今日の活動
トランジションカード
タブレットを見ていたU君がタイマーが鳴っても終わりの活動に動こうとしないので、「もう終わりだよ、タブレットをかばんにかたずけます」と指示したら、トイレに長く入ってしまったという報告がありました。このU君は以前「席をはずすのはいけない事か? 07/03」で紹介した人と同じ人です。
どうも、トイレに行くことがU君の切り替え場所(トランジットエリア)なのかなと推測しています。すてっぷは静かに(カームダウン)する場所が近くにはなく、行くとすれば目の前のトイレくらいなのです。前回は、終わりの会が彼にとっては意味なく感じてトイレに行ったという推測でしたが、以前から帰り際にスタッフに声をかけられるとトイレに行っている印象があるのです。
前回の掲載は、どうすればいいかは答えは一つではないので機会を見てまたエピソードを紹介したいと書きましたが、今回の場合は、比較的答えがはっきりしています。タイマーが鳴っても終わりとは思っていない事と、スタッフから声をかけられるのはむかつくのでトイレに行きたくなることだったのではないかと思います。
だとすれば、声をかけて終わらせるのではなく、トランジション(スケジュールを見ます)カードを渡して、「カバンにタブレットを入れて帰る準備」のスケジュールの絵を見せようと提案しました。うまくいくでしょうか。機会を見て結果を報告したいと思います。
家紋試験
S君のお迎えに学校に行くと、T先生が「こんなテストしたら100点でした」と引出の中からS君のテストファイルを取り出し、誇らしげに見せてくれました。「家紋テスト」でした。
実は以前、T先生にS君は戦国武将の事や軍事のことについてはものすごく興味があって大人も知らないほど知識が豊富なのでこれを使って、教科の工夫ができないか話していたのです。ディスグラフィアのS君は書くのが遅く文字もうまく書けないので、めんどくさがって文字を書こうとしません。
ところが家紋テストなら全て書いてしかも全問正解です。もちろんひらがなは歪んでおり読みにくいのですが、一生懸命書いたなとわかる筆跡でした。T先生お手柄です。あっぱれあっぱれ!この調子で読み書き算数の教科にアレンジして取り組んでくださいとお願いしました。
サービス担当者会議
相談事業所から○○さんのサービス担当(関係)者会議があるので集まってくださいと言われることがあります。この会議は下図の一連の流れでサービス計画を決めたり見直したりするのに最低限必要な会議ではなく、各事業所において利用者の行動問題などから支援が円滑に進まないという申し出があったときに、担当の相談事業所が利用者に聞き取りを行い、かつ関係者を集めて検討をする会議です。驚くべきことにこの会議に参加する関係者は無報酬であることや、相談事業所に支払われる加算は月1回まででたった100単位(一単位≒10円)ということです。
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サービス担当者会議実施加算 100 単位/月
継続サービス利用支援の実施時において、利用者の居宅等を訪問し利用者に面接することに加えて、サービス等利用計画に位置付けた福祉サービス等の担当者を招集して、利用者等の心身の状況等やサービスの提供状況について確認するとともに、計画の変更その他必要な便宜の提供について検討を行った場合に加算する。
※ 利用者1 人につき、1 月に 1 回を限度として加算。
※ サービス利用支援の一連の流れで行う担当者会議は加算に該当しない。
※ サービス担当者会議において検討した結果、サービス等利用計画の変更などを行った場合は、サービス利用支援費を算定することとなるため、算定不可。
※ サービス担当者会議の出席者や開催日時、検討した内容の要旨及びそれを踏まえた対応方針に関する記録を作成し、5 年間保存すること。
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日常的にコミュニケーションもしていない事業所同士が、課題が生じた時だけ集まって、成果が上がると考える方が無理があります。客観的に考えれば利用者の行動問題のほとんどは支援者側の問題です。そうしたデリケートな問題をよく話し合ったことのない支援者同士がちょっと集まって解決できると考えるのは無謀で、逆に支援者同士の感情的な行き違いを作る可能性のほうが大きいと思います。
どの事業所も同じ悩みを抱えているならまだしも、うまくいっている(と思っている)ところやそうでない事業所があれば、各事業所言いたいことだけを言い合ってお互いの違いを確認するのが精一杯です。こうした支援課題に関わる相談は、考え方の違う人を集めるよりも相談事業所がリードして専門家を入れてピンポイントで課題解決を図る方が合理的だと思います。
それにしてもこの会議開催の加算額はあまりにも低すぎます。逆に言えば、その単価程度の目的しか持たせていないというべきかもしれません。私たちが求めている目的を持たせるなら、最低この10倍は出すべきです。参加した事業所にも放デイの家庭連携加算を認めるべきです。また、行動問題の専門家(医師・心理士)を招聘してのカンファレンスをこの会議の内容として積極的に誘導するように、その経費も加算額に加えるべきです。
そうすれば、たとえ無報酬で参加を求められた事業所であっても、事業所のサービスの質を向上させられるというインセンティブが満たされれば積極的に参加しようとするはずです。勿論、そのためには相談事業所の行動問題への知見が確かであることは大前提です。
とにかく、巷ある関係者の『連携』会議は役に立たない、百害あって一利なしと相場が決まっています。まさに、船頭多くして船山登る状態と言わざるを得ません。船頭も決めず、行き先も決めずして船は進みようがないからです。
実行機能
R君に回るコマのペーパクラフトを提案すると、「えーめんどくさい」と返事が帰ってきます。仕方がないのいでスタッフが一緒に手伝い、パーツの切り出しだけを指示すると、できるのです。彼は別に不器用だから、嫌がっていたのではないのです。もちろん、自分勝手というわけでもありません。モノを作る見通しができないので暗闇の中を歩いているような感じなので「めんどくさい」のです。
簡単に言うと作業の段取りや順番がたてられないのです。段取りをイメージしたり計画を心の中でシミュレーションする認知過程を実行機能と言います。よく、お喋りは流暢で、あれこれの構想を口では言うのですが、実際に行動させるとうまく動けない人や、口では大きなことを言うけど見通しがないので周囲に迷惑をかけてしまう人は実行機能が弱いと言えます。原因はワーキングメモリーと深い関係があると言うのが仮説です。
たかがコマづくりの、単純なペーパークラフトですが、特定の物を作り上げるとなると苦手意識が強い人が多いです。こういう人には、構造化支援して最後まで見通せるようにしてワークシステムを作ってあげるか、そもそも終わりのない自由作品をアートする楽しさを味わってもらうなどの支援が必要です。
してはいけないことをどう伝えるか
Qちゃんが公園で水遊びをして、服が少し濡れたのだが全部脱ぎだして困っていると電話が入りました。慌てて車で着替えをもっていきます。さて、脱いだら着替えが大急ぎでやってきたのですから、次回もきっと全部脱げば新しい服が届くのではないかという理解をしたのではないかとスタッフは悩みます。しかし、そうは言ってもご近所さんが見ています。公の場所で裸のQちゃんに「脱ぐ」「着る」の駆け引きはできません。
「濡れたら全部脱ぐ」と理解しているQちゃんに、「ここでは脱いではいけない、○○で着替えます」をどう伝えればいいでしょう?これはやはりフェイズ2以降の「待って」対応が基礎なのです。机上で待てるようになって徐々にどこでも待てるようになっていきます。つまりQちゃんは大人に嫌がらせをしたいわけではなく、待つという意味が理解できていないのです。待てばいいことがある。という経験なくして待つことはできません。あるいは待たないと目標が実現がしないという経験も必要です。フェイズ2と並行して取り組む課題「待って」はこういう意味があります。
PECSを続けると適応行動が増えます
P君が近頃適応行動が増加していることが報告されました。P君は言葉のない子どもです。以前はPECSに取り組んでいたのですが、フェイズ2までしかできないと言う理由で、弁別に進まず、P君の要求はだいたいわかるからという事で自然消滅的にPECSトレーニングは行われなくなったのです。
これはスタッフだけの責任ではなく、学校も家も取り組まないのに放デイだけの時間で何とかなりそうにスタッフには思えないと言う問題があったからです。それでも「コミュニケーションは権利です」を掲げるわが事業所で取り組まない理由はないし、弁別のフェイズ3aもフェイズ1と2の蓄積の上に成り立つのですからあきらめないでがんばろうということを1か月前に確認しました。
そこで、先に書いたP君の適応行動が増えているという報告でした。これまでP君におもちゃをかたずけてから帰ろうと指示すると、大声を上げて反抗していたのが、最近はさっさとおもちゃをかたずけて帰るのを待っていると言うのです。
PECSは、自発のコミュニケーション支援です。自分から相手に伝えると言うアクティブな行動です。自分がはたらきかけて環境が変容していくというのは人間にとって重要な活動です。適切な方法で要求が実現することを知ると、子どもは不適切な方法を行う必要がありません。まだまだフェイズ2のP君にどれだけのことがわかっているのか、私たちには知る由もありませんがPECSトレーニングが始まって確実に適応行動が増えていることはスタッフみんなが認めるところです。
大雨警報
今日は府立学校(特別支援学校)は大雨洪水警報が出ているのでお休みです。地域の学校は暴風警報だけが臨時休校でそれ以外の警報は通常扱いです。従って、本日も通常授業です。
大雨洪水警報はたいていは朝方を過ぎると解除されます。朝方の降雨の仕組みは、気温が下がると大気中の飽和水蒸気量も下がるので、夜半以降は気温が下がり雨が降ります。日中は気温が上がるので水分は大気に維持され、前線の影響等がなければ雨は上がります。そんなわけで大雨洪水警報で臨時休校が出た午前中には、ほとんど雨が上がっていることが多いのです。
京都市の支援学校は原則暴風警報のみが臨時休校です。これも、午前8時までに解除の場合は1時間遅れで、午前9時までに解除の場合2時間遅れでバスを運行し、午前9時に『暴風警報』が発令中の場合には,臨時休業となります。こちらの方が午前7時の警報一発休校より柔軟で現実的です。
放デイの休所は、事業所によって様々ですが、大雨洪水警報では、ほとんどは営業しています。小学校も休まざるを得ない暴風警報が出ると、送迎に危険が生じますので臨時休業となるところが多いと思います。そんなわけで本日休校の支援学校の子どもは、自宅から送迎してもらうか、自宅にお迎えに行くかで、すてっぷは営業中です。
障害の重い子どもの報告
Oさんは昨日音楽遊びに取り組んでいました。スタッフに様子を聞くと、いつもの通り取り組みましたという回答でした。言葉がなく移動も不自由なOさんの報告は、ともすれば「~をしました」「ご機嫌でした」「機嫌が悪かったです」というパターンになりがちです。
でも、よく観察すると、大人の持っている楽器を見たり演奏する大人と楽器を見比べたり、楽器を大人と交互に演奏すると、大人の演奏が終わると腕を伸ばしてきたり、もっとやってと視線を送ってきたり、楽しいわーと演奏する人に笑顔を返してきたりと、様々な反応があります。ただ「楽しそうでした」と報告する以上にたくさんの情報があるのです。対人相互性はどうか、コミュニケーションのサインはあるか、新しいものへの興味関心はどうか、等の評価の観点をもってとりくめば、報告する中身は豊かになります。
楽しくなくても笑ってしまう
PECS課題をしようとしてもM君はけらけら笑ってスタッフをおちょくっているようで課題に取り組もうとしないという報告がありました。こちらが態勢を整えようとまじめに正してもいう事を聞かず笑ってばかりいるそうです。
同じ話はN君が学校から帰って来る時に、担任の先生が「N君ゲラゲラ笑って調子は良さそうなんですが、私の顔をしょっちゅう叩いてきます」というのがありました。
子どもが笑っている時は、調子がいいんだろうなぁ、楽しいんだろうなぁと思うのは当たり前です。しかし、ASDの人たちの場合、見通しがなかったり、訳が分からなくなっていたり、不快な状況の時に笑ってしまう人がいます。
M君はPECS手続きを身体プロンプトで教え、要求カードを相手に渡すことを思い出したあたりから、行動が穏やかになったそうです。N君も学校で水遊びなど好きな活動をスケジュールに入れることでゲラゲラ笑って叩くことは減ったそうです。
ASDの人たちの混乱時の笑いの原因はよくわかっていませんが、視床下部に笑いのツボがあり、感情中枢の偏桃体とも近いことが何らかの関係をするのだろうと推測されています。
「相手の気持ちをうまく推し量れない」「その場にあった行動ができない」などの症状は、障害が原因であっても、見た目からは判断しにくいため、周りの人から気づかれにくく、理解されないことも多く、周囲からは本人の性格の問題と思われたり、親の育て方がわるいなどと誤解され、本人も家族もつらい思いをすることが少なくありません。私たちは、子どもが笑いながら不適切な行動をとる時、その心理的背景をよく考えていく必要があります。
届かないカード
PECSのフェーズ2は、コミュニケーターが子どもから距離をとってすぐにはカードが渡せない設定で、カードを渡しきるトレーニングです。Lさんは、今まで渡していた机の幅が広くなって、スタッフまで手が届かなくてあと30cmを要求カードを指で飛ばして渡そうとしました。
ASDの対人関係障害に関するスタッフの理解は、こういうときに試されます。「Lさん、うまいこと考えたね~!」なのか「う~ん、表出コミュニケーションは簡単じゃないね」にわかれます。
この場合は、プロンプター(子どもの後ろからハンドリングする人)が身体を押して立たせて腕をもってあげて渡す行為を手伝います。ただ、机が障害になって立つことが分かりにくいので、机の角を使って立って渡しやすくします。徐々にプロンプターは身体や腕を支える力を抜いていき最後は肩を人差し指で触るくらいまでフェードアウトして、自立させていきます。マニュアルにはちゃんと書いてありますが、隅々まで見る人は少ないです。
席をはずすのはいけない事か?
K君が終わりの会の席を立ってトイレに行くことが多くなったという報告を受けました。それまでは黙って参加していたおとなしいK君だったのに席を離れるとはいかがなものかということでした。
K君は言葉があまりわからずPECSを使って最低限の要求コミュニケーションができる人です。ただ、まだ決まった場面でしかiPecs(iPad)が使えません。最近やっと要求することが増えてきたなと感じていました。
そんなK君が終わりの会の途中で席を外してトイレに行きはじめたことについて、不適切と考えるのは、私たちの想像力が足りないのではないかという話をしました。
K君は自分の行動を考え始めたのかもしれません。今までは座れというから座っていた集まりですが、人生初めて「?」となり、座っている意味がわからないと思ったかもしれません。大事なのはこの後スタッフがどう対応するかです。私たちはK君から、これじゃわからんよとクレームをつけられたと考えるべきなのです。ではどうするか、答えは一つではありませんので、機会を見てまた報告します。
こうした方がうまく伝わるよ
スタッフ会議の「あるある」は、子どもの不適切な行動はあれこれ報告し合うのですか、その行動を子どもが起こした後スタッフは何をしたのかという事はあまり報告されません。実際にはここが重要です。「I君がビデオが見たかったので大声を出して壁を蹴りました。」「J君がこの遊びは嫌だと頭を叩きました。」この次が重要なのです。「それで、スタッフのあなたはどうしたのですか?」と聞くと「へ?」という顔をされることが少なくありません。
その後を聞くと「ビデオが見たいの?と聞いたら頷くのでビデオを見せました。」とか、「外に行きたいのだろうと外に連れ出すと頭叩きがなくなりました。」と不適切行動へのNG行動がとられていることが少なくないのです。「I君はビデオをつけてもいいかと大人に聞きたいのですが、適切なコミュニケーション手段がわからないので、皆が気付くように壁を蹴ったらスタッフが振り向いてくれてビデオが見たいことに気づいてもらえてビデオが見られました。」という文脈になります。とすれば次もI君は壁を蹴ってスタッフに気付きを促すだろうと容易に想像がつきます。J君も頭を叩けば嫌な事から逃げられると理解します。次はもっと強く頭を叩けば早く要求が実現すると考えるかもしれません。
この場合にスタッフがとるべき行動は、分化強化を促す(本日のコラム=みんなちがってみんないいに掲載)ことです。確かに不適切行動は、その人にとっては必要な行動ですからそう簡単に代替できるのものではないかもしれません。放デイのわずかな時間で代替行動が定着するほど甘いものではないかもしれません。それでも、あきらめないで、こうした方がうまく伝わるよと教える中で、適切な行動のきっかけを作るのが私たちの役割でだと思うのです。
割り算の宿題
G君が「先生手伝って!」と算数の宿題を開きます。見てみると2ケタの余りのある割り算問題。H先生にG君はワーキングメモリーが弱く、空間処理も悪いので筆算の書き間違い読み間違いが多く正解にたどり着くまでに投げ出してしまうので、計算は作業として、電卓でやっているとお伝えしたのですが、説明が足りなかった様です。しかも、普通の電卓では余りが計算できないので、F君は途方にくれていたわけです。あまり計算の電卓は売ってはいます。
カシオ 余り計算電卓 ミニジャストタイプ 12桁 MP-12R-N 価格: ¥1,464 が販売されていますが、答えしか出ず、計算過程が見られません。そこで、筆算も表示する余りのある割り算計算のホームページを探しました。
これだと筆算も表示してくれるので意味も分かりやすいです。明日G君に示すとともに、先生や関係者には算数障害についてお話しする必要があると思います。
算数障害(ディスカリキュア:dyscalculia)は、学習障害(LD:learning disability)のひとつです。学習障害は発達障害のひとつで、「聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する」の能力のなかで、特定の分野だけ習得が困難な状態のことを指します。算数障害とは、そのなかでも特に「計算する・推論する」という分野に関して、習得が難しかったり、うまく使えなかったりすることです。特定の分野以外に関しては問題がないことが多く、いわゆる知的障害とは異なります。
知的発達に遅れはないものの、学習面で著しい困難を示す小中学生の子どもは全体の4.5%を占め、なかでも「計算する」または「推論する」分野で著しい困難を示した子どもは2.3%とする調査結果があります。つまり約40~50人に1人の割合で、算数障害の可能性を持つ子どもがいることになります。ここに、読み書き障害が重なることも少なくありません。
算数障害に限らず、学習障害になる原因は、中枢神経系に何らかの機能的な障害があると推測されていますが、現時点では明確にはわかっていません。算数障害の子どもの特徴は、前述したとおり、特に算数に関してだけ習得が著しく遅いことです。文部科学省は、算数だけに小学2~3年生で1学年以上の学習の遅れ、小学4年~中学生で2学年以上の学習の遅れが見られれば、算数に関する学習障害の可能性がある、としています。
算数障害は以下のようなチェックシートが用意されています。
数処理
1 数字を見て、正しく数詞を言うことができない(読み)。
2 数詞を聞いて、正しく数字を書くことができない(書き)。
3 具体物を見てそれを操作(計数するなど)して、その数を数字や数詞として表すことができない。
数概念(序数性)
4 小さい方から「1、2、3…」と数詞を連続して正しく言うことができない(目安として120くらいまで)。
5 自分が並んでいる列の何番目か言い当てることができない。
数概念(基数性)あるいは数量感覚
6 四捨五入が理解できない。
7 数直線が理解できない。
8 多数桁の数の割り算において、答えとなる概数がたてられない。
計算(暗算)
9 簡単な足し算・引き算の暗算に時間がかかる。
10 九九の範囲のかけ算・割り算の暗算に時間がかかる。
計算(筆算)
11 多数桁の数の足し算・引き算において、繰り上がり・繰り下がりを間違える。
12 多数桁の数のかけ算において、かけたり・足したりの途中計算を混乱したり、適切な位の場所に答えを書くところで間違える。
13 多数桁の数の割り算において、答えの書き方や適切な位の場所に答えを書くところで間違える。
文章題
14 文章題の内容を視覚的なイメージにつなげられず、絵や図にすることができない。
15 答えを導き出すための数式が立てられない。
とはいえ、小学1年生が九九の計算ができないのは当然です。学校の授業での進み具合に合わせてチェックすることが必要ですが、未就学の段階では算数障害であるかどうかの判断は難しいのが実情です。
算数障害に限らず、学習障害、さらには発達障害というものは、治療することはできません。しかし足し算や引き算ができないと、日常生活にも影響が出てしまいます。ですから、できるだけ早い段階で、算数障害への対応をとることが大切です。ただし、算数障害がある子どもでも、その特徴は個々によって異なります。それぞれに応じた指導が必要となり、「これ!」という決定的な対応法はありません。
まず子どもに算数障害の疑いがあったら、通級指導教室など実際に発達障害の学習支援を実施している機関に相談します。子どもが集団に適応していると、授業の邪魔にはならないので関係者は障害を疑おうとせず、いわゆる勉強ができない子として見られてしまい発見が遅れます。
学習障害がある子どもの多くは通常の学級で勉強していますが、学校や担任の先生と協力しながら、子どもが理解しやすい方法を模索していく必要があります。具体的な例として、以下のような対応をとると、苦手な分野が学習しやすくなるといわれています。
● 教材の種類や教え方、板書の仕方、ノートの取り方などを工夫して教えること
● 手や指、視覚的な教材を使って数字を認識させること
● コンピューターや電卓などの機器を使うこと
嫌いなわけでも、学習意欲がないわけでもないのに算数ができないのは、子どもにとってもつらいもの。他の子どもと同じような勉強法は合わないことが多いので、できるだけ早く気づいてあげることが子どもの可能性を広げることに繋がります。また算数障害は代数学や幾何学、微積分学のような高度な数学ではなく、基本的な四則演算で症状が現れるものです。そこを上手に支援することができれば、将来的に理系の学習を深めることも不可能ではありません。
笑いあえる時間
支援学校の利用者のE君とF君がホワイトボードの後ろに貼った仲間の写真をみていつまでもゲラゲラ笑っています。何が面白いのか周りのスタッフにはさっぱりわからないのですが、一人が楽しいともう一人も楽しいと言う相互作用のようです。それまではゲーム遊びのやり取りで超緊張していた二人でしたが、友達の顔写真が並んだのを比べているだけで楽しいのです。
最初は、写真を比べるのが楽しかったのですが、笑っているE君の楽しい気持ちがF君に伝染して笑いを引き起こし、F君の笑いを見たE君がまたつられてさらに笑うという無限ループを繰り返すのです。この現象は、ミラーニューロン仮説として説明されています。
ミラーニューロンとは、鏡を見ているかのように、他の個体の行動を見て、自分自身までも同じ行動をとっているかのように反応をする、高等動物の脳内の神経細胞またはその機能を指します。ミラーニューロンの発見には、サルの脳が実験に使われており、サル以外には、鳥類や人間にも存在しているのではないかと推測されている段階で、人間の脳内にミラーニューロンが存在するという確証はまだありません。
ミラーニューロンとは脳内にある神経細胞のひとつです。この細胞は自分がなにか行動をするときだけでなく、他者がする行動を見たときにも活性化することが分かっています。たとえば、相手が泣いているのを見て自分も涙が出たり、反対に相手が笑っていると自分も楽しい気持ちになる仕組みです。
スポーツなどで、上手な人のお手本を参考にして練習して効果が出るのも同じ理屈です。相手の動きをじっくりと観察することで、脳内では自分が相手の動きをしているときと同じように細胞が活性化します。その上で模倣することで、練習の効果が身に付きやすくなるのです。逆に言うと、ヘタな人といると自分もヘタになるなどと言いますが、これもミラーニューロンの働きといえます。
二人の笑いを見ていて、こういうほっこりした午後のひと時、正の方向でミラーニューロンが活性化するべく環境を作るのことが大事だなぁと思います。
高学年ゲーム教材の工夫
放デイは日常生活や遊び活動で社会性の伸長を図っていきます。ただ、放デイに来ている子どもは低学年から高学年まで6年という年齢の開き、重度知的発達症(知的障害)から知的には遅れがないけどASD等の発達障害を持つ子や知的発達症も併せ持つ子など様々な特性を持つ子どもが通所しています。毎日、ある程度グループ分けはしていますが、どうしても低学年や知的発達症の子どもに合わせた内容になりやすいので、高学年や遅れのない子どもにとっては物足りなさがあります。
昨日も高学年のC君がボーリングゲームから逃げ出してきました。「D君が邪魔するからもうゲームやりたくない」と言いますが、高学年の彼にしてみれば幼稚なゲームから逃げる理由を探していた節があります。以前も単なる的当て(ストラックアウト)ゲームではなく、ポケットモンスターをみんなで仕上げるゲームしたら取り組み方が変わったことがあったことから、工夫が足りないんじゃないかということになりました。
そこでスタッフで話し合いました。「やることは繰り返しの幼稚なものでも、D君が好きな戦国武将倒しゲームならボーリングを楽しめないだろうか」「お城好きなので、ただの磁石魚釣りではなく、騎馬隊を釣ったり足軽を釣ったりする城攻めの釣り合戦ではどうだろうか」「時代物はD君は嫌いだけどスターウォーズシリーズでキャラ釣りすればどうだろうか」などアイデアが出されました。同じゲームでも高学年の子どもたちの興味関心をつかんでゲームを提供していけば、必ず気に入ってもらえるあそび教材が開発できると思います。ヒットしたものができたらここでまた掲載しようとおもいます。
具体的な目標
放課後等デイサービスでは、半年に1回個別支援計画を書き直します。1万4千の事業所が23万人弱の子どもたちに書いて保護者に説明していることになります。もちろん、放デイだけで考えるのではなくて、相談事業所が家庭や地域での目標も含めて当事者からの聞き取りやアセスメントを経たサービス利用計画として大枠の目標を設定し、それに沿う形で放デイの目標が決まります。
気になるのは、どの計画をみても誰にでも当てはまりそうな目標が並んでいることが少なくない事です。支援計画とは、文字通り支援の計画ですから、何をどのように支援すれば子どもが自立的に活動できるのか、みんなと活動に参加できるのかが記述されている必要があります。
勿論、生活経験を重ねる中で自然に子どもたちが気づいて力をつけていくことが望ましいのですが、子どもを取り巻く環境は必ずしも子どもが自分で学べる環境ばかりではありません。その環境の調整も含めてスタッフは子どもの支援を考えていく必要があります。そして、放デイの取り組みだけで子どもが成長していけるものでもありません。家庭や学校、他の事業所も利用している子どもはそれもふくめて考える必要があります。
となってくると、あまり大上段に振りかぶった大きな目標よりは、1回2時間ほどで週2~3回の放デイでできることを目標にしなければなりません。具体的に書くことは今まさに必要なリアルな支援が展開されている証拠でもあるのです。
計画的無視の誤解
応用行動分析で使う「計画的無視」について誤解されていそうなやりとりを目にすることがあります。というのも、なんとなく「無視だけで問題行動が収まる」かのように誤解されている方が多いのです。A君がイライラしてものを投げているのに無視。Bちゃんがスケジュールカードの意味が分からなくて床に落しているのに無視、などです。その結果、「無視は効かない」「あの子には合わない」と結論づけたとしたら、それは計画的無視を誤解していることが原因です。
「計画的無視」は、名前が有名な割に単独で主力になる場面はそんなに多くありません。少なくとも、無視だけで効果を出そうとすることはあまりないです。なぜなら、無視のみでは重要な視点が抜けている上にリスクもあるからです。計画的無視というのは基本的に「それはダメだよ」ということを伝える側面が強いです。しかしそれだけでは「じゃぁ何はOKなのか」が伝わりません。そのため、「こうすると良いよ」の部分をきちんと伝える視点が大事です。子どもが低年齢だったり自閉傾向が強かったりすればするほど非常に重要な視点です。
応用行動分析でいう「何がOKかを示して促す」というのが、歌で言えば『こっちの水は甘いぞ』と比喩できます。そして、『あっちの水は苦いぞ』に当たるのが応用行動分析で言う「計画的無視」なのです。この二つの対応のコントラストが効けば効くほど、無視されるような行動よりは、褒められたり要求が通る行動に移っていくことを狙っているのです。要するにやる事(お得な事)がわかってないのに無視しても意味がないのです。
例えば、事業所の集まりの時間などで、「がおー!!」などの奇声をあげて注目が得られている状況では、「不適切場面での奇声は相手にしない」のような方針が出てきます。そうして何をどうやって無視するかといったことが議論されます。勿論これでも「無事にやりきれれば」効果は出るでしょう。条件次第で万事解決も十分あり得ます。しかし、極端な話、これでうまくいってもそれは「たまたま」や「子ども頼み」に近いと言わざるを得ません。
計画的無視のみで対処することには以下のような最低3つのリスクがあります。
①最終的には収まるが、無視を始めて一旦奇声が悪化する際の程度が激しい(→踏ん張れないとエスカレートの危険)
②奇声はなくなるが他の問題行動が出る
③本人にはきつそうで自傷や通所しぶりなどがみられる
等です。
そこで、そうしたリスクを下げつつ更に成功率を上げるため、先程の「何ならOKかを示す」という視点から一工夫加えます。「奇声は相手にしないけど、その時の話題に関係のある話だったら少し譲歩してでも話を拾う」この後半部分が、「じゃぁどうしたらOKなのか」の視点による対応です。むしろ、実際はそちらがメインで、【無視はあくまでサブ・補助】と考えた方が良いです。
大きなポイントは以下の3つです。
ポイント①:「これならOK」とした行動は本当に今の本人にできそうなものか
ポイント②:特別扱い過ぎないか。自然に認められる範囲を逸脱しすぎていないか
ポイント③:その行動をして本人にとってのいいことはあるか⇔ただ大人側に都合の良い行動をさせようとしていないか
もし、相談機関など専門家に【問題行動を無視することばかり強調された場合】にはぜひ「代替行動(だいたいこうどう)についてはどうしたら良いですか?」と聞いてみましょう。「代替行動」というのが先程の「何ならOKか」の部分にあたるものです。おそらくこれを聞けば、今回の話にあたる内容を説明してくれると思います。逆に言えばこれを検討もしていない専門家だとすると、それはちょっと心配な方です。
私たち抜きに私たちのことを決めないで
以前、お買い物でリマインダーの重要性について掲載しました。コンビニでお買い物03/19 自分で選ぶこと決めることの重要性03/25 コンビニ作戦04/06 結構このシリーズはたくさん掲載しています。
さて、ℤさんは今回はもうスパゲッティー弁当って言うに決まっているから、スタッフがお決まりのスパゲッティー弁当のリマインダーを持たせて買い物に行きました。そうすると、突然以前の「コンビニ→飲み物」モードが蘇って、お茶を買わないと帰れなくなりました。
突然の行動で考えられることは二つです。Zさんが、お弁当買うならお茶も買おうとたまたま思いついたか、もう一つは、いつものスパゲティーだからと選択の機会を奪われて納得がいかなかった上の行動かの、どちらかです。しかし、今となっては証拠がないので何とも言えません。
従って、以下のスタッフの思いは全くの憶測ですから、正しいかどうかはわかりません。Zさんのたまたま思いついた行動かもしれないというのも否定できません。しかし、あえて、Zさん達の支援をするときに心にとめておきたいことだから書いておきます。
リマインダーは記憶を助けますが、それは自分で選んだものを記憶して購入できたからこそ自立心や自尊感情が育つのです。言われるがままに自分が食する弁当を買っても、それが結果的には自分の欲しい同じものであっても、選ぶと言うプロセスが抜けているのです。「私たち抜きに私たちのことを決めないで」というのは障害者権利条約の肝ですが、これは日々の彼女らの自尊感情の育ちにも大きく影響していることだと考えています。
ご褒美制とトークン
Z君は省エネタイプで、気持ちが乗らないと車からも「降りません」といって時間がかかったり、山歩きでも「行きません」と座り込んだままだったり、事業所で作業課題があっても「やりません」と言ってソファーで寝てしまったりすることがありました。
Z君は本当にやる気がないからやらないのか、やることが十分わからないからやろうとしないのか、自分にとって価値がないからやらないのかよくわからないなぁという話になりました。でも、やる気などと言う抽象的なものは調べることができないので原因としては除外しました。何をして終わったらどうなるのかスケジュールでは示しているけどよく理解していないのではないかという議論になりました。事業所に来た時に、スケジュールの説明をするときに「~が終わったら~だよ」それでも「~しない」と言ったときは、「じゃぁご褒美にこれ食べますか」「食べます」というふうに契約を成立させて取り組んでもらう事にしました。今後は、一回一回ではなく、何回か目標が達成出来たらお気に入りのものを話し合ってボーナスを出すというトークンエコノミー法を取り入れていけるようになったらいいねと言う話をしています。
毎日6時間授業
Y君は毎日6校時で疲れ果てて家にたどり着くので、もう放デイに行くパワーがほとんど残っていません。Y君だけではありませんが、武漢ウィルスによる学校休業のために、学校は休業中の時間を取り戻そうと低学年でも6校時授業です。
おまけに、プールの授業はないし宿泊活動や校外学習など特別活動を省略して教科授業に振り替えていますから、息抜きもなく勉強です。高学年でも、かなりハードな日程と言えます。
ただ、ASDの子どもたちにしてみれば、3密を避けたカリキュラムは対人接触を遠ざけても変とは思われにくいですし、イレギュラー場面の多い学校行事も少ないですから授業場面さえこなせば、いつもの学校よりストレスは少ないかもしれません。疲れつつもY君が登校できているのはそんなこともあるのかもしれません。何が功を奏するかわからないものです。