今日の活動
「漢字をきれいに書けるかな?」
夏休みが近づいてきました。夏休みと言えば、子どものころの「宿題」を思い出します。小学校では「夏休みの友」という愛称で提出されていましたが、学生時代までずっと夏休みの宿題に苦労してきた筆者にとっては、友だちというよりは「戦友」と言った方がしっくりときます。
すてっぷでも宿題に取り組んでいる子がいます。L君は毎日、漢字ドリルの写しを頑張っている頑張り屋さんです。ただ最近、字の形が崩れてきているのが気になると、お母さんと職員の間で話題に上がりました。字が崩れてきている要因は、いくつか考えられました。
・宿題をしているときにL君が、近くで遊んでいる友だちの動作や音が気になるのではないか。
・宿題が終わっても、評価されたり褒められたりすることがなく、適当に流しているのではないか。
そこで2点、改善することにしました。まずLくんは今まで共有の机で宿題をしていたのですが、それを少し離れた仕切り板がある場所に変えました。また、宿題が終わったら「できました。」とNくんから職員に伝えられるよう、Nくんとシミュレーションして練習しました。そして職員がノートを確認することにして、時には修正することもあるかもしれませんが、最後は褒めて終えるようにすることを職員で共有しました。
新たに宿題をする場所を移したL君。仕切り板によって、他の子の動作や音に気が散ることなく、漢字一文字に対して時間をかけて、丁寧に取り組めました。また、宿題が終わった後に、職員に「できました。」と報告することもできています。職員がノートを確認すると、最近の崩れていた字と比べると一目瞭然!きれいな字が書けていました。職員から「字をきれいに書いているね。」と伝えると、N君は嬉しそうにノートを受け取りました。
今回改善したのは環境整備と振り返りの時間を作ることでした。子ども本人に「きれいな字を書こう」と目標を伝えるだけではなく、周りを変えてみることで、より目標を達成しやすいようにすること、そして何より本人が達成感を得られるようにすることが大事だと思います。
先生,書いて下さい!
先日じゃんぷに通う3年生のJ君が「今日はしんどいかも…先生,算数の宿題,式だけ書いてください。」と要求してきました。
J君は学習に対しての苦手意識が強く,宿題もやりたくない思いが強いです。4月当初,「やりたくない!」という気持ちが強く,宿題を「ない!」と言ってやり過ごそうとする姿も見られました。
読み書きや計算の処理が苦手なJ君にとって,ノートのマス目が小さくなったり,わり算といった学習内容のレベルアップ等,環境の変化についていくので精一杯だったのでしょう。「ここまでやろう。」「式は先生が書くよ。」「ここはなぞってもいいよ。」等,負担を減らしたり個別学習の時間で具体物を示して計算の方法をおさらいしたりし,J君が達成感を得られるように支援をしてきました。
宿題への向き合い方がわかったのか,ここ最近は「宿題嫌だ!」と言わずに黙々と取り組む姿が続いていました。大嫌いだった漢字の宿題もとても丁寧に取り組んでいます。
先日久しぶりに「算数の宿題の式だけ書いてください。」と職員に要求しました。「やりたくないよー!」ではなく具体的に援助を求めることが出来たのです。「わかった,じゃあ書いてる間漢字の宿題やっとく?」と聞くと「うん!」と言って黙々と宿題に取り掛かるJ君。自分の調子を客観視し,援助を要求したJ君の成長に感動した出来事でした。
気持ちを楽にして
6年生のI君は分数の計算に挑戦しています。約分が苦手な様子なので分数×分数,分数÷分数の単元はとても疲れるようです。
宿題をしている様子を見ると問題を解くことで精いっぱいのようです。まだ約分ができる問題が1つ2つ程残っているのですが,自分で見なおして間違いを見つける程の気力は残っていないようです。
こちらから声をかけ,「まだ約分できる答えがないか見直しておいで」と声をかけると自分で見なおし,見つけることは出来ました。しかしまだ課題はありますが,疲れた様子です。
スケジュールの間に「休憩」を挟み,一緒に割りばし鉄砲を作って遊ぶ時間を取りました。こういった工作や遊びは好きな子どもなので,嬉しそうな様子を見せましたが「まだ課題あるけど…」とI君は言います。
「大丈夫大丈夫,〇時まで遊んで,それから始めても余裕あるくらいの量やから。」と伝え,「このページは5分で終わるし,これも5分で終わるから…」と時間の見通しを伝えると「じゃあちょっと休憩しようかな」と安心したようです。
子どもがやる気を持って取り組むことはとても良いことです。しかし偶にそれが「焦り」になって追い込んでしまうこともあります。そういった様子が見えた時は「ちょっと気持ちを楽にしようか」と休憩を提案してもよいかもしれません。
「リクエストは『ハッピーバースデイ』だね」
支援学校高等部のHくんは音の鳴るおもちゃが大好きです。特に好きなのが、音の出る絵本。ボタンを押すと、様々な楽曲が鳴ったり、ものによっては鍵盤がついていて、押した音階の音が出るようになったりしてします。Hくんはそれを耳に当てながら、ボタンの位置も覚えているようで、ボタンを見ずに押して、曲を変えながら楽しんでいます。すてっぷには音の出る絵本が6種類くらいあるのですが、Hくんはそれぞれの写真を見分けて、カードで職員に「ください」と伝えます。職員が間違って違う絵本を取り出しても、以前のように怒るように激しく拒否するのではなく、手でそっと押しのけて「違う」と伝えられるようになりました。
Hくんは、3年ほど前まで、自発的なコミュニケーションと言えば、実物を手に取ることが結果的に要求だったり、座り込むことが結果的に拒否だったりでした。それがPECSの練習を続けることで、この1、2年でコミュニケーション能力がぐっと伸びました。今では歌の出る絵本やおやつ・ジュースなどさまざまなカードを使い分けて職員に伝えられるようになり、拒否も落ち着いて伝えられることが増えています。
要求や拒否など自発的なコミュニケーションが増えると、職員にもチャレンジする余裕が生まれます。先日、たまたま友だちが「今日は僕の誕生日やで」と職員に言っているところに、歌絵本を持ってやってきたH君。職員がHくんに「ハッピーバースデイかけて」とお願いしてみました。職員は拒否するかな?と待ち構えていたのですが、Hくんはボタンを見ずにポチッ。「ハッピーバースデイ~トゥユ~♪」と曲が流れました。Hくんが「ハッピーバースデイ」が分かってリクエストに応えてくれたことに、職員はびっくりしながらも、いっぱい褒めました。
他にもHくんは、半年ぶりにキーボードで遊んだときに、以前約束した通りの準備を自分ですることが出来ました。半年前の約束を覚えていたことに驚いた職員。職員側が全部準備していた3年前では気づかなかった強みを、今のHくんはいっぱい発揮しています。
出来るようになってきた!
じゃんぷに来ている中学生のG君。通所したら必ずローマ字の「聴覚法」に取り組んでいます。
学習に対する苦手感が強い子なので,あまり「学習!」という雰囲気は出さずに本人の興味のあることを調べさせることでタイピングの練習をしています。
ローマ字表を見ながらキーボードを打っていますが,タイピングが上手になってきています。「む…『M』ってどこやー!」と言いながら打っているのですが…つまり「む」を打つ時は「MU」ということはもう覚えているのです。キーボードの並びを覚えることも苦手なので,アルファベットを探しているようです。
そういったこともあるので本人は「まだローマ字打てへん!覚えてない!」と感じているようですが,実はもう覚えているのです。毎回の聴覚法も「はいはい」と言いながら当然のように言っています。
今は「友達にWordで手紙を書く。」という取り組みをしようかなと話しています。苦手感があることに対して拒否感を示していたG君ですが,「全然いいよ。やろうや。」と乗ってきました。「出来るって感じてるやん!」と言うと「そんなことないわ!」と返してきますが,拒否はしません。本人自身も効果を感じてきているようです。