていて不適切行動が強化されていると考えることができます。従って、不適切行動を予防するには適切な行動が増える好きな事か嫌なことが消える結果を探し、不適切な行動を減らすには嫌なものか好きなものが消える結果を探して取り組めばよいことになります。

しかし、弱化はなかなか難しいのです。子どもの好子はかなり強力なものが多いですから、少々の弱化、つまり嫌な亊を与えたり好きな事を奪っても持続的な効果はすぐには見えず、逆に消去バースト(行動がさらに強くなる)を前に怯んでしまいます。また内容や程度にもよりますが、弱化は倫理的に考えて躊躇しやすいからです。つまり大人のほうが効果と言う強化子がなかなか得られず、倫理的という同調圧力の言葉で取組行動が減ると言う負の弱化が成立します。ではどうすればいいか次回に考えて行きます。

応用行動分析を支援に生かす

発達障害のある人の行動問題について、前回はその支援の一丁目一番地は表出のコミュニケーションだと述べてきました。行動問題の解決と予防に必要なものはは、表出コミュニケーションと理解コミュニケーション(視覚的構造化含む)、3番目には応用行動分析(ABA=applied behavior analysis)だと考えられます。

ABA理論は人間の行動の分析の仕方と法則を扱っている心理学理論です。ちょうど、化学反応の法則を導き出すことと似ています。水は電気分解すると水素と酸素になります。人は褒められるとその行動を繰り返そうとします。単純化すればのたとえ話ですが、このように化学反応と行動変容はよく似た表現をします。表出のコミュニケーションに取り組むPECSもABA理論に基づいています。激しい不適切行動も、成長の過程で周りの人たちの対応を含む環境によって強められた結果であることが多いです。まず、不適切行動が強まる例をABC(三項随伴性と言います)分析の枠組みで整理して示します。


<例1>
①(A)外に出たい→(B)くつ持ってくる→(C)外出ができる
②(A)外に出たい→(B)くつ持ってくる→(C)「後でね」と言われて外出できない
③(A)外に出たい→(B)窓ガラスをたたく→(C)母親に叱られるが外出できる
『課題からの逃避』の機能を持つ行動が強まる例は
<例2>
①(A)課題が嫌→(B)泣く→(C)課題が終了される
②(A)課題が嫌→(B)泣く→(C)課題が終了されない
③(A)課題が嫌→(B)逃げる→(C)課題が終了される
④(A)課題が嫌→(B)逃げる→(C)席に戻され課題が終了されない
⑤(A)課題が嫌(B)作業課題を投げる→(C)課題が終了される
⑥(A)課題が嫌→(B)作業課題を投げる→(C)課題が戻され終了されない
⑦(A)課題が嫌→(B)作業課題を破壊する→(C)課題が終了される


例1の先行条件(A=Antecedent)で子どもが求める結果(C=Consequence)は外出できることであり、例2では課題を終了することです。例から分かるように同じ結果を得るために行動が順に変わり強まっています。同じ行動でも段々強度が増していき(激しく、時間も長くなっていく)、下に進むほど対応が難しい行動になっていることが分かります。例1の『③窓ガラスをたたく』、例2の『⑦作業課題を破壊する』という行動(B=Behavior)は、対応する側としてはこどもの要求を通さざるを得ず、無視できない行動です(関係ない人を叩くといった他害行動が見られることもあります)。このような強力な行動を早い段階から行うこともありますが、不適切行動は例1、例2のように段階的に強度を増していくことが多いです。


ではな不適切行動の強度は増していくのでしょうか。決定的には適切な表出コミュニケーションができないことですが、強度が増すのはある行動を行うことで要求が通っていても、段々同じ行動では要求が通りにくくなるからです。保護者や対応する人が慣れてきて少々泣いても気にせず課題をすすめようとなったり、忙しくて対応できなかったり、「教育的」に外出の回数を制限するよう計画したりと理由は色々あります。

そして、ある行動を行っても要求が通らなくなり、または、通り難くなると、要求を通らせるために不適切行動をより激しく、より長く行います。これを消去バースト(消去時の爆発)と言います。この段階で要求が通ってしまうと、より激しく、より長く不適切行動を行うと要求が通るということを学習し、以前より不適切行動が強力になっていきます。それでも要求が通らなければ、要求が通るような行動を色々試し、自分のできる行動の中から要求が通りやすい行動を行います。そこで要求が通ると、新たな不適切行動が形成されるということです。このような仕組みで、不適切行動は強度を増し、対応せざるをえない行動に変わっていきます。これは障害のあるなしに関係なく、どんな人でもこのツボにはまると負の連鎖は繰り返されます。たまに要求がかなえば、例えばパチンコ通いのように次は成功するかもとお金をつぎ込むように、不適切行動をつぎ込んで要求が叶うまで繰り返します。次回は日常生活で不適切行動を強めないため何が必要かを考えます。

コミック会話

今回は、コミュニケーションをスムーズにする、コミック会話についてです。コミック会話も先に書いたソーシャルストーリ―の開発者である米国のキャロル・グレイが発案しました。開発の順序はコミック会話(comic strip conversations)の方が先です。ASDの子どもは、うまく状況を理解できなかったり、周りの人たちと違った捉え方をしてしまうことがあるのですが、そうした困っている状況を言葉で表現して、周りに説明するのが苦手です。コミック会話は、ASDの子どもが、今どんなことに困っているのか、どんなことを考えているのかを理解する手助けをしてくれます。また、彼らの周りで起こっている状況を的確に伝えるための手段としても、使うことができます。コミック会話の手法を使うことで、コミュニケーションをスムーズに取ることができるようになり、お互いの理解が進むのです。

コミック会話の方法は、子どもに書きながらコミュニケーションするのは良い方法だという理解を得て教えていきます。棒人間を描き、その人が言ったことを吹き出しに書き、感情を雲型の吹き出しに書くといった方法で状況を説明します。従って、文字や絵が描けることが前提です。このルールを徹底するのでマンガを描くのとは違い、表現ルールを覚える練習が必要になります。普段の会話をコミック会話を使って行うのです。たとえば、 今日、学校でどんなことをしたの?という、普通の日常会話です。こうして、普段から日常会話にコミック会話を使っておくことで、なにか困ったことがあった時にも、コミック会話を使って、スムーズに状況を説明できるようにしておきます。基本的にコミック会話は、ASDの子どもが、自分の気持ちなどを説明するために使うので、主に描くのは子どもです。

練習段階では、大人が質問をしながら、コミック会話を書き上げていくことになりますが、慣れて書き方がわかれば、子ども一人でも表現することができるようになります。会話ですので、子どもが書き、大人が書きと、続けていくことで、お互いの理解を深めていきます。

ノートを使うか、ホワイトボードを使うか、どんな筆記具を使うかは、様々なものを試せばいいです。ただ、筆記具に関しては、8色で感情な表現をするので、色のある筆記具を用意します。大きめのノートに色鉛筆、水性ペンなどを使う人が多いです。

コミック会話ができれば、状況や感情表現に非常に役に立つツールになります。話し言葉より先に文字に興味を持つタイプの方はコミック会話はとても分かりやすいようです。今の状況を周りに伝えられることでストレスが少なくなり、周りの大人も、子どもの考えていることがわかれば、どんな支援をすればよいのかがわかります。コミック会話がうまくいけば、かなり気持ちの面で穏やかになる方が多いです。ただし、コミック会話では子どもの誤解や間違いもたくさん発見できるので、間違いを指摘したくなりますが、それはNGです。表現することで役に立った、聞いてもらえてよかったという実感が大事です。

ここの、ブログを前からお読みの方はもうお気づきかと思います。ソーシャルストーリが理解コミュニケーションで、コミック会話は表出コミュニケーションです。他者のことがわかるだけではなく自分のことも相手にわかってもらってこそバランスが取れた暮らしというものではないでしょうか。理解だけ進んでも表出手段がなければストレスが溜まって行き詰ってしまうのは当然だと思いませんか。

ソーシャル・ストーリー

ソーシャル・ストーリーとは、米国のキャロル・グレイが開発した「身の回りのものの性質や様々な場面でのふさわしい言動はどのようなものなのかなどをASDの子どもにわかりやすい形で伝えるためのコミュニケーションツール」です。

ASDの人は社会的な暗黙のルールのようなものを察することが苦手です。子どもたちが自然に身に付ける暗黙のルールですが、自閉症スペクトラムのある子どもたちは、認知上の偏りや興味関心の偏り、他者の感情の読み取りが苦手、情報の取り込み方も違うために、丁寧に教えてあげないと自然に学ぶことが非常に難しいと言えます。しかし、周囲の人たちはそうした事情を知らないので、問題児だとか、何を考えているのか理解できない子ども、などと思われることも少なくありません。

ソーシャル・ストーリーは、様々な知識や暗黙のルールを丁寧に教えることによって、ASDの人たちの理解力を高めて、自分自身で適切な行動をとっていけるように書かれた文章です。ソーシャル・ストーリーについての本は、「ソーシャルストーリブック」と「お母さんと先生が書くソーシャルストーリー」の2冊が有名です。この本には多くの文例が載っていて、そのまま使える文例集です。日常生活や学校生活で必要な様々なスキルや情報が網羅されています。

ただ、ソーシャル・ストーリーは本来一人一人にオーダーメイドで作る文章なので、自分で書く場合には「お母さんと先生が書くソーシャルストーリー」が必要です。「ソーシャルストーリーブック」だけ読んで、書き方について不完全な理解のまま新しいソーシャルストーリーを書くのはやめた方がいいです。

幼稚園・保育園の年少の幼い子どもでもわかりやすい内容では「マイソーシャルストーリーブック」が良いです。「ソーシャルストーリーブック」に比べ、一つ一つの項目が丁寧に書かれていています。子どもが小さいうちはこちらを先に読む(読んであげる)と良いと思います。

ASDの子どもは社会的な暗黙のルールを自然に習得してくのが苦手なので、特に教えなくてもよいような簡単なことを、大人になっても理解していないということがあります。このような理解不足は、幼稚園・保育園や学校または職場での生活トラブルの原因になります。

ソーシャルストーリーは、ASDの子どもに、肯定的な表現をしながら様々なことを教えるので、自尊感情を損なわずに理解力を高め、子どもの成長のためには必要なツールです。子どもの発達によってはすべての項目は必要ないかもしれませんが、ある部分だけごっそり取りこぼしている可能性があるので、読み物としてすべての項目を読んでおくのも無駄ではありません。

また、大人がソーシャルストーリーの語り口を知っておくことは、普段の生活で、子どもとのコミュニケーションに非常に役に立ちます。ASDの子どもには、ソーシャルストーリーのように説明をすると理解しやすいので、子どもに理解できるように話せるからです。子どもにこちらの意図がちゃんと伝わり、お互いに不要なストレスを抱えることがなくなります。ソーシャルストーリーは、こちらの伝えたいことを子どもにわかりやすい言葉と文字で伝える支援方法と言えます。次回は他者の内面が読みにくい子どもへの支援として、コミックストーリを掲載します。

DV防止法

7月12日千葉地裁は、千葉県野田市立小4年の栗原心愛さん=当時(10)=が1月24日に自宅浴室で死亡した虐待事件で、父勇一郎被告(41)の暴行を制止しなかったとして、傷害ほう助罪に問われた母なぎさ被告(32)に懲役2年6月、保護観察付き執行猶予5年を言い渡した判決が確定したと明らかにしました。求刑は懲役2年でしたが、地裁によると、10日が控訴期限だったが検察側、被告側の双方から控訴がなかったので刑が確定したということです。母なぎさ被告も夫からDVを受けており、一部の意見には夫のDVの中で母親は子どもを守る判断力を失っているのだから母に刑を科しても刑の効果は薄く、保護と治療が必要というものもありました。

通称『DV防止法』が制定されたのは、2001年(平成13年)のことです。“夫婦喧嘩は犬も食わない”と限度をこえた夫婦の問題に対して、行政は関与することを長年控えてきたのです。ある面、他人が入り込むことを遠慮してしまう家庭という空間。法律がそこに踏み込むことで、辛い環境に耐えてきた女性達を救い出したことは、大きな意義があると思います。「DV」とは、ドメスティックバイオレンス(Domestic Violence)、略して「DV」です。ドメスティックは、「家庭的な」。バイオレンスは、「暴力、暴行」です。正式名称は、『配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律』です。

一般的には「配偶者や恋人など親密な関係にある、又はあった者から振るわれる暴力」と書かれています。「配偶者からの暴力」に対する定義として、身体に対する暴力だけではなく、『心身に有害な影響を及ぼす言動』つまり言葉の暴力も含むということです。相手に危害を与える暴力は、圧倒的に男性から女性に及ぼすものが多いですが、言葉の暴力は、男性女性関係なく起こりえます。一年間のDV件数は、2015年(平成27年)には、63,141件の相談が寄せられています。検挙状況は、7,914人が刑法犯として検挙されました。DV防止法制定により、年間これだけの人が罪に問われ、同時にほぼ同数の被害者が救われていることになるので、法律ができた意義はとても大きいといえます。

法の前文には「配偶者からの暴力に係る通報、相談、保護、自立支援等の体制を整備することにより、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るため、この法律を制定する」とあり 家庭内の問題だからといって、今までのように放置しないで、しっかり対処しますよという法律になっています。『配偶者暴力相談支援センター』は、以下のことを行います。
○相談や相談機関の紹介 ○カウンセリング ○被害者及び同伴者の緊急時における安全の確保及び一時保護 ○自立して生活することを促進するための情報提供その他の援助 ○被害者を居住させ保護する施設の利用についての情報提供その他の援助 ○保護命令制度の利用についての情報提供その他の援助です。DV相談件数は10万件超えの相談が寄せられています。他には、裁判所が配偶者に対して、保護命令を出すケースもあります。具体的に、被害者への接近禁止命令や住居からの退去命令が出されます。もし命令に違反すれば、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。また、発見者による通報という項目があります。配偶者からの暴力を受けている人を発見した人や医療関係者は、すすんで警察や配偶者暴力相談支援センターに通報することを推奨しています。このようにDV防止法によって、様々な行政の支援体制が整ってきています。

DV防止法改正内容 2001年にDV防止法が制定されたことで、家庭内で暴力を受け、沈黙していた多くの女性達が、救われることとなりました。配偶者からの暴力も犯罪であるということ。閉ざされた家庭空間で、「暴力をふるわれるのは、私にも問題がある」という被害者の錯覚が明らかになったこと。 それらをDV防止法が、私たちに気づかせてくれたのです。DV防止法は2001年の制定・施行以来、18年の歳月が経ちましたが、その間に三度の改正が行われています。法律は、極論すれば、人々が幸福で安寧な暮らしをするために存在するものです。。まだまだDVはなくならないとはいえ、以前はDVについて議論すら許さない風潮があった時期を思えば、やっとここまで来たという感があります。

台風5号

子どものころ、台風が近づいてくるとなんだかわくわくしたものです。今のように刻々と変わる正確で詳しい情報はありませんから、学校はすぐ休校になり、子ども心には余計なイメージが広がります。母はろうそくの買いたしや風呂の貯め水をしたり、雨戸を閉めてその上からくぎ打ちしていた父の姿が鮮明に思い出されます。非日常のドキドキもあるけど、家族全員で来るかもしれない困難に立ち向かっている姿が心地よかったのかもしれません。

今や都会では台風でも職場や学校に行き、ぎりぎりまで休業にしません。昔は町に出ても台風の前は静まり返っていて往来も少なかったものです。台風が来るかと思ったら次の日は晴れてたなんてこともよくあって、「あーよかったねー」で済んだのですが、今は正確な進路まで予想できますからそんなわけにもいかないようです。

20日(土)夜までの48時間で雨量は九州から四国、紀伊半島など西日本太平洋側の多い所で300mmに達する所があるそうです。また、21日(日)は台風5号に向かう南西からの湿った空気の流れが強まる九州では、雨雲が非常に発達し激しい雨となるおそれがあり、最大で500mmに達する大雨のおそれがあるそうです。広い範囲で南よりの風が強く、西日本では瞬間的に20m/sを超える強風に対しても注意を呼び掛けています。