すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

表情の絵カード

終わりの会で、今日は何が良かった?と聞きます。お話の苦手なP君には感情カードを提示してみました。すると、「楽しい」表情を選択して、小さな声で「たこやきタノシカッタ」と答えてくれました。ここまでは計画通り、その後が素晴らしかったのです。P君の表現を見ていてた、少しおしゃべりができるQさんもR君も表現カードを見渡して今日の経験について自分の感情を選んで表現してくれました。

表情の絵カードの役割は、自閉症(ASD)のこどもが相手の気持ちを理解したり、自分の気持ちを伝えるために使います。彼らは表情や感情の読み取りだけでなく、表出も苦手な人が多いので、こうして機会を見つけては気持ちを聞いたり伝えたりしています。

でも、今回良いなと感じたのは、それを見ていた、少しおしゃべりができる子どもたちも、感情カードがあったほうが自分の思いが伝えやすいと発見してくれたことです。

絵カードの表情は何気ないカードのようにも感じられますが、感情を伝える最も大切なものであり、円滑な社会性や人間関係を築いていくために役に立ちます。

今家庭でできることをはじめる

「光とともに」
『光とともに… ~自閉症児を抱えて~』は、2001年から10年近くにわたって月刊マンガ誌『フォアミセス』に連載され、その間にテレビドラマ化もされて大ヒットした作品です。コミックスの累計発行部数も全16巻260万部を超え、「このマンガを読んで、自閉症について初めて知った」という読者も多いです。

自閉症の息子(光君)を抱えた1人の母親の姿が描かれていて、診断される前後の苦悩や、障害の特性行動に悩む母親の姿が描かれています。自閉症の母親なら少なくない人が読んでいるという、バイブル的漫画です。1巻の最後の保育園の卒業式の場面。園児がそれぞれ、将来の夢を口にして発表するなか、言葉が話せない光君の変わりに、母親が光君の手を上げて「大きくなったら、明るく元気に働く大人になります」と宣言する姿が感動的です。

作者の戸部けいこさんは、執筆中に病気で亡くなられて物語りは完結はしていないですが、きっと光君が働く姿を描かれたかったんだろうなぁと思います。主人公の母親が壁にぶつかった時に、「だったらどうしよう」と考える姿も感銘をうけます。子育てのゴールは自立。子どもの成長を考えるときに、成人して「就労」ということを基準に、色々なことを選択しようというメッセージが込められた漫画です。

昨年末までに就学先を決めた方は、新しい学校の様子や子どもの状況の情報交換しながら、新年度を迎える準備をされている方も少なくないと思います。行き先の学校ことが気になる時だからこそ、「大きくなったら、明るく元気に働く大人」になるために、学校以外の家や地域で何が必要か、今家庭でできることをはじめる事が大事と、光君のお母さんは描かれています。

自由は不自由

ちょっとした時間が空くと、「ひま~。おもろない」とよく子どもが言います。「ふーん、暇なんや。うらやましいわ。なんでもできるやん」と子どもには返しています。自分の子ども時代と比べても仕方ないですが、「ひまやなー」と自問することはあっても、大人に暇やから何とかしてくれと言うようなことはありませんでした。そんなことを言おうものなら、「勉強しろー!部屋の掃除してー!買い物行けー!庭の草抜きして―!」と矢継ぎ早に指示が飛んでくるからです。暇な時間は、夢想したり友達と何かを見つけたりする大事な時間でした。

もちろんASDの人たちの特性で、自由時間や余暇時間が苦痛な人がいることや、大人になっても休日は一日中家でテレビやアニメを眺めたりゲームをしているだけで家族が心配していることはわかります。だから、スケジューリングで空白時間を埋める支援も行うわけですが、それでも「ひまやー」と言われると「自由は不自由や」と、やるせない気持ちになるのは私だけなんでしょうか。

「自由在不自由中 (自由は不自由の中にあり)」

BY 福沢諭吉

 

食べ物教材

本事業所では、食べ物教材を扱うおやつ作りのプログラムがありますが、利用者の味覚の片寄りは半端ないです。昔ならどんな子どもも喜んだケーキも「甘いの嫌い!」な子どもが増えてきて半数の子どもが食べません。「お誕生日だから今日はケーキだー」と家路をスキップする子は減っているわけです。特にこの事業所では「甘いの嫌!辛いの上等!」派が多いので、たこ焼きなどの粉モンやソース味モンが無難です。

オノマトペ

H君とおにぎりを作ろうと、お手本で掌にご飯をのっけて「ぎゅーっとね」っとスタッフは言います。H君「ギューット…」と復唱はしてくれたものの、手には力がはいりません。ASDの方への擬態語での表現は言葉より伝わるのが難しい場合があります。これは言語が違うと擬音語擬態語が全く違う事からも言えます。川がさらさら流れるようすを、英語圏ではmurmur(マーマー)と言いますが日本人には全くぴんと来ないのと似ています。

オノマトペという言葉の意味は、擬音語や擬態語のことを意味する言葉です。擬音語とは、物や生き物が発する音や声を、文字にした言葉のこと。擬態語とは、心で思っていることや状態など、実際は音のしないことを、文字にした言葉のことです。日本語のオノマトペはフランス語の日本語読みです。ワンワン・ニャーニャー・コケッコッコー・いらいら・うきうき・うとうと・きらきら・いきいき・びゅーん・ぎゅー・ばーん。そもそも、欧米人が虫がすだいているのは雑音にしか聞こえないのを日本人は音にします。漫画を読めば分かるように、日本には欧米よりはるかに多くオノマトペがあるそうです。この音の情景や感覚を伝えるのは大変むつかしいといいます。