すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

悪さを真似をするギャングエイジ

小学生になると子どもたちは急速に仲間意識が発達し、今まで以上に友だちとの関わりを求めたり、遊ぶことに喜びを覚えたり、生きがいを求めるようになります。ギャングエイジのグループは家族以上に大きな影響を持つものであり、子どもは大人から干渉されない自分たちだけの集団であることを望んでいるのです。

ギャングエイジの特徴としては、子ども間で共有する価値観や行動様式を重視し、徒党を組み、画一的な行動をするようになります。集団は5~6名で構成されることが多く、結合性が強く、秘密主義に満ち、外部に対し対立的、閉鎖的に振舞います。子どもたち自身の世界の成立を意味し、青年期への準備期間の役割を持つと言われます。

ところが、現代のこどもは、「ギャングエイジの欠如」が問題とされています。徒党を組む機会がないのです。スポーツ少年団や塾は大人の言いなり、学童保育や通所療育も大人の介入が入ります。子どもが自分たちだけで隠れる暗がりはある程度必要です。いじめも縦割り集団とギャングエイジ活動が欠落した結果の現象かもしれません。

発達障害の子どもにとっても、この集団は必要です。悪いことでも徒党を組み、悪さが発覚して全員が叱られる場面は子どもにとって必要な栄養です。P君が構造化された集団場面では丁寧な言葉遣いなのに、先輩が悪態をついた課題のあとでは自分も同じように悪態をつくと報告がありました。無理もないよねというのが職員の感想ですが、保護者にしてみれば悪態を覚えるために療育に来ているのではないと思う方もいるかもしれません。

仲間とともにありたいというのが、ギャングエイジの願いです。考え方も、行動様式もしゃべり方もまねようとすることで、親から仲間へ帰属意識を移す訓練をするのです。当然間違いや失敗も生じますが、それが大人の前で顕在化した時が成長のチャンスにもなります。この時に、支援する大人の力量の真価も問われます。

失敗を叱るだけでなく、もっと良い方法がなかったのか問いかけ、リカバリー策をこども集団と支援者が一緒に考えることで一人づつに働きかけるより大きな成長が見られることもあります(支援が下手だと全体の質を落とす危険もあります)。親は集団や経緯を見てないので、ハラハラしますが、職員は子どもを泳がせてタイミングをはかっています。情報は緻密に収集しているので、放置しているわけではありません。でも、心配な時は職員までご相談ください。

 

 

質問癖

O君は、新しい人を見ると体重と身長が聞きたくなります。べつにそれでどうという事はないのですが、データーを集めるのが趣味なのです。以前は【太ってるね: 2020/03/04 】で掲載したように、太っている?質問の真意は、おはようこんにちわのあいさつ時間の境界線のようなもので、基準が気になっているだけなのですが、今は興味が移って、ただ単にパーソナルデータを集めたくてしょうがないのです。今回は、新人男性職員が入ってきたので、いそいそと「身長は何センチ?」と聞いていました。

女性の場合は、体のサイズの事は聞くと失礼だから聞いてはいけないと諭されていたので、新人女性職員が入っても彼はかなり我慢をしていたのです。今回は男性なのですごく喜んで聞きに行ったということです。データ取集の間があくと禁断症状がでてきて、近所のコンビニのアルバイトのお兄さんにも突拍子もなく聞いたりしていました。職員から「たまにしか会わない人に聞くと男性でもびっくりするよ」と説明を受けましたが、「それは分かっているけど、もうがまんができなくなって、欲望に負けるねん」と告白していました。

物や現象なら観察したり書物やネットで調べられますが、人のパーソナルな情報はその人に聞くしかないです。個人情報に関心を持ったばかりにO君はマナーとの狭間で大変苦労をしています。他の事なら研究熱心と言われるだけなのに、パーソナルなことに関心を持つと誤解されることが多いです。その溢れ出るエネルギーを他の事向けることはできないかとも思うのですが、こればかりは仕方がありません。欲望に負けてはならじと踏ん張っているO君を励まし支え続けていきます。

 

言葉遣いと友達関係

低学年のL君の言葉遣いをめぐって先輩たちの間でホットな議論になっています。先輩たちは、L君の口の利き方で一番気に入らないのが呼び捨てで呼ぶことだといいます。普段は「俺はちゃんや君付けで呼ばなくていい」と言っているM君までが、先輩の呼び捨て方が癇に障るといいます。あんたたちいったいどのお口でそんなこと言っているのと思いますが、人の事はよくわかるのです。

あれでは友達ができないと1年上のN君も断言します。要するに先輩たちは先輩への言葉遣いを謙れと言っているわけではないようです。自分たちだって敬称抜きで友達と名前を呼び合って遊んでいるからです。何が違うかと言うと彼らも正確には言えないのですが、名前を呼ぶ時の声のトーンや音量のようです。遠くから大声で先輩の名前を呼び捨てるように言うから先輩たちはイラついているのです。

でも、L君に全く悪気はないのですが、先輩たちは悪意があるように聞こえるのです。それ、あんたらもやけどなと教えてあげたいのですが、相手がどんな気持ちになるかについて見えない人にはなかなかむつかしいです。先輩たちだって呼び捨てて呼び合っているじゃないかとL君は思っているのです。でもそれはTPOがあるのですが、それは言外にあるルールです。従って、名前を呼ぶ時は近づいて行って、笑顔で小さめの声で呼びかける、できれば敬称はつけたほうが誤解されないという事を、L君に伝える必要があるようです。友達と衝突が多いというL君の学校や学童保育の課題がなんとなく見えてきました。

京都市内巡り

今日は小学生の「京都市内巡り」の日です。お天気も良く、市内は観光客であふれかえっていますが、地元の駅からみんな元気に出発しました。今日の予定は京都駅で市バス1日乗車切符(350円)を購入して、金閣寺、清水寺、二条城、東寺と回ってくるはずです。前回、この企画の経緯について【清水って水の上に浮かぶお寺ですか?10/16】 で掲載しましたが、実はみんな前の日はドキドキだったようです。

K君は昨日、送迎車の中で「僕、絶対財布落とすからもう行きたくないねん。考えただけで吐きそうや」とナーバスです。実はK君、その日公園で上着を忘れ、車内に帽子を忘れ、とどめに連絡帳を事業所に忘れています。今日は激しいねぇと聞くと、「もう無理、明日お金なくして京都市内から走って帰ってこなあかん」と落ち込んでいます。

みんなで行くから大丈夫だよと励ましてはみましたが、暗い顔で自宅に帰っていきました。公共機関を一人で利用したことがないというのが、プレッシャーのようです。皆で行くから、助けてくれるとは考えられないようで、一人で何とかしなくてはというのも彼ららしい思考パターンです。大丈夫、助けてと言えば知らない人でも助けてくれるよと言えば、「もしも極悪非道人やったらどうする?」と悪い方ばかりに想像が進みます。どうなることやら、土産話を楽しみにして待っています。

「聴覚法」効果あり!

最近J君から、PCのキーワード検索する時にキーボード打ってほしいと言う要求がなくなったと職員の間で話題になっていました。J君は今は一人でiPadの50音表で検索キーワードを打ち込んでいます。まぁ、これまではパソコンのキーボードなのでローマ字入力もできないから仕方がなかったのではという職員もいますが、PCでも50音表を出して入力することは可能でしたがそれすら煩わしがって、職員に入力をお願いすることが多かったのです。

J君はおそらく(医師の診断がない)発達性ディスレクシア(書字表出障害「ディスグラフィア」を含む)で6年の1学期ですら50音表が頭に入っていなかったのです。それに職員が気づいたのは車で出かける時にカーナビの検索をお願いすると、50音表で入力するとき文字の位置がわからず、文字の形を探して入力するので、検索がものすごく遅くもしやと思って、1学期から50音を暗唱する聴覚法に取り組んだのです。

聴覚法と言うのは極めて簡単で短時間のトレーニングです。ただ、機械的で面白いものではないので、自学自習は難しく、大人が毎日ついてあげる必要があります。J君は週3回通所しているので、毎回5分~10分取り組めば、効果が上がるはずだと4か月ほど経過しました。このトレーニングは、読み書きの苦手な人は、すらすらと頭の中に50音が思い浮かばない事が原因だと言う仮説の元に、頭の中に九九を覚えるように50音を「あ~ん」まで唱えて音で50音表を記憶してしまうという手法です。

ひらがなの読みから書きカタカナへと進み通常半年ですらすらと50音の読み書きが可能になります。J君は本は大好きな軍事ものや無線関係はむさぼるように読むのですが、書くのはからきし遅いです。読みも、間違えて読んでいるものもあります。今回はタブレットの50音表入力が苦労なくできるようになったとのことですが、これは頭の中に50音表が音として入ったのだと思います。

4か月でひらがな入力がものすごく楽になったJ君ですが、最初は「俺はあほやから訓練しても変わらん」と自分のことをよく卑下していたものです。最近は自分をディスることが少なくなりました。ひらがなの入力がスムースになるだけでも自己イメージは相当変わるという事です。書くことは視知覚や不器用の問題もあり訓練コスパが悪いので、キーボードでのローマ字入力を勧めています。これも今はかたくなに拒否していますが、アルファベットでローマ字音が頭に入れば気持ちも変わるはずです。