すてっぷ・じゃんぷ日記

今日の活動

「落ち着く時間だね」

 すてっぷでは、小学校と支援学校の子どもたちがいっしょに放課後を過ごしています。個別対応が必要な時間も子どもによって大小なりとありますが、一方で狙いをもって集団での過ごし、集団での活動に取り組んでいます。
 先日も小学校の子どもと支援学校の子どもの4人グループで近くの公園に行く予定をしていました。一緒に行くメンバーの1人、支援学校のUさんは友だちとのお出かけが大好き。ですが、日によって一緒に行きたい人が変わったり、逆に今日は行きたくないと言う日があるなど、気持ちの調整が課題でした。一緒に行くメンバーを予告したり、日によっては選択できるようにするなど支援していく中で、少しずつ受け入れられることが増えてきたUさんでしたが、この日はひさびさの爆発。別グループの職員と一緒に行きたいとパニック状態になって泣いて暴れてしまいました。
 Uさんが気持ちを落ち着けるようになるまで待っていたのですが、天気が悪くなり雨が降り出してしまいました。職員の判断で公園遊び自体は中止したのですが、このままだとUさんが『泣いて暴れたら、行きたくないという要求が叶った!うれしい!」と誤解してしまうかもしれません。そこで一緒に行く予定だったメンバーといっしょにドライブすることにしました。小学校グループのVくん、Wくん、Xくんに、Uさんが誤解しないようにという理由を説明します。すると3人とも理解を示し、Vくんが「俺も一年生のころ、何度も泣いて暴れまわってた。Uさんも落ち着く時間があったほうがいい。」と答えました。Wくんも「そやな。すぐに帰ったらあれやし少しだけドライブやな。」と続けます。Xくんも「そうやなぁ、Uさん暴れすぎや。Uさん、しっかり落ち着いたほうがいい。」と答え、いっしょに10分ほどドライブしました。
 ドライブから帰ってきてしばらくして、Uさんは徐々に落ち着きを取り戻し、おやつ、休憩に切り替えていつも通りにやさしい言葉で要求を伝えられることができました。小学生グループも帰ってから集団遊びを保障し、いつもの休憩に入っていきました。
 この日はUさんにとっては決して万全とは言えなかったと思いますが、職員の支援で誤学習することなく、徐々にパニックを抑えることができました。そこには理解を示してくれ、いっしょに付き合ってくれた小学校の友だちたちの存在があったからかもしれません。小学校グループの子どもたちも、職員の話を聞いて、友達を理解しようと努め、ひいては自分のことの気づきにもつながっているかもしれません。いっしょに過ごす場だからこそ、学びあえる機会がいくつも生まれているように思います。

「怖くないよ」

 すてっぷでは2月までに、ありがたいことに多くのお子さんが体験に来られました。今年は近隣の児童発達支援事業に通われている方にも来ていただき、グループ体験を学校時間中に行いました。普段過ごしている利用者がおらず、またいっしょに児発に通っている友だちもいる中で、比較的スムーズに体験に参加できたお子さんもいらっしゃったかと思います。
 一方で個別に体験を希望された方は、放課後の利用者が過ごしている時間に体験に来ていただきました。普段の施設内の様子も見ていただけるので、自分がその場で過ごす姿や環境をよりリアルに感じていただけると思います。ただ、自分の知らない子どもや大人が多いという状況は、体験されるお子さんによってはより緊張が増してしまうかもしれません。先日、体験に来ていただいたお子さんも、見てわかるほどに緊張されていました。そんなときに頼りになるのが、いっしょに体験に参加するすてっぷのメンバーたちです。
 この日、いっしょに体験に参加したのは、小学生グループのRくん、Sくん、Tくん。3人とも同じ学年で、すてっぷに来始めて2年ほど。この半年ほどで、それぞれ違う形ながらも、リーダーとして引っ張ったり、役割を果たそうとしたりするなど、上級生としてのがんばりを見せてくれるようになってきました。この日いっしょに取り組んだ遊びは「ワニワニパニック」。普段は職員がワニを出して、子どもがピコピコハンマーで出てきたワニを叩き、叩けた回数を競う遊びです。この日はワニを出す役、タイマーで時間を測る役をメンバーで役割交代することに。さっそくRくんがワニを出す役になり、Tくんがタイマーで測る中、見本を見せるSくんにワニを出します。するとRくんは自分から、ワニを出す時にワニの声を出したり、出す動きに変化をつけたりするなど、遊びをより盛り上げる働きかけをしたのです! 見本が終わり、次は体験の子が叩く番に。ですがやはり、とても緊張しているようです。それを見てRくんはSくんやTくんに「知らないとこに来たら緊張するよな」と共感を求めます。そして体験の子に「怖くないよ」と声をかけました。 それを聞いて体験の子も無事に遊びに加わることができました!
 その後、SくんがTくんに「ワニを早く出していい?」と遊びを盛り上げるなど、最後まで楽しみながらいっしょに遊んだ体験の子とメンバーたち。体験の子は笑顔で帰っていきました。もうすぐ新年度。最高学年のメンバーが卒業し、新1年生を含めた新規利用のメンバーが数名ほど入ってくることになります。この3人は次期高学年のリーダーとして、年下のメンバーたちを引っ張っていってくれることでしょう。メンバーたちが持ち前のリーダー力や優しさを発揮できるよう、普段の支援を積み重ねていきたいと思います。

「自分で注文できたよ」

 すてっぷに通う支援学校の子どもたちは、おやつやおもちゃで遊ぶ時間など、動機付けがしやすい機会でPECS(絵カード交換式コミュニケーション・システム)の練習に取り組んでいます。そして、よりコミュニケーションを取る機会を増やせるよう、それ以外の場面でPECSに取り組むことがあります。その一つが買い物学習です。

 普段から買い物学習に取り組んでいるコンビニやスーパーなどでも、「温めますか?」「おはしをつけますか?」などのコミュニケーションの機会はあります。ただ事前に練習し、また「○○ください」と伝えやすいのはやはり、食べ物を注文するお店です。その中でも多くの子どもが大好きなのがマクドナルドです。

 先日も支援学校のQくんが、トークンを貯めたごほうびに、職員と一緒にマクドナルドに行きました。事前に何を注文するか、メニューで確認していたQくん。ブックから「ソフトツイスト」「ポテト」「メロンソーダ」を文カードに貼り、最後に「ください」を貼って、レジカウンターに置きます。そして一つずつ指差しをして、「ソフトツイスト、ポテト、メロンソーダ、ください」と店員さんに伝えることができました!

 店員さんはQくんの注文したものを確認し、「サイズはどうされますか?」と聞いてきます。このときの対応は子どもによって、また状況によって変わってきます。事前に値段を計算したうえで「ポテトMサイズ」「メロンソーダMサイズ」などのカードを用意した方がいい場合もありますし、職員がメニュー表を見ながらどれにするか子どもに尋ね、子どもが答える場合もあります。後ろに並んでいる人がいるときなど、職員で答えることもやむを得ない場合もあります。

 このときは職員がメニュー表のМサイズを指差し、Qくんが「Мサイズください」と伝えて、無事商品を受け取ることができました。アイスから一つずつ、ゆっくり味わったQくん。次のトークンの目標は買い物学習にしたいそうです。いろんな場面でコミュニケーションができた経験を積み上げていきます。

ホップすてーしょんよりお知らせ(2月からの事業所のご案内)

 平素より格別のご愛顧を賜り厚くお礼申し上げます。特定非営利活動法人ホップすてーしょんは2018年に「育ちの広場 すてっぷ」、2020年に「学びの広場 じゃんぷ」を開業し、保護者様・関係機関のご理解・ご協力の元、利用者様・保護者様への過ごし・支援のサービスを行ってまいりました。

 このたび、鶏冠井町稲葉にあります「学びの広場 じゃんぷ」は、放課後等デイサービス事業のみ(小~中学生)が独立し、上植野町薮ノ下に移転することになりました。また、児童発達支援事業(未就学児)は鶏冠井町稲葉に残り、名前を「あゆみの広場 いっぽ」と改めることとなりました。

 2月からは「あゆみの広場 いっぽ」、「育ちの広場 すてっぷ」、「学びの広場 じゃんぷ」の3事業所でスタートします。今後も職員一同、利用者様・保護者様へのよりよい過ごし・支援に努めてまいります。皆さまの変わらぬご支援・ご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

「そんなこと言わないでよ」

 「ぼく、卒業しようかな」(2023/10/20)で紹介した小学生のIくん。この数か月で目まぐるしい成長を見せてくれています。

 Iくんはすてっぷに来始めて、もうすぐ2年になります。怒りっぽく、人の話を誤解しやすいところもあり、来始めた頃はトラブルがあればその中心にいることがよくありました。自分のしたいこと、したくないことがはっきりしていて、友だちと相談したり譲り合ったりということが難しく、「じゃあ遊ばない!」と友だちから離れることも珍しくありませんでした。

一方で賢いところがあり、大人が以前話したことを覚えていて、「こういうときはこうしたらいいんやんな」と確認しながら、よりよい行動をしようと意識することがありました。そしてこの1年間は特に、年下の小学生メンバーが増え、また支援学校の友だちとの活動も活発になってきました。そんな中でIくんは、持ち前の優しさを年下の子や支援学校の友だちに発揮したのです。

 この時期にはみんなで決めた遊びにほぼ入れるようになってきていたIくん。参加する友だちのことを考えて職員がおにごっこのルールを決めたりする中(もちろんIくんを考慮したこともありました)、次第にIくんは自分から「○○さんはタッチ返しありがいいよね」など、友だちをおもんばかった提案をしてくれるようになりました。また帰宅時の送迎車の中では、誰もが前の席(助手席)に乗りたがります。Iくんも初めは自分が助手席に乗りたい!と口論になることもしばしばありました。ですが今では、「前は○○さんが後ろだったから、今日は○○さんが前ね。僕たちは後ろ!」と自分から提案します。運転する職員がOKを出すと、Iくんは友だちにも提案し、友だちも受け入れられるようになりました!

 衝突しがちだった同級生や年上の友だちにも、最近は優しい言葉を返せることが増えてきたIくん。友だちが違う友だちとの雑談で「死ね」と(もともとよくない言葉ですが)言ったとき、Iくんは自分に対して言ってきたと勘違いしてしまいます。昔なら怒って叫んだIくんですが、今は違います。「そんなこと言わないでよ」と友だちに落ち着いて伝えました。友だちがキャラクターに対して言ったんだよと説明すると、「そうなんだ」と切り替えられたIくん。確かに卒業が近づいているかもしれません。