今日の活動
「漢字をきれいに書けるかな?」
夏休みが近づいてきました。夏休みと言えば、子どものころの「宿題」を思い出します。小学校では「夏休みの友」という愛称で提出されていましたが、学生時代までずっと夏休みの宿題に苦労してきた筆者にとっては、友だちというよりは「戦友」と言った方がしっくりときます。
すてっぷでも宿題に取り組んでいる子がいます。L君は毎日、漢字ドリルの写しを頑張っている頑張り屋さんです。ただ最近、字の形が崩れてきているのが気になると、お母さんと職員の間で話題に上がりました。字が崩れてきている要因は、いくつか考えられました。
・宿題をしているときにL君が、近くで遊んでいる友だちの動作や音が気になるのではないか。
・宿題が終わっても、評価されたり褒められたりすることがなく、適当に流しているのではないか。
そこで2点、改善することにしました。まずLくんは今まで共有の机で宿題をしていたのですが、それを少し離れた仕切り板がある場所に変えました。また、宿題が終わったら「できました。」とNくんから職員に伝えられるよう、Nくんとシミュレーションして練習しました。そして職員がノートを確認することにして、時には修正することもあるかもしれませんが、最後は褒めて終えるようにすることを職員で共有しました。
新たに宿題をする場所を移したL君。仕切り板によって、他の子の動作や音に気が散ることなく、漢字一文字に対して時間をかけて、丁寧に取り組めました。また、宿題が終わった後に、職員に「できました。」と報告することもできています。職員がノートを確認すると、最近の崩れていた字と比べると一目瞭然!きれいな字が書けていました。職員から「字をきれいに書いているね。」と伝えると、N君は嬉しそうにノートを受け取りました。
今回改善したのは環境整備と振り返りの時間を作ることでした。子ども本人に「きれいな字を書こう」と目標を伝えるだけではなく、周りを変えてみることで、より目標を達成しやすいようにすること、そして何より本人が達成感を得られるようにすることが大事だと思います。
先生,書いて下さい!
先日じゃんぷに通う3年生のJ君が「今日はしんどいかも…先生,算数の宿題,式だけ書いてください。」と要求してきました。
J君は学習に対しての苦手意識が強く,宿題もやりたくない思いが強いです。4月当初,「やりたくない!」という気持ちが強く,宿題を「ない!」と言ってやり過ごそうとする姿も見られました。
読み書きや計算の処理が苦手なJ君にとって,ノートのマス目が小さくなったり,わり算といった学習内容のレベルアップ等,環境の変化についていくので精一杯だったのでしょう。「ここまでやろう。」「式は先生が書くよ。」「ここはなぞってもいいよ。」等,負担を減らしたり個別学習の時間で具体物を示して計算の方法をおさらいしたりし,J君が達成感を得られるように支援をしてきました。
宿題への向き合い方がわかったのか,ここ最近は「宿題嫌だ!」と言わずに黙々と取り組む姿が続いていました。大嫌いだった漢字の宿題もとても丁寧に取り組んでいます。
先日久しぶりに「算数の宿題の式だけ書いてください。」と職員に要求しました。「やりたくないよー!」ではなく具体的に援助を求めることが出来たのです。「わかった,じゃあ書いてる間漢字の宿題やっとく?」と聞くと「うん!」と言って黙々と宿題に取り掛かるJ君。自分の調子を客観視し,援助を要求したJ君の成長に感動した出来事でした。
気持ちを楽にして
6年生のI君は分数の計算に挑戦しています。約分が苦手な様子なので分数×分数,分数÷分数の単元はとても疲れるようです。
宿題をしている様子を見ると問題を解くことで精いっぱいのようです。まだ約分ができる問題が1つ2つ程残っているのですが,自分で見なおして間違いを見つける程の気力は残っていないようです。
こちらから声をかけ,「まだ約分できる答えがないか見直しておいで」と声をかけると自分で見なおし,見つけることは出来ました。しかしまだ課題はありますが,疲れた様子です。
スケジュールの間に「休憩」を挟み,一緒に割りばし鉄砲を作って遊ぶ時間を取りました。こういった工作や遊びは好きな子どもなので,嬉しそうな様子を見せましたが「まだ課題あるけど…」とI君は言います。
「大丈夫大丈夫,〇時まで遊んで,それから始めても余裕あるくらいの量やから。」と伝え,「このページは5分で終わるし,これも5分で終わるから…」と時間の見通しを伝えると「じゃあちょっと休憩しようかな」と安心したようです。
子どもがやる気を持って取り組むことはとても良いことです。しかし偶にそれが「焦り」になって追い込んでしまうこともあります。そういった様子が見えた時は「ちょっと気持ちを楽にしようか」と休憩を提案してもよいかもしれません。
「リクエストは『ハッピーバースデイ』だね」
支援学校高等部のHくんは音の鳴るおもちゃが大好きです。特に好きなのが、音の出る絵本。ボタンを押すと、様々な楽曲が鳴ったり、ものによっては鍵盤がついていて、押した音階の音が出るようになったりしてします。Hくんはそれを耳に当てながら、ボタンの位置も覚えているようで、ボタンを見ずに押して、曲を変えながら楽しんでいます。すてっぷには音の出る絵本が6種類くらいあるのですが、Hくんはそれぞれの写真を見分けて、カードで職員に「ください」と伝えます。職員が間違って違う絵本を取り出しても、以前のように怒るように激しく拒否するのではなく、手でそっと押しのけて「違う」と伝えられるようになりました。
Hくんは、3年ほど前まで、自発的なコミュニケーションと言えば、実物を手に取ることが結果的に要求だったり、座り込むことが結果的に拒否だったりでした。それがPECSの練習を続けることで、この1、2年でコミュニケーション能力がぐっと伸びました。今では歌の出る絵本やおやつ・ジュースなどさまざまなカードを使い分けて職員に伝えられるようになり、拒否も落ち着いて伝えられることが増えています。
要求や拒否など自発的なコミュニケーションが増えると、職員にもチャレンジする余裕が生まれます。先日、たまたま友だちが「今日は僕の誕生日やで」と職員に言っているところに、歌絵本を持ってやってきたH君。職員がHくんに「ハッピーバースデイかけて」とお願いしてみました。職員は拒否するかな?と待ち構えていたのですが、Hくんはボタンを見ずにポチッ。「ハッピーバースデイ~トゥユ~♪」と曲が流れました。Hくんが「ハッピーバースデイ」が分かってリクエストに応えてくれたことに、職員はびっくりしながらも、いっぱい褒めました。
他にもHくんは、半年ぶりにキーボードで遊んだときに、以前約束した通りの準備を自分ですることが出来ました。半年前の約束を覚えていたことに驚いた職員。職員側が全部準備していた3年前では気づかなかった強みを、今のHくんはいっぱい発揮しています。
出来るようになってきた!
じゃんぷに来ている中学生のG君。通所したら必ずローマ字の「聴覚法」に取り組んでいます。
学習に対する苦手感が強い子なので,あまり「学習!」という雰囲気は出さずに本人の興味のあることを調べさせることでタイピングの練習をしています。
ローマ字表を見ながらキーボードを打っていますが,タイピングが上手になってきています。「む…『M』ってどこやー!」と言いながら打っているのですが…つまり「む」を打つ時は「MU」ということはもう覚えているのです。キーボードの並びを覚えることも苦手なので,アルファベットを探しているようです。
そういったこともあるので本人は「まだローマ字打てへん!覚えてない!」と感じているようですが,実はもう覚えているのです。毎回の聴覚法も「はいはい」と言いながら当然のように言っています。
今は「友達にWordで手紙を書く。」という取り組みをしようかなと話しています。苦手感があることに対して拒否感を示していたG君ですが,「全然いいよ。やろうや。」と乗ってきました。「出来るって感じてるやん!」と言うと「そんなことないわ!」と返してきますが,拒否はしません。本人自身も効果を感じてきているようです。
嘘のある遊び
『犯人は踊る』(犯人は誰?(「犯人は踊る」)(2022/6/26)で紹介したゲーム)が気に入ったE君。F君と遊ぶときに、『犯人は踊る』をリクエストしてきました。職員はそこで、「同じようなゲームでこんなのがあるんだけど」と、『人狼ドッチ』というゲームを提案してみました。
オリジナルの人狼ゲームは、テレビでも取り上げられることがあるほど、有名な会話ゲームです。複数人のプレイヤーが村人となるのですが、その中に、人狼という悪い人が紛れています。人狼は毎晩一人ずつ村人を食べていき、放っておくと村人は全滅してしまいます。そこで村人は毎朝、誰が人狼を推理し、追放していきます。うまく人狼を追放できたらクリアですが、間違って本当は村人の人を追放してしまうと、どんどん村人が不利になっていくというゲームです。
『人狼ドッチ』は、この人狼ゲームを、3人という少ない人数でもできて、1ゲーム5分ほどで終わるようアレンジしたもの。その中でも会話をする時間はしっかりと取られており、そこでの駆け引きが勝負のカギになります。人狼になった人が大事なのは、自分が人狼だとばれないように「嘘」をつくことです。この「嘘」をつき通せるかどうか、そして村人はこの「嘘」を見抜けるかで、勝負が決まります。
ですが、この「嘘」というのがやっかいなもの。「嘘」をつけない子は少なくありません。実際にこのとき遊んだF君も、「嘘」が苦手。人狼の時は隠さないといけないのに、堂々と「僕は人狼です」と言い放ちました。案の定、ほかの人から人狼だと票が集まり、負けとなってしまいました。
『人狼ドッチ』は難しかったかなあ、と職員は反省します。ですが、「嘘」を全くつけないというのも困りもの。大人からすると、一見利点のように思えるかもしれませんが、子ども同士では遊びの幅を狭めてしまうこともあります。ルールがあって、この遊びの中なら「嘘」をついてもいいよという場面に、またチャレンジ出来たら、と思います。
お互いに助け合おう!
じゃんぷでは七夕祭りということで短冊に願い事を書いたり,笹飾りを作ったりしています。
子ども達からは「世界的に有名なゲームを作りたい!」という将来の夢や「習い事の大会(コンクール)をがんばりたい!」という身近な夢,更には「世界が平和になりますように」という最近のニュースを知ってか知らずか,壮大な夢を書く子もいたりと,様々な願い事が見れます。
さて,願い事を書いている時にある子どもが「これってどういう字やったっけー?」と悩んでいると隣の子が「こう書くんやで」と優しく教えてくれる場面がありました。また,短冊を結ぶときに「ここやったら結びやすいで!」とアドバイスした子どもが今度は「こう結んだらいいんやで」とアドバイスを受けている場面も見られました。
また,折り紙手裏剣を作っている時に1年生の子が「こういう風に折ったらいいよ!先生綺麗に折れるからここまでやってくれたあとは僕が作っとくわ!」と言ってくれたこともありました。
それぞれの強みを生かしながら,お互いに助け合う姿が多く見られました。今回はこちらが何か仕掛けた訳ではなく,自然と生まれた子ども同士の関わり合いですが,ほっこりしたので紹介します。
漢字の「仕組み」を教える
漢字を覚える時,それぞれの漢字を一つずつ,漢字そのものを覚えようとするのは難しいです。以前も書いたように特に読み書きが苦手な子どもにとって,繰り返し練習は作業感が出てしまい苦手意識が強くなってしまうことがあります。
ただでさえ漢字は膨大な量があります。我々にとっても大変だったはずですが,しかしなんとか覚えることが出来ているのは何故でしょう?
それは無意識のうちに「漢字の仕組み」を使っているからです。例えば,「泳」という漢字についてです。「さんずい」がついているから水に関係すること,そして「永」という部分があるから「エイ」という読みがありそうだ…というように,「へん」と「つくり」,あるいは意符と音符といった仕組みから漢字を理解し,覚えることが出来ます。
このように漢字の「仕組み」を教えると,漢字の「意味」を理解し,そこから読み,書きに繋がります。
「レストランに行ったよ!」
「なんで歩かなあかんの?」(2022/6/28)で紹介したAさん。梅雨で天気がぐずつく中、雨の降らない間をねらって歩行練習に精を出しました。外食の目標にしているファミリーレストランにも、練習で入口まで行ってみました。白杖でさくさく歩きますが、広い歩道では左に傾く癖があります。すぐそばで見守る職員が、癖が出たら指摘するようにして、歩行練習を重ねました。
さあ、いよいよ外食の日。当日は幸いなことに、雨の心配はなさそうな曇り空です。Aさんも出発する前から、「カルボナーラ食べたい」「シーフードピザ食べたい」と楽しみな様子。事前にメニューを職員が読んでいっしょに確認してから出発しました。歩行練習の甲斐があって、スムーズに歩くAさん。そばで見守る職員が手助けすることなく、ファミリーレストランに到着しました。
レストランに到着すると、店員さんもやさしく対応してくれました。まずAさんのために、点字のメニューを出してくれました。Aさんは点字を読んで、料理名と値段も一緒に確認していきます。シーフードピザがないことがわかると、すぐに「じゃあソーセージピザにする」と決定。店員さんを呼んで、注文します。「ジュースもありますか?」とAさんが聞くと、店員さんは「ドリンクバーがあります」と答えます。Aさんはすぐに「(ドリンクバーに)マスカットジュースはありますか?」と尋ねます。すると店員さんもすぐに「Qooって知っていますか?そのマスカットジュースがあります」と丁寧に答えてくれました。
注文の料理が届くまで、ドリンクバーにジュースを取りに行ったり、点字のメニューを見たりして過ごしたAさん。
「これ(点字メニュー)があるので、何があるのかよくわかって嬉しいです。良い思い出になりました。ありがとうございました。」
と料理を運んできてくれた店員さんにお礼を言ってメニューを返していました。楽しみだったソーセージピザも、せっかくの機会だからと職員に続いて、Aさんも自分でピザカッターを使って切ってみます。外食を満喫できた帰りもまた、白杖を使って自分で歩いて帰りました。
今年は異例な速さでの梅雨明けになりましたね。梅雨が明けて1週間は、夏を思わせるほどの暑さが続き、すてっぷでも屋根のない場所への外出は控えました。今は戻り梅雨のようで、すこし暑さがましになったので、曇り空の下、公園へ。外出の楽しみがあると、やはりモチベーションは上がります。夏休みも、もうすぐ。また外出の計画を立てて、お知らせしていきます。
「漢字の宿題は…」
じゃんぷに通っている子ども達の中で,「漢字の宿題苦手やなぁ」とつぶやく子どもは多いです。筆者が小学校の担任だった時に同じようなことを言っている子どもも少なくありませんでした。
一般的に漢字を覚えるためには「繰り返し書いて練習し,覚える」といった方法が使われています。(筆者自身教員時代そのようにしていました…)丁寧に漢字を書けるようになるため,一回ずつ丁寧に書いていくと効果はあると思います。しかしよくよく思い出してみるとそのように漢字の宿題をしていた子どもはいなかったな…と思っています。
基本的には子ども達は「早く終わらせたい!」という一心で取り組んでいたように思います。「先生漢字の宿題なくして~笑」と冗談交じりではありますが,そう伝えてきた子どももいました。
特に書くことが苦手な子どもにとってはしんどい思いが強くなり,先に「へん」だけ書いて後から「つくり」を書くなど,効率化を図ろうとしたりすることもあります。こうなっては意味がありません。
やはり「漢字の仕組み」等,覚える意味がある教え方が子ども達も有用性を感じやすいです。水曜日に,その話を書こうと思っています。
なんでイヤなの?
支援学校高等部のIくんは、最近スケジュール支援が功を奏し、自立的に次の活動に向かえるようになっています。先日は、自立課題のあと、公園へのお出かけの予定になっていました。Iくんは自分でスケジュールに向かい、「お出かけ」カードを次にやることの枠内に貼って、玄関に行こうとしました。すると、「じーっ」という機械音が。Iくんは大の機械好き。そこに他の子のおやつを準備しようと、職員がトーストを焼き始めたのです。Iくんはもうオーブントースターに釘付け。遠巻きにじっと眺め、玄関へ向かいません。担当の職員がIくんといっしょにスケジュールに戻り、次の予定の「お出かけ」カードをもう一度示します。ところがIくんは納得せず、好きなことができる時間のシンボルの「?」カードを取り出そうとします。職員がまた外出を示すと、Iくんは怒ったように、「外出」カードをおしのけ、自分を叩こうとします。
そこで職員から、「トーストが焼けるまで、オーブントースターを見ますか? 見たら、お出かけします」と伝えました。すると、Iくんはうなずきます。すかさず職員は「じゃあオーブントースターを見ていいよ。ただし、この椅子に座って見てください」と、オーブントースターに手が届かない位置に椅子を置いて、Iくんを誘導しました。Iくんは椅子に座ってじっとオーブントースターを眺めます。「チン」と音が鳴って、職員がトーストを取り出すまで、Iくんは座ったまま。「焼き終わったね。じゃあ、お出かけに行こうね」と職員が伝え、オーブントースターが片づけられて目の前からなくなると、Iくんは切り替えて、職員と一緒に玄関に向かいました。
Iくんは言葉が出ません。最近になってようやく、やさしく手を払いのけるようにすることで、穏やかに拒否を伝えられるようになってきました。ですが、一度怒りだすと、拒否が激しい動作になり、ときには自分を叩いてアピールしようとします。言葉もないので、慣れていない職員だと、どういうことか訳が分からなくなってしまうでしょう。しかし、その理由を考えると、次の対応が見えてくるかもしれません。今回の場合は、オーブントースターがきっかけの1つでした。それに気づいた職員が、オーブントースターを見てから、お出かけにしようと交渉したのです。
交渉に応じることができ、落ち着いて切り替えられたIくん。玄関でも職員に、ピアノ本を持って行きたいと交渉します。職員は「持って行っていいけれど、車の中で見てね」と伝えると、Iくんは少し怒ったようでしたが、職員に「さあ、どっちの足から履く?」と言われ、すっと右足を差し出しながら、靴下を手に取ります。職員がすかさずほめると、Iくんは自分で靴を履いて、気分良く公園に出かけていきました。
みんなで楽しく!
ここ一週間ほど,じゃんぷの休憩時間で風船バレーをしました。
3点先取の短いゲームにし,それが終わればお別れグッパ等でチーム替えをルーティンし,全員が必ずチームになるように取り組みました。
そうするととても良い子ども達の姿が見えてきました。ある時は「ふわふわ言葉を使おう!」という目標で取り組んでみると,子ども達が「どんまい!」「大丈夫!」「まだいけるよ!」「上手い!」と,友達を賞賛する言葉がたくさん目立ちました。
またある時は「チームで全員が1回ボールを触らないと相手に打てない。」というルールにすると,「〇〇さんお願い!」「俺(私)行くわ!」「ナイスー!」と,チームで連携しようとする言葉が出てきました。風船バレーが得意な子どもだけではないので,風船を掴んでしまう子どももいます。するとチームの子が「大丈夫!そのまま(自分に)パスして!」と声をかけました。相手チームの子も掴んだことにとやかく言いません。そういった「ちょっとした配慮」も子ども同士で見ることが出来ました。
得意な子も苦手な子も「楽しかった!」と感想を話してくれました。みんな笑顔で取り組めた,良い遊び活動になりました。
約分が難しい…
じゃんぷに通うD君が約分に苦戦をしています。そもそも,約分を苦手としている子どもは多いですが,それはなぜでしょう?
約分とは分母と分子を同じ数で割っていくのですが,この『割れる数で割る』というのが少々曖昧で難しく感じているようです。特に計算が苦手であったりこだわりのある子どもにとっては余計にそう感じるようです。
最初はD君が公倍数,公約数を理解していないのか,と思いましたがそういうわけでもありません。それはきっちり理解していました。D君が「一気に終わらせたい。」という気持ちがあるようです。
「分数×分数」「分数÷分数」の宿題やプリントの答えを見ると「16/28」で終わっていたり,傍から見たら「まだ割れるやん!」と思ってしまいますが,D君にとってはそこで力を使い果たしてしまっているようです。
しかしそれで終わりにし,テストで×を貰ってしまうとそれはそれでD君の自己評価が下がってしまいます。
6年生の問題は問題数が多く,書くスペースも少ないです。約分の基礎である「小さい数字で割っていこう」ということを改めて教えつつ,少ない問題数でフリースペースが広い課題を準備し,定着するよう支援をしていこうと考えています。
「なんで、歩かなあかんの?」
子どもの頃の思い出を尋ねられると、旅行やお出かけしたことをあげる人は少なくありません。それだけ刺激的で、やりがいのあることなのでしょう。多くの人は余暇に外出することを選びます。しかし一口に外出と言っても、必要なスキルは多岐にわたります。公共交通機関を使うこと、買い物をすること、安全に気を付けて歩くこと。これらのことを身に着けて、外出できるようになっていきます。
盲学校高等部のAさんは、白杖を使って外を歩きます。これまでもすてっぷで、職員が安全確保しながら、近所を歩く練習をしてきました。ですがAさん自身は、「なんで、歩かなあかんの?」と、逃げ腰でした。職員は「卒業後に向けて、外を歩けるようになっていた方がいいからだよ」と理由を伝えます。が、Aさんは、「大丈夫です。卒業したら作業所が送迎してくれるから一人で歩かなくても大丈夫です」と、あっさり答えました。聞くと、ヘルパーさんとの外出の経験も少ないとのことです。
卒業後の余暇の過ごし方がイメージできていないのでは、と思った職員は、事前にお母さんと個別支援計画で打ち合わせしてから、もう一度Aさんと話しました。ヘルパーさんと外出したら買い物したり、外食したりできることの話題になると、Aさんは「行きたい!それなら練習します」と乗り気です。それなら白杖を使って歩く練習をした方がいいね、でもせっかくだから、ヘルパーさんと行くような場所に行ってみようか、と話がまとまりました。さっそく、1か月後に近所のファミリーレストランで食事をすることに。それまではすてっぷに来たら、そのファミリーレストランまで白杖を使って歩く練習をすることになりました。
この頃は、まだ梅雨入り前後で、天気が安定しなかった時期です。Aさんはすてっぷに到着すると、「今日は雨降ってないよ!」と報告してくれたり、「今日はこれから雨降りますか?」と確認したりと、外歩きのトレーニングにとても前向きになりました。さて、直近の目標のファミリーレストランへの外出はどうなるでしょうか。また近いうちに報告します。
フォニックス読み
じゃんぷに通う子ども達の中には英語の学習に取り組んでいる子どももいます。学習指導要領の改訂により,小学校では外国語活動が英語になり,教科として指導することになりました。
元々小学3年生の国語でローマ字を練習する小単元はあるのですが,それでも読み書きをするとなるとそれが苦手な子どもにとっては苦手感が出てくるかもしれません。
今回は「読み」という観点に絞って一つ紹介をします。
みなさんはフォニックス読みというものをご存じですか?アルファベットを覚える時,A(a)を「エー」B(b)を「ビー」と読むように教えます。ただ,アルファベットはA(a)を「ア」B(b)「ブ」のように読むいわゆる「音読み」があります。このようなアルファベットの音読みのルールを「フォニックス」といいます。
これを単語を教える時にも使います。「dog」はアルファベット読みだと「ディーオージー」と読みます。ただ,単語として読む時はそう読みません。日本語の「ド」に似ている「d」と「オ」と「ア」に似ている「o」と「グ」に似ている「g」をくっつけて「ドァグ」のように読みます。
英語のアルファベットの音とそれが繋がった時にどのように読むのかを教えるのが「フォニックス」です。
じゃんぷでは一部の子どもに英語の音読みのパターンを教えています。少しずつ英単語が読めるようになってきた子どももいます。このように英語の読みを指導しても良いかもしれません。
犯人は誰?(「犯人は踊る」)
すてっぷで取り組んでいるボードゲームの1つに、「犯人は踊る」というゲームがあります。様々な効果とそれを現すイラストが書かれたカードを、ババ抜きのように一人ずつ自分だけが見えるように持って、順番に1枚ずつ出していきます。1枚だけある犯人カードを持っている人を当てられれば勝ちですが、犯人カードを持っている人も最後まで当てられなければ勝ちになります。この犯人カードが、他のカードの効果で、ババ抜きのようにランダムでぐるぐるまわったり、交換されて行ったり来たりしているので、毎回展開が変わります。その中で、犯人を当てられるのかという楽しさのあるゲームです。
先日も、Eくん、Fくんと職員との3人で、この「犯人は踊る」で遊びました。(3人以上でできるというのも、このゲームのよいところです)。最初に、必ず入れるカードと、ランダムで入るカードを揃えます。それをまた混ぜて、3人で配ります。少しややこしい準備ですが、ルールブックに書いてあるので、EくんとFくんはそれを読んで、自分たちで準備します。準備ができると、さぁ開始。第一発見者のカードを持っている人から順番が始まります。このとき、どんな事件が起こるか言ってスタートするのですが、これが十人十色。冗談のように大げさに大きな事件を言ったり、身近で起こりそうな小さいことを言ったり、それが事件?というような日常的なことを言ったりします。要するに適当に言えばよいフレーバーなのですが、中にはそれが言えない子もいます。それがよい訓練となる場合もありますし、事前に職員から「言ってもいいし言わなくていいです」とフォローすることもあります。
さてゲームがスタートすると、犯人捜し。ですが、それぞれの持つカードはめまぐるしく変わっていきます。Eくんは、手札を見れるカードを使って、Fくんの手札を見ます。次にFくんは交換カードを使って、自分が持っていた犯人カードをこっそり職員に渡しました。職員は何の効果もないカードを出して、順番を回します。すると次のEくんはずばっと探偵カードを出して、「あなたが犯人ですね」と職員を指しました。見事、推理的中! 職員はEくんに「どうしてわかったの?」と尋ねました。するとEくんは、「だって、もともとFくんが持ってたの見てたから」と答えました。つまり、それを交換して職員の手に渡ったのだろうと考えたのです。職員はすかさず「すごいね!」と、Fくんの考えを読もうとがんばったことを褒めました。
他人の考えを読むということは、なかなか簡単なことではありません。すてっぷの多くの子が、まだまだ練習中です。実際に今回のケースでも、E君はF君の考えを読めたとは限りません。自分ならこうするだろうと置き換えて考えたのかもしれません。ですが、少なくともEくんはFくんの考えを読もうとがんばった結果、犯人を当てられました。この「犯人は踊る」で遊ぶ中で、自然と他人の考えを読もうとがんばる姿がいっぱい見られるので、どんどん褒めていきたいと思います。
「わり算の筆算」は手順が多い!
わり算の筆算に対して「苦手だ!」と感じる子どもは多いです。
わり算の筆算は手順が複雑です。
①たてる
②かける
③ひく
④おろす
という4つの手順が必要となります。数をこなすだけでは解決することが難しいです。できるまで繰り返書いて覚えるだけでなく,体を動かすことで手順を覚えていく方法があります。
①たてる②かける③ひく④おろすという手順をラジオ体操のように大きな動作で覚えていきます。①たてるのときは大きく上に手を上げ、②かけるのときは腕でXを作ります。③ひくのときはひき算のマイナスを表すように腕を横に伸ばし、④おろすときは下に向けておろします。
動作の際には必ずそれぞれの動きの言葉を「たてる!かける! ひく! おろす!」というように唱えます。
手順が複雑になればなるほど学習が苦手な子どもは問題を解くまでの途中でパワーを使ってしまい,疲弊ばかりしてきます。上記のように机上の学習だけでなく,少し体も動かしながら取り組んでみてもよいかもしれません。
(参考・引用 「子どものつまづきからわかる算数の教え方」 監修:平岩幹男 著:澳塩渚(合同出版) 「小学4年生までのつまずき総ざらえ算数レスキュー隊」(岩崎書店)
「負け」と向き合う
今までも何度か「負け」が認められない子どもについてブログで書いてきました。
先日じゃんぷで風船バレーをした時も負けてしまい,一瞬塞ぎ込んでしまったC君がいます。その時はC君の友達のD君が「一緒にやろう!」と声をかけてくれ,また参加することが出来ました。
まず,「負けが認められない」ということ自体はその子の気質です。ここは割り切って考えるしかありません。ただ,こういった子どもは「がんばろう!」という気持ちが強いので,それはとても良いことです。
まず,ゲームの前に「この遊びには勝ち負けがあります。勝つ人がいたら負ける人もいます」と前もって勝敗が分かれることを予告し,「勝ってもいばりません,負けてもおこりません」と遊びのルールを作ったうえで遊び始めます。そして負けてしまって悔しがる子には,「勝ちたかったんだね」とその感情を言語化してあげ,自分の気持ちを理解してもらえるという安心感を持たせてあげます。そうすれば昂った気持ちを抑える一助になります。
結果がよかったときは「結果とがんばった過程の両方を褒める」逆に結果がよくなかったときは,「がんばった過程を褒める」ことで勝っても負けても次にまたがんばることができるように繋げることも大切です。
室内遊びでも外遊びでも,子どもが良いプレーをした時は「その考えはなかったわ!すごい!」「いい動きだね!ナイスプレー!」と褒めるようにしています。
もちろん中には「そんなん言われたって負けは負けやん…」と言う子もいます。しかしいろんな遊びをし,勝ったり負けたりを繰り返して「負けても楽しかった!」と思えるように支援をしたいと考えています。結果がどうであれ,中身が素晴らしかったら拍手です!
「やったねBくん!」
すてっぷの活動で作業課題というのがあります。手指の操作の力を高めること、見本や指示に合わせて作業する力を育てることを狙いとし、就労支援に繋がることを願って取り組んでいます。すてっぷには現在、空き缶潰し、ペットボトル分解、箸の袋詰め、醤油さしやナットの組み立てなどの課題があります。
先日、BくんとCくんが協力してペットボトルを分解する作業に取り組みました。作業課題に入る前のおやつの時間でも楽しそうに笑いながらおしゃべりするほど仲の良い2人。作業前も爆笑するほど楽しんでおしゃべりしています。職員が説明に入り、Bくんにはペットボトルのラベル剥がしとキャップ分けの役割、Cくんにはプレス機でペットボトルを潰す役割を任せると伝えました。すると、さっきまでの様子と打って変わって、「はい」と真剣な表情で返事をしてくれました。まだ作業に入る前なのに、職員は二人の返事だけで感動してしまいました。
協力作業が始まると、Bくんは苦悶の表情を浮かべます。ペットボトルのラベルが中々剝がれないのです。時間をかけて少しずつ剥がすBくん。ラベルが剥がれたペットボトルを受け取ってプレスするCくんは、受け取り待ちの状態でしたが、Bくんを急かすことも集中を切らして他の事をするわけでもなく、Bくんの方に姿勢を向けていつでも受け取ることができるようにじっと待っていました。そして、Bくんが剥がし終わり、「はい。」とCくんに手渡すと、Cくんも「はい。」と言って受け取ります。そして、作業が完了し、職員が二人に「これで作業は終了です。BくんもCくんも頑張っていましたね。」と伝えました。すると直後に二人はハイタッチをしたのでした。そして、Cくんが言いました。
「やったねBくん!」
Bくんが苦労しながらも、Cくんに渡そうとあきらめずに作業を続けられたこと。そんなBくんをじっと待ち、終わってから称賛したC君。そんな2人の姿を見て、人が協力して働くことの尊さを思った職員。子どもたちから学ばせて貰えてよかったと感じる時間になりました。
2桁×2桁で「こんらん」してしまう!どうしよう!
先日,じゃんぷに通う中1のA君に2桁× 2桁のかけ算の宿題が出ていました。
小学生の時から学習に対する自己イメージが悪く,特に算数への嫌悪感が強いA君は「なんで俺にこんな宿題出すねん!こんらんするわ!」と言いながらも「教えて~」とお願いしてきます。
A君はその日宿題を終わらせることは出来ましたが,ふと他の子どもでも「2桁×2桁」が難しいと感じている子どもが多数いるなと感じ,原因を考えてみました。
まず,扱う数字の桁が増えるほど,位取りの誤りが起こりやすくなります。
並びあった2つの位は右の位に対して左は10倍を表しますが,数量のイメージが苦手な場合,それぞれの位にある数字の関係が'理解しにくく,計算ミスに気がつきにくくなります。
目で見て形や位置をつかむことが難しい場合,筆算を書き写すときに位置を誤ることもあります。
また,「和•差•積•商」等,計算の結果を漢字で表すことも増えてきます。
新しい言葉を覚えることが'苦手なために,教科書の内容がわからなくなることもあります。
計算の手順が身につきにくい場合,自分に合った手順表を作ってみることが有効です。頭の中だけで手順を考えながら計算するのは負荷がかかるので,頭の中で行っている作業手順を目で見えるようにしておくわけです。
手順表は文字で示したほうがいい子どももいれば,矢印などの一目でわかる方法で示したほうがいい子どももいます。
10個のりんごはイメージできても,1000個のりんごを鮮明にイメージすることは難しいでしょう。大きな数になればなるほど,具体的にイメージすることは難しくなります。
このようなときは,自分の生活の中にあるものを使ってイメージを助けていく方法が'あります。36ページでお話ししたように身近なものはお金です。1 円が1 0 枚で1 0 円。1 0 円が1 0 枚で1 0 0 円。1 0 0 円が1 0 枚で1 0 0 0 円。1 0 00円が 10枚で10000円です。隣り合った位の関係が'わかりにくいときには,お金に変換して考えてみるとわかる場合があります。また,ブロックなどを使っていく手もあります。ブロックが積み重なっていくと, 重さも増えますので,感覚を通して増加のイメージが掴めます。
上記に示した方法も,子どもの長所によって効果があるものとそうでもないものがあります。しかし,一度試してみても良いかもしれません。