すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

席をはずすのはいけない事か?

K君が終わりの会の席を立ってトイレに行くことが多くなったという報告を受けました。それまでは黙って参加していたおとなしいK君だったのに席を離れるとはいかがなものかということでした。

K君は言葉があまりわからずPECSを使って最低限の要求コミュニケーションができる人です。ただ、まだ決まった場面でしかiPecs(iPad)が使えません。最近やっと要求することが増えてきたなと感じていました。

そんなK君が終わりの会の途中で席を外してトイレに行きはじめたことについて、不適切と考えるのは、私たちの想像力が足りないのではないかという話をしました。

K君は自分の行動を考え始めたのかもしれません。今までは座れというから座っていた集まりですが、人生初めて「?」となり、座っている意味がわからないと思ったかもしれません。大事なのはこの後スタッフがどう対応するかです。私たちはK君から、これじゃわからんよとクレームをつけられたと考えるべきなのです。ではどうするか、答えは一つではありませんので、機会を見てまた報告します。

こうした方がうまく伝わるよ

スタッフ会議の「あるある」は、子どもの不適切な行動はあれこれ報告し合うのですか、その行動を子どもが起こした後スタッフは何をしたのかという事はあまり報告されません。実際にはここが重要です。「I君がビデオが見たかったので大声を出して壁を蹴りました。」「J君がこの遊びは嫌だと頭を叩きました。」この次が重要なのです。「それで、スタッフのあなたはどうしたのですか?」と聞くと「へ?」という顔をされることが少なくありません。

その後を聞くと「ビデオが見たいの?と聞いたら頷くのでビデオを見せました。」とか、「外に行きたいのだろうと外に連れ出すと頭叩きがなくなりました。」と不適切行動へのNG行動がとられていることが少なくないのです。「I君はビデオをつけてもいいかと大人に聞きたいのですが、適切なコミュニケーション手段がわからないので、皆が気付くように壁を蹴ったらスタッフが振り向いてくれてビデオが見たいことに気づいてもらえてビデオが見られました。」という文脈になります。とすれば次もI君は壁を蹴ってスタッフに気付きを促すだろうと容易に想像がつきます。J君も頭を叩けば嫌な事から逃げられると理解します。次はもっと強く頭を叩けば早く要求が実現すると考えるかもしれません。

この場合にスタッフがとるべき行動は、分化強化を促す(本日のコラム=みんなちがってみんないいに掲載)ことです。確かに不適切行動は、その人にとっては必要な行動ですからそう簡単に代替できるのものではないかもしれません。放デイのわずかな時間で代替行動が定着するほど甘いものではないかもしれません。それでも、あきらめないで、こうした方がうまく伝わるよと教える中で、適切な行動のきっかけを作るのが私たちの役割でだと思うのです。

 

割り算の宿題

G君が「先生手伝って!」と算数の宿題を開きます。見てみると2ケタの余りのある割り算問題。H先生にG君はワーキングメモリーが弱く、空間処理も悪いので筆算の書き間違い読み間違いが多く正解にたどり着くまでに投げ出してしまうので、計算は作業として、電卓でやっているとお伝えしたのですが、説明が足りなかった様です。しかも、普通の電卓では余りが計算できないので、F君は途方にくれていたわけです。あまり計算の電卓は売ってはいます。

カシオ 余り計算電卓 ミニジャストタイプ 12桁 MP-12R-N 価格: ¥1,464 が販売されていますが、答えしか出ず、計算過程が見られません。そこで、筆算も表示する余りのある割り算計算のホームページを探しました。

割り算の筆算

これだと筆算も表示してくれるので意味も分かりやすいです。明日G君に示すとともに、先生や関係者には算数障害についてお話しする必要があると思います。

算数障害(ディスカリキュア:dyscalculia)は、学習障害(LD:learning disability)のひとつです。学習障害は発達障害のひとつで、「聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する」の能力のなかで、特定の分野だけ習得が困難な状態のことを指します。算数障害とは、そのなかでも特に「計算する・推論する」という分野に関して、習得が難しかったり、うまく使えなかったりすることです。特定の分野以外に関しては問題がないことが多く、いわゆる知的障害とは異なります。

知的発達に遅れはないものの、学習面で著しい困難を示す小中学生の子どもは全体の4.5%を占め、なかでも「計算する」または「推論する」分野で著しい困難を示した子どもは2.3%とする調査結果があります。つまり約40~50人に1人の割合で、算数障害の可能性を持つ子どもがいることになります。ここに、読み書き障害が重なることも少なくありません。

算数障害に限らず、学習障害になる原因は、中枢神経系に何らかの機能的な障害があると推測されていますが、現時点では明確にはわかっていません。算数障害の子どもの特徴は、前述したとおり、特に算数に関してだけ習得が著しく遅いことです。文部科学省は、算数だけに小学2~3年生で1学年以上の学習の遅れ、小学4年~中学生で2学年以上の学習の遅れが見られれば、算数に関する学習障害の可能性がある、としています。

算数障害は以下のようなチェックシートが用意されています。
数処理
1 数字を見て、正しく数詞を言うことができない(読み)。
2 数詞を聞いて、正しく数字を書くことができない(書き)。
3 具体物を見てそれを操作(計数するなど)して、その数を数字や数詞として表すことができない。
数概念(序数性)
4 小さい方から「1、2、3…」と数詞を連続して正しく言うことができない(目安として120くらいまで)。
5 自分が並んでいる列の何番目か言い当てることができない。
数概念(基数性)あるいは数量感覚
6 四捨五入が理解できない。
7 数直線が理解できない。
8 多数桁の数の割り算において、答えとなる概数がたてられない。
計算(暗算)
9 簡単な足し算・引き算の暗算に時間がかかる。
10 九九の範囲のかけ算・割り算の暗算に時間がかかる。
計算(筆算)
11 多数桁の数の足し算・引き算において、繰り上がり・繰り下がりを間違える。
12 多数桁の数のかけ算において、かけたり・足したりの途中計算を混乱したり、適切な位の場所に答えを書くところで間違える。
13 多数桁の数の割り算において、答えの書き方や適切な位の場所に答えを書くところで間違える。
文章題
14 文章題の内容を視覚的なイメージにつなげられず、絵や図にすることができない。
15 答えを導き出すための数式が立てられない。

とはいえ、小学1年生が九九の計算ができないのは当然です。学校の授業での進み具合に合わせてチェックすることが必要ですが、未就学の段階では算数障害であるかどうかの判断は難しいのが実情です。

算数障害に限らず、学習障害、さらには発達障害というものは、治療することはできません。しかし足し算や引き算ができないと、日常生活にも影響が出てしまいます。ですから、できるだけ早い段階で、算数障害への対応をとることが大切です。ただし、算数障害がある子どもでも、その特徴は個々によって異なります。それぞれに応じた指導が必要となり、「これ!」という決定的な対応法はありません。

まず子どもに算数障害の疑いがあったら、通級指導教室など実際に発達障害の学習支援を実施している機関に相談します。子どもが集団に適応していると、授業の邪魔にはならないので関係者は障害を疑おうとせず、いわゆる勉強ができない子として見られてしまい発見が遅れます。

学習障害がある子どもの多くは通常の学級で勉強していますが、学校や担任の先生と協力しながら、子どもが理解しやすい方法を模索していく必要があります。具体的な例として、以下のような対応をとると、苦手な分野が学習しやすくなるといわれています。

● 教材の種類や教え方、板書の仕方、ノートの取り方などを工夫して教えること
● 手や指、視覚的な教材を使って数字を認識させること
● コンピューターや電卓などの機器を使うこと

嫌いなわけでも、学習意欲がないわけでもないのに算数ができないのは、子どもにとってもつらいもの。他の子どもと同じような勉強法は合わないことが多いので、できるだけ早く気づいてあげることが子どもの可能性を広げることに繋がります。また算数障害は代数学や幾何学、微積分学のような高度な数学ではなく、基本的な四則演算で症状が現れるものです。そこを上手に支援することができれば、将来的に理系の学習を深めることも不可能ではありません。

笑いあえる時間

支援学校の利用者のE君とF君がホワイトボードの後ろに貼った仲間の写真をみていつまでもゲラゲラ笑っています。何が面白いのか周りのスタッフにはさっぱりわからないのですが、一人が楽しいともう一人も楽しいと言う相互作用のようです。それまではゲーム遊びのやり取りで超緊張していた二人でしたが、友達の顔写真が並んだのを比べているだけで楽しいのです。

最初は、写真を比べるのが楽しかったのですが、笑っているE君の楽しい気持ちがF君に伝染して笑いを引き起こし、F君の笑いを見たE君がまたつられてさらに笑うという無限ループを繰り返すのです。この現象は、ミラーニューロン仮説として説明されています。

ミラーニューロンとは、鏡を見ているかのように、他の個体の行動を見て、自分自身までも同じ行動をとっているかのように反応をする、高等動物の脳内の神経細胞またはその機能を指します。ミラーニューロンの発見には、サルの脳が実験に使われており、サル以外には、鳥類や人間にも存在しているのではないかと推測されている段階で、人間の脳内にミラーニューロンが存在するという確証はまだありません。

ミラーニューロンとは脳内にある神経細胞のひとつです。この細胞は自分がなにか行動をするときだけでなく、他者がする行動を見たときにも活性化することが分かっています。たとえば、相手が泣いているのを見て自分も涙が出たり、反対に相手が笑っていると自分も楽しい気持ちになる仕組みです。

スポーツなどで、上手な人のお手本を参考にして練習して効果が出るのも同じ理屈です。相手の動きをじっくりと観察することで、脳内では自分が相手の動きをしているときと同じように細胞が活性化します。その上で模倣することで、練習の効果が身に付きやすくなるのです。逆に言うと、ヘタな人といると自分もヘタになるなどと言いますが、これもミラーニューロンの働きといえます。

二人の笑いを見ていて、こういうほっこりした午後のひと時、正の方向でミラーニューロンが活性化するべく環境を作るのことが大事だなぁと思います。

 

高学年ゲーム教材の工夫

放デイは日常生活や遊び活動で社会性の伸長を図っていきます。ただ、放デイに来ている子どもは低学年から高学年まで6年という年齢の開き、重度知的発達症(知的障害)から知的には遅れがないけどASD等の発達障害を持つ子や知的発達症も併せ持つ子など様々な特性を持つ子どもが通所しています。毎日、ある程度グループ分けはしていますが、どうしても低学年や知的発達症の子どもに合わせた内容になりやすいので、高学年や遅れのない子どもにとっては物足りなさがあります。

昨日も高学年のC君がボーリングゲームから逃げ出してきました。「D君が邪魔するからもうゲームやりたくない」と言いますが、高学年の彼にしてみれば幼稚なゲームから逃げる理由を探していた節があります。以前も単なる的当て(ストラックアウト)ゲームではなく、ポケットモンスターをみんなで仕上げるゲームしたら取り組み方が変わったことがあったことから、工夫が足りないんじゃないかということになりました。

そこでスタッフで話し合いました。「やることは繰り返しの幼稚なものでも、D君が好きな戦国武将倒しゲームならボーリングを楽しめないだろうか」「お城好きなので、ただの磁石魚釣りではなく、騎馬隊を釣ったり足軽を釣ったりする城攻めの釣り合戦ではどうだろうか」「時代物はD君は嫌いだけどスターウォーズシリーズでキャラ釣りすればどうだろうか」などアイデアが出されました。同じゲームでも高学年の子どもたちの興味関心をつかんでゲームを提供していけば、必ず気に入ってもらえるあそび教材が開発できると思います。ヒットしたものができたらここでまた掲載しようとおもいます。