すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

待つことで見えてくること

 好きなことをしている時間というのは格別のものです。大人になると、なかなか好きなことに没頭できる時間はありません。何かしら他のことをしなければいけない時間がやってきます。そんなときは時計を見たり、タイマーをかけたり、アラームをセットしたりと自分なりの方法を大人の多くは見つけています。子どもたちはまだ見つけている最中。自分で見つけられる子もいれば、大人の支援があって見つける子もいます。

 高等部のW君は、DVD鑑賞が大好き。DVDエリアを使っていた友だちが先に帰ると、DVDカードを職員に渡して、DVDエリアに行きたいことを伝えてきます。W君の最近のお気に入りは「風立ちぬ」。以前は「紅の豚」が好きだったりと、無類のプロペラ飛行機好きのようです。ほかにも室外機のファンをずっと眺めたり、停まっている車の下をのぞき込んでシャフトを見ようとしたりします。皆さんの周りにもそんな子がおられるのではないでしょうか。じっと回るものを眺めている様は、まるで工学博士か修理工場の大ベテランのよう。いったい回るものの何が、彼らを引き付けるのでしょうか。

 さて、好きなことをしているとあっという間に時間は過ぎるもの。DVDを見ていたW君も帰る時間になりました。まだ時計やアラームの意味が分からないW君。職員が彼とモニターの間に手を入れて、「終わります」のサインを出しました。するとW君は、自分の手をモニターの電源の上に置きながら、まだDVDを見続けています。一見すると「止めないで」と言っているようです。どうしようかと職員が逡巡していると、あることに気づきました。W君は手で電源を覆っているのではなく、電源ボタンの上に人差し指を置いているのです。まるで「自分で止めるよ」と言っているかのよう。本当にそんなことを思っているのかはW君にしかわからないことですが、職員は待ってみることにしました。すると、2分ほどでW君は自分で電源を切ったのです。すかさず職員は「自分で電源切れてえらいね」と大いに褒めました。そのままW君は自分でスケジュールに戻り、トイレに行って帰る準備を始められました。

 W君のように、タイマーやアラームの意味が分からない子どもには、職員が1対1でつき、切り替えも大人主導でしてしまいがちです。実際W君も、放っておいては切り替え出来ない場面がまだまだ多くあります。しかし、W君も知らず知らずのうちに、自分なりの方法を見つけているかもしれません。今回で言うと職員にきっかけはもらっていますが、その後、自分で切り替えることが出来ました。「待つ」ということも、成長の機会を保障する方法の1つになりますね。

文章問題

先日じゃんぷに来ているV君が「文章題苦手や…」とつぶやきました。

V君だけでなく,他にも算数,数学の文章問題に対して苦手意識のある子どもは多いです。そういった子どもには一般的に図に表したり等,視覚的にわかるような支援をします。

ではなぜ文章問題が苦手な子どもが多いのでしょうか。文章題を解くにはいくつかの処理が必要になります。

・文章を読む(変換過程)

・書かれていることをイメージする(統合過程)

・出てきた数字をどんな順番で計算しようか計画する(プランニング過程)

・計算を実行する(実行過程)

 

大きく分けて上記4つの過程に分けることができます。これらを処理していくためには様々な力が必要となります。数の理解とイメージが出来,計算が出来る子どもでも文章が読むことが苦手で解けない…文章は正しく読めても数字の処理が苦手で式が作れない等つまづくポイントは子どもによって様々です。

子どもがどのポイントでつまづいているのかがわからないままでは漠然とした支援になり,一般的には有効とされていてもその子にとっては意味のない支援,ということがあります。

じゃんぷでは子どものどこにポイントがあるのかを見極め,それに対して有効な支援をすることを心掛けています。

(参考・引用 「子どものつまづきからわかる算数の教え方」 監修:平岩 幹男 著:澳塩 渚 合同出版 2021)

1つずつ,時間を区切って

じゃんぷに来ているU君が頑張って宿題に取り組んでいます。

やる気はきっちりあるのですが,どこか宿題中ボーッとしてしまい,終盤「あわわわわ」と急いで宿題をすることがありました。

書くことへの苦手さや,計算等の処理に意識を集中するので,時間にまで意識が向かないようです。そこに力を使っているのでボーッとしてしまうのでしょう。

そこでタイムタイマーを使い,視覚的に時間を意識させるような支援をしてみました。また,彼は「宿題は時間が物凄くかかる」と思い込んでいるところもあります。1つの宿題が終わった時に「5分で終わらせることが出来たね!すごいやん!」と「これだけの時間で終わらせることが出来た。」という経験を具体的に伝えるようにしました。

まだ始めたばかりですが,少しずつ経験が積み上がっているように思えます。普段は帰る直前まで国語算数の宿題を取り組み,「まだ音読がある!」と慌てていました。しかし先日,算数の宿題を帰る5分前に終わらせ,「あと音読かな?」と聞くと「それはもう終わってるよ!宿題終わり!」とすっきりした表情で教えてくれました。U君,よかったね!

ゲームのハンデ

 すてっぷの小学生メンバーの休憩時間のブームは、昨年はiPadが中心でしたが、今年はWiiUでの大乱闘スマッシュブラザーズ(略称「スマブラ」)のようです。「スマブラ」は、子どもたちの好きなキャラクターがたくさん登場するサバイバル格闘ゲームです。みんな得意なキャラクターを使って、「やった!」「やられた!」と大盛り上がり。

 何年か前も小学生メンバーで「スマブラ」がはやった時期がありました。しかし今年のメンバーほど盛り上がっていたことはありません。「スマブラ」は対戦ゲームですので当然勝ち負けがあります。もともと負けることが苦手な子が多い中、負けが続くと「やめる」と遊ぶ人数がどんどん減っていくということも多々ありました。そう考えると今の小学生メンバーたちが、負けても「もう1回」と最後まで仲良く遊べているのは、絶妙なバランスで成り立っているのかもしれません。

 そんな中でも、トラブルがあったり、職員が気になるようなことがあったりします。実は思いやり(2022/5/3)のJ君が落ち込んだきっかけのゲームが、この「スマブラ」でした。その後G君が落ち込んでいるJ君に思いやりを見せてくれ、J君が元気を取り戻したのは紹介した通りですが、他の子が帰った後G君とJ君が2人で「スマブラ」をすることに。これはチャンス!と、「スマブラ」のゲーム内で設定できるハンデを職員から紹介しました。トラブルがあったJ君へのフォローもありますが、「スマブラ」の上手なG君がゲームの集団には入らないことが気になっていて、タイミングを見てハンデを紹介しようと思っていたのです。

 負けるのが嫌な子どもたちですが、ハンデをつけることも嫌がることが多いです。平等を好むのか、ハンデがついているところで勝ってもうれしくないのか…。そんなときは職員が遊びに加わり、バランスを取ろうとしますが、子どもたちも敏感です。少しでも手抜きに映れば、「わざと負けないで!」と怒り、やる気をなくします。それに比べると、事前にハンデを提示して、お互いに納得したうえでスタートした方が、穏やかに終えられることが多いです。それも数字で示すことのできるハンデの方が、より受け入れてもらえやすいです。

 J君もはじめは「スマブラ」のハンデに、「えー」と言っていましたが、G君がすっと「いいよー」と言ってくれたので、すんなりハンデを受け入れて遊びました。終わった後で聞いてみるとJ君は、「ハンデがあったから、勝ったり負けたりしたー」と少し前向きに捉えてくれていました。

 さて今後、子どもたちはハンデを取り入れて遊べるでしょうか。せっかく子どもたちで楽しく遊べている休憩時間ですので、職員からは無理強いせず、子どもたちどうしで成長しあえる機会を保障していきたいと思います。

みんなが楽しめるように!

最近じゃんぷの休憩時間はジェンガや坊主めくりが盛り上がっています。

ジェンガの経験がないP君は「僕はいいよ,違う遊びやってるね。」と言っておもちゃで遊んでいます。しかしすぐ近くで「おおーー!!」「崩れるなー!!」と盛り上がる声が聴こえ,気になるようです。P君が寄って来て「僕もやっていい?」と聞いてきました。

P君の順番が回ってきました。ジェンガを引き抜こうとしますが崩れることが怖いようです。慎重に引き抜こうとするのですが「怖いよー!」と言って中々進むことが出来ません。すると一緒に遊んでいたQ君が「大丈夫!」と言ってジェンガを支えようと手を添えました。

それで安心出来たのか、P君はジェンガを引き抜くことが出来ました。P君もQ君も一緒に遊ぶ姿はあまり見ることはありません。Q君はP君にジェンガを楽しんでほしかったようです。本来はルール違反ですが,それよりもみんなが楽しめる方を優先したのです。

その出来事からおやつの時間にP君とQ君が楽しくお話をしたりする姿が見られるようになりました。子ども一人一人に様々な配慮があります。それを子ども自身が考えた事に感動をしました。

「トーストはおやつに入りますか?」

「先生、おやつにバナナは入りますか?」遠足を思い出させる文言と言えば、これではないでしょうか。みなさんも一度は聞いたことがあると思います。時期的にも「遠足に行ってきたよ!」という子どもたちが多いですが、実際に先生に聞いた人は何人くらいいたでしょう。もし聞かれたら、皆さんならどう答えますか? バナナはおやつ? デザート? 筆者は、チョコバナナならおやつ、バナナ単品ならデザート。加工するかしないかがボーダーラインだと考えているのですが…。う~ん…、難しい問題ですね。 

逆に子どもに聞いてみると、どんな答えが返ってくるでしょうか。子どもの中には、大人の悩みなんて一刀両断。「バナナはおやつやろ」と言い切る子もいます。そして、その考えをなかなか変えられない子どもが少なくありません。小学生のN君も、決められたルールを守ることができる一方で、後から変更になったこと、自分の中でこうだと思っていること対しては融通が利きにくい傾向があります。そんなN君がB君のおやつをみてびっくり。

「B君、おやつの時間にトースト食べているけど、あれはおやつではないんじゃないの?」

と職員に尋ねました。N君にとって、トーストはおやつではなくごはんであるものだったのです。B君は食べられるものが少ない中で、トーストが好物なので、おやつにトーストを食べています。そんな理由はあるのですが、職員はシンプルに答えました。

「すてっぷでは、トーストもおやつに入るよ。N君も今日はトーストにする?」

すると、N君は「そうなんや!どうしようかな…また今度で。」と言って、普段よく食べるお菓子を要求しました。数日後、N君が職員のそばに駆け寄り不安そうに尋ねてきました。

「おやつでトーストって食べられる?」

職員は、「もちろん食べられるよ。今日食べる?」と聞くと、N君は「うん。食べる。」と答えました。N君は食べた後、「おいしかった。また食べたい。」と笑顔で言っていました。

一度は職員におやつでトーストを食べていいことを聞いたものの、もう一度不安そうな顔で確認してきたN君。きっと心の中で、「トーストはおやつじゃない気がする。」という気持ちと「トースト食べてみたいな。」という気持ちがせめぎ合っていたのだと思います。「おやつで初めてトーストを食べた。」という小さなことですが、融通を効かせることで「できないと思っていたことができる。」という体験ができたことがよかったと感じた出来事でした。

さて、バナナはおやつなのかデザートなのか。N君に聞いたらどんな答えが返ってくるでしょうか。「おやつやろ」「デザートやろ」と言い切るのか。それとも違う答えを出すのか。融通を効かせるチャレンジは、まだまだいっぱい作れそうです。

持ち物に表れる子どもの困り

じゃんぷでの個別学習の時間,O君は「あ,消しゴムない!カバンの中に落っこちてるかも!」「定規も落ちてたかもしらん!」「鉛筆全然削れてない!先生削ってきていい?」等々...次々と忘れ物や落とし物に気づいては,あたふたと確認をしに行くことがあります。

O君に限ったことではありませんが,持ち物から子どもの様子を読み取れることがあります。当然持ち物を忘れたりすることはたまにありますが,子どもがそこに注目できない程,気持ちが不安定になっていることがあります。

忘れ物だけではなく,普段整っている筆箱の中身がグチャグチャになっている等持ち物の状況から子どもの状況を読み,支援の仕方を整理することがあります。様々な情報から子どもの状況を読み取ることが出来ます。

 

「場所」を示す

じゃんぷではスケジュールを示す時に活動場所を表す記号を使っています。

じゃんぷではそれぞれのエリアに「ふくろう」「うさぎ」「かめ」等,子どもに馴染みのある動物の名前をつけています。

それに合ったマークをスケジュールカードにも示し,「どこで学習・活動をするのか」を子どもが見て分かるようにしています。子ども達が自分で見て,移動が出来ることも大切にしています。もちろん程度の差はありますが,定着している子どもの真似をして同じようにスケジュールを見る低学年の子どももいます。

文字を読むことが苦手な子どもでも,マークを見てどこに行けばよいかわかります。どのような子どもでも自立的に動けるような支援をしています。

情報を整理して文を書こう!

じゃんぷに通っている子ども達の中に,「感想文って苦手やなぁ。」とつぶやく子が多数います。

読み書きを苦手としている子ども達は本を読む習慣が少なくなり,必然的に「文章」に触れる機会が少なくなります。「アニメは好きだけど漫画は読まない。」という子も中にはいます。

学校では校外学習等行事の後に感想を書く機会がありますが,そういった子ども達にとって憂鬱な時間になるようです。子ども達の意見をまとめていくと「何を書いたらいいかわからない。」「どうやって書いたらいいかわからない。」「文を書き始められない」等々…

じゃんぷでは子ども達と行事の感想を聞きながらマインドマップで表したり,時系列ごとに並べ,情報を整理しています。そして書くことが苦手な子の場合は状況に応じて,文を一緒に書いたりなぞりにしたりタイピングにしたりと様々な方法を使っています。

情報を整理することで「あ,わかった!書けるわ,先生見てて!」と言ってくれた子もいます。子どもは道筋を示すことで出来るようになることがあります。

子どものつぶやき

じゃんぷに来ている中学生のM君が「テスト嫌やなぁ…勉強嫌やなぁ…」とつぶやいていました。

M君は中学1年生で,今回が初めての定期テストです。一見「勉強するのが嫌」という風に聞こえますが,職員は「不安があるのかな。」という見方をしました。

個別指導の時間,学習の前に一緒にテスト範囲を確認し,その中身を確認しました。するとM君は安心したからか学習に集中して取り組むことが出来ました。(一緒に考えよう! : 05/18)でも書きましたが,子ども達は日常生活の中で不安を抱えていることが多いです。そういった不安を子ども達の小さなつぶやきから拾い,少しでも解消できるような支援をしていくよう心掛けています。

飲み干す一杯

 エースコックさんから販売されている「飲み干す一杯」シリーズのラーメンをご存じですか? いろいろな味があり、ご当地ラーメンシリーズも揃えたラインナップで、食べるだけで小旅行に行った気分になります。最近の筆者のお気に入りです。

 支援学校高等部のK君はジュース大好き。いっきに飲みたいのですが、まだ嚥下の練習中。いっぱい飲もうとするとこぼしてしまいます。以前は哺乳瓶マグで飲んでいたのですが、今はミニサイズのペットボトルで練習しています。コップよりも飲み口が狭いので飲むときにこぼれにくく、飲みやすいので練習にはうってつけ。二口ほど飲めるくらいの量から始めました。飲み干した後に職員がまた同じ量を入れておかわりにしています。ちなみに、このおかわりが好機とばかりに、絵カードを使って要求の練習にも取り組んでいます。これまで当ブログでも取り上げているPECS(絵カード交換式コミュニケーションシステム)です。くわしくは過去記事をご覧ください。

 さて最近は小学生たちといっしょに公園に行くことの多かった筆者ですが、先日久しぶりにK君のおやつの様子を見ることができました。そこで筆者はミニボトルに注がれたジュースの量を見て、「少し多いんじゃないかな?」とオドロキ。見た感じ五口くらいの量でした。けれど、K君はジュースをこぼすことはありませんでした。二口飲んだ後、飲むのを一呼吸おいて止め、その間、ミニボトルを少し傾けこぼれないようにしていました。そして、K君は自分の目元にミニボトルを持ってきて、中をのぞきこみまた飲み始めます。二口、三口ほどで飲み干して、絵カードを職員に渡しておかわりを要求をしました。その後も、同じくらいの量を注がれていましたが、同じように、二口で一度止める→ボトルの位置を調整→中身を確認→飲み干す→絵カードでおかわりを要求という流れを繰り返して、こぼさないように飲むことができていました。数か月前は二口くらいの量でもこぼしていたのに…、と驚くと同時に感動しました。

 繰り返しの毎日の生活のなかで少しずつ変化や成長を見れるというのは、とても嬉しいことですね。一杯分まで飲み干せる日がいつか来ますように。

 

避難訓練

先日,じゃんぷでR4年度初めての避難訓練を行いました。今回は地震を想定しました。

子ども達には事前に写真,絵カードで避難場所や机の下に隠れるといった行動を示しました。しっかりと示された通りに行動し,避難場所である「老人福祉センター桜の径」まで避難することが出来ました。

桜の径までの避難が終わり,職員から少しだけ災害の経験の話をしました。「大雨が降った時今みんなが立っている道は浸水して腰につかるくらいやってんで。」と話すと「え~,どうやって帰ったん!?」と興味津々な様子です。

「東北の地震の時はテレビが全部それのニュースになるくらい大きな出来事やったんよ。」「阪神の時は京都も揺れてな…」と続く話に対して子ども達が聞き入っていました。

防災訓練は真剣に取り組まないといけないですが,リアリティーを出しすぎて子どものトラウマになってもいけません。職員で振り返りをした時,避難訓練前には「防災週間」等を作り,少し災害についての話をする,といった時間を設けてもよいかもしれないという話が出ました。

「学びの広場じゃんぷ」から「老人福祉センター桜の径」まで約5分で避難できました。

見本になります。

じゃんぷに来ている3年生のL君が自立学習の時間,集中して宿題に取り組んでいます。

L君は宿題に対して苦手感を持っています。「しんどいな~」と言いながらも頑張って取り組んでいました。

今年度からL君が来ている日に年下の友達が来るようになり,同じ場所で自立学習をするようにしました。

「L君には見本になってほしくてね。自立の時間はこんな風に動いて,勉強始めるっていうのを見せてほしいんよ。」と説明しました。L君には自立の時間の学習の始め方の見本になってもらいたかったので,勉強中に休憩を挟んだり,気持ちを切り替える行動は取っても大丈夫,と伝えました。

するとしっかりスケジュール通りに行動し,宿題も集中して取り組みました。「無理してないかな?」と思い,「国語終わったら休憩してもいいよ。」と伝えていますが「いや,大丈夫!」と返事が来ます。

「めっちゃ集中してるやん!」と聞くとニヤニヤと笑うだけで理由は話してくれないのですが,やはり年上としてのプライドがあったのでしょう。

「年下の子の見本になる」というのは子どものやる気に火をつけるようです。でも疲れた時は「疲れた」って言っていいんだよ~!

一緒に考えよう!

先日じゃんぷに来ているJ君と学校で発表する文章を考えました。

学年での行事の中で発表する係になったようです。しかしJ君は意欲はあるものの不安も強い様子です。「先生一緒に考えて~」とお願いをしてくれました。

学年全員の前で発表する文章なので,J君はとても緊張しています。「どんなことを話すか。」と中心のテーマを書き,それをマインドマップにして内容を整理していきました。文章が出来上がっていく内にJ君からもどんどんアイデアが出,「ここはこんな言い方したい。」「ここでこれを言いたい。」と前向きになっていく姿が見えました。

学校生活の中での不安は子どもによって様々です。中には「教室で発表すること,間違えることが不安」という子ももちろんいます。

学習に対しての不安,そして今回のような発表といった行事に対しての不安に対して向き合い,子どもが少しでも安心できるようなことがじゃんぷでも出来ればいいな,と感じています。

坊主めくりで大盛り上がり!!

先週のじゃんぷでは休憩時間,坊主めくりが盛り上がりました。「坊主めくりって何?」と聞く子も多く,そういった子は知っている子から教えてもらったりロールプレイをしながらルールを覚えてから遊びました。

じゃんぷでは低学年から高学年まで入り混じって遊ぶので,簡単なルールで遊んでいます。3年生のK君が「俺知ってるで!」と少し複雑なルールも教えてくれました。

「初めて遊ぶ子とか1年生の子もいるし簡単なルールでもいい?」と聞くと「全然いいで!」とあっさり承諾してくれました。同法人の「育ちの広場すてっぷ」でも,遊びの時はこういったコミュニケーションや交渉の練習の場面が出てきます。

下の画像に載せている通りのルールで遊びましたが,(というか筆者自身このルールしか知りません。)視覚的にわかりやすいということと,単純なルールなこともあり,どの年齢の子も盛り上がって遊びました。

普段学習を頑張っている子ども達が,ほっこりしながらも友達と遊んでいる姿が見れた場面でした。

読み支援のステップ

読み書きを苦手としている子どもを支援する時,少しずつステップを踏み,その子が苦手としている部分を細かく把握するようにしています。読み書きを苦手としている子どもでも,出来るところと出来ないところがあります。そこを把握し,効果的なトレーニングをするようにしています。

ひらがなが正確に読めなかったり,読み間違いがあったりする場合にはまず「正確に」読める練習が必要です。それも見て瞬時にわかることが必要です。(読み支援と語彙 : 05/13)でも書きましたが,「ねこ」を音のまとまりとして読めるのか,文字を拾って「ね」「こ」と読むのかということです。ただ,前回も書いたように読み書きが苦手な子どもの場合知っている語彙が少ないこともあります。その時は言葉と意味を絵とマッチングさせる等をして語彙の支援から入る必要があります。

文字をまとまりとして読めれば,「ねこ」という文字を見ると猫の姿や鳴き声が瞬時にイメージできるようになります。2文字の言葉が読めるようになったら3文字,4文字…と徐々に増やしていきます。

この後文章の読みに繋がっていきますが,まずひらがなを正確に読むことが最も重要です。ただ子どもはどうしても疲れが溜まります。疲れさせないようタイミングを見計らいながら支援に取り組んでいます。

(出典、引用:「ディスレクシア発達性読み書き障害トレーニング・ブック 著 平岩幹男 発行 合同出版 2018)

「いっしょゲームせん?」

 小学生のA君と中学生のB君は、休憩時間に話すことはほとんどありません。ですが共通の趣味がありました。それは「マイクラ」です。どこかで2人が関わり合える機会を作れないかな、と職員で話し合っていました。

 先日、A君とB君を含めた3人の子どもと職員で、黒ひげ危機一髪とジェンガをして遊びました。3人とも楽しく遊べていた様子で、振り返りでもそれぞれ「楽しかった。」と言っていました。そこで職員はこの機会を逃すまいと、A君に話しかけました。職員がA君に「もしB君からゲームしようって誘われたらどうする?」と聞くとA君は「してみたい。」と答えました。「じゃあA君がB君と一緒ゲームしたいと思った時に自分から誘えるように誘う練習してみようか?何っていう?」と職員が聞くと、A君は「B君、いっしょにゲームせん?」と職員に伝えました。職員は「上手に言えたね。したくなった時に、B君にそう言ってみたらいいと思うよ。」と返しました。

 

 すてっぷではいろいろな活動や設定遊びをしていますが、休憩時間にも子ども同士でコミュニケーションを取れる機会があります。コミュニケーションをとるのが苦手な子でもその機会を逃さないように、職員はいろいろと働きかけています。例えば、子どもたち同士をお互いに認識させることです。外でパスサッカーをする時はパス先の相手の名前を呼ぶルールを入れたり、振り返りをする時はどの友だちと一緒に活動したか名前を想起させたり、顔写真カードを用意しておいて話をすすめたりしています。

 また、「こうしたら上手くいく」という見通しを持たせています。今回のケースで言うと、A君とB君は同じゲームをして楽しんだ経験が出来ました。そこで休憩時間のマイクラでもお願いしたら一緒に遊べるかもしれない、と前向きに考えられるようにします。そして職員相手に事前に伝えることで見通しが持て、抵抗が少なくなったり自信が持てたりするようにシミュレーションをしてみました。

 

 「千里の道も一歩から。」A君とB君が一緒にゲームできる日はまだ遠いかもしれませんが、毎日の休憩時間にその機会があります。その機会を逃さないよう、自分でつかめるように、職員も働きかけていきます。

読み支援と語彙

じゃんぷに行っている読み支援の一つとして「単語を音のまとまりとして読むトレーニング」に取り組んでいる子がいます。

これは例えば「ねこ」を「ね」と「こ」ではなく,「ねこ」と音のまとまりで読む練習です。

一般的には「ねこ」という文字を見た時に「ねこ」という音のまとまりとして読み,ねこの姿を思い浮かべます。それは「ねこ」を知っているからですね。音のまとまりとして読むためにはその単語を知っている,つまり語彙に入っていることが必要になります。

読み書きが苦手な子どもは読むことに対して疲弊し,どんどん文章を読まなくなります。その分語彙が少なくなってしまうことが多くあります。そして音読等,学校での学習に苦手感を持つことがあります。

いきなり文章…ではなく,まずは単音,そして2文字,3文字とスモールステップで読みの練習をし,そして語彙の意味も教えるようにしています。語彙の意味を教える中にもステップがありますが,それはまた後日…

(出典、引用:「ディスレクシア発達性読み書き障害トレーニング・ブック 著 平岩幹男 発行 合同出版 2018)

物語文の読み支援

じゃんぷの個別指導の時間,国語の教科書の物語文の読み支援に取り組んでいます。

場面ごとのカードと,挿絵のカードに分け,文にあった挿絵をマッチングさせたり,その後に物語の順に並べる,といったことに取り組んでいます。

物語文を正確に読み取るには場面を読み取ることが大切です。場面とは

・時間の変化

・場所の変化

・人物の変化

上記の3つから見分けることが出来ます。そういった言葉に線を引いたり,パソコンで文字を太くしたり等,注目がしやすいように読みます。読むことが苦手な子もいるので場合によっては大人が読むこともあります。

物語文は話の流れを正確に読み取ることが必要です。子ども達が学校で「この話分かるよ!」と思いながら学習できるように支援をすることも大切にしています。もちろんすべての子どもに合う…というわけではありませんが,読み支援の一環として紹介をします。

「好き」と「苦手」のバランス

じゃんぷに来ている中学生のG君は書くことに対して強い苦手意識を持っています。読みができるので大人はあまり気づかないのですが,実は読みの速度も書く速度も遅かったりします。これを流暢性と言います。文字を音に変えたり,音を文字に変えたりする速度のことを言います。

彼は聴覚法に取り組んでおり,今はローマ字の聴覚法に挑戦しています。初めは五十音表の中からひらがなを探すことすら難しかった彼が今はパソコンで検索する時にローマ字入力を平然としています。(キーボードの位置をまだ覚えれていないので時間はかかっていますが大きな進歩です。)

動機となったのはやはり自分の興味です。自分の好きなことを調べるためにパソコンではキーボード入力をしないといけない。じゃんぷでは周りに宿題に取り組んでいる友達もいるので音声入力をするわけにはいかない。そのためローマ字入力を頑張って出来るようになりました。

書くことについても彼の好きな分野のクロスワードを提供しています。大人でも知らないような歴史の知識を持っている子です。積極的に取り組んでいます。しかしたくさんさせすぎると嫌気が差してくるかもしれません。「好き」と「苦手」のバランスは考えながら支援をしています。

漢字の組み立て

じゃんぷでは漢字の読み書き支援として,「遊び活用型読み書き支援プログラム」というものを使っています。

主に「漢字の組み立て」を使っています。学校では漢字の形から偏と旁(つくり),書き順等覚えることがたくさんあります。学年が上がるにつれて覚える漢字の量が増え,形も複雑になっていきます。

「漢字が書ける」ということは部分的に分けていくと,

 

・「形」がわかる。

・「読み方」がわかる。

・漢字の「意味」がわかる。

 

といったことに分けることができます。更に細かくすると書き順等も出てきます。つまり,様々な脳の機能を使って漢字を覚え,書くことが出来るようになります。

読み書きが苦手な子どもたちにとってそういったことに脳のエネルギーを多く使います。そこにドリルでの反復練習等,さらに力を使うことが出てくると脳がヘトヘトになってしまいます。

じゃんぷで使っているソフトでは,漢字を偏と旁(つくり)を中心に3~4個のパーツに分け,書き順に沿って組み立てていくものです。

これを使って大まかな書き順を知り,漢字と読みの一致の練習をしています。

これを使って「この漢字はもうわかるで!」「この漢字を書けるようになったで!」と話してくれる子どももいます。じゃんぷではスモールステップを踏んで,少しずつ子どもたちの学習支援を進めています。

ノートの変化

じゃんぷに通う子ども達も新学年になって1ヶ月が経ちました。少しずつ新しい環境に慣れてきた様子も伺えます。

先日個別学習の時間の中,3年生のF君が「ノートが書きにくい…」と話してくれました。上手く話せない様子でしたが,「なんだか書きにくい。」といった感じです。

3年生になると理科や社会等教科が増え,ノートは主に方眼罫5mm(10mm実線入)の物を使います。今まで使っていたノートと比べるとマス目が小さくなり,1ページの書く量も増えていきます。

書くことが苦手な子どもにとってはそういった変化は案外しんどいものです。これまで以上に「書くこと」にエネルギーを使ってしまうのです。

F君に「ノートのマス目小さくなったからかもね。」と言うと「あ,それやわ!」と納得したようでした。この時は文章を拡大したものを見ながら書く,という方法を使いました。

さて,GWが明けた月曜日です。新しい環境には慣れてきたかな?子どもたちの話が楽しみです。

わり算支援

じゃんぷでは3年生になった子どもたちにわり算の支援をしています。どの子も「算数はちょっと…」と苦手意識を持っていますが,一概に苦手なところが同じではありません。苦手な部分も子どもによって違います。

計算そのものが苦手な子,単純な計算は出来るけど文章題が苦手な子,図形が苦手な子…とそれぞれ違います。

個別学習の時間では宿題の文章題やわり算の計算の仕方について支援をしています。主に数図ブロックを使ったり図を作ったりして視覚的に子どもがわかるような教え方をしています。個別学習の時間,算数だけを取り組むわけではないので短い時間で子どもが自分で「出来た!」と思えるよう,ブロックの操作や図を使いながら支援をしています。また,「コグトレ」の「まとめる」プリント等を使い,数の処理についての支援にも取り組んでいます。(「コグトレ」についてはまた後日ブログで紹介しようと考えています。)

自立学習の時間は子どもが自分で取り組んでいます。その中でわからないところは質問をしたり九九表を見ながら逆算して取り組む子もいます。

算数が苦手な原因は子どもによって様々です。数的処理の把握が苦手だったり算数ではなく文章の読みが苦手で文章題が苦手だったり…それぞれの苦手に合わせて支援をするよう心掛けています。

山に行きたい!

 ある日のお迎え前の時間に、K君のお母さんから電話がありました。「K君が雷が怖いのですてっぷに行くのを渋っている。」というのです。確かに西のほうを見ると雲がかかっており、夕方からくもりの予報になっています。お母さんが本人に直接伝えさせたいとのことで、職員が電話でK君と話すことにしました。「K君、今日は公園でフリスビーして遊ぶ予定なんだけど来ない? 雷が怖いなら、室内遊びでもいいよ。」と職員が伝えると、意外な答えが返ってきました。

 「山に行きたい。」

 K君とは別グループの活動に山登りがあったので、「山登りに一緒に参加する?」と聞くと、K君は「うん。早くすてっぷに行きたくなってきた。」と答えました。

 その後、K君が来所してきました。来ることを渋っていたような様子は全く無く、ニコニコしていました。職員が「今日は頂上まで行く予定だよ。結構歩くけど大丈夫?」と聞くと、「頂上まで行くと何があるの?」との質問。「頂上から見える景色はきれいだよ。」と伝えると、「そうなんだ。見たい!」と言って、わくわくしている様子でした。山登りに行くと、天気予報の予想よりも早く雲が広がってきて雨も降ってきました。頂上までは行くことができませんでしたが、友達や職員といっしょに楽しそうに下山。その日の振り返りでは、「楽しかった。」と満足している様子でした。

 活動をするにあたって、見通しを持たせることや決まったルーティンがあると、子ども自身が抵抗なく参加できたり不安を解消できると筆者は考えています。いつもなら来所してから個人スケジュールやホワイトボードで視覚的に見通しを持ってもらっていますが、今回は来所前のこと。雷が苦手なK君は西の空の雲を見て、足取りも重かったのでしょう。「すてっぷでは、今日何をするんだろう?」という気持ちも重なって、不安だったと思います。今回は電話で職員とコミュニケーションが取れ、気持ちを受け止めてもらい、見通しを持てたことで来所することが出来ました。

 すてっぷでは、本人の思いや希望を受け止めてやり取りすることで、納得して前向きに活動に向かえるようにしたいと思っています。山登りに行きたい気持ちを受け止めてもらうことでKくんの心が晴れたようで、「今度は頂上まで行く!」と職員に伝えて笑顔で帰路につきました。

 

思いやり

新リーダー(2022/5/2)で紹介したG君率いる小学生メンバーで、ある日の午前にローラー滑り台がある公園に遊びに行きました。お尻に敷く用の段ボールをすてっぷから持参し、「よし、みんなで滑り台に滑ろう」となった時のことです。Jくんが自分の段ボールを見て呟きました。「俺が敷くには小さいかもしれん。」それを聞いたG君がすぐさまこう言いました。「じゃあ、俺のと変えよう。俺の方が大きいと思う」職員の目から見るとどちらの段ボールも変わらないように見えたのですが、J君はG君から言われたことで安心したようで「ありがとう」と言って、その後、笑顔いっぱいで滑っていました。

その日の午後、別の公園に遊びに行く時間になりました。どうもJ君の様子が不安定です。泣きだしそうででイライラしてるのが一目でわかります。先に公園行きの準備に来たG君にどうしたのかと聞くと、休憩時間にみんなでやっていたゲームで負け続きだったそうです。J君は少し時間を置いて、気持ちが落ち着いてから公園に行く車に乗車させました。車内でG君がまだ不安定さが残るJ君に「飴食べる?食べると気持ちがすっきりすんねん」と飴を差し出しました。飴を食べたJ君は気持ちが落ち着いたようで公園に到着した時にはいつものJ君になっていました。「飴を食べるとすっきりするで」と伝えたG君。落ち込んでいるJ君を思いやってくれた気持ちに、それを聞いた職員みんながすっきりした思いになりました。

新リーダー

去年まですてっぷの小学生メンバーをひっぱってくれた上級生たちがそろって卒業し、今年は新5年生のG君が小学生メンバーの最上級生になりました。

上級生たちがいなくなった新年度のある朝、G君が事業所の外で顔を伏せて座り込んでいました。G君の好きなH先生がじゃんぷに異動になり、すてっぷには来ないことを、その日初めて知ったのです。たまたまG君を見つけた職員から「どうしたの?」と聞かれ、G君は涙ながら答えました。

「H先生がいなくなって悲しかった。(H先生のいる)じゃんぷに行きたい。でもすてっぷにはI君(G君と同じ小学校の年下の友だち)を誘ってきたから、じゃんぷに行けない」

その場はひとまず職員が気持ちを受け止め、公園への先発組から離れて落ち着いてから、後発組と一緒に公園に行き、遊んで集団に戻っていきました。以前は泣くほどショックな状況だと支離滅裂な説明になってしまっていたあのG君が…、と理路整然と説明できたことに驚きつつもすごいですねと職員が報告していると、別の報告が。

 実はその後、公園でひと悶着あったようで、G君は他の職員に、「I君とはもう遊ばない!じゃんぷに行く!」と話したそうです。なんでも、年下のI君が、年上のG君にお兄さん風を吹かせてしゃべるのが苦手だそうで。「親の心、子知らず」ならぬ「兄の心、弟知らず」。G君はこれから、どんなリーダー像を見せてくれるのでしょうか。楽しみです。

学習意欲の引き出し

じゃんぷに来ているF君は昆虫が大好きです。「今日アゲハ蝶いたで!」「学校で大きいミミズ見つけてん!」と報告してくれます。「じゃんぷの近くの木に樹液あったで!あれに虫が寄ってくるねんな~」と虫に関連したことも嬉しそうに話してくれます。

学習に関してはやはり苦手意識を持っているようで,特に漢字の宿題は「書くの嫌やな…」と言いながら取り組む姿があります。

先日個別学習の中で学校での勉強以外に「虫・昆虫の漢字」を見せました。F君は興味津々になって「これ蝶(ちょう)やろ!知ってるで!」「蜘蛛(くも)も読めるで!」とどんどん話してくれました。もちろん読めないものもありますが,「黄金虫は『コガネムシ』って読むんか,なんで?」「『コガネ』だからじゃない?」「なるほど~」と言いながら読んでいました。

「書けるかな?難しいかな…」と言いながらも漢字に対して興味を持った姿を見せてくれました。

じゃんぷ近くの樹液が出ている木です。

疲れの出方

じゃんぷに来ているC君,E君が休憩時間中,テンションが上がってはしゃいでいます。

普段からそういった面がある子どもですが,一段とテンションが上がってしまい,周りからの声が入らない様子です。仕切りを作り,別々に片付けの役割を与えてなんとか落ち着きを取り戻しました。

落ち着いてから「どうしたの?」とC君に聞くと「友達と一緒にいたらテンション上がっちゃうねん…」と話してくれました。個別学習の時間は「おはなし」の時間を作り,息抜きをしつつも学習の時は集中して課題をこなしている子です。そうなってしまう自分のことも少しは分かっているようなので,個別の時間は落ち着けていることを褒めつつ,「どうしたらいいかな?」と一緒に考えていこうと思っています。

また,E君は帰り際にボソッと「先生,俺疲れてるかも…」と言ってくれました。帰り際だったためあまり深くは話せていないのですが,「そうなんや,言ってくれてありがとう」と伝えました。

新学期が始まって1ヶ月が経とうとしています。以前,疲れた… ( : 04/21)で書きましたが子どもの疲れが様々な形で出てきているようですね。GWでリラックスしておいで~

対称な図形

先日じゃんぷに来ているD君と6年生の算数「対称な図形」の問題に取り組みました。

「対称な図形」の詳細は省きますが,線対称,点対称の図形を調べたり対応する角,頂点,辺を見つける単元です。「対称な図形」に限らず,図形は学習内容が定着しにくい単元です。単純な計算とは全く違うことと,コンパスや三角定規を使った作図の問題があるため,一つ一つの問題に時間がかかります。そのため計算問題よりもこなす問題量が少なくなってしまい,定着に時間がかかる子どもが多いです。

D君も線対称,点対称の意味はわかっていますが,いざ問題となると頭の中で図形を折ったり回転させたりするので一度混乱すると頭がいっぱいになってしまいます。

一回最初に戻り,アルファベットをシートにしたものを渡して線対称,点対称の振り返りをしました。すると一旦冷静になれたからか,その後の問題はスラスラと解いています。

どの教科でもですが,自分で操作して学習することは大事だと考えました。筆者自身教員時代,教科は違いますが理科の研修を受けた時に「実感を伴った理解が子どもにとって大切」と教えてもらったことがあります。小学校学習指導要領解説 理科編にも載っていることですが,改めて思い出した瞬間でした。

新出漢字の読み支援

じゃんぷに来ている子どもの中には国語の教科書の内容を使って,新出漢字の読みに取り組んでいる子どもがいます。

学校の授業では新出漢字を教えますが,漢字ドリルを中心に漢字の読み,熟語,書き順,練習といった順番で指導するのが一般的です。

読むことに苦手意識を持っている子にとっては新しい漢字の読みを覚えるだけで力を使い果たし,その後の書き順や練習はついていくのでいっぱいいっぱいになります。更に書くことに苦手意識を持っていると書き練習にまで頭が回らなくなってしまいます。

なのでじゃんぷの個別学習の時間で新出漢字を単元ごとに分け,フラッシュカード風にしたものを使っています。子どもによりますが,絵をつけたり解説する時間も取っています。子どもが教科書を読んだ時に「読める,意味が分かる」と思えるように学習をしています。

めざせ読み名人!!

じゃんぷでは読み指導の一環として「MIM(ミム)」を用いた指導に取り組んでいます。MIMについての詳細は省きますが,興味のある方は調べてみてください。

文字を読むことが苦手な子にとって,長音,拗音,促音が入る言葉はひらがなで習った読み方とは違う読み方をしたり,或いは読まなかったり等更にややこしいことになります。

特殊音節の読み方が定着しないまま学習が進むとことばの書きにも影響が出てしまいます。子どもはますます自信をなくし,読み書きが嫌いになってしまいます。

ただ読むだけではなく,言葉を読むときに手を叩きながら読む,という練習をしています。「清音,濁音,半濁音は手を叩く,促音は手をグーに握る,長音は合わせた手を下に伸ばす,拗音は手をねじって叩く」といった規則を作り,一文字ずつ読んでいく練習をしています。その練習が重なったら「①かけこ ②かけっこ ③かっけこ」と書かれたカードを見せ,正しい読み方の番号を言ってから読む,という練習もしています。

じゃんぷに来ている子どもの中には「これ楽勝や!先生聞いててな!」と自信満々に取り組みを始める子もいます。もちろん向き不向きはありますが,読み指導の一つとして紹介をします。

疲れた…

じゃんぷに来た子どもたちの顔つきが少し疲れている様子でした。新年度になって,6時間授業が始まったこともあるのでしょう。その中でも疲れやすいB君ですが,個別学習の時間は張り切って勉強をしています。カタカナ書きの練習は普段ハ行までですが,「今日はマ行まで書く!」と言って頑張って取り組みました。

しかしそれで力を使ってしまったのか,自立の時間のスケジュール(宿題)を見るとどんどん顔が暗くなっていきます。漢字の宿題はなんとか頑張りましたが,計算ドリルの宿題は「もうできないよ…」と言って床に寝そべってしまいます。計算ドリルの宿題は逆算(5×□=20 □の数字を求める)の問題が20問で,単純な九九から少し考えないといけない問題でした。普段のB君なら一人で取り組める問題ですが,疲れている状態なので見ただけで嫌気が差したのでしょう。

「〇分まで休憩する。」「〇時になったら始める。」という約束で休憩し,宿題に取り組みました。

子どもの辟易性(うんざりする,嫌気が差す)を軽んじず,その子の状態に合わせて支援をしています。この日は「問題は先生書くし,答えだけ書いたらいいよ。」としました。最後に「出来たね!」と声をかけるととても良い笑顔を見せてくれました。

お話がしたい!

じゃんぷに来ている3年生のA君は個別学習の時間,初めに「A君の話したいことを話す。」という時間を設けています。

A君は「暗黙の了解」のような目に見えないルールを感じ取ることが難しく,喋りたいことが思いつくとどんな状況であろうと話を始めてしまいます。

なのでA君は「ちょっと話したいことがあります。」と言う練習と,スケジュールの中に「A君のおはなしタイム」というものを作っています。お話をすることと,切り替える時間を視覚的に示して個別学習の時間に取り組んでいます。

決められた時間お話をし,スケジュールを示しながら「じゃ,勉強しよっか!」と指示されると,「わかった!」と言って黙々と学習に入ります。その時に「よく出来たやん!終わったらまた話聞かせてな。」と褒めています。時々「先生、あのな~」と話し始めることもありますがスケジュールを見せて「また話せる時間あるからね。」と示すと「そうだった!」と学習に戻ることが出来ています。

本人がわかるスケジュールを示すことと,それが出来た時に褒めることは学習の場面でも活用できます。先日A君は工作の話をしてくれました。次はどんな話が聞けるのかな?

巣立ち

R3年度も今日で終わりです。昨日すてっぷを卒業した子どもが早速すてっぷに顔を出し,「約束通り遊びに来たで!」と元気に挨拶をしてくれました。今年度は小学生が3名,支援学校高等部生が1名すてっぷを卒業します。

支援学校の子は場面切り替えで混乱しやすい子どもでした。「みんなと公園に行こうね。」「今から設定遊びだよ。」等,場面が切り替わることがしんどく,「嫌!しない!」と大声を出していたこともありました。スケジュールを確認し,視覚的に事前予告をし,自分の好きな音楽を聴きながら等少しずつ,ゆっくり場面を切り替えてきました。ゆっくりでもスケジュール通りに動けたことに対して褒めることを積み重ね,穏やかに切り替えることが出来るようになりました。すてっぷ最後の日は名残惜しそうにしながらも「バイバイ!」と元気よく手を振ってくれました。

小学生はそれぞれ違う道を進みます。2名は続けて同法人のじゃんぷにも通所しますがすてっぷの友達とはお別れです。「これからも遊ぼうな!」と先日約束をしている姿を見ました。私がすてっぷに来た頃,「みんな違う学校なんやからまとまるわけないやん!」と言っていた姿とは大違いです。支援学校の友達にも「また遊ぼうね。」と挨拶をしていました。4月から中学生です。大人への道を少しずつ歩んでいく彼らの背中はとても頼もしく見えました。

職員一同,どの子からも学ぶことが多くありました。卒業したみんな,次の場所でもたくさん活躍できると思います。元気でね!また会いましょう!

理由を教えて

X君が怒っているのでどうしてか聞いてみました。要はゲームを職員に突然終わらせられたと怒っているのです。X君達は活動が終わってすてっぷに戻り,おやつ等も済ませて職員の許可を得てタブレットPCで遊んでいました。なのに,突然職員から「16時までタブレットはやめなさい」と言われて怒っているのです。

X君達の怒りの原因は、手続きを踏んでタブレットPCを使っていたのに突然「やめなさい」と言われたからだと言います。16時までなぜやめる必要があるのかがわからないという事です。

職員にしてみれば、早く帰る子どもが帰り際にタブレットをしたいと言い始めると困るので、全員一斉にやめてほしかったのです。しかし、その説明ができていませんし、タブレットを渡した時にも約束しておらず、彼らにしてみれば突然の「力による現状変更」をされたわけです。

X君には「理由がわからなかったんでしょ?怒る前に『何故ですか?』って理由を聞くことが大事だよ」と教えました。勘違いをしてそのまま誤解し続けることが多い子どもなので「わからないときは聞く」ということが大事です。

子どもが理解できるように伝えていない職員側の問題もあります。X君達はゲームをしている最中だったのでちゃんと聞けていなかったのでしょう。子どもに指示を出す時はその指示が入る状態になっていることが大事です。言葉でわかる子でも,ゲームと職員指示の二つのことを同時に処理することはできません。手を止めさせる,静かな場所に呼んで理由も含めて話す等様々な手立てが必要な子どもたちです。

「言った!」「聞いてない!」と子どもと大人が言い合っていたら療育の場とは言えません。子どもたちには「指示の理由がわからない時は聞く」というスキルを教え,職員には「子どもに指示を出す時の配慮」は療育の重要事項として確認していきたいと思います。とは言え,この日記をよく読んでおられる方なら「それ、何回も書いているよね」と言われそうです。不適切指示を槍玉にあげてばかりで,適切な指示を皆で賞賛をしていない結果だと、今度の職員会で話す必要がありそうです。

学習成立条件と途切れない堤防

Wちゃんは最近ご機嫌斜めです。今日も送迎車に乗車する時に、今までは前に座っていたのに、ちょっと乗っているお友達が違ったせいかつもりが崩れて、後部座席に勝手に行こうとするので「後でお出かけする時に後ろに乗れるからね」とその場は制止しました。しかし、乗っているうちにやっぱり後部座席に行きたくなって騒ぎ出しました。最近はすてっぷ以外の事業所では騒ぎ立てて要求を実現することが多いらしく、交渉が成り立たなくなっていて、それがすてっぷの場面でも多く見受けられるようになってきました。

制止され要求がこれまで通り叶わなくなるとさらに大きな声で騒いだりするのをバースト現象と呼びます。Wちゃんにとって交渉などのめんどくさい関係性が分からなくなった混乱時はこれが最も高い確率で要求が実現する方法なのです。職員もバーストに対応してしまったら今後防ぎようがないと思ったのか、その後はWちゃんを完全スルーで事業所にたどり着いたと言います。泣き叫ぶWちゃんの声の大音響の車内で職員も子どもたちも疲弊して降りてきました。Wちゃんもパニックが収まらず、事業所でカームダウンするのに半時間程度かかりました。

確かに、バーストしているWちゃんの要求を認めると、今後も同じことを繰り返すと心配する職員の気持ちは分かります。しかし、パニック中には学習は成立しません。学習はトレーナーもトレーニーも最高の状態で最高のパフォーマンスが実現し学習効果が上がります。混乱して最悪の気分の時に何を教えても学習は成立しません。逆に関係性を悪化させるだけです。Wちゃんが落ち着いているときに簡単な課題から交渉練習のやり直しで学習を積みなおすしかありません。

また、例えその場をしのいだとしても全体が一致して支援しなければ不適切行動は繰り返します。今回の行動は、事業所や学校、家庭が一致していないことから生じている行動ですから、一つだけ穴をふさいでも別のところから漏れ出すのでは解決にはつながりません。不適切な行動を洪水に例えるなら、1か所だけどんなに高く強靭な堤防を作っても、堤防は一つでも穴があればそこから決壊していきます。今は全体の協力で低くてもかまわないから途切れない堤防を作ることが課題です。

 

自力通所と自立

V君は小学校を卒業したので、すてっぷは卒業です。中学校では読み書き困難の学習支援を得るためにじゃんぷを選択して4月から通所することになっています。じゃんぷは放デイですが送迎支援はしません。認知特性に適した自立学習や自己認知を療育の柱とするじゃんぷは、学習を柱にして療育が成立します。

すてっぷなど遊びを柱にして療育を展開する放デイと違い、じゃんぷは通所しようとする本人の意志が重要です。良くなりたい、頑張りたいという思いは行動から作る必要があります。自力通所する中で療育に向かう姿勢が作られていくと考えています。

親に送迎されても本人自身に変わりたいという思いがなければ療育は成立しません。高学年になれば、自立性や自発性を引き出して自尊心を自分で育てていく自我の確立期に入ります。大人から指摘されて反発するのも自我の発動です。しかし、自分が独立した存在であるという具体的な拠り所=自立感がなければ、自我は空回りします。

私たちは一人で通所することが自立心や自尊心の育ちにつながると考えています。じゃんぷの場合は乙訓全域から利用されるので電車通所や自転車通所が必要となります。今までは、校区周辺だけを生活圏としていた子どもが習い事などで目的をもって遠方に一人で移動するのは自我の確立には良いことです。

さて、V君は、帰路は1回で覚えたのですが、往路の西向日駅からじゃんぷまでの道がどうしても覚えられません。わずか5分の距離で駅から2回曲がるだけの往路なのですが、空間認知の苦手な彼には帰路からの道とは別物に見えるらしく、どうしても覚えられないようです。道に迷う事を職員は想定済みなので、大事には至りませんが、本人は流石にうんざりしています。

「V君が道に迷うのは、見たものの位置を記憶するのが苦手だからだね」「知ってる」「だから、迷った時に混乱しないように地図とメモを用意したよね」「でも、2回とも家に忘れてきてん」「なんでかな」「忘れたらアカンという事を忘れた」「では、次回のためにリュックの中に地図は入れたままにしよう」「わかった」と下を向いて不安そうに頷きます。でも、一人で電車に乗る自分にはV君は結構満足しています。3回目の再テストはきっと成功するはずです。

なんで離れるの?

S君がT君に「僕のこと嫌いになったの?なんで?なんで?」と聞いています。2人共2年生で,S君は同じ学年の友達がたくさん入ってきて大喜びしていました。

公園から歩いて帰る中,S君がT君に対してしきりに「僕のこと嫌いになったの?」と聞き続けています。

あまり人の気持ちに関心がなかったS君が「僕友達に嫌われた!?」と心配になっていたのです。T君は自分の気持ちを話すのが苦手な子なので答えてもらえず,余計に不安になったのでしょう。それで「僕のこと嫌いになったの?なんで?なんで?」と聞いていた,ということです。

T君に「S君心配になって聞いているから答えてあげて」と言うと,「遊んでいる時に手で強く押してくるのが嫌」と正直に話してくれました。S君は安心したようで「そうだったんだ。気を付けるね。ごめんね」と言って,また2人で遊び始めました。

支援の中で「人の気持ちをわかろうね」と,子どもに様々な手法を使って教えることが多いですが,何よりも子ども同士の関わり合いの中で学ぶことが一番子どもに落ちやすいのだな,と感じた場面でした。

 

強化子を探そう

C君が設定遊びの時に椅子に座らないので、どうしたものかと困っていました。するとC君がうろうろしながら本棚から絵本をとったのです。これは使えるかもと思い立ち、その絵本を渡してもらい、設定遊びが終了したら絵本を渡すという設定をしました。設定と言っても、まだスケジュールが良く理解できていないので、絵本の実物を職員が持ったままゲームを行い、C君が1回ゲームが終わるたびに絵本を渡すという方法をとりました。

するとC君何もなかったかのように椅子に座り自分の順番を待つ様になりました。恐るべし強化子の威力です。100の「座りなさいよ」の言葉かけより、100の身体誘導より1回の強化子提示で、交渉が成立するのです。私たちは視覚支援が大事だと何度も言いますが、合わせて行動の強化子(ご褒美)を鵜の目鷹の目で探すことが支援の第一歩だなと改めて感じています。

「ご褒美で釣っても、ご褒美がなくなれば動かない子になる」という人がいますが、言葉かけや強制力だけでは変わらない子どももいます。意味のわからない言葉かけや、大人の距離が詰まると自分の行動が制限されると誤解し大人を信用しなくなると双方が困ります。ご褒美だろうが何だろうが、自己決定した行動は強力です。強い自発行動が起これば、ご褒美=強化子はやがて賞賛の言葉に代替できるチャンスがあります。このプロセスを私たちは大事にしたいのです。

ご意見番

A君が近頃、後輩や障害の重い人への気遣いがとてもよくできるようになったと、みんな驚いています。それまでは、自分の話を相手にすることしか興味がなく、仲間の話など全く聞いていないしその内容に興味もないというのがA君の姿でした。

低学年の面倒見もものすごくよくなって、後輩の話もよく聞いてくれるので低学年からも慕われています。今日も公園で模型のゴムプロペラ飛行機で遊んでいる時に、うまく飛ばないので困っている後輩たちに、機首をもう少し上げて飛ばした方がよいなどとアドバイスをしていました。

ところが、A君は、模型飛行機を飛ばしたことはないのです。B君が持ってきた模型飛行機をみんなで回して遊んでいるのですが、A君は自分が飛ばしてみようとは1回もしていないのです。1回も飛ばしたことがないのに、後輩にあれこれ助言しているのです。

そういえばと他の職員が、カードゲームの時もA君はルールは良く知っているはずなのに、やり方が違うと後輩に意見して周囲がフリーズしていたことがあったと報告してくれました。ゲームリーダーはA君なので、結局通常のルールで良いとA君決済で進んでいったというのです。もしかして、後輩に『ご意見』がしたいだけなのではないかという疑惑がもたれはじめたのです。

つまり、これまでは、他者に対して自分の話を一方的にするという行為が、「しつこい」とか「他の人の話も聞いて」といろいろ注文がつくので面倒になり、低学年ご意見番ならみんな話を聞いてくれるし高学年だからリスペクトされてクレームもつかないし「一石二鳥」という「ご意見技」を編み出したという見立てが出てきました。後輩の話をよく聞くというのも、次のテイクの「ご意見ネタ」になるから聞いているというのです。ホンマかいなというA君びいき派の反論もありますがしばらく様子を見ようという事になりました。

 

字義通り

4年生のY君の検査をしました。基礎的学力を測るものの中に、文章で書いてある通りに振りをする課題での出来事です。検査者が初心者の事もあって、上手く提示が出来なかったこともあったかもしれませんが、「バナナを剥く」を読んで、しばらく考えてキッチンに行こうとしたのです。「振りだけ、エアーでやってね」でやっと提示の意味を理解したのでした。

つぎに困っていたのは、「拳骨を作る」の「作る」に困っているのです。作るには材料が必要という認識なので、身体で作るという意味が取れないのです。私たちは、その言葉を普段使わなくても推測で意味をとっていきますが、彼は使った事がない言葉には躊躇するのです。長考して正解していましたが、これらは低学年の課題です。むしろ中学生や高校生向けの長い説明の文意の方が彼は掴みやすいようで、彼の得点は同年齢で100人中16番の得点でした。

知能検査は認知の力を測るものですが、Y君の同学年でも上位の文の理解得点と、振りをしたり比喩暗喩を理解する、認知することを認知するようなメタ認知の力は知能検査の得点には表れません。発達検査や知能検査の能力の数値プロフィールは子どもの得手不得手の原因を知るのに、多くの子どもには役立ちはしますが完全とは言えないのです。

Y君は「近くの人を指しなさい」という課題で何やら躊躇しながら顔を背けて検査者を指してくれました。「お母さんに人は指すもんじゃないって言われているから・・・」と言うのです。「いやいや、検査は現実とは別でしょう」というのは簡単です。しかし、こうした字義通りの理解がY君の4年生の生活を息苦しくさせているのが手に取るように分かった検査でした。

言うこと聞いてほしい!

4年生のV君が「下の学年の子が僕の言うこと聞いてくれへん...」と悩んでいます。

同じ学校の2年生の友達がすてっぷに来る,と分かった時は大喜びしていましたが最近は「あいつはダメや!」と怒っています。

理由を聞くと「俺の言うこと全然聞いてくれへんねん!」と話します。「言うこと聞いてほしいの?何で?」と尋ねると「年上の言うことは聞くもんやろ。」と返します。設定遊びの場面で揉めている様子はないので休憩の場面を見ました。

休憩中,2人で一緒のゲームをして遊んでいます。休憩が終わるとV君が「次の休憩もこれで遊ぼう。」と言います。すると「次は違うゲームで遊びたいな。」と返されます。また,「大乱闘スマッシュブラザーズ」という様々なキャラクターを使って遊ぶゲームをしているときはV君が「○○君このキャラ使って。」と言います。「え,俺使いたいキャラあるんやけど…」と返されています。

傍から見ると「そりゃそう言われるよな。」ということばかりですがV君にとっては「なんでよ!」と感じるのです。

思えば2年程前にV君が「なんで大人は子どもに言うことを聞かせようとするんや!」と言っていたなぁ,と思い出しました。V君ごめんね…と思いつつも「妥協点」「折り合いをつけること」について教えていこうと思います。

表出コミュニケーションと連携課題

T君が送迎車から頑なに降りようとしません。「T君降りようね~。」とすてっぷの写真を見せますがT君は泣きながらシートベルトにしがみつくだけです。

「車で公園に行きたいのかな?」と思って公園の写真も見せますが泣きわめく一方…。結局は「車の中で寝ていたい。」ということでした。

こういう時は「寝るのは部屋の中でするよ。」と教えますがパニックになった状態では中々子どもには理解できません。(そもそも放課後等デイで寝させるのは適切ではないですが…)

T君には「寝るのはソファでします。」と視覚支援で教えていこうと思っていますがT君が要求の時に泣きわめく理由を考えました。

やはりそれで要求が叶った経験があるのでしょう。そうではなく,適切な拒否の表現を教えていく必要があります。(手や首を振る,代替の活動を選択する等…)

ただT君は1年生の子どもなのでどの場所でも丁寧に取り組む必要があります。あらゆる場所で指導方針が違うと子どもは混乱し、不適切行動が増えるかもしれません。各機関との連携が必要ですが、双方の考え方が違うとこちらのほうが子どもの支援より更に難しい場合があります。

おやつのワークシステム

小学生のグループ指導でのおやつタイム。じゃんぷのおやつタイムは、栄養補給や休憩という意味合いより、自己選択やコミュニケーションの指導の機会です。とはいえ、子ども達にとっては楽しみなひと時。皆、このときばかりは遊びからの切り替えも良く、イソイソと用意をしてくれるのですが。自分のお皿を取って、水筒を用意して、おやつを選んで、手の消毒も…。と、おやつの準備には意外にたくさんすることがあります。

…となると、待っているのは、それぞれの動線が錯綜する、ぶつかる、腕が当たる、順番の小競り合いになる、手順が抜ける、気が逸れる…おやつが口に入るまで、長い道のりです。コロナ禍の中、接触が増えるのも避けたい。消毒など、忘れてほしくない手順もあります。

そこで、おやつの準備が、子ども達にわかりやすく、スムーズにできるように、ワークシステムを導入しました。といっても、用意したのは、机の上に敷ける布製の長いキッチンマットだけ。そこに、左から右に数字を書いて、準備の順番を示しました。あとは、実際に使うものを、そのマットに並べるだけ。このアイデアは、以前、TEACCHプログラムのインストラクターの方が講師をされた講習会で、『コンテナ式』というやり方を聞いたのをアレンジしたものです。就労支援などでもよく使われているそうです。

これは、子ども達にとてもよく理解してもらえ、①消毒 ②お皿を取る ③自分の水筒を取る ④おやつ選び、という流れが、順良く、抜けず、スムーズにいくようになりました。指導員の注意や声かけも激減し、自立的な準備場面になりつつあります。実際には、④番の、箱に入ったおやつは、指導員と一対一でチケット引き換えで選択してもらうので、4番目の手順というよりは、『終わったら次に何をするのか』というワークシステムの4つ目の要素、次の見通しのための手がかりとなっています。子ども達は、④におやつの箱が置いてあるのを見ると、『最後はおやつを選ぶのだ』とわかって、座って静かに職員の説明を待っています。

準備に余裕が出来たので、最近は、トークン制で“お手伝い”もしてもらっています。布の上に並べる物を、元の場所から集めてきてもらったり、机ふきをしてもらったりしています。布の1枚で楽に準備できるワークシステムは、準備する側にも、準備してもらう側にも、とても便利だなあと思いました。

思いやり

子ども達を車に乗せて送るときの話です。Sさんは視覚障害のある子どもなので白杖をつきながら職員に声や音の聞こえる方に歩きます。

そんな中,同じ車に乗るU君がSさんの乗る車をトントン,と叩いて「Sさんこっちやで」と案内をしています。U君は以前までは自分の帰る用意を済ませると「先生帰る用意出来たで~,まだ~?」と言っていました。

自分のことしか見えていなかったU君がどんどん周りが見えるようになっていることに驚きました。名前も覚えず,「ん~わからん!」と言っていたのに「Sさん」とはっきり名前も言っています。

U君に理由を聞いても「え,いつも先生ら(達)してるやん」としか返ってきませんでした。「今までそんな素振りなかったやん…」と思いつつも「ありがとう!」と返しています。卒業間近になっても色々な姿を見せてくれる子ども達でした。U君はこの春卒業です。

落ち着くために、離れる事

Q君がみんなから離れてカームダウンをしています。他の子は活動中なので「なんでQ君みんなと離れてるの?俺ら活動してるのに」とR君がちょっかいを出しました。するとQ君は更に怒りが爆発してしまいました。

R君は「???」といった様子です。そんなR君に他の子が「あれはな,距離を取って落ち着こうとしているんやで。そっとしといてあげて。」と教えていました。R君は「そうなんや…」といった様子です。

また,Q君は落ち着くと最初に「先生,俺が暴れた事なんで怒らんの?」と聞いてきました。「怒っても解決しないしなぁ…それよりなんで怒ったかと,どうやったら暴れずに気持ちを伝えれるか考えた方が有意義じゃない?」と返すと「確かに…」と答えました。

Q君やR君のようにカームダウンについて教えてもらっていない子が多い事に驚きました。学校では通常学級でも個別の指導計画や個別の教育支援計画がある子どもには「カームダウンエリア」を設置し,「怒った時とかむしゃくしゃした時はここに来るんだよ。」と教えたりするものです。しかし実際事が起こった時にはどうしても「その場を鎮めなければならない!」となるのでしょう。興奮している子どもが落ち着いたら「はい,解決」としていることもあるようです。

大事なのは子どもに代替方法を教えることです。子どもは「またやってしまった…」と自己イメージを落としてしまいます。それよりも「俺(私),暴れずに先生に伝えられた!」と成功体験を積むことが重要です。

芽生えてきた

じゃんぷの療育(児童発達支援)に通う4歳のPちゃんは、最近言葉が増えて、文章でのお話ができるようになってきました。「わあ、大きい」「これソーセージみたい」「まずは、これします」と楽しそうにおしゃべりしながら、好きな課題に取り組んでいます。ただ、お話が増えた以外に、最近もう一つ増えたことがあります。それは「いや!」「こっちする」…自分の“つもり”です。

目で見て理解することが得意なPちゃん。療育に通い出した当初は、絵カードのスケジュールが嬉しくて楽しくて、しっかり見て、スケジュールに沿った行動ができていたのです。でも、最近は、スケジュールで示されているからといって、そうおいそれとは流れに沿ってくれません。特に、『かえる』のカードが嫌い。保育園も大好きなので『次に行くところ』として保育園の写真が出てきたら、喜んで玄関に向かっていたのは遠い昔。この間は、「まだ帰らない」と、ハッキリ言ってくれちゃいました!

さあ困ったぞ…と思いながらも、育ってきたPちゃんの自我に、ワクワクしている職員です。Pちゃんにも、やっと、自分で選ぶ力、相手と交渉する力の芽生えがあらわれてきたのです。この時期には、スケジュールにうまく沿えるかは二の次、三の次です。療育を一緒に見ている保護者さんは、お子さんの反乱に焦ります。『できていたのに、できなくなった』と問題行動に捉えがちですが、発達的な経過の中で自然に芽生えてくる姿の一つであることを説明し、お子さんの意志を受け止め、待ちながら、穏やかに交渉してみるよう伝えます。

言葉が増えてきたとは言え、まだ十分に自分の気持ちを表現することはできません。大人のように、相手に合わせて交渉する力もありませんから、時にはひっくり返ったり、すねたり、物を投げたり、実力行使で自分の“つもり”を主張する姿もあります。大人の力量でPちゃんの“つもり”を受け止めながらも、見通しを伝え、一緒に気持ちを切り替える方法を模索する、新たな試行錯誤が始まります。

視覚支援

Nちゃんが「公園に行こう。」と誘われても「嫌だ~」と言っています。状況はNちゃんがスケジュールを確認後,他の子がゲームをしている様子が目に入り,そちらに向かってしまった,という経緯です。

Nちゃんは小学校支援級の子ども達が外遊びやゲームをして盛り上がっているのを見ると「楽しそう!」と思って参加しようとする姿が見られます。

そちらに意識が向かい,スケジュールのことを忘れてしまったのでしょう。職員から「スケジュール見たでしょ,公園に行くよ。」と言われても「スケジュールを見たこと」を忘れているので言葉で言われても何が何だかわかりません。

口で言っても埒が明かないのでNちゃんのスケジュールをもう一度見せました。すると「行ってきまーす。」と準備を始めました。

自分のスケジュールを確認すると「あ,そうだった。」と思い出しました。

耳で聞いたことを頭の中で整理して情報を理解することは意外と難しいものです。Nちゃんは言葉は発するので「口で言っても動けるだろう」と思っていまいますが,案外理解していないことの方が多いです。

しかし視覚的に支援すると耳で聞くよりも目で見て「○○をする。」「○○君(さん)と一緒に遊ぶ。」等の情報が入りやすいです。初めからそれをしておけばNちゃんも「嫌だ~」と言わずに済みました。視覚支援は当然のことですが,改めて大事な事だ,と感じました。ごめんねNちゃん!

カームダウン

「T君、さっきはなんであんなに暴れて怒っていたのかな?」スタッフが聞くときっかけは覚えていないと言います。何しろ今まで皆が自分をディスって来たストレスが一気に爆発したのだといいます。でも、みんなはT君に声がうるさいとか近寄りすぎてボディータッチしないでとは言いますが、彼をのけ者にしたり馬鹿にしたりしたことは一度もありません。

T君はとても興奮しやすい子どもで、盛り上がってくると声が大きくなり、必要以上に友達に近づいてボディータッチが増えます。そもそもパーソナルエリアを侵されるのが嫌いな子が多いので、寄らないでということは何度も言われたかもしれません。それをT君は自分が避けられていると誤解しているのです。

怒りで興奮しそうな時に使う技を教えたけど覚えているかと聞くと、深呼吸という言葉は覚えていましたが使えていないようです。今度は、怒りで爆発するのをレベル5だとすれば、噴火前のレベル4では制御不能みたいだから、レベル3で深呼吸してみよう提案しました。そして、その結果を職員に必ず教えてほしいと伝えています。伝えてもらうことで、上手く行ったときにほめるきっかけが作れるからです。

ASDの子どもたちの場合、対人への誤解はかなり多いです。自分は嫌われている、遊んでもらえないと勝手に誤解しているのです。確かに相手との距離感がつかめないとか、一方的なところがあるのでトラブルが多く、叱られることが重なって自己イメージを悪くしやすいという課題はあります。しかし、大人が上手に介入すれば当事者も周囲の子どもも上手に学んでいきます。T君だけではありませんが、上手くサポートしたいと思います。

人の気持ちになる

みんなでおやつ作りをしていた時の事です。R君がおやつ作りに参加せず、暗い顔をしてソファーに寝そべっていました。当然、他の小学生たちは「R君何してるん?」と声をかけます。それを見ていた2年生のS君がみんなにそっと言います。「R君、さっきブチギレて暴れていたから、自分でカームダウンしてはんねん。落ち着けるまでそっとしてあげてな」と。すると、他の小学生たちも「そうなんかー」と納得してR君に声をかけるのをやめました。

2年生でこんなに上手にカームダウンの説明が他の仲間に出来ていることに職員は驚きました。S君は最近通所してきた子どもで、見かけも実際の言動も穏やかな優しい2年生です。こんなに穏やかな子どもの何が課題なのかわからないと、職員から疑問があがっていました。家庭の主訴によると、学校で友だちにいじられるとブチ切れて、その後自己イメージが悪くなって集団参加ができないとのことでした。なるほど、S君はR君の姿を見て自分を投影していたのです。

大人は、子どもに人の気持ちになってみなさいと言いますが、実は簡単なことではありません。人の気持ちになるには、自己体験と他者の様子を重ねた時が最も深く理解できます。もちろん、道徳をテキストとして理解することは理由や規則を理解する6歳前後の発達の力があればできますが、心情として理解するには自己理解や他者理解の力が不可分です。悲しい体験の心情をS君はソファーで落ち込んでいるR君にかぶせました。「そっとしてあげて」と周囲の仲間に促せたのはS君だからできたのだと思います。そして、そんな体験の多い子どもたちだからすっと理解したのは、嬉しいような悲しいような複雑な気持ちになりました。