今日の活動
代替行動分化強化 2
不適切な行動の対応については、何度か書いてきました。子どもが不適切な行動をしたとき、もっとも重要なことは、その行動は罰があるということを教えるより、他の方法で利得が得られることを教えることです。
言葉の分かりにくいA君が、B君の大声がうるさいので叩いた時、スタッフがとるべき行動は、叩かなくても大声を止められる方法をA君に教えることです。でも、もっとも良くみられる指導は「B君にごめんなさいは?」です。音声模倣ができる人なら「ゴメンナサイ」と言うかしれません。でも「ゴメンナサイ」の意味は通じていません。なぜなら、叩けばB君が黙るからです。つまりA君の叩く行動は要求を実現しているからです。学習したことは、叩いた後大人が指示したら「ゴメンナサイ」を言うことです。
発達障害のある人の問題行動に関しては、『機能的コミュニケーション訓練』という代替行動分化強化(DRA=Differential Reinforcement of Alternative behavior)の手続きが有効です。これは、問題行動と同じ機能(目的)を持つ社会的に適切な行動(カードコミュニケーション)を分化強化するという手続きです。「(声がうるさいから)助けて」カードを大人に示せば、スタッフがB君を遠ざけてくれるようになれば良いわけです。もちろん、突然の行動ですから少々の代替行動の訓練で、完璧な学習は困難かもしれません。行動問題を予測して予防することも大事です。でも事が起こったら、お詫びの音声模倣をさせるよりは、即座に「助けて」「やめて」カードをスタッフに渡す行動を教えた方が、不適切行動を減らせる可能性があります。
子どもの考え方
ボウガンのおもちゃで的当てをして遊んでいます。空き缶にあてて倒すのですが、空き缶の中に重りを入れておいて倒れにくいものを倒すと高得点が得られます。認知レベルが9歳を超えると、倒れやすい力点は支点(接地点)から最も離れた場所だという事に気が付きます。見えないものを見る力(理屈)です。それより前の段階だと経験数に裏打ちされていきます。てっぺんに当てたら倒れることが多いと学んでいきます。当て方にも子どもたちの考え方が反映されていて面白いものです。
代替行動の分化強化
食事介助の必要なG君はこのごろやたらお腹が減ってくるらしく、ご飯がたりないと、机を蹴って要求します。これに対しスタッフが、「おなか減ってるねーおかわりするねー」と対応するのはアウトです。机を蹴ったら、おかわりが出て来るという行動が強化されるからです。机を蹴ったなら、おかわりカードか「欲しい」カードを持たせて後方から手を介助して介助者に渡させます。その行動ができたら「はいどうぞ」と少量提供して、もう一度カードを手元に置いて要求行動を促して同じ行動ができるように何回も行います。行動を起こして意味を伝えてくる方ですから、行動は必ず代替することが可能です。この方法は色々応用できます。
心の杖
今日のYさんは、一番お気に入りのスタッフなのに、やけに絡んできます。食事中にカレーが付いた口で背中から抱き着いてきたり、あきらかに注意喚起(自分の方を振り向かせる)行動です。おかしいなぁと思っていると、帰宅後に朝持って出た人形が見当たらないとのこと。Yさん人形がどこかに行って不安だったのです。
以前「ライナスの毛布12/3」で心の杖について書きましたが、あの話には続きがあります。心の杖が不可抗力でなくなったらどうするのかということです。きっと今日の状況のように不安でたまらないと思います。それでその不安を色々な行動で表現するのですが、第3者には伝わらないことが多いです。
結局、必要なのは表出のコミュニケーションです。「人形をなくしてしまった」「不安だ」「どうしよう」という発信さえできれば、「よし一緒に探そう」とか「大丈夫かな」とか、もし見つからなくても「困ったねぇ」「悲しいねぇ」と共感のコミュニケーションができます。困ったことがあっても共感してもらう事で心を癒せます。その時、必要なのは自発表出のコミュニケーションなのです。それは話し言葉である必要はなくその人が手っ取り早く伝えられる方法ならなんでもいいのです。悲しいの感情カードを大人に渡せば、周囲にいた人なら察しはつくはずです。そこに「人形」カードが加われば確実です。絵カードコミュニケーションを言葉の苦手な方に薦めるのはこういう理由があります。
社会性の基礎は自分でわかることを積み上げること
当事業所では毎日何かしらの集団遊びを短時間取組みます。ボーリングだったりストラックアウトだったりダーツゲームだったりで、順番などルールがあるものです。認知レベルが高くなると、ルールは複雑になっていきますが基本は適切に遊びが楽しめるように、構造化支援も入れて取り組みます。
子どもは自分のやることさえわかれば、時間はかかっても自然に友達の様子にも関心を持つようになるのですが、自分のやることがわからなかったり、楽しめなかったりすると、そもそも遊びが成立しないので社会性を学ぶのは難しいです。
言葉がよくわからないF君はこういう取り組みになると付き合いはしますが、終わるのを待っている感じで、いらいらしています。たぶん、みんなで何かを取り組む場面は、自分ではよくわからないのにやらされてしまう束縛感が強いのだと思います。できることわかることをみんなとやるから社会性は育ちます。当たり前のことですが、分からないのにみんなでやる事を優先されたばかりに、自立心や自尊感情が傷ついている重度の方は少なくありません。まず、みんなでやる事よりも自分がわかることを積み重ねていくことを優先する事が重要です。
届かない気持ち
E君、友達のことについて「文句ばっかり言っていて暗いし、周りへの影響考えてないなあれは」と語り始めます。「ふーん、なんでなんだろうね」との問いに、「空気が読めてないんだよ。もっと、謙虚にならないとね」と言います。この発言のE君「もうおれなんかあかんし」「おらんほうがええし」とネガティブ発信の王者です。「うーん。人のことは良くわかるんだね」と返すと、「そうやで、いつも気を使ってるからね」と返事。そうか、君なりに気を使っているんだね。私たちに君の気持ちが届かないだけなんです。
フロアバレーボール
鈴が入っている視覚障害者用のバレーボールを購入して遊んでいます。昔は盲人バレーと言ったのですが今は晴眼者も一緒にプレーできる6人制バレー(前衛選手はアイマスクもしくはアイシェードを着用)=フロアバレーボールという名前になりました。事業所ではみんながアイマスクをすると難しいし面白さがわからなくなるので、みんなで遊べるアレンジを考えています。
視覚障害者用の球技はフロアバレーボール以外にもあり、例えばゴールボール・グランドソフトボール・サウンドテーブルテニス・ブラインドテニス・ブラインドサッカー・ブラインドゴルフとあり、最近はブラインドラグビーと言うのも出てきたそうです。晴眼者もアイマスクをして一緒に取り組めるので、遊びながら障害理解が進む利点があると思います。
アイラブユー
D君がいらいらしていて、決められた時間内にPCが終了できませんでした。最初に17時までに終了すると約束したので、スタッフは次回はペナルティーとしてPCは使ってはいけない旨をD君に言い渡しました。
確かに約束を破ったのは事実ですが、そのペナルティーは示していませんでしたし、次回にペナルティーと言うのもD君にしてみれば踏んだり蹴ったりでした。このような時に私たちはどういう支援を行えばいいでしょう。
奇策はありません。基本を貫くことです。不適切な行動は、まず振り返らせます。そして理由があるなら聞いてみます。理由を言い訳と言わずにまずは聞きます。そして、約束を反故にするのはどう思うか聞いてみます。適切な反応がないなら、約束を破られた人は悲しいという感情を伝えます。そして、次回はどうすればうまくいくか考え合います。本人から出てこなければ、いくつか提案して次回にもう一度話し合って決めようと提案します。きっとうまくいくよ応援しているよと伝えて終わりにします。
おおきな声を出したり、感情をぶちまけないで、受容的にうなずき、静かに静かにお話をします。子どもと別れ際の「きっとうまくいくよ。応援しているよ」は重要です。この業界のプロフェッショナルの合言葉です。欧米人の家族への「アイラブユー」みたいなものです。複雑な意味はないけど、使わないとひと騒動起こるワードです。
わらべ歌遊び
わらべ歌遊びをしました。打楽器も使ってみんなで楽しく声を合わせました。「わらべうた」は、ペンタトニックで構成されています。だから、ずらして歌ったり、同じ音の繰り返しを加えたり、異なる2曲を同時に歌ったりしても、不快な響きになりにくいです。わらべうたには様々な魅力があります。合唱して少々音を外す声が入っても気になりませんし、音をはずすのはかえって難しいと言えます。だからこそ、伝統的に子どもの遊びの中に根付いたとも言えます。
ペンタトニックとは、例えばド−レ−ミ−ソ−ラ(−ド)のように、半音のない五つの音からなる音階です。この音階は、連続する五つの完全5度音程=ド−ソ−レ−ラ−ミを、1オクターブ内に収めたものです。二つの音がよく溶け合う音程を協和音程と言いますが、それは、音程を構成する二つの音の振動数の比が単純であるほど近親度が高いそうです。完全5度の音程は、振動数の比が3:2となっており、これは、オクターブ(完全8度=1:2)に次いで単純なのです。こうした振動数比の音構成が、自由に音を重ねても不協和を感じさせない仕掛けなのです。などとうんちくを並べましたが、最近わらべ歌なんて路地から聞こえてきません。わらべ歌復活とまではいかないにしても、この音階の心地よさを生活の中で子どもたちに感じて欲しいと思います。
書き初め
書き初めとは、年が明けてから書く初めての書のことです。書き初めは、1月2日に行うものが習わしと言われ、この日に書くことによって書道がうまくなると昔から言い伝えもあるほか、昔は1月2日は仕事始めとされており、一年の仕事はじめの日でもあるので、目標やうまくいくことを願うという意味で行われているとも言われています。
書き初めで書いたものは、どんと焼きの火の中に入れて燃やすことが一般的とされており、この火の中に入れたときに火の勢いで書き初めを書いた紙が高く舞い上がるほど、字がうまくなると言われています。
すてっぷでも書初めをしました。「子」「寿」「想」とか、自分の名前やアート書道まで思い思いに書きました。