今日の活動
正常性バイアス
Jさんの評価について、関係者間で意見が違うというスタッフの報告がありました。行動問題が多く服薬したほうがいいという意見と全く問題ないから服薬などやめたらいいという意見などです。
そもそも、長く様々な関係者と付き合っていると考えが同じことのほうが少ない感じがします。保護者の意見も学校の意見も事業所の意見も相談所の意見もすべてが同じであったことのほうが少ないくらいです。それくらい、子どもの評価は見ている環境によって違ってあたりまえだということを知っておくことが大事です。
環境がちがうのだから評価が同じであるわけがないという前提に立てば、相手の考えていることが客観的に見えてきます。Jさんの場合もそうなのでしょう、場面の切り替えや移動が少なければ穏やかに過ごせるし、切り替えが多ければ混乱しやすくなるということを、障害特性と数年間の経緯が把握できていれば、いろいろなJさんの姿を知ることができると思います。
関係者や保護者が自分の知らない混乱したJさんの状況を聞かされたとすれば、たとえ嘘のない事実であったにせよ、疑ったり気分を害してしまう場合もあるという想像力が支援者には必要になります。良いことは共有しやすいですが否定的なことは共有しにくいのです。正常性バイアスといって、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう心理は誰にもあるものです。関係者間連携とはこういう前提で取組むものですから、「自分のやり方が悪いのかもしれないので協力して欲しい」という理由で動画など客観的なものを用意して、結論は出さずに困っているところをみんなで知ることが重要です。その上で、「うまく生活できているところからはたくさん情報や意見が欲しい」と知恵を出し合う取組を丁寧に行うことが必要です。
トランジションカード
スケジュール指導ではトランジション・エリアとトランジション・カードが定番で使われますが、トランジション・カードについては誰が発案したのかよくわかりません。スケジュールを置いてある場所をトランジション・エリアと言い、トランジションカードは「スケジュールを確認しに行きなさい」と指示するためのカードです。
この移動カードのシステムは、指示待ち(プロンプト依存)を作ってしまう場合があります。I君がタイマーが終わったのでスタッフにタイマーを持ってきました。こちらとしては帰る用意をスケジュールに示しているので帰る用意をしてほしいのですが、I君にしてみれば「タイマーが鳴りました」と示しに来るだけで、次の活動とは結び付いていないのです。
仕方がないのでスタッフは毎回トランジション・カードを渡して、スケジュールを確認するように仕向けるわけです。これは、プロンプト依存を作っているのと同じです。人的介入を絵カードにしているだけで声をかけているのと同じなのです。なんのために声をかけてはいけないということがわからないと、こんな形で声かけより厄介で強固なプロンプト依存を作っているのです。
トランジション・カードはスケジュールに戻って次の行動を確認しましょうというものですが、やることがわかっていても「トランジション・カード待ち」をするASDの子どもがいます。しかも、このカード渡し行動はフェードアウトのアイデアが浮かびません。
結局、ピラミッドアプローチで説明されるように、次の行動を起こす一連の動作として、スケジュールボードの一番上のカードを「これからやります」場所に貼り付け、その内容が終了したらスケジュールボードのおしまいボックスに入れて、一番上のカードを「これからやります」場所に貼るというルーティンを覚えたほうがよいのです。
そして「これからやります」の内容が終わっているのにスケジュールボードに戻れないなら、「これからやります」カードを貼る場所を子どもの目につく場所に貼って、終わればそのカードを持たせてスケジュールボードのおしまいボックスに入れさせて次のカードを取って移動するほうが合理的ですし、正しいやり方に移行する時のフェードアウトが身体プロンプトのフェードアウトで済むので移行しやすいです。
ということで、今後すてっぷではプロンプト依存養成トランジション・カードを廃止し、自立型スケジュール計画を考えていきます。
指示待ち
H君が、ワークシステム(自立課題の行動支援システム)にとりくんでいました。内容はプットイン課題3つですから重度の子どもです。でも左から課題をとり、課題が終われば右のおしまい箱に上手になおしていきます。動画を撮影していたこともあり、H君は終了すると撮影者におわったよとモーションをかけてきます。
撮影者は「ワーク中には声をかけてはいけない」と思っているので、しばらく反応せず撮影を続けていたのですが、申し訳なくなって「グッジョブ」サインを送りました。H君はいつもどおりに「よくできたねー」の反応をしてほしいのに「親指立てても意味わからんし」とばかりにせっかく片づけたおしまい箱をけって課題をひっくり返して大人の反応を引く行動に出ました。
要するに、終わったら、大人はいつも頭をなでて褒めると共に次の行動を指示してくれていたので、その大人の行動と指示をひたすら待っていたというわけです。通じなかったら不適切な行動でとりあえず注意を引くというH君のこれまでの姿がでてしまいました。
表出コミュニケーションが弱いことと指示待ちと不適切な行動はトリプルセットなのです。でも、どうすればいいかというスタッフへの次の課題をH君は提示してくれています。がんばります。
節目だから進路を考えられる
土曜にG君が昼過ぎにやってきて「また、やってしまった」と朝から来られなかったことを反省していました。週末は自分へのご褒美に、平日我慢しているゲームを夜中までやることにしているそうです。そして、今度こそは朝から放デイに行くぞと決意するのですが、朝目覚めても「もうちょっと寝よ」と昼まで寝てしまうそうです。
6年生の2学期ともなれば、子どもは中学校の生活に思いを馳せてあれこれと情報を友達などから収集するものです。でも、不登校の子どもにはリアルに情報を得る機会もないし、節目の時期の雰囲気も感じることができません。親や周囲の大人は進路についてあれこれ相談したり、悩んだりしますが、進路について正面から考える機会を与えられていない子どもには、その内容も親の思いも十分には伝わりません。大人は配慮のつもりで学校の事を話すのを控える場合が少なくありませんが、それではますます子どもは情報が得られません。
進路選択という節目の時期は子どもにも親や関係者にも大変な時期ではありますが、成長の時期でもあります。親や関係者は新しいステップに進むための情報を子どもに示し、子どもはできれば実際に見て自分の進路を考える機会です。これは節目の時期だから出来ることで、いつでも出来ることではないです。当然、大人と子どもは知識量が違うので意見の食い違いもあるし、正しいとわかっていていても反発することもあります。けれども、それは双方にとって殻を破るときの痛みです。自分の選択を表明することは、自問自答を深めます。「またやってしまった」という彼の言葉に「次こそは」という可能性を感じながら、進路のことを考えさせられました。
VOCAセットできました!
前回「VOCA 09/15」に掲載したように、LさんにVOCAに取り組んでみてはどうかというお話をお母さんにしました。Lさんにはボタンの意味を理解してもらうために、お散歩犬玩具をケーブルでつないでボタンを押せば鳴きながら歩く、手を離すと止まるというセットを作りました。そこからボタンを押せば変化が起こることを伝えようという事です。
それと並行しながら、ボタンを押せば「もっとー」とか「おかーさん」とか「せんせーい」と呼び声を録音して、手遊びをするとか、散歩に出かけるとか、おやつのおかわりをするなどのVOCA(Voice Output Communication Aid)に取り組んでもらいます。何と言っても学校の生活時間が一番長いので、学校で取組んでもらえるようにお母さんからお願いしてもらいます。ただ、おもちゃのボタンなのですぐに潰れるかもです。
BOOKOFF
K君が本棚に並べてある「結界師(田辺イエロウ 小学館)」の欠番があるのが気になって「全部揃えたい」と前から言っていたので、BOOKOFFに探しに行きました。ただしBOOKOFFですから必ずあるとは限りません。あちこちのお店を探すことになります。でも、そろえたいK君には嫌なことではありません。
放デイの漫画本は欠番だらけですから、そのうちK君文庫ができるかもしれません。1冊110円もうちょっと安くならんかね。結界師は全35巻だけど10冊くらい欠番で、ちょっと出費が痛いです。
結界師は妖怪退治のお話で、結界師である主人公が、夜の学校を舞台に「結界術」を使い妖怪を退治していく物語。平成18年度(第52回)小学館漫画賞少年向け部門受賞。2020年6月時点で、累計発行部数は1700万部を突破している人気漫画。ジャンルとしては「鬼滅の刃」と同じジャンルのようです。などというとファンに怒られます。主人公が鬼と化した妹を人間に戻す方法を探すために戦う姿を描く和風剣戟奇譚の「鬼滅の刃」は、22巻で1億部を突破しているので足元にも及ばないというべきなのです。
メモ書きと読み書きの苦手
他所で受けた検査の結果から、空間や位置の把握が苦手そうなAちゃんが、紙粘土で作ったおかずを、お手本通りお弁当箱に詰める課題に取り組んでいました。いちばん大きなおにぎりでも、指でつまめる位のサイズです。手先の不器用なAちゃんにとっては少し難しいところもあったと思いますが、よくお手本を見比べながら、丁寧に詰めていました。
楽しかったようで、いろいろアレンジがしたくなったAちゃん。スタッフに作っておいてほしいおかずが次々と思い浮かぶので、ふせんに書き出すことにしました。
ただしAちゃんには読み書きの苦手があります。『レ…タ…ス』と書きたいけれど、すぐに『タ』が想起できず、鉛筆が止まります。ほんのいくつかの単語を書くだけでも一苦労です。
こういう時に、どういう支援をしたらよいか。予め想定していた学習の場面ではないので、スタッフも書字支援の十分な準備がありませんでした。読み書きの練習場面ではないので、細かい字の間違いを指摘せず、楽しく『書いて伝える』ことそのものを楽しんでほしいのです。この時は、わからない字をスタッフがモデリングして、それを写しながら仕上げました。Aちゃん、ふせんを3枚も自分で書きました!次回のお弁当作りを楽しみにしています。指導後、事業所で相談すると『iPadなどで音声変換してみたら』とアイデアをもらいました。次回、同じような機会があれば試してみたいと思います。
読み書きの困難がある場合、ちょっとした『読む』『書く』に伴う、易疲労性を無視することはできません。本人が、『今は字を勉強する時間』と構えを持っているときならともかく、遊びの場や、読み書きが情報整理の手段でしかない場合、読むことや書くことの辛さで、やりたいことや考えたいことを止めたり諦めたりすることはとても残念なことです。
じゃんぷはLD支援に積極的に取り組んでいこうとしていますが、読み書きの困難と向き合うというのは、本人にとってはどういうことか、読み書きの苦手がありながら目の前の事に達成感を持つにはどうしたらよいか、そのことをお子さんやご家族と考えていける場でありたいなと思っています。
スタッフの療育の理解
J君が自立課題をするのを若手スタッフに任せました。内容はビー玉をつまんで穴に入れるプットイン課題です。スタッフは丁寧に一つ一つJ君がビー玉をつまむように指示し、穴に入れるたびに「すごいねーできたねー」と励ましていました。それを見ていたスタッフが、自立課題というのは自分の力で最後までやり遂げることを目的にした課題で、声掛けや行動プロンプトはできるだけ少ないほうがいいとアドバイスしました。
「なんでですか?」と若手スタッフの質問にアドバイスしたスタッフは驚いたそうです。若手と言ってももう1年以上実践しているスタッフから「初心者あるある」の質問を受けたことに驚いたというのです。確かにスタッフには常勤のスタッフだけでなくアルバイトのスタッフや経験の浅いスタッフがいますから、毎日、子どもへの指示の出し方や距離の取り方も説明はしています。
しかし、なぜ自立課題に取り組ませているのか?なぜ、声掛けを少なくするようにしているのか、なぜ、子どもとの距離をつめないようにしているのかについて、その目的を話したことはありません。支援のハウツーは話すけど、ここの療育が何を目指しているのか説明したことがありません。そんなことは自明の理だと、当たり前のことだと常勤スタッフが思っているからかもしれません。でも、結構このコンセプトは普通の人には当たり前ではないのです。人は励まされたり、お世話されて頑張ろうとすると理解されているからです。そして、もしもそれが真実ならなぜJ君がこれまでそうならなったのかという想像力が必要になります。
どんなに障害が重くても、どんなにハンディーがあったにせよ、人間は自分の力でできることで自尊心を育てるのです。できることならお世話はされたくないし、一人でやりたいのです。これは障害があろうがなかろうが同じです。もしも、成人のあなたがあれこれができなくていちいち人の手助けや励ましがいるとすればこれほどめんどくさいことはないという想像力が必要です。
そんなわけで、月曜から1週間、スタッフに「子どもたちが少しでも一人で自立して行動できるように、スタッフのみなさんの工夫をお願いします。次週はそのアイデアをお一人ずつ話してください。」というアナウンスをすることにしました。さてどんなアイデアが出てくるか楽しみです。
5W2H
「Fちゃんに、お菓子を持って山登りに行こうと車に乗ったまでは良かったのですが、車が走り出しだしてから、行先とは違う方向を指さして、騒ぎ出しました」とスタッフが言います。前の日はおやつを持って公園に行ったそうですから、多分「山登り?」公園に行くのと勘違いしたのでしょう。言葉をしゃべっているからと言って、すべての言葉を理解しているわけではないという初心者あるあるです。
昨日も一昨日もFちゃんは公園に行っておやつを食べたのです。今日もルーティンで行先を誤解したのです。行先は特徴的な場所を写真で示さないと「山登り」なんて言葉は理解できないことが多いです。「お菓子」と言ったので昨日と同じだと「シンボルキーワード」を聞いてで行先まで同じだと誤解したのです。
明日からは山登りでおやつを食べるポイントの写真を「西山」と命名しておやつも絵で示し、「西山でおやつ食べよう」と説明していきます。ASDの子ども達は場面場面の違いを理解しにくいので、昨日とやり方を変えるのなら明示的な5W2Hの説明が必要です。だったら、変更やめとこうかという声も出そうですが、世の中は変更だらけですから変更を教えることは重要なことです。
また、逆に考えればルーティンには強いのですから、正しいやり方を教えるとすぐに定着するところはいいところです。この強みを使って生活規律や作業手順を教えればいいのです。
ローマ字表と暗唱
ローマ字の宿題について、C君D君は苦手みたいだとスタッフから報告がありました。ローマ字には規則性があるので、ローマ字表のマトリックスを眺めていれば通常子どもは理屈として理解します。「一番上に横に並ぶKSTNHMYRWに、右端縦のAIUEOが合成されて50音が構成されるという発見です。「へーぇ、九九と同じやん」と納得するのですが、空間認知の弱い学習障害の子どもは表を見ただけでは気づかないのです。
空間認知は強くて音声処理の苦手なE君はすぐさま理解して、キーボードの位置も覚えてしまいます。でも言葉で説明されるとかえって混乱してしまいます。ワーキングメモリーモデルという認知理論では、視空間スケッチパッドと音韻ループでの処理の偏りが「見てわかる人」と「聞いてわかる人」を分けると言います。これの非常に偏ったものが学習障害の原因ではないかと言われています。
ですからC君D君にはローマ字表を見せながら言葉で一番上の並びと一番右の並びの文字が合わさると一音が表現できると説明したうえで、「ケイ、エス、ティー、エヌ、エッチ・・・」と「エイ、アイ、ユー、イー、オー」を暗唱させ、「かきくけこ。ケイ。エイ、アイ、ユー、イー、オー」「さしすせそ。エス、エイ、アイ、ユー、イー、オー」と順番に暗唱できるようにします。とてもめんどくさいけど・・・確実です。これに合わせてキーボードを打てば一石二鳥ですが不器用な子はひとつづつしないとパワー切れを起こします。学習障害(LD)はラーニングディフィカルティー(学習が難しい人)ではなくラーニング・ディファレンシー=学び方の違う人です。
じゃんぷエントランス照明完成!
5時になるともう足元が暗くなる毎日です。エントランスのスロープは、じゃんぷへの教室通所の子どもにはちょっと足元が危なそうです。開所の際には京都府の福祉のまちづくり条例に従わなければならないので、車いす用のスロープはあったのですが高さ60cmで2m傾斜では条例規格に外れるので、折り返し付きの6mスロープにしたのです。
もともと外灯も暗いうえに、玄関先のスロープの陰になって手前のスロープの足元が真っ暗だったです。じゃんぷの看板も薄暗くてパッとしないなぁということで、足元ライトと看板用スポットライトを増設しました。エントランスが明るくなりました。
しんどいが言えるように
B君が昨日はとても眠そうで、作業の合間にソファーに横になったり、また立ち上がって作業したり、独り言も多くて作業がはかどらなかったという報告がありました。
ASDの方は、スケジュールが示されると体調が悪くても、やらなければならないと思い無理をする人が少なくないです。原因は、自己フィードバックが弱くて少々の疲れは感じにくく、高熱が出て急にダウンすることがあります。
また、「しんどい」「休みます」を言い出すタイミングもつかめないので、支援する側から休んでいいことや与えられた課題を全部こなさなくてもいいことを教えていくことが大事です。
低学年では、毎日、「今日は元気ですか」と子どもに聞きますが、感情カードを張っておき、しんどいカードがすぐに使えるように貼っておきます。しんどいことはそう簡単には訪れないので指導のタイミングが難しいのですが、毎日、子どもの様子を見ている人がチャンスをうかがって指導します。
おやつ
「昨日は山歩きをして、たくさん歩きました」「1年生もたくさん歩いてくれました」とスタッフから報告がありました。「おやつは食べた?」「いつも通りのおやつです」そこはちょっとスペシャルなおやつにしたほうがいいよと話し合いました。
放デイの日課はとかくマンネリ化しやすいものです。同じ道、同じおやつでは必ず飽きが来ます。飽きて当たり前です。ちょっと頑張ったかなぁと思うときは、その子が好きそうな味のおやつや飲み物を持っていくのがコツです。おいしかったという満足感と活動体験が心理的に連合するように準備するとわりと飽きがこないものです。
おやつだって、うまく使えば大事な支援の助っ人になってくれます。決まった時間に決まったおやつを出すのがおやつの時間と考えていては、ちょっともったいないという話でした。おやつの出し方にもメリハリをつけて活動の中に組み込みます。
なぜ子どもは窓に登ろうとするのか
「Zさんが窓に登るのは何故だと思いますか」と聞くと、Aさんの真似をしたいから登っているとのスタッフの理解でした。確かにAさんとZさんは同学年でZさんはAさんの後ろをついて離れません。そして、Aさんの好きな人形を奪ってAさんの大騒ぎを面白がったりするのです。
Aさんが窓に登るのは、固有感覚を刺激したくて、つまり力が余っていて窓に登るのです。そして、「Aさん!窓から降りてー」とみんなに注意されます。Zさんは、公園へ歩いていくのもめんどくさがる低緊張の、つまり体を動かすのに時間がかかる人です。誰も見ていなければ、窓になど登るニーズはありません。Aさんは人が見ていようが見ていまいが窓に登ります。
そうです。Zさんはめんどくさい体を動かしてでも、一つの目的で窓に登る必要があるのです。それは「みんなの注目」です。ZさんはAさんの真似をしたいツボは「ダメでしょ!」とみんなに注目を浴びることです。とすれば、療育の目標は適切な行動をしてみんなの注目を浴びる内容=「Zさんアイドル化大作戦」を考え出すことです。
運動会
先週の土曜が雨で運動会延期だったので、今日明日に運動会をする小学校がほとんどのようです。Y君が「今日は俺と走るやつ二人ともデブかったから1位になれたけど、あんまりうれしくない」というので「3着の奴は今最悪の気分かも知れんで、2着3着の人をリスペクトする意味でも、素直に喜んどき。」「あーわかった」とわりと素直に聞いてくれました。23着をリスペクトするというのが響いたかもしれません。
この日彼は、転校した学校での初めての運動会での徒競走だったのです。学年ごとの保護者観戦とはいえ緊張で喉が乾ききって、出番の時間までに持ってきた1リットルのお茶を飲みほしたと言います。相手の気持ちが読めないので全員が自分のことを注目しているに違いないという誤解からの緊張です。集団演技のソーラン節も終え、迎えに行ったら彼は疲れ果ててはいましたが、徒競走の成果もあり晴れ晴れとしていました。運動会は彼らにとってはかくも過酷な舞台なのです。
避難訓練
先週の土曜日雨で延期になった避難訓練を今日しました。「震度6強で近隣火災、向陽高校まで避難」という設定でした。前回も向陽高校まで避難だったのですが、武漢風邪予防の臨時休業中という理由で、職員はいたけど避難場所の体育館までは入れませんでした。今日は、体育館までは入れて、子どもたちはここに避難することが分かったと思います。
今回は車いすのXさんは介助者がおらず自力で戸口まで逃げるという訓練をしました。避難開始から戸外の車いす移乗まで5分かかりました。また、安全用のヘルメットも買ったのでみんなで被って高校まで移動しました。結構気に入ってがぶってたみたいです。
今日の避難人数は大人も含めて15名。避難から点呼まで5分。向陽高校体育館までは15分かかりました。みなさん、お疲れ様でした。
【避難開始から向陽高校体育館まで15分】
怒りの地雷を踏まないで
W君がもっとパソコンがしたかったのだけれど、その日はスケジュールが圧していて思うほどPCで遊べませんでした。W君は前回約束した通り約束した時間に終えてPCを片づけました。
でも、約束は果たしたけれど気持ちが収まりません。周囲のスタッフに悪態をつきはじめました。とは言っても彼は悪態=腹いせをスタッフにぶちまけているつもりはありません。「悪態」のように他の人には見えるだけです。自分が他者からどう映っているのかはW君にはあまりわからないからです。
彼にしてみれば、みんなが「腹減ったー」と言うのと同じ感じです。スケジュールが圧したのは誰のせいでもないけど納得がいかないのです。ところがスタッフがこの怒りに付き合ってしまうとややこしくなります。人にはこの思いを聞いてほしいけど解決してほしとも思ってないからです。
反応したスタッフは地雷を踏んだも同じです。子どもは怒りに任せて「なんでやねん」と喋っているだけなのに、「それは違うやろ」とか「理由は君も知っているやろ」などと返すと、「はー」と売り言葉に買い言葉の関係になります。こんな時は思いだけはうんうんと聞いてあげて、「約束通り終われてよかった!ありがとう!」でいいのです。それ以上踏み込んでは彼の値打ちが下がります。
PECS Ⅳ+ アプリ 今なら安い!
iPadで操作できるPECSツール「PECS Ⅳ+ 」が10月は半額セールだそうです。10,400円が5,260円です。
Facebookより
拡大・代替コミュニケーション啓発の月に敬意を表して、10月中、PECSIV+ とIHear PECS:動物のアプリが割引価格でお求めできます。
Apple®のアプリストアからご覧ください。アプリの詳細については、www.pecs-japan.com/apps からチごらんください。
また、PECS®と聞いたことがあるけど、何だろう?気になる?と思っている方、10月19日夜8時から無料でPECSの概要を開催されます。
受付は www.pecs-japan.com にあるトレーニングスケジュールからお申し込み下さい。
PECSの概要 – ZOOM®, オンライン (2020年10月)
開催地: Zoom®
開催日: 2020年10月19日 - 2020年10月19日
日程: 20:00 - 21:30
受付開始: 19:45
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PECS Ⅳ+ は PECS からハイテクのコミュニケーション機器へ移行する際の解決策です。フェイズ Ⅰ から Ⅳ までを従来の PECS のブックを使って習得した学習者にとって、PECS Ⅳ+ はハイテク機器を使った次のステップとなります。研究で実証されいる、世界で話題の PECS を創り出したピラミッド教育コンサルタントから出た PECS Ⅳ+ は、学習者が複数の絵カードを使って文をつくることを可能にします。述語ページを含む各ページには、PECS の絵カードを 24 枚まで置くことができます。そして、それぞれの絵カードの音声を再生するシステムがアプリに内蔵されています。
PECS Ⅳ+ の特色
• マジックテープがついているタグのあるページと文カードがある従来のカラーのPECSブックと似ているので学習者の使用しているPECSブックと同じようにPECSⅣ+のブックを設定できます。
• 従来のPECSのブックと同じ方法を使ってタグのついているページから文カードに絵カードをドラッグしておとします。
• ページ間をスクロールし、タブをタップすることでページが変更することができます。
• 絵カードの絵を削除することなく、文カード上の絵の順序を並びかえることができます。
• 絵カード上の絵を取り除くにはボタンを一回押すか、各絵をブックにスワイプして戻します。
• 1000個以上のPics for PECSの絵カードが入っています。
• PECSの指導方法に含まれている一定時間遅延プロンプトによって音声表出を遅らせる機能も組み込まれています。
各ブックのカスタマイズ
• 専用の述語ページを1回タップすることであけたり閉じたりできます。
• 1枚から20枚のタグのついているページを作ることができます。
• 各ページに24枚の絵カードをのせることができます。
• 各ページのマジックテープの数、色、カテゴリーのアイコン、そして絵カードの枚数を決めることで各ページをカスタマイズできます。
絵カードのカスタマイズ
• Pics for PECSにある絵を使うか写真ライブラリから写真を追加したりウ。
• 絵カードの文字を変更する。
• 文字を絵カードの上か下かにつけたり、絵カードから文字を取り除いたりできます。
• 絵カードのサイズを変更できます。
• Pics for PECSのライブラリの機能を検索する。
音声
• カスタマイズ可能な合成された音声(AV音声シンセサイザー)を使うか、自分の声を録音することができます。
• 生徒が発語する機会を作り出すために研究で実証されている一定期間遅延プロンプトを文章に組み込んでいます。
カスタマイズするために設定されたプロファイルを選択する、または新しいプロファイルを作成する
• 絵カードを動かす方法:タップ、ドラッグ、または両方
• 絵カードの絵を削除(リセット)する方法
• 述語ページの可視性
• 左から右、または右から左の文カードの読み
• 文カードを読むタイミング:各絵カードが選択される度か、文カード完成後」に音声表出のボタンを押した時
生徒の使用状況の痕跡
• 日毎の作られた文カードリスト
• 最も使用頻度の高い絵カードの週毎、月毎の分析
ピラミッド教育コンサルタントは機能的コミュニケーショントレーニングをアプリを使ってまたは音声表出コミュニケーション機器からはじめることはおすすめしません。なぜなら、ハイテク機器はコミュニケーションには不可欠なそしてPECSの根本理念である対人相互作用を必要としないからです。機能的コミュニケーショントレーニングは従来のPECSのブックを使って始める必要があります。研究では、ほとんどの学習者は3ヶ月から9ヶ月の間にローテクのPECSの指導方法でフェイズ1から4まで習得できるとされています。
西山歩き
V君は西山歩きではいつもだらだら歩きなのに今日はガンガン歩いていたというので理由を聞くと、目的地での飲み物がサイダーなんだそうです。なるほどV君はサイダーが大好きです。家に送っていく時もお母さんを見るなり「三ツ矢サイダー?キリンレモン?」と催促しています。
以前、欲しいものがあることはいいことだと書きましたが、好きな飲み物や食べ物があることもとてもいいことです。好きなもののために頑張って、「よく頑張ったね」と褒められることの心地よさは、自分にも相手にも良い感情を育てます。たかが、サイダー。されど、サイダーです。
ピンチはチャンス
パソコンを遠隔操作でオフにするソフトウェアーはないかとスタッフが聞くので理由を聞くと、小学生のU君らがパソコンのゲーム時間を何度言っても守らないので強制的に終了するソフトウェアーで解決したいとのことでした。
「あのね、ここはゲーセンじゃなくて療育施設なんだけどな」と呻いてしまいました。スタッフがPCを止めたい理由は、U君が時間通りに動いてくれないと他の子どもの送迎時間が遅れるからです。子どもに言っても言っても言うことを聞いてくれないのは、放デイでは当たり前のことです。皆が困るということが想像できない子や、約束を忘れてしまう子が通所してくるのが放デイだからです。
こうした事例に取り組んで成果を出すのが報酬をもらっているプロの証です。リモートでゲームを物理的に切ってもU君の問題は何も解決しないし、自尊感情も育ちません。まずは、理由を説明し契約をして契約を履行すればボーナス点として延長時間が次回以降に貯金として与えられ、履行しなければ次回はPCはないという約束をすればいいのです。トークンエコノミーに取組む良いチャンスを生かしてほしいと思います。