すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

分離不安

昨日は始業式時期のストレスの高さを書きましたが、女子によくみられる分離不安もこの時期に顕在化しやすいです。低学年のKさんも、登校渋りがあり、あれこれ理由をあげるときりがないのですが、不安が大変高いのでちょっとしたトラブルでも行き渋りの原因になります。大人は「また、あとから理由をつけている」と思いがちなのですが、それほど不安なのだという理解が大切です。

発達障害の子どもにおいて、母子分離不安の特徴が見られることがあります。発達障害の子どもは対人関係のあり方が偏っていたリ、ものの捉え方が異なったりするため、障害のない子どもに比べて、極度な不安を感じることがあるからです。

母子分離不安は発達障害の中でも、ASD(自閉スぺクトラム症)の子どもに多いと言われています。ASDのある子どもにおける母子分離不安は、一言で言うと対人関係上の特性が原因です。ASDのある場合、親がいなくても平気という親子関係の希薄さを示す子どもがいる一方、子どもによっては極めて強い不安感を抱き、他の子どもがいるのを嫌ったり、ひと時も母親から離れられないといった神経質、過敏傾向も示す場合もあります。

母子分離不安の対処法は、発達障害が関連していようとそうでなかろうと変わりはありません。信頼でき愛着のある大人がそばにいてやさしい言葉をかけて、子どもの不安を軽減させることです。信頼できる大人との安心した関係を確保したあと、不安を感じにくくするような治療法(リラクゼーションスキル・自律訓練法等)を取り入れます。

母子分離不安が表れたからと言って、すぐさま発達障害だということではありません。母子分離不安そのものは病気ではなく、多くは「一時的に心配ごとがある」というサインだからです。母子分離不安の特徴だけでなく、子どもに他にどんな特徴が見られるのかも把握するようにします。

自立を始めた子どもには母子分離不安が生じます。親から離れ出すと誰もが不安になるものです。そうした、発達過程で生じる正常な母子分離不安も少なくありません。子どもの母子分離不安がどのようなものなのか、どう対処すべきなのか、しっかりコミュニケーションをとって把握します。。

また、甘えだと思って厳しく叱ってしまうのではなく、子どもを認めてあげ、一緒になって不安を取り除いていくことで改善することができます。子どもは安心することで、自立できるようになります。

一方で治療を要する母子分離不安もあります。分離不安のために親子の日常生活が困難であったり、就学期を迎えても不安のために学校に通えない日が続いたりするなど、症状の程度によっては医療や専門家のサポートが必要となる場合もあります。その場合、特別支援に詳しいスクールカウンセラーなどに相談してください。

2学期始業

今日は、支援学校と京都市で2学期始業式です。M君宅から「今日はもう疲れてしまったようで、お昼から放デイ行けないみたいです」と連絡がありました。短い夏季休業でも、子どもによっては、家庭生活から学校生活への切り替え時期は、ストレスが極限に達する場合もあります。

「友達に会えるから楽しみ」「新しい勉強が楽しみ」という子どもがいる一方で、「教室の喧騒に耐えられるかな」「今日も突然の予定変更でしんどくならないかな」等登校への心配事が少なくない子どももいます。

2学期も平常授業になれば7校時で低学年でも授業時間が15時を越えるそうです。発達障害の子どもたちが心配しているのは、授業時間ではなく、休み時間や当番時間です。構造化されておらずイレギュラーなことが起こりやすいからです。休み時間は短くても図書室に行ったりカームダウンエリアを決めておく方が本人は安心できるようです。

大事なことはエネルギーが枯渇するまで無理をさせるのではなく、早い時期からヘルプが出せるように校内の仕組みを作っておくといいようです。本人はいつヘルプを出せばいいのか何がヘルプなのか分からないことがあるので、決まった時間に相談するように決めておくのがが一番いいようです。今日感じた良いことと気になる事を報告する時間です。何もなくても5分間は話していく約束をします。基本は言語ですが、必要に応じてコミック会話などテキストもコミュニケーションに使うとうまく表現できるようです。

興奮している時は文字でお願いします

J君が「赤いヘッドホンの音が鳴りません」と訴えてきました。「うーん、故障かなぁ、他のヘッドホーンでお願いします」「いやだいやだ赤いヘッドホンじゃなきゃ嫌だ―」とボルテージが上がって暑い狭い部屋の中で叫びだしました。J君は普段はおとなしく穏やかな人なのですが、ひとたび怒り出すと大声絶叫モードになります。

困ったスタッフは、いろいろと赤いヘッドホーンが使えない理由をJ君に説明するのですが、要は使えないと言う結論は変わらないし、興奮しているので説明の理解ができないようです。そして、またまた絶叫するという悪循環でスタッフも困り顔です。周囲の仲間もうるさくて迷惑そうにしています。

別のスタッフが付箋に「大きな声を出す人は迷惑なので、帰りは後部座席に座ります。小さな声でお願いします」とJ君との乗車の契約を文字で示しました。すると、一瞬で自分で読んで「小さな声で話します」と小さな声で話しだしました。

子どもが興奮しているときには、あれこれ話して諭すよりも文字にしてあらかじめ契約したことを示して納得してもらうようにしたほうが双方疲れなくていいと思います。ただ、文字で示す時がいつも修羅場と言うのは良くありません。文字が示されたら悪いことが起こると記憶に連合させてしまうからです。普段から文字で説明し、本人にとっていい結果の時にも文字で示しておく必要があります。子どもが怒っている時にはダメージがあっても通じるコミュニケーション手段(ここでは文字)を使います。ただし、「ビジュアルドライブ(視覚優位?支配?)」で書いたように、視覚情報はASDの方には強力な支配力があるので、禁止については多用はしないようにお願いします。

 

 

いいところを応援する服薬

最近、小学生のH君やらI君が支援学校から来ている利用者の障害について気になってよくスタッフに質問してきます。裏返せば、自分にも同じような障害があるだろうかという気づきです。質問されたスタッフはできない事だけを述べるのではなく、できることも得意な事もあるということを説明するようにしています。

コンサータ等の服薬機会も気づきのきっかけになります。服薬をしている利用者は少なくありませんが、その服薬がなんのために必要で、いつまで必要なのか、どうなれば必要なくなるのか、その年齢に応じて正しく理解している子どもは多くないと思います。最近の医師の中には保護者にだけでなく子どもにも理解が得られるように説明する医師もいますが多くはありません。保護者ですら、「お医者さんが早口で説明されたけどよくわからない」という人も多いです。発達障害対応の服薬については、まず保護者と当事者が服薬の目的を正しく理解をすることが大事です。

服薬は、生活がしやすくなったという実感を子どもが持てるようにします。その実感を掴んだ上で、生活や勉強がしやすくなるには、お薬だけの力ではなく自分の力でもだんだん解決できる方法を学ぶことなのです。発達障害のお薬は「飲んだらおしまい」ではないのです。むしろ、「飲むことから始まる」のです。

落ち着きがないと、自分を振り返ることも一苦労する子どもたちだからこそ、服薬してじっくり振り返る機会を作る事も服薬のねらいです。やがて自分のことが自分で分かるようになってくれば、「今は集中のコツをつかんだので服薬は必要ないけど、試験の前は必要かも」などと医師と相談できるようになることが大事です。周囲の大人がすべきことは子どもの状態を見て服薬量が多い少ないという事だけでなく、子どもが自分で自分の状態がモニタリングできるようになることを支援することなのです。

学校や事業所の関係者が適切な協力ができるようにするには、保護者の服薬への理解と見通しが何より必要です。子どもは服薬することで「僕は病気だ」と誤解したり、「障害をなくすために服薬している」と誤解していることもあります。そんな子どもには「君のいいところを応援するために服薬は大事なんだ」と説明していくことも重要となります。

 

PECSのフェイズ2の重要性

京都PECSサークルでマニュアルの読書会がリモートで毎週行われています。会員の中には保護者の方も多く参加されて毎回20名弱の人数で90分ほどかけて開催されています。

昨日は、フェイズ2の箇所の読み合わせをしました。フェイズ1はプロンプターが要求動作の介助をしながら絵カードをコミュニケーター(カードを受け取ってほしいものをあげる人)に渡せば目の前の欲しいものがもらえることを教えます。それができるとフェイズ2は、コミュニケーターが距離をあけて遠くにいても要求カードが渡せるようにします。

子どもは、このフェーズは比較的早く理解してくれるので、私たちは次の要求カードの弁別=フェーズ3aにすぐに進もうとしがちです。しかしマニュアルには延々とトレーニングの深化を行うようにスタッフ・パーティーやお友達とのPECSタイムに取り組むように勧めているのに気が付きました。実はここがピラミッドアプローチ(PECS開発者の教育コンセプト)の神髄ともいえるところなのです。

PECSマニュアルは自閉症の子どもたちがそんなに簡単に機能的コミュニケーションが理解できるわけがないという前提で作られているのです。そして、一人として同じ子はいないのだから同じやり方や同じ時間で同じものが獲得できるはずがないという前提で作られているから、あんなに分厚い冊子になってしまったと思います。

フェイズ2はいつでもどこでも誰とでも「要求」カードが使えて合格なのです。すなわち学校でも自宅でもお友達の家でも、できればお隣さんでも使えることが重要なのです。私たちは、ついついコストパフォーマンスからコミュニケーターとプロンプターに大人を2名も使ったんだからと「厚い手をかけた」と思いがちです。違います。フェイズ2はさらに大人がスタッフ・パーティーを演出して楽しそうに本人が欲しがるものを大人同士でやり取りして本人が要求カードを出すように仕向けなさいと書いています。少なくともあと一人大人がいります。次に子どもも呼んできててスナック(おやつ)タイムやらホビー(おもちゃ)タイムやらを本人の目の前でやって本人も要求カードを出すように仕向けましょうと書いてあります。それを参加する子どもに説明する大人やらガイドする大人がもう一名必要です。

そんなこんなで、フェイズ2は子ども1人に対して3~4名のスタッフが必要になります。それだけ人的コストをつぎ込むのは、単なる訓練場面だけでは子どもは理解しないよ、楽しい場面をナチュラルな生活場面を人工的に作り出して、カードの弁別なんてまだまだできなくていいから、「ねぇねぇ、それちょうだいよ!」と相手にまとわりついて要求カードを手渡そうとする子どもを育てましょうと言いたいようです。金と時間に糸目をつけてはいけないと…。